灯し続けることば

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 189
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098400904

感想・レビュー・書評

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  • 時々無性に、思い切り叱られたいと思う時がある。
    どれほど注意しているつもりでも、知らずに間違うことがある。
    そして大抵、気づいたときは間に合わない。
    両親だったら何と道理を説いてくれただろうか。
    甘えだと笑われるかもしれないが、大人になると誰も本気では叱ってくれない。
    苦い思いをかみしめ、間違った地点まで戻っては考え直す。
    その後ひとりで心の灯を新たにともすしかない。

    大村はまさんの「灯し続けることば」は、そんな時のために傍らにある。
    国語教育のパイオニア的存在で、戦後の公立中学校で教壇に立ち続けた方。
    2005年、99歳で逝去されている。
    同じ教材は二度と使わなかったというほど子どもたちにことばの力を伝え続けた方で、残された数々のことばがきっと、皆さんの心にも灯をともしてくれるかと思う。
    ハンディサイズで文字も大きく、すぐ読めてしまう。
    しかしそれで終わりではない。読み終えてからがむしろスタートだ。
    時を重ねながら、事あるごとに読み、咀嚼することばたち。

    以下、少し引用してみる。

    「日常の話したり聞いたり、読んだり書いたりするのが十分で、何の抵抗もなくそれらの力を活用していけるようになっていたら、それが私が子どもに捧げた最大の愛情だと思います。」

    「後になってみれば、一緒に遊んでもらった、頭をなでてもらったなど、そのほかのことは単にうれしかった思い出にすぎません。生き抜くときの力になっていない単なる愛は、センチメンタルなものだと思います。」

    「教師としての子どもへの愛情は、子どもが私の手から離れたときに、人間として一人で生きていく力を身につけさせることだと思います。
    それができなかったら、子どもを愛したとは言えないのではないでしょうか。」

    「したことの悪さより、しかられた傷のほうが大きいということはないでしょうか」

    これほど的を射たことばたちを他に期待することは出来ない。
    教師という職業だけでなく、子育て中のお母さまたちにも、あるいはひとを相手にする立場の方々にもお勧め。心に響くエッセンスの集合体をお読みいただけたらこの上なく嬉しい。
    私もまた、いつも何度でも読み続けたい。

    • nejidonさん
      夜型さん(^^♪
      ちくまの「教えるということ」しか手元になかったので、この本はリクエストしました。
      読んで本当に良かったです。
      今すぐ...
      夜型さん(^^♪
      ちくまの「教えるということ」しか手元になかったので、この本はリクエストしました。
      読んで本当に良かったです。
      今すぐ何が出来る出来ないではなく、理念として抱いているだけでも違うものがあります。
      良い出会いでした。ありがとうございます

      本棚の歴史は怖いくらい面白いです・(笑)
      もう、どうしましょ(*'▽')
      2020/11/26
    • nejidonさん
      goya626さん(^^♪
      その気持ち、よーーーく分かります。
      やさしい言葉でありながら、とても追いつけない領域です。
      でも難しいから...
      goya626さん(^^♪
      その気持ち、よーーーく分かります。
      やさしい言葉でありながら、とても追いつけない領域です。
      でも難しいから良いのです。
      熱心とか一生懸命と言うレヴェルで褒められても嬉しくないですもんね。
      だってそれは当たり前ですから。
      2020/11/26
    • 夜型さん
      人のお話を聴くときもそうなのですが、本の良さがわかるには、素直さと、わかるための素あるいは種がなければなりません。
      うまく、本たちとnej...
      人のお話を聴くときもそうなのですが、本の良さがわかるには、素直さと、わかるための素あるいは種がなければなりません。
      うまく、本たちとnejidonさんがマッチングしたようでよかったです。
      よい化学反応が起きていますでしょうか。
      レビュー待ってますね。
      2020/11/26
  • nejidonさんのレビューで読みたくなった本です。

    目次にある短く強く辛い(からい)言葉がタイトルになり、短い説明がついています。

    こういう形の本で初めて、ひとつもぐさっと心に刺さらない章がないというのは初めてでした。それくらい最後までひとつひとつが精査されているんです。

    教育のプロの哲学です。圧倒されます。怖くてすぐに二度目など読めないくらいに、生き様が圧倒的でした。

    いつの時代にも通じる教えです。
    特に人を育てる職業の方には、突き刺さり、指針になり、真似などできないまでも、少しで良いので近づきたいという憧れを抱かせてくれるとような書物です。

    とても素敵に苦しい読書でした。ありがとうございました。

    • nejidonさん
      Michiyo Kさん、ありがとうございます!
      「いいね」をいくついただくよりも、こうして読んで下さるのが一番の喜びです。
      読みながら胸...
      Michiyo Kさん、ありがとうございます!
      「いいね」をいくついただくよりも、こうして読んで下さるのが一番の喜びです。
      読みながら胸がいっぱいになってしまいました。
      大村はまさん、素晴らしい方ですよね。
      とても手が届かない方であっても、本のおかげでこうして遺された言葉に出会うことが出来る。
      そして新たに読んで下さる方も。嬉しい限りです。
      感謝です。ありがとうございます!

      2020/12/17
    • Michiyo  Kさん
      nejidonさん、素敵な本のご紹介、本当にありがとうございました!
      『本のおかげで遺された言葉に出会うことができる』
      本当にそうですね。
      ...
      nejidonさん、素敵な本のご紹介、本当にありがとうございました!
      『本のおかげで遺された言葉に出会うことができる』
      本当にそうですね。
      大村はまさんは1906年生まれ、2005年に亡くなられているので、もうお姿は見られないのですもんね。
      お声を聞いてみたかった、どんな話し方をされる方なのか知りたかった、と思います。
      でも言葉から想像するのも楽しいです。きっと低めの落ち着いたお声だろうとか。
      いつも私が直接は出会えそうもない本をご紹介くださって、楽しみにしています。nejidonさんのたくさんのお仲間とのやりとりも楽しく読ませていただいています。時折、それが本を読むより面白かったりしています。これからもよろしくお願いします!
      2020/12/17
  • 常識的で一般的な正しさ、固定した見方にとらわれないように・・・本当に注意する必要のあるときは案外少ないものだ/しかられた傷のほうが、したことの悪さより大きい、そんな過酷なことがないように/ほめる種をまく大切さ/興味を持つべきことに興味を持つように連れて行く/自然に背筋が伸びるようにする/「忙しい」は禁句/”一生懸命”はあたり前/心の中に、百のお話を/聞き返されたら、自分の話し方がまだ十分ではない証拠/「裾を持ちなさい」小言でなく、具体的で必ず成功できることを適切に指示/「少し上手になりたい」と心がける

  • 図書館で借りましたが、どの言葉もジーンと伝わってきて、「借りる本ではなくて購入する本だな」と思いました。

    大村はま先生は国語科の方なので、本によっては教科に偏った内容のものもありますが、この本は教科、校種の如何に関わらずオススメです。
    ある意味、他業種の方が読まれても自己啓発本として参考になるのではないかと思います。

  • 立ち止まったときに読み返します。

  • 大村はま先生が長年に渡りお話されたり書かれてこられた言葉が52本収録されている。
    どれもこれも教師として奮い立たされる言葉ばかりである。
    「熱心結構、いい人あたり前です」
    「熱心と愛情、それだけやれることは、教育の世界にはないんです」
    この2つは特に心に焼き付けて、勉強し続けたい。
    教師を志す仲間には是非読んで欲しい。

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