ラストカルテ -法獣医学者 当麻健匠の記憶- (10) (少年サンデーコミックス)
- 小学館 (2024年6月18日発売)


- 本 ・マンガ (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784098533794
作品紹介・あらすじ
動物たちの感情を紡ぐ法獣医学ミステリー!
法獣医学者・当麻健匠の記憶の中で、
動物達の最期(ラスト)は次世代への記録(カルテ)として、
過去と未来を繋ぎ、続いていく。
今巻で描かれるのは、
シカ、クマ、ヒト――
そこに確かに存在した、魂の”重さ”――
迫真の法獣医学ミステリー、堂々完結。
感想・レビュー・書評
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当麻たちが森で見たエゾシカの群れ。そこには角にヒグマの頭蓋骨が刺さったエゾシカがいた。エゾシカがヒグマを狩ったということなのか? すると、学内にヒグマが出没! 皆で様子を窺っていると、例のエゾシカが現れて戦いになり──。クライマックスの長編『クマゴロシノシカ』とエピローグを収録した最終巻!
なぜエゾシカの角にヒグマの頭蓋骨が刺さっていたのか?
ヒグマは木の実や植物、昆虫などを食べる雑食のはずが、どうして成体のエゾシカを襲おうとしたのか?
違和感が連なる中、エゾシカを殺したヒグマは「MIMO」と呼称されて駆除対象に。SNSでも例のエゾシカの写真が出回り、大きな話題になっていた。取材にやってきたテレビ局のクルーに注意喚起をしていると、ヒグマが現れて──。当麻はアナウンサーをとっさに庇い、大ケガをしてしまう。倒れている当麻を映し続けるカメラマンと、それをSNS越しに無責任なコメントする人々は現実でもそうだよね…。というか、倒れているところ中継すな! さらに、猟友会のメンバーが命懸けで駆除したのに、クマかわいそう、クマゴロシなどと言われてしまう。そこで生きている人々にとってみれば死活問題なのにね。
エゾシカとヒグマを巡る事件はなぜ発生したのか。その痕跡から事実を探る! ヒグマはかつて肉食中心だったというのは勉強になった(ホッキョクグマは完全に肉食)。開拓が進んだ結果、エゾシカ急減、オオカミ絶滅、ダム建設でサケなどの遡上も減り、植物中心の食生活へと転換せざるを得なかったという。この事件の底に流れていたのは、ヒトも絡んだ歴史そのものだった。
ぼくとしてはSNSの書き込みにイライラしてたけど、被害者である当麻の受け止め方が冷静で尊敬した。根っからの研究者だからこその一言だと思う。
「きっとこの言葉の集まりのどれか一つは『獣医学』に出会わなかった時の俺の言葉だ。知らないって怖いんだ。不安が尽きないんだ。でも疑問に思うことで一石は投じられる。好奇心を持って獣医学を学ぶ者が出てくる。そしたら俺の知らない世界がもっと開拓されるかも…」
当麻が受けたインタビューでの答えもよかった。
「感情は知識を得る『種』です。興味が出たのならば知ればいいと思います。なぜそれを実行しようとする考えに至ったのか。」
「僕達がいるここは自然界に足を踏み入れながら、誰かに守られて成立している場所なんです。」
種のまま言葉を蒔いてしまうのではなく、試行錯誤して花を咲かせてから手渡せるようになりたい。ぼくたちは自然の中で生きていて、誰しも考える必要があるテーマなのだから。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
完結。
クマは…今年の被害を連想させてタイムリーだったと思う。「頭蓋骨」をズガイコツとは言わずに「トウガイコツ」という正式名称を使ったのは、有識者か解剖学とか骨学を学んだ方なのかな(浅山さん)、と思った。動物が好きなだけじゃできない仕事。もちろん好きが基盤にあるけど、科学者としての視点も持ち合わせないとできない仕事。
2人とも臨床を選ばずに、研究職と官庁と(議員)を選んだあたりは、そっち向きかなと思ってた通りになった。どちらにしても、生命倫理をきちんと学んだわけだから、プロフェッショナルとしてより良い世界を創り出してほしいな、と思う。
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今回のラストカルテは今問題となっている「クマ」
駆除に対して主人公の当間のセリフがいい
特にその中の「感情は知識を得る「種」です。興味が出たのならば知ればいいと思います。」
この言葉こそが次のステップにつながる
色々な問題、そこで起こる感情をただ発散させるのではなく、知る、それも一面的ではなく、さまざまな角度から知ることで、何らかの影響が生まれる
重いテーマが多い『ラストカルテ』一つ一つ多角的な面で考えうことができて面白い -
10歳の次女が「11巻は?」と…
残念!10巻で完結。登場人物たちの成長と、動物と人間の生き様の物語を、もっともっと読みたくて仕方がない。続編があるといいな。
素晴らしい物語に感謝です。 -
なんと!終わっちゃいました…。各エピソードの末尾に、数ページずつの未来像が描かれていたから、そういった未来に到達するところまでは続くのかと思ってました。本巻の内容のみならず、作品を通してかなり楽しめました。感謝を込めての☆+1。
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初めて読んだとき、その後もだが胸が締め付けられた。
生きている動物ではなく、死んだ動物の死因を解明する「法獣医学」というのは新しく感じた。
こうであっただろう動物たちの最期のシーンは毎回、絵だけで見せられ、それがより一層深く染み入る作品だった。
途中、大学バージョンにいきなり移行して、動物のお医者さんや銀の匙的なノリに持って行きたいテコ入れかな?というのも感じたが、最後まで良い作品だった。
浅山わかびの作品





