動的平衡 新版 生命は自由になれるのか (2) (小学館新書)
- 小学館 (2018年10月3日発売)
本棚登録 : 632人
感想 : 41件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784098253333
作品紹介・あらすじ
生命の謎に挑む人気シリーズ、新書化第2弾
福岡ハカセ、生命の謎に挑む!
「ヒトとチンパンジーって、遺伝子はほぼ同じだというけれど、なぜ、こんなに違うのか?」
「なぜ植物から動物は生まれたんだろう?」
「バランス良く食べろというけど、好きな物だけ食べてはダメ?」
「昆虫にフェロモンがあるというけど、ヒトにはないの?」
など、多くの人が考えたことがあるような身近な質問から、
福岡ハカセの「生命の謎探求の旅」はスタート。
軽妙に綴った文章を読み進めるうちに、いつしか、巧妙な生命のシステムを
知ることに!
発表当時、大きな話題を呼んだ衝撃作をついに新書化した本書。
新書化にあたっては、最新の研究成果に基づいて、大幅な加筆と修正を実
施し、新章も追加。
単行本を読んだ方も、未読の方にも、また1作目を読んでいない方にも、楽しんでいただける、サイエンスエッセイの決定版です!
【編集担当からのおすすめ情報】
『動的平衡 2』は、第1作と優るとも劣らない評判を獲得した作品ですが、新
書化にあたり、新章を追加し、さらに魅力的な作品になりました。
新章は、西田幾多郎の哲学と、動的平衡論を重ね合わせて、時間について考えた、斬新な思索です。
西田哲学そのものは、「易しい」とは言いがたいものですが、福岡ハカセの生命論とつながるとどうなるか。
ぜひ、本書で確認してください。
感想・レビュー・書評
-
生命とは、モノじゃない。
「水の流れのように、少しずつ形を変えつつ、ある種の平衡を保っている。しかも元の水ではない。しかし、流れは常にそこにある。」って、方丈記の冒頭ですね。
ーゆく河の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず。淀みに浮かぶうたかたはかつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなしー
多様な食物を採取して生きていた時代は、飢えと隣り合わせだったかもしれないが、多様なタンパク質も摂取していた。しかし、農業生産技術の発達で、単一の穀物に頼りがちなのは実はカロリー面では充足されても、アミノ酸バランス上よくない。地球上で最も多く存在している生物はとうもろこし。もし、宇宙人に地球を眺めさせたら、この星を支配しているのは、とうもろこしという黄色い果実をつける植物で、人間に世話をさせて隆盛を極めていると考えるだろう。
腸内細菌の種類は、個人でも、地域でも異なっている。なぜなら、腸内細菌はその風土の食と共に私たちの消化管に定着したから。生まれたての赤ん坊には、腸内細菌はない。
因果性と相関性。
たとえば、連続放火事件が発生していつも挙動不審の男がいる。100の現場で、100回その男が目撃されたとしても、彼を犯人だということはできない。相関関係はあるが、因果関係は、放火する現場を押さえなければ成り立たない。にもかかわらず、長寿者が多い村落でヨーグルトが食べられている→ヨーグルトには長寿の秘密がある。と考えがち。
地球温暖化は?過去150年、大気中の二酸化炭素は確実に上昇し続けている。気温も上昇傾向。両者には相関関係があるが、因果関係があるかどうかはわからない。
大気中の0.035%のCO2のうち、1/100以下の、さらにそのうちの4%のさらに6%を日本は変えようとしているに過ぎない。しかし、butterfly effect。かつて、0.028%だったCO2が0.035%に増加した結果、地球環境にどのような変化がもたらされたのか、はっきりと顕在化していない。しかし、動的な平衡点を、移動させていることだけは確かであり、動的平衡は、干渉に対して必ず大きな揺り戻しを起こす。
因果関係がないかもしれないけれど、ないとは言えないので(科学では究明し尽くせない)私たちの取るべき態度は、その場合に備えてアクションを起こすこと。
判断のレベルが真偽から善悪な見極めに移行する。
がんは生命とは何かという問いが余すところなく内包されている。
がん細胞の活動を止めようとピンポイントで抗がん剤など使用すると、がんは、別のバイパス経路を活性化させる。動的平衡を保とうとする。
遺伝子上に発生するミス(ガン発生の原因)を修復するシステムが完全に働けば、がんは発生しなくなるが、しかし、生命にとって致命的なことが起きる。進化の可能性が消える。わずかながらコピーミスが発生するが故に、変化が起こり、環境に対して有利に働くなら、変化が継承される。生命はあえてコピーミスの修復を完璧には行わない。
ゼロテクノロジー(なくす、元に戻す、守る)
エントロピー増大の法則を織り込み、先回りして自らを壊し、再構築する。生命が採用する自転車操業、動的平衡。これに倣って機械のパーツも入れ替えていけば、コストはかかるが、100年に一回起こるか起こらないかぐらいの確率で発生する何千億円の損失を出すカタスロトフィ事故は防げる。
隣人祭り
細胞は、もともと自分の役割を知っていたわけではない。君が脳細胞になるなら、私は肝臓というふうに、細胞たちはお互いに情報交換をして相補完的に役割を決めていく。自分のあり方は関係性に依存する。ゆえに生命は柔軟で可変的、適応的。細胞のように人間も、隣人と仲良くしよう。
時間と空間
科学はパラパラ漫画。一枚一枚は静止画。
そこに厚みを持たせて、その厚みは空間的広がりで、次のページと重なり合っている。
あるいは年輪。分解と合成が互いに他を逆限定しつつ、流れゆくままにバランスを取る矛盾的自己同一あるいは動的平衡が時間を生み出すしくみ。
→ちょっとよくわからないけれど、水の流れはわかる。
量子論
アインシュタインは、「神はサイコロはふらない」因果律の成立しない世界はない。と言った。
しかし、因果律はない。ミクロの世界では宿命や運命はない。共時的な多義性だけ。サイコロさえふられていない。観察するから、因果的に見えたり、予め決定されたように見えるだけ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生命の神秘について福岡伸一が綴った一冊。
生命を動的平衡として捉えるアプローチが面白く、彼の文体もあって読みやすかった。 -
生物学者福岡伸一氏による動的平衡をテーマとした書籍。芸術の話題から導入し、生命科学の系譜や生物の神秘、(当時の)最新研究などを身近なエピソードを交えながら、普段科学に興味のない読者にとっても分かり易く解説してくれる。
細胞増殖のための大腸菌の果たす役割やエントロピー排出を目的とした「水分」、相関と因果の混濁に対する誤解、などなどいずれも興味深い話が続く。特にDNA外にある「エピジェネティックス」による特性承継の話は面白い。前作に続き、知的好奇心を刺激してくれる一冊。 -
福岡伸一は面白い文章を書けるサイエンティスト、という意味で貴重な存在だと思う。(本ばっかり書いてて論文書いてないなんていう批判を見たこともあるけど)
---
44
レンズだけはできても、網膜ができても、意味がないのである。つまり各サブシステムは途中段階では機能を持たない。機能を持たない限りは自然選択によって、それが有利な形質だと言うふうに選ばれようがない。
55
生命の進化速度を見ると、突然変異の発生頻度よりもずっと早く生物が多様化しているように見える局面がある。
88
食物のタンパク質は、人の体を作るタンパク質と同じではない。食物タンパク質には、下の生物の情報が含まれている。そのため、摂取したタンパク質をまず一つ一つのアミノ酸にまで分解し、再合成する必要がある
。
97
現在、地球上で最も多く存在している生物はとうもろこしである。もし、宇宙人が地球を観察していたら、この星を支配しているのはとうもろこしと言う黄色い実なる植物で、彼らは人に世話をさせて興盛を極めていると思うだろう。
101
筋肉痛が起きそうな運動したときは、早めにBCAAを取ると良い。
187
動くこともなくこともない植物たちは、動物とは異なるコミニケーション方法を持っている。
p237
定量的に考えてみると私たちを減らそうとしている二酸化炭素と6%は、地球の大気の送料から見ると実に微々たるものである。大気中の0.035%のうち、100分の1以下の、そのうちの4%の、またさらに6パーセントを変えようとしているに過ぎない。 -
動的平衡シリーズって3巻まで出てるんですね。
遺伝子の話はそれはそれで興味深いんだけど、「動的平衡」に流れる哲学に惹きつけられる。
・センス・オブ・ワンダー:神秘さや不思議さに目をみはる感性。この感性が、倦怠や幻滅、自然という力の源泉から遠ざかること、人工的なものに夢中になることなどに対する、変わらぬ解毒剤になる(レイチェル・カーソン)
・時間が止まった時に見えるのは、動的なものが静的なものとしてフリーズされた無残な姿であり、かつて動的な平衡にあったものの「影」である。 -
福岡本にハズレなし。「動的平衡」に続いて読了。前著に続き、機械論的な構造やエントロピーの法則に対抗して生命が獲得した動的平衡のシステムについての論考。超一流の研究者だけにそこらのサイエンスライターとは説得力がまるで違う。おまけに豊かな情緒、教養、感性もお持ちなので奥行きや面白さもまるで違う。
腸内細菌の世界やゼロテクノロジーの思想、生命が進化の可能性を残すためにがんの発生(遺伝子のコピーミス)をあえて見逃している話は特に面白かった。また、科学的な「真偽」の議論から哲学的な「善悪」の判断、さらに「美醜」での選択に至る人類が向き合うそれらの基準についての論考も興味深い。環境問題との繋がりも前著よりもずっとしっくりと完結している。最後には西田哲学との著者の格闘も描かれる。生命を考えることは哲学的な営みなのだな。
それにしても人体、生命の神秘は計り知れない。人体生命の構造を元に作られたテクノロジーは枚挙にいとまなし。生命の仕組みは宝の山だなと思った。 -
はずれのない福岡先生の本。動的平衡も素晴らしかったが本書も非常に生物への興味をそそる本で良かった。特にエピジェネティックスの解説がとてもわかりやすい。遺伝子に関する見方が大きく変わった。
従来の生物学では進化はDNAの突然変異で説明されていたがそれだけでは説明できない事象は多い。それだけではないとの説がエピジェネティックスで、遺伝上は変化しなくても遺伝子のスイッチのオン・オフの順序とボリュームの調整で変化がおきるのでは、という仮説。そしてこれは卵環境で伝えられるとの事。改めて生命における母側の重要性(逆に言うと父側の役割が低い事)を認識。 -
生命の話。
2割の働かない蟻、クローン状態の桜の話は
聞いた事があります。
風土、季節のものが体にいい、というのも。
二酸化炭素の話も。
アメリカが拒否した、のは知っていましたが
何故日本だけなのか、というのも理解できました。 -
見返し
「私たちはなぜ『うま味』に惹きつけられるのか」
「海外旅行に行ったとき、お腹の調子が変になるのはなぜか」
「人間の行動は遺伝子に支配されているのか」
「生命が宇宙からやってきた可能性はあるか」
など、身近な話題から深淵なテーマまで、さまざまな切り口で、最新のサイエンスを紹介。
読者を「生命の本質とは」という根源的な問題に誘っていく。
新書化にあたり、時間についての論考を追加。
知的興奮が味わえる「福岡ハカセの生命理論」決定版。
本書は二〇一一年一二月に木楽舎より刊行された『動的平衡2』を新書化したものです。
新書化にともない、元の文章に修正や加筆を行ったほか、新たな章(第10章)を追加しております。 -
-
―2022.11..21読了
-
前作『動的平衡』に引き続き「生命の本質は動的平衡である」という考えのもとで、様々なテーマが取り上げられている。フェロモンの話など、「動的平衡」「生命」といった主題からやや離れているように思えるものもあり、全体の統一感は前作ほどではない印象だが、身近な切り口からの論の展開がうまいので、科学本としてはとっつきやすい部類に入ると思う。
個人的に驚いたのは、遺伝に関する章で述べられていた、個体が努力して獲得した形質は次世代に遺伝しない、という点。例えばキリンは高いところの葉っぱを食べようとして何世代にも渡って自ら首を伸ばし続けたからあのような姿になった、という訳ではないそうで、たまたまキリンの首が長くなるような突然変異が発生し、それがキリンの生存にとって有利だったから首の長いキリンが生き残った、とのこと。
人間を例にすると、いくら親が体を鍛えても、生まれてくる子供が筋肉質になるわけではないということらしい。もしかしたら進化論の世界では常識なのかもしれないけど、自分は完全に勘違いしていたのでたいへん勉強になりました。
最終章で、年輪の輪が時間をなめらかに繋いでいるというくだりは美しいと思ったけど、「ここ(年輪の輪)にあるのは生命の動的平衡が可視化された姿」「生命の動的平衡こそが時間を汲み出す水源」というのはあまりピンとこなかった。まだ読み込みが足りないのかなあ。 -
動的平衡1と重複部分も多いが、復習・定着という観点では良い。
日々の自分の行動を動的平衡の概念に照らし合わせて考えると、人生に若干のダイナミズムが出るかも? -
前半はアートに宿る動的平衡について。アートは静物であるが、それを見るヒトは感覚で動きを捉える。画家がどのような感情で書いたのかは本人でないと分からないが、アートに自然の動きをヒトは感じる。フェルメールとレーウェンフックの話に興味をもったが、アートが持つ動的なものにヒトは感動するのだろう。
ヒトの思考は「木を見て森を見ず」の考えに陥りやすく、現象を時間を止めて見ようとする。しかし生命活動は常に動的に流れ、その中で均衡を保とうとするものである。ファーブルは、「あなた方は死を詮索しておられるが、私は生を探っているのです」と述べた。現代で主流の分子生物学は、時間を止めて遺伝子やそこから発現するタンパク質を分析し生命活動を解析するが、動的な流れを排除し、機械論的にそれを見てしまうと、後にあって恒常を保とうとする流れにより、反動が起こるのではないか。自然から遠ざかり、人工的なものが溢れている中で、哲学的であるが、レイチェルカーソンが示した「センスオブワンダー」の感覚を原点とし考えていくことが大切だと感じた。 -
第一弾よりも動的平衡なんたるか、、については直接的なものは少なくなった印象ですがこれはこれで福岡先生の豊かな文章を楽しめます。生命は水によって増大するエントロピーを捨てている。。循環する世界の一部としての自分を思うと今なぜ自分がここにあるのか。。決して答えのない問いが押し寄せる。
-
『動的平衡』を読んだ記憶があったので、本作『動的平衡2』を読んだのですが、どうも以前読んだのは『生物と無生物のあいだ』だった模様。
『生物と無生物のあいだ』は面白かったですし、知的好奇心が刺激させる内容でしたが、本作は単に先生のエッセイとしか思えない内容で、とても残念に感じてしまいました。しばらく著作ビジネスから離れて研究に戻っていただければと、素人考えですが心配してしまうくらいでした。 -
動的平衡第2弾。生物を通して時間を考える哲学はちょっと難解だったが、全体的に面白かった。光スイッチ説や量子論などにも触れられている。パンスペルミア説は初期生命形成の化学的条件を基に提唱されていたかと思うが、地球誕生から8億年という時間軸が短いとされる根拠が良く分からなかった。起源の候補である有機物を含んだ彗星も、火星も、太陽系と同等長さの歴史を持つなら、宇宙開闢に遡るまで生命の起源を求めなくてよいのでは・・
-
2020年7月新着図書
-
ダーウィンの進化論では、獲得形質の遺伝はないといわれてきた。そして、それが今なお主流の考え方である。
そして、科学はそれを証明してきた。
DNAに書かれていることは昔からほとんど変わらないし、タンパク質→RNA→DNAと、遡及的に影響することもない。
しかし近年、それを突き詰める中で、実はそうではないやり方で獲得形質は遺伝されてるのではないか?という見方も出てきている。
それは、エピジェネティクスなやり方で。
つまり、設計図たるDNAは変わらないが、それは単なる設計図ではなく、クラシックにおける楽譜のような役割をしているものなのではないか?と著者は語る。
そのオンオフ、強弱、タイミングによって多様性は生み出されている。ということは科学でも分かっているところなのだ。事実、チンパンジーと人のDNAはほとんど変わらず、わずか2%の違いがあるだけらしい。
著者が、音楽を比喩にしてそれを説明しているが、それがイメージしやすくていい。
私たちが音楽に心を揺さぶられるのは、生命のメタファーだからなのかもしれない。
そして何より、そう捉えた方が人生が意味あるものに思えるではないか。楽しくなるではないか。そういう機構であって欲しいし、あるはずだ。
一つの人生には、遺伝子の保存という目的だけのためにあるという見方では、面白くない。そこには自由であることも含まれているはずだ。また保存するものだって、遺伝子だけではなくていい。村上春樹は、文章や小説でその確固たる獲得形質を保存しているではないか。
子供たちに伝えることも生まれてからの環境やコミュニケーションで大いに違いがある。
身体の中で、鳴っている音楽に耳をすませ、躍り続けようではないか。 -
1も面白かったが、2は哲学にも近接し、
深い読後感。
再読すればまた発見がありそう。
著者プロフィール
福岡伸一の作品
