上級国民/下級国民 (小学館新書) (小学館新書 た 26-1)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098253548

感想・レビュー・書評

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  • 【正不平等】
    ー 正しい不平等 ー
    どんどん平等になっていきすべての障壁がなくなったときは確かに恐ろしいです。

    すべての責任が自己責任になります。
    人種差別だ、男女差別だ、政治家が悪い、会社・上司がよくない、機会が不平等、家柄が違う、世の中が悪いなどと言えません。すべてが平等です。
    できなかった場合は言い訳することができず、すべて自分が悪いことになります。
    究極のダメだしです。

    ここまでになると下位に位置する人間は生きていくことはむずかしくなります。銃を乱射して世の中が間違っていると叫ぶこともできません。
    平等の機会・条件で競って優劣がついてしまっているのですから。。。すべてが自分の責任になります。

    こう考えると、ある程度不平等が存在しないと下級に位置してしまったときに生きる糧がなくなってしまいます。負け犬の遠吠えの余地も残っていないとやってられません。
    あるいはすべてが「個性」というものでくくられて、優劣がない状況になれば問題ないのでしょうが。。。

    これからフリーランスが増えるのは間違いないでしょうが、フリーランスは基本的に個人契約です。会社という看板で契約するわけではありません。個人の看板で契約を結ぶ必要があります。
    契約を結べる人はいいのですが、問題は契約をとれない人になります。これも何の障壁もない自由競争の結果であるため、自業自得というどこにも文句の言えない状況となります。こういう人たちはどうやって生きていけばいいのでしょうか・・・

    ー 団塊の世代 ー
    団塊の世代は正直うらやましいです。人口のボリュームゾーンでしかも上の人間がいない状況です。何でも自分で生み出す苦労はありますが、文句を言われることなく、自分たちの自由にできる、こんなうらやましい環境はないです。自分たちが時代(ルール)を創っているのです。苦労も苦労でなくなり最高に楽しい状況です。

    団塊の世代の雇用確保をして、60歳でやっとその下の世代が活躍できると思ったら、まだまだやめないで働き続けているのです。団塊の世代が60歳になるときにいろいろな問題が発生すると予想されていましたが、全く起きませんでした。65歳になるときにさすがに問題が起きると予測されていましたが、それも特に大きな問題は生まれませんでした。それもそのはずで、団塊の世代が既得権を握ったまま働き続けているからです。70歳を超えても現役で社長に君臨しているのです。

    後期高齢者になってやっと仕事をやめて権力を明け渡すのかもしれませんが、次は団塊の世代の年金を確保する時代がやってきます。人数も多く発言権を多数持つ団塊の世代の年金を減らすことは不可能です。死ぬまで時代の中心に君臨し続けるのです。ただ、あと20年ほど我慢すれば本当に(ついに)団塊の世代がいなくなり時代が変わります。
    団塊の世代はうらやましいかぎりの世代です。

    ー 加速技術 ー
    テクノロジーが恐ろしく進化して、大多数の人間の理解を超え始めています。しかし、今現在、極端に進化・成長し儲けを生んでいる分野はテクノロジーの世界しかありません。他の分野はそれほど進歩していませんが、テクノロジーはさらに飛躍する余地を残しています。
    人はテクノロジーを理解することをあきらめるときがいずれやってきます。うまく利用するように移行しますが、うまく利用することすら困難な時代がやってきそうです。少しだけ理解しているものが大多数の理解できていない人間を操るかたちになると思います。
    団塊の世代に勝てる(勝ち負けではないが・・・)ところはここに一つの可能性はあると思います。テクノロジーについていけないようにすればいいのですが、残念ながらお年寄りだからついていけないわけではないというところが悲しいです。お年寄りでもテクノロジーを使いこなしている人は多数います。さらに、団塊の世代はバイタリティー豊なため、下の世代よりテクノロジーを積極的に使用する人も多いです。

    やはり、ボリュームゾーンの世代が亡くなるまでは時代は変わらないのかもしれません。

    • やまさん
      gonco3さん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      gonco3さん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/16
  • 講演の内容をもとに加筆修正し、新書のかたちにまとめたもの、ということを読み終える直前くらいに知った。道理で、読んだことがある内容が多いわけだ。。でも、復習として十分面白い。

    P21
    日本のサラリーマンは世界(主要先進国)でいちばん仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、世界でいちばん長時間労働しており、それにもかかわらず世界でいちばん労働性が低い、ということになります。

    P30
    平成の日本の労働市場では、若者(とりわけ男性)の雇用を破壊することで中高年(団塊の世代)の雇用が守られたのです。

    P220
    アイデンティティ(共同体への帰属意識)は、「俺たち」と「奴ら」を分別する指標でもあります。それに最適なのは、「自分は最初から持っていて、相手がそれを手に入れることがぜったいに不可能なもの」でしょう。黒人やアジア系は、どんなに努力しても「白い肌」を持つことはできません。(中略)彼ら(白人アイデンティティ主義者)は、「人衆差別主義者」というより、「自分が白人であること以外に誇るもののないひとたち」です。

  • どの主義を持とうとも個人の自由
    究極の自己責任社会になるのを感じますね
    かつて手にしたことのない異常なまでの自由な
    世界はどうなっていくのか
    答えは混沌の中・・・・

  • 池袋での高齢者による自動車暴走事故の際、死傷者が出たにもかかわらず、運転者である高齢者が逮捕されなかったことが、当該運転者の過去の経歴に照らして「上級国民」だから、という巷の風評があった。
    そこからにわかに上級国民、下級国民論が論じられるようになったわけだが、本書はその論を著者の過去の話題作「言ってはいけない」と同様に、各種統計データを駆使しながら、日本だけでなく、世界での「上級国民/下級国民」問題を深く掘り下げている。
    印象的だったのは、
    「平成が『団塊の世代の雇用(正社員の既得権)を守る』ための30年だったとするならば、令和の前半は『団塊の世代の年金を守る』ための20年になる以外にありません」と、
    「教育の本質は『上級/下級』に社会を分断する『格差拡大装置である」と喝破しているところ。

    本書を読むと暗澹たる気持ちになるが、現実は直視しなければならない、と感じた次第。

  • 日本と世界が抱える現代社会の問題点が浮き彫りになる一冊。知識社会の現代の中で人々は明確にその知能レベルによって分断されてしまう。そしてその知能レベルでの分断が経済的な分断も生み出すことになり、さらにそれがモテ非モテといった問題にまでつながってしまう。このように現代社会において日本に限らず世界中で同様の問題が発生しており、これを明確に解決する方法が無いのが現状である。このままではいつまで経ってもインセルに代表されるような現代社会への報復を思想する人間が現れ続けてしまうだろう。

  • ・男と女が社会的に幸福になるには、異なるKPIがあるのを理解できた一冊。
    ・現代は格差社会が構築され、それは知能の差である。特に男は持てるとモテるがイコール。

    ・男性と女性では、女性の方が幸福度が高いというのは歴史や文化に関わらず世界共通。
    ・男性、女性に両方とも、年齢に限らず学歴が低い人は幸福度も低い。
    ・若い女性はエロス資本を持っているため幸福度が高い。壮年でも女性の方が男性よりも幸福度が高い。女性の方が繋がりを作るのがうまいから?男性は年を取れば孤立していく。
    ・男の性的戦略は、純愛の欺瞞。女性はこれに振り回されないために、噂話で対抗した。また物理的にも女性一人で男性には勝てないので、共感能力を発達させ、グループとして男性の暴力を抑えこもうとした。
    ・女性がモテる要素は若さ。男性は金と権力、要は共同体内での地位。
    ・近親婚を避けるために、女性は他の集団のオスに興味を持ち、集団内の女性が入れ替わる。冒険的になる。だから女性は新しい集団での関係性構築がうまく、また緩いつながりとなる。一方男性はいつまでも一つの集団のそのヒエラルキーに属する。女性はいくつになっても友達を作れるが、男性は作れない。
    ・米国では時給14$で働く人が、10億円のボーナスを受け取るCEOには価値があり、自分には価値がないことを受け入れている。リベラル社会は全てが自己責任。知能格差。

  • すげ〜最後の解決策もびっくり!

  • 話題になっていた時に読まず、ずっと気になっていたがたまたま古本屋に売っていたので購入しで読了。

    センセーショナルなタイトルとは裏腹に多くのデータや様々な文献からの引用が多く、現代社会における分断の理由を知ることのできる良書。チラ裏のような話題集め本かと思ったが社会学的な目線で、現代人の分断が述べられている。5年後、10年後、20年後にこの時代(平成終わりから令和初期)のリベラルの考え方を知ることのできる一冊になりそう。
    ただ主張や意見に筆者の気持ちが強く入っているため、全て鵜呑みにせず、自分で一次情報を当たって再考するのが良いだろう。

    ●近代までの社会は階層や宗教などのコミュニティの違いにより社会的に区分けされていた。
    ●知識社会化・自由化・グローバル化によって、個人の自由(自分が選択することで自分の生き方を決められる)が加速すると、自己責任論が加速する。
    ●現代は知識社会のため分断は知能の格差によって分けられている。日本においては具体的には大卒が非大卒かである。

    第三部は現代の世界の思想についてわかりやすくまとまっているのでリベラルとは?ポピュリズムとは?ということを知りたい人にもおすすめである。

  • 日本の格差が気になっているときに本書を夫が図書館で借りたので、私も読んでみました。
    「言ってはいけない」で有名な著者の本だったので、案の定少々過激な内容でしたが興味深く読みました。
    特に後半、アメリカ社会の分断の構図については大変勉強になりました。

    さて、具体的な内容ですが、日本だけでなく先進国を中心に世界中で「上級国民/下級国民」の分断が進んでいる背景について考察し、世界がどこに向かっているのかを解説した本でした。

    まず日本の現状ですが、日本のサラリーマンは「先進国の中で一番仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、世界で一番長時間労働をしており、それにもかかわらず世界で一番労働生産性が低い」そうです。
    そんな状況では競争力は低下していくばかり。
    ですが、平成の日本の労働市場では、既得権益者である団塊の世代(中高年)の利益(雇用)を自身が優先したせいで、若者男性の雇用が破壊されました。
    実際今でも日本では、正社員の身分が非正規労働者の存在によって保たれており、問題提起する側の人間(マスコミ等)がまさにその正社員の身分であるから、そのあたりには触れない、切り込まない、という理屈はとても納得感がありました。

    次にアメリカ社会に代表される先進国の現状は「知識社会化・リベラル化・グローバル化」という三位一体の巨大な潮流のなかにいるということです。
    ① 知識社会化
    テクノロジーの進化によるとてつもなく豊かな世界であり、一部の優れた人だけが富と名声を手に入れる社会
    ② リベラル化
    人々は共同体から縛られず、一人ひとり自由な意思によって自己実現を目指す、より自由でより豊かな世界だが、失敗も成功も自己責任の社会
    ③ グローバル化
    国境を越えたヒト、モノ、カネの移動を可能としどこでも好きなように仕事を選択できるようになるが、一方で適応できない人は生産現場では働く機会が失われる社会
    これが現代社会の構図の正体で、トランプ大統領選出、イギリスのEU離脱、日本におけるヤフコメ民の存在などはどれもこれにあぶれた「下級国民」による「上級国民」への抗議行動なのです。

    私たちは総体的には豊かになり、人々は全体としては幸福になるのと引き換えに世界が分断されていき、行きつく先は究極の自己責任社会です。
    それは何歳になっても働いて納税したり、リタイアしてもボランティア活動するなど、「自分はこうやって社会に貢献している」とアピールしなければならない世の中で、「生涯現役社会」とは「生涯にわたって社会に参画し続けなければならない社会」です・・・
    また、今後も共同体の解体は進行し、人間関係は学校や会社など固定的なものからネット上のコニュニティーのような即興的なものにかわり、仕事はフリーランスが集まりプロジェクト単位で行われるようになります・・・
    そしてこの劇的な変化に適応できない人たちとの分断がますます顕著になります。
    現代社会は人種や民族、宗教によって分断されているわけではなく、現代は「知能」によって分断されている、というのが著者の結論でした。
    衝撃的だけど一理あるかなあ、と思ってしまう。コワイね。

  • 資本主義である以上、格差は発生する。それは仕方がないことだが、マスコミや新聞ではその事実をきちんと報道などをして欲しいものです。

著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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