怪異と乙女と神隠し (1) (ビッグコミックス)

著者 :
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本棚登録 : 118
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・マンガ (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098605590

作品紹介・あらすじ

現代怪異!謎解き!異世界ミステリー!

<これは、数々の怪異をめぐるささやかな友情と別れの物語――>

若返りの怪異“月読の変若水(ツクヨミノヲチミズ)”
絶対に声に出して読んではいけない“異界の歌”
知らない本がいつの間にか書棚に並ぶ“逆万引きの本”
神隠しの実録ルポルタージュ“仙境異聞”・・・

首都圏のとある中心駅、この町では何かが起きている……。
令和の世に残された最後の迷宮、“現代怪異”のミステリーに、
しがない小説家志望の緒川菫子(おがわ・すみれこ)と、童顔糸目の魔少年・化野 蓮(あだしの・れん)のコンビが挑む!
求められるのはオカルト知識と体力勝負!
この町にあふれる数々の怪異を解く先に2人を待つものは……?

ミステリアス&バイオレンス&アクション&エロティック現代怪異ロマネスク!!!


【編集担当からのおすすめ情報】
超絶画力を誇るぬじま先生、待望の最新単行本です!
第1集では怪異「月読の変若水(つくよみのをちみず)」が登場。
こんごも 怪異と美少女がぞくぞく登場します、お楽しみに!

<やわらかスピリッツ>にて第1話公開中!
地味女子でありながら無駄に色気とボディをもてあます作家志望・菫子(すみれこ)と、 見た目は少年なのに妖しさ満載の謎多き化野(あだしの)の書店員コンビの活躍をぜひお試し下さい!

感想・レビュー・書評

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  • 看板は「きさらぎ駅」、得体は知れない「闇」。

    都市伝説――それは、前世紀に新大陸アメリカで広く提唱され、太平洋を渡って本邦に辿り着いた通念です。一般的には「怪談」を別の側面から定義、新解釈するための社会学的一概念と捉えられます。
    また、2000年代初頭に入ってから「都市伝説」は現代サブカルチャーの文脈に広く盛り込まれました。文芸の題材に取り上げられた作品は2021年現在に至るまで継続的、断続的にリリースされていたりします。

    ですが、具体例を引くことですが今回はやめておきます。なぜかと言えばキリがない。
    低俗か高尚かの議論はともかくとして、「ジャンル:ホラー」が数寄者趣味というばかりではなく「怖いもの見たさ」という人の根源的欲望を揺さぶる万人向けの属性でもあるということはきっと自明です。
    異論は多々あるのでしょうが、作品の絶対数が証明してくれると思うのですね。

    では本題に入る前に少々ばかり自論を展開させていただきます。
    都市伝説はなにも近年に入っての、怪談の言い換え語として機能するばかりではありません。
    発生や伝播の過程などを追跡調査してその本質を明らかにしようとする科学的アプローチに向けられた名称でもあると、私は考える次第です。これはもちろん先行する方々から又聞いた意見なのですけどね。

    時に、「新しい酒を古い革袋に入れるな」という新約聖書の言葉があります。新しい考えや思想を古い形式で紹介しては意味がないという喩えですが、今回はこの格言を引いたうえで改変させていただきます。

    おそらく本作は「古い酒を新しい革袋に入れた」ことにより生まれる面白さと怖さと言い換えられます。

    少し迂遠な物言いなので、ギリギリネタバレには引っかからないと思いますが言わせていただきますと。
    この作品において取り上げられる「怪異」、近年では正体不明の超自然現象や成立も真偽も不明瞭な妖怪妖異妖物の総称を指す――は古式ゆかしき民間伝承や神話にその正体が求められることが多いようです。

    作品のカギを握る「きさらぎ駅」をはじめに2000年代以降からのネットロアも取り上げられます一方。
    新旧一緒に学術的なアプローチの俎上に乗せてからその正体を探り、かろうじて退けていくというスタイルは、いにしえの知識と現代の奇想を両立させたようなコンセプトであり、幅広い年代に訴求するかと。

    ……! 長々と語り申し訳ありませんでした。
    論を移しますが、物語はふたりの主人公を軸に展開されます。
    女性と男性のペアということである意味バディものと定義することもできますが、ふたりの役割分担が巧みです。それと両人ともに探偵役を務められる聡明さを備えていることに私は注目したい。

    ひとりめ、十五で作家にデビューはしたけれど鳴かず飛ばずで十数年。
    高身長、安産体型、やたらと胸が大きく、ここ十年来で使われだした新語を使うならやたら「恵体(けいたい)‐読みに諸説あり」で、お姉さん風が堂に入った書店員「緒川菫子(おがわ・すみれこ)」、28歳。

    ふたりめ、妹「化野乙(-おと)」のためなら命も賭けられて、いくらでも無茶ができる飄々系糸目男子。
    低身長、閉じられた瞳、ひょうきんな物言いにナチュラルに軽口も噛ませるけど、人の好さが隠しきれない。けれど得体が知れずに謎多き、菫子さんの同僚書店員「化野蓮(あだしの・れん)」、年齢不詳。

    で、董子さんは日常側から異界を覗き込み、好奇心に基づく興奮を隠せず、時に足を踏み入れ過ぎて恐怖におののきます。かくなる様子を読者に追体験させる王道の主人公ポジションに立つのだとして。

    ひるがえって、蓮くんは非日常側に属し、どうやら妹のために危険な怪異を収集しているようです。
    こちらは菫子さんが持たない強烈なモチベーションを提供する主役ポジションに立つと仮定しましょう。

    同じく「都市伝説」に看板を付け替えた怪異に挑むのだとして、何も知らない読者視点と知った上で周囲を巻き込むまいと動く主役視点で分けているのが上手いですね。
    第一話でさっそく菫子さんの独白という形で示唆されているのですが、化野兄妹の抱える問題と謎が解消された時はすなわち、二者の別れの時でもあることを暗示していたりします。

    ほろ苦い結末を期待できると言えば言い方としては変かもしれません。私個人としてはその中でも少しでも幸せなピリオドを打っていただきたい。そう言った個人的な願いを作家・緒川菫子に託したいですね。

    まぁ、そんな私見は置いとくとして。
    この漫画は、怖いばかりではなく化野兄妹と菫子さんの掛け合いが楽しいのです。
    ルール、法則により構成された都市伝説の正体を学術的に追っていく過程と、キャラクターとは記号や属性の寄せ集めであるという暴論が重なり合うか? なんて今しがた脳裏をよぎった仮説は置いときます。
    齢を重ねて自分の弱さを自覚しつつも気丈に振舞う菫子さんの姿が、私は地味に好きなんです。

    あと、董子さんのダイナミックな描かれ方が見逃せないというか、視線を奪われます。
    ホラーってジャンルは死の恐怖を想起させられる分、次代を残そうという本能が働いてお色気に走ってしまうのかという? そんな、よくある話は置いといて、他の女性陣をよそにひとり乳輪を解禁されていることに、この作品は漫画ですが女優魂を感じたりなんかもします。まぁ、それこそ戯言ですね。

    他の読者の方の意見にもあるように、深淵に踏み込もうとする恐怖を上手く中和して、謎を解き明かして先に進もうという勇気を与えてくれるのならやっぱり緩急というものは大事なのかもしれません。
    あと「エログロナンセンス」というみっつの言葉が一緒くたに語られる意味がわかった気になれたかも。

    あとは一癖ある「性癖(※近年のネットスラング的な用法に従えばキャラクター属性)」を求める読者にとってもなかなか見逃せない漫画だと思いますよ。
    それと先述した通り、お色気シーンにそれなりにストーリー的な必然性があるようにも解釈もできます。

    なにせ菫子さんが先ほど申し上げた通りの「恵体」に加えて「太眉」などに限らず。
    その上、作中で変身能力を披露することになります。「AR(Age Regressionの略)‐年齢退行の意」&「AP(ARの逆-急成長の意)」まで獲得することになるのはなかなかマニアックだと思います。
    菫子さんの三人称「団地妻(乙から寄せられた他称)」になぜだか納得させられてしまいました。

    「年齢退行」と「急成長」のセットは、漫画に躍動的な画面を提供するので見逃せないと感じました。
    まったくの余談ながら、漫画の神様が「変身(メタモルフォーゼ)」を得意とされたのは趣味はもとより、動きをもたらして感動を呼び込むためでもあったのかもしれないと実感を得られた気がします。

    では、最後にこの巻の構成について軽く触れておきます。
    まずは、都市伝説と怪異について菫子さんが関わるきっかけとなったはじまりの事件について、たっぷりとページを割きます。ここで、作家としての業と年を重ねてしまうことの弱さ切なさを丹念に伝えます。

    多少なりとも書くことに、情熱を持つ方はここで刺さるはずです。
    こうして長々と書いている私にとってもそうでした。傷口を抉られることに悦楽を抱く方に向けただけとは限らず、無為に時を重ねてしまったことで損なった自尊心の回復について触れてくれるのが心憎い。

    そうやって一旦の解決を挟んだこの巻は、菫子さんの特性を活かして妹・乙の通う女学院への潜入という次のエピソードへの導入を置いて引きとなります。あと、幕間の使い方の上手さも見逃せない。
    化野兄妹の抱える謎を読者相手に見え隠れさせつつ、基本路線をなんとなく読者に提示するのです。

    さて……さしずめ映画かドラマのエンドロールめいた、ラストワンページは恒例となるようです。
    一巻の終わりで終わらせるには十全で、けれども十二分の満足を得るために事足りず、続けて読んでもらう試みとして大変に素敵であるなと思う次第です。穏やかな終わり方、けれども波乱ははらんでいる。

  • 無駄にパツンパツンな気もするし、変なサービスショットがあったりもしますが、面白くさせたい要素をもりもり入れてるのね。もう少し展開が早くてもいい気はするけど、のんびりと読める。

  • テーマはオカルトということでどうかなーと思いつつ読み始めたら面白かったー!!
    怪異なのであからさまな化け物が出るより見えない怖さをじわじわと感じつつもギャグやエロが上手くバランスとってる感じ。
    キャラクターだけでなく背景の描き込みも細かく、場面がわかりやすい構図も素晴らしいの一言。
    あと続きも気になる終わらせ方もにくい…。
    個人的に『猫のお寺の知恩さん』みたいに奥付が漫画の一部みたいに書かれているのが好みです。

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