怪異と乙女と神隠し (3) (ビッグコミックス)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098610211

作品紹介・あらすじ

既刊ぞくぞく重版!ハマる読者ぞくぞく!



現代日本の“怪異”に、しがない小説家志望の緒川菫子(おがわ・すみれこ)と、童顔糸目の魔少年・化野 蓮(あだしの・れん)、
その妹の黒髪少女・乙(おと)が挑む!

新しい街に宿る新しい怪異“紅衣小女孩”……
親友トモコを奪われたシズクは、怪異の跡を追って雨の夜を駆ける!
そして化野兄妹の正体がついに……?!

求められるのはオカルト知識と体力勝負!
この町にあふれる数々の怪異を解く先に彼らを待つものは……?




【編集担当からのおすすめ情報】
第1集は発売すぐ品切れ続出で重版出来!
第2集もすぐ重版!
超絶画力を誇るぬじま先生、待望の第3集です!
毎回勢いを増す怪異ミステリーと美女&美少女!
新キャラクターもぞくぞく登場します、お楽しみに!

にて第1話公開中!
地味女子でありながら無駄に色気とボディをもてあます作家志望・菫子(すみれこ)と、 見た目は少年なのに妖しさ満載の謎多き化野(あだしの)の書店員コンビの活躍をぜひお試し下さい!

感想・レビュー・書評

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  • 彼此は問わない、彼我も問わない、世のどこにだって理不尽は存在する。

    そろそろ、ここ三巻までで物語の基本路線が提示し終わってプロローグを締めくくる体となりましたか?

    一巻は、いにしえの伝承そのものが現代的なルールを提示されたうえでやってきたもの。
    二巻は、都市伝説のルールで紐づけられる特定の現象の正体がいにしえの大妖の残滓だったというもの。
    羊頭狗肉か、その逆ではありませんが看板と本質の価値観や関係が逆転したと評することもできます。

    ひるがえって、『怪異と乙女と神隠し』ここ三巻ではいにしえの伝承と、比較的新しい都市伝説が混然一体となって形作ったまったく新しい怪異ということができます。
    一巻、二巻と時間の経過によって変質していった怪異を描いた後で、その度合いを着実に上げてきた。

    さしずめ基本に続く応用編ですね。では、軽く振り返りを兼ねてこの巻のエピソードの紹介を行います。
    二巻の引きに続きお送りするサード・エピソードは「紅衣少女孩(フォンイーシャオニュイファイ)」。
    「赤い服の少女」と訳される台湾でも最も有名な怪異(2015年からシリーズ映画化もされました)が一体「なに」で構成されているのかを解き明かし、その過程の中で本作の正体すら明らかにします。

    恥ずかしながら、当の怪異については聞き及んでいなかった不勉強な私ですが、国内のメジャーどころと絡めて意外性も落とさずに説明(新解釈)してくださったので読み返してみてしっかり腑に落ちました。

    こういう学術的な好奇心も満足させてくれるので「都市伝説」はやめられませんね。
    単独のエピソードとしては、後述する通り良くてビターエンドなので感心してもいられませんが、素朴な感想として一応言い連ねておきます。ご容赦ください。

    続き、この巻の構成を語るのならば次のエピソードに踏み込まずにきっちりと一区切りにしてさしずめ三巻までが「第一章」です、と言外に語ってくださっているのも強いですね。
    ラストでは無作為に犠牲者を出すだけでなく本作の主題を担う化野兄妹を視界に入れたなにものかも現れたりで、敵対か融和かを語るのは次巻以降になるとして新たなストーリーラインも期待できそうです。

    では、この物語が「なに」であるかについて軽く触れます。
    タイトルにある通り、この物語は隠された子供たちが帰ろうと、帰そうと奮闘するというものでした。
    ここまでに積み上げてきた一連の伏線が収束して、なぜ作品の主役を担う「化野兄妹」の兄の方が死を覚悟してまで妹を返すために怪異の収拾に挑むのか? そもそも、彼らは何者なのか? 

    また新たな謎も浮上したため全貌とは言いません。とは言え大意としてはここですべて開示されます。
    一つ言わなければあることがあるとすれば化野兄妹に共通する渦巻く目の描き方が違うのも納得でした。
    作品を牽引する伏線のひとつではあるのでしょうが、兄と妹とでは、おそらく「格」が違うのなら。

    さて、私個人の一巻、二巻のレビューにおいて現時点の本作について語るべきところはある程度語らせていただいたと思うので今回は簡潔に済ませようと思います。と、その前に。
    まず、本作がどこまで続くのかはさて置いて三巻までの構成は一体としてみるのならなお素晴らしかった。これだけは重ねて強調しておきたいと思います。本当に素晴らしかった。

    「世」の理不尽とは、現実と異界に変わらず存在するという示唆を通じて「帰りたい」、「帰したい」というわかりやすくも、たぶんにプリミティブな衝動を最大限に共感させてくれました。
    ここまでのエピソードのゲストヒロインの哀しい過去(この巻では「放置子」)を心中の吐露や慟哭などの形で示す。同時に彼女たちの心にまとう怪異を主人公たちが傷つきながら向き合っていく。

    さしずめ、怪異が人の心に関わったことで具体的な形を成す。
    まるで、彼女たちの心を器に形を成したかのように思えてしまうのは不思議なものですね。
    また、この巻では「帰る家を見失った子ども」というモチーフが主役の化野兄妹と重複すればこそ、このエピソードで主人公サイドの抱える事情に一気に踏み込むことができたと言い換えることもできます。

    結果、個々の物語に挑む一人と二人、三人の主人公たちが抱える物語も丸抱えで好きになれるわけです。
    ただし……きっと、ここ三巻のエピソードが親友との別れという哀しみのペーストをふんだんにまぶしたように、すべてを包括する化野兄妹の物語もほろ苦く終わってしまうのでしょう。

    ただ、それは一巻一話から言われていたこと。
    その時になってどんな顔をするかはわからないにしても面白い。哀しい。

    未知に挑み、知ってしまうことで生まれる恐怖と。
    未知を既知で塗りつぶし、なんでもない日常を歩んでいく面白さ。
    相反する物語は「きさらぎ駅」をプラットホームに痛みと苦しみ、悲しみも怒りだって飲み込みながらまだ続いていくようです。いつか訪れるだろう、帰る場所、終わってしまう時を待ち望みながら……。

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