バズる「死にたい」 ネットに溢れる自殺願望の考察 (小学館新書 420)
- 小学館 (2024年8月1日発売)


- 本 ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784098254200
作品紹介・あらすじ
IT社会の“タブー”に踏み込む!
自殺願望の書き込みは、公序良俗に反するのか――ある遺族から寄せられたメールをきっかけに、著者は“死への記述”が綴られた143のサイトを調査する。ネット上に蓄積された「苦悩のデジタル遺品」は、自殺の連鎖を招く単に“有害”なものなのか、それとも全く別の新しい価値があるのか。
膨大な記述を紐解き、投稿者や遺族など当事者たちの心情を追いながら、「ネットと自殺」という現代社会の難題に向き合った。
感想・レビュー・書評
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著者が自殺願望を持つ人々の孤独に共感し、インタビューを通じて生きる希望を描いた部分が印象的でした。ネット上の言葉の裏にある切実な思いを理解でき、他人の苦しみを軽視しない大切さを学びました
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■「ウェルテル効果」とは、マスメディアによる自殺報道が自殺を誘発する二次加害現象を表す言葉。
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希死念慮表現は公序良俗に反するのか? 自殺者遺族にも消す権利はあるのか? を考えさせられる
必ずしも実行を促す/本人内でも行動に繋がるとは限らず、吐き出して楽になる事例も考えると何でもかんでも制限することで状況は好転するのか?
数十年後の視点からの振り返りも気になるテーマ -
この世界に生きている人間の、誰もが経験したことがなく、そしていずれ必ず経験するもの。それは死。
内容はタイトルの通りで、「死」に関して作者さんなりに考察する、というものとなっている。新書でありながら小説のようなストーリー仕立てになっていて、事の発端はとある依頼が作者さんのもとに届いたことから始まる。
「娘が自死した。ツイッターに娘のつぶやきが残っており、死を誘発する内容となっている。そのつぶやきを消したい」
作者さんは依頼主さんにツイッターのつぶやきを消す方法を伝えたが、そもそもその処置内容でよかったのか?という自問が発生した。で、そもそもネットにあふれる「死にたい」は有害なのか?と思いたち、それらを調査してゆく。
調査標本数が少ないし、作者さんの主観も入っているので、書かれている内容にめちゃくちゃ信ぴょう性があるわけではないけれど、「死」というテーマを扱った本を読んだことがなかったので読んでいて新鮮味があった。
とくに自殺した人たちが運営していたサイト(ブログなど)に書かれている内容は生々しく、読んでいるだけで気分が憂鬱になった。やはりそれらのサイトには死を誘発させるだけの「負のオーラ」があるように感じたが、一方で作者さんが言及しているように、亡くなった方の最期の言葉を簡単に消していいのか?という思いもある。
結局答えは見つからないけれど、死に関して考えるという貴重な経験ができてよかった。 -
『ネットで故人の声を聴け』の筆者が今度はネット上の自殺に関する投稿を調べていく。
筆者は多くの自殺関連のネットの投稿から自殺を語る者の特徴を分類していく。
しかし、この筆者の直接の意図はそこではない。筆者はネット上にある自分の自殺を語る投稿にそれを読む人にとって何かプラスの意味があるのではないか、危険性の為に消すより残すことに意味があるのではないかと模索していく。
筆者がやり取りを続けた投稿者に意外な展開があったりと、取材過程も興味深い。自殺へ至る過程も周囲の人も多様であり、時にその投稿が誰かにとってプラスの意味があるということもあるかもしれない。
決して筆者の主張に賛同できるわけではないが、筆者の模索が本として非常に面白いものになっている。
著者プロフィール
古田雄介の作品





