サンクチュアリ 新装版 (6) (ビッグ コミックス)

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  • Amazon.co.jp ・マンガ (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098627196

作品紹介・あらすじ

極道再編。北海道抗争編、突入!!

北条と浅見の秘められた絆が
民自党・伊佐岡に暴かれる。
政治と極道、二人の革命の行方は・・・!?
そして総選挙と抗争。背後に見え隠れする大国・ロシア。
新たな戦いが幕を開けるーーー!!






【編集担当からのおすすめ情報】
極道と政治家。光と影に分かれた男達が日本社会を奮い立たせる。
累計800万部超。
原作/史村翔・作画/池上遼一の不朽の名作、第6集。

感想・レビュー・書評

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  • 改まって、言うような事もないが、本当に、この『サンクチュアリ』って青年漫画は名作だ。
    名作漫画の定義、名作と言えるだけの理由は色々と、人によって違うだろうけど、個人的には、巻を重ねるごとに面白くなっていく、なおかつ、何度、読み返しても、その度に感動が増す、これだ。この二つが、『サンクチュアリ』にはあるから、私は、堂々と、名作漫画、と断言できる。もちろん、異論は認めている。
    ついに、伊佐岡に繋がりを知られてしまった浅見と北条。綺麗な身のままじゃいられない政界に、どっぷりと全身を浸した上で、沈みかける、沈められそうになった事が幾度あっても、今日までしぶとく生き残り、泥臭い戦いを続けてきた老政治家が、怪物な訳がない。
    そんな伊佐岡相手に、つまらない誤魔化しは無意味だ、と悟った二人だからこそ、続けた伊佐岡の篭絡に一切、なびかず、威風堂々とした振る舞いを崩さなかった。甘い餌に飛びつかず、自分たちの力だけで、自分たちの野望を形に、どれだけ時間がかかっても、どれだけの犠牲を払ってもしてみせる、と胸を張る若さが輝く姿に、伊佐岡の胸は打たれたようだ。
    自分が汚い事をしてきて、この地位に辿り着き、これからも守り切る、と固く誓っているからこそ、自分がこうなる為に切り捨てたモノを持った上で、苦難の道を進もうとする心力を持っている、決して捨てないだろう、と確信できる北条と浅見に、そりゃ、伊佐岡の心が揺さぶられるのは当然と言えば当然。
    だからこそ、そんな二人を敵じゃなく、強敵として認めた上で、全力で叩き潰しにかかるんだろう。自分の地位を守るために、この若造どもは完全に潰す、とあらゆる手を使う伊佐岡は、政治家としても、人間としても、男としても、間違っていないな、と私は思っている。
    好感を持てるか、と聞かれたら、正直なとこ、否なんだけど、伊佐岡ってデッカい壁が、浅見と北条の前に立ちはだかるからこそ、この『サンクチュアリ』は面白い、と思うので、伊佐岡に対する感謝に近い念はあるかもしれない。
    そんな伊佐岡相手の選挙戦が熱を帯びていく中で、浅見と北条には、それぞれ、トラブルが訪れる。北条が極道ってイメージに縛られ、なおかつ、自分のこれまでやってきた生き方を今更、変化させられない弱者にくだらぬ邪魔をされる一方で、浅見の方は肉体に異変が生じてしまう。苦しみを、決して顔に出さない男が痛みに耐えきれず、汗を発し、膝を着く・・・それは、どう考えても、命に死神の爪がかかるほど、体の内が蝕まれているからだろう。その不調を浅見は北条に何が何でも隠そうとし、北条の方は気付いたとしても、気付いていないフリをする、その青臭いからこそ美しい男の友情に泣かない奴はいないよな。
    どんなに、伊佐岡に追い込まれようと諦める事を知らない二人だからこそ、逆転のチャンスは訪れる。北条には闇献金事件の捜査に当たり、伊佐岡に大逆転されて惜敗を喫したものの、火が消えていない石垣さんが味方になってくれた。浅見の方も、野望のデカさじゃ負けていないビゼットが連れて来てくれたアメリカ合衆国の大統領が良いサポートをしてくれた。そして、望月と原口がロシアンマフィアのボスであるソロコフと癒着している事を明るみに出せた事で、勝敗は最後の最後まで分からなくなった・・・
    色んな意味で、終わりに向かっての加速が始まったんだな。一体、どんな決着をし、そして、ラストを魅せてくれるのか、期待で胸が膨らむ。本編もそうだけど、最終巻の帯コメントを、誰が書くのか、そこが気になる。欲を言えば、芸能界でも、「麒麟」の川島明さんに負けないくらい、大ファンを公言している「千鳥」のお二人にコメントしてもらいたいが、どうだろうか。

    この台詞を引用に選んだのは、先述もしたが、伊佐岡って怪物のデカさが見えるものなので。
    あくまで、私個人の憶測ではあるけど、この言葉を腹の内じゃなく、口から出した事で、彼は浅見と北条の二人に、自分が敵わない事を悟っていたんじゃなかろうか。
    もしも、自分が、若い時の志、それの半分は無理にしても、二割程度は残せていて、日本の政治をまともに出来ていたら、このタイミングで、浅見に自分が先達から受け継いだ汗と血、涙、そして、魂が染み込んだバトンを、何の躊躇いもなく渡せた。
    けれど、自分の至らなさで、今、それが出来ない。
    だからこそ、二人に、自分を超えてみろ、みたいな意味合いで、あそこまで、えげつない、容赦がないにも程がある手を打ち続けたのかな、と私は勝手に思っている。
    「・・・・・・オレは、10年、日本の政治を遅らせたわ・・・」(by伊佐岡紀元)

    この会話を引用に選んだのは、浅見と北条、二人の、言葉じゃ説明できない、すべきじゃない友情を表してくれているから。
    自分で進退を決断する、それは大事な事だ。
    でも、そんな自分と支え合い続けてきた、もう一人の自分と言っても差し支えない親友に、自分の未来を託せる、これは、尋常ではない硬さの友情があるからだろう。
    自分たちの夢の成就が遅れてしまう、それを覚悟の上で、この敗北を受け入れる潔さ、痺れる・・・・・・
    「・・・・・・私のバッジを外せるのは、有権者でもなければ、伊佐岡幹事長でもない・・・・・・たった一人の男です!・・・・・・どうする!?」
    「・・・・・・外そう・・・」(by北条彰、浅見千秋)

    この台詞を引用に選んだのは、石垣さん、良かったな、と本気で思ったので。
    これを言って許されるのは、北条彰クラスの漢気を持っている漢だけだろう。
    パッと思いつくのは、前田慶次、両津勘吉、冴羽リョウくらいかな・・・
    また、その後のシーンも、大人向けではあるんだけど、決して、下品じゃない。
    こういう青年漫画だからこそグッと来るセックスシーンは大事だ。
    「・・・よ、用って・・・」
    「・・・おまえを・・・・・・抱く・・・」
    「!!」(by石垣、北条彰)

    この台詞を引用に選んだのは、北条がカッコいいってのも大きいが、北条を通して視えた史村先生の信念にグッと来たので。
    確かに、綺麗事だ、これは。
    しかし、その綺麗事を現実にする力が、本来、人間にはあるんじゃないか?
    史村先生が、教育こそが国を国にするには必要だ、と本気で信じていなければ、これは、北条に言わせられない。
    池上先生も、この信念に震えたからこそ、北条がこれを堂々と言うシーンには、いつも以上の気合が入ったんじゃなかろうか。
    自分の絵で、史村先生の教育論が台無しになってしまうってプレッシャーは凄まじかったはずだが、読み手の胸を打つ絵を描き切った、そこがグッと来た。
    また、北条の言葉を聞いた伊佐岡が、改めて、自分の老いを痛感しているのも、胸に熱い物を込み上げさせる。
    今、日本の財政がカツカツなのは百も承知で、今回の震災へ真っ先に有り金をブッ込んで、復興を早めるのが最優先なのは当然。
    その上で言いたいのは、岸田さん、増税したいのなら、それで作った金を、何に使われるか、判らない外国への支援じゃなくて、まず、日本の教育現場にブッ込んで、学ぶ側と教える側を豊かにしてくれ。
    国民が、イジメも何も起きなくなった学校で健全に学び、余計な知恵を付けるのは困る、と思い、教育に金を使うのを躊躇うのであれば、アンタは日本って国のトップにいるべきじゃないぞ?
    増税メガネ、と揶揄されても、未だに、その地位に執着できるほど面の皮が分厚いのならば、自分の器を踏み台にして、日本を救える若手に襷を渡すのも、総理としての、すべき仕事じゃないか?
    「・・・今、この地球上で起こっている種々の紛争、内乱・・・そして、先進国における凶悪犯罪の増加・・・私は、そのすべてが教育に起因している、と考えています!・・・指導者、権力者による一方向性の教育・・・・・・宗教的な単一思想教育・・・先進国では、権利だけが主張され、権利に付随するはずの義務、責任が忘れられている・・・たしかに、今、カンボジアは疲弊し、混乱している・・・だが、10年後、20年後を、考えてください・・・今、適正な教育を受け・・・自由を知り・・・権利を知り・・・その権利に付随する義務、責任を知る・・・・・・そこで、初めて、自分達とはなんなのか・・・国とはなんなのか・・・・・・自分達が果たさなければいけないことはなんなのか、を考え始めるでしょう・・・その彼らが、成長した10年後、20年後に初めて、真の独立国家が誕生する!!」(by北条彰)

    この北条の台詞も、なかなかにグサッと来るものだった。
    この台詞に胸を打たれ、自分はどうだろうか、と言動を思い返し、恥ずかしくなったのは私だけじゃあるまい。
    恐らく、今年も、選挙があるだろう。
    私も、今回の選挙は、今まで以上に、真面目に考えて、投票しよう。
    さすがに、国民に暴力を揮う奴には投票できないが、北条のように、歪んだ性根を叩き直す愛が詰まった平手打ちを繰り出せる男にだったら、票を託せる。
    「・・・あんた、弱いモノに対しちゃ、徹底的に強く出る・・・反面、強いモノにゃ、おそらく、媚び、へつらうだろう・・・あんたの姿が、今の日本人、日本という国の姿だ!!あんたらの一票は、候補者に与える一票じゃない!あんたらの考え、日本人の考えを示す一票なんだ!!」(by北条彰)

    そして、この台詞にも、ギュッと胸を締め付けられた読み手は多いだろう。
    こんな友情で結ばれている男達が、今、いるだろうか・・・
    正直なところを言えば、私には、こんな友人はいない。
    きっと、私だったら、友人の体調不良を知ったら問い詰め、無理に動くのを止めてしまうだろう。
    北条だって、浅見の無茶が、彼の命を縮めるのは解っている。
    それでも、止めない、止められないのは、彼が止まらない、と知っており、同時に、自分も彼に止められたくないから。
    石垣さんは、女である己が、今さら、浅見と北条の間に割り込めないのは重々承知していただろうけど、これを痛感させられ、ショックは小さくなかっただろう。
    けど、そのショック以上に、自分が良い男に惚れた事も実感しているんじゃないかな。
    「・・・何があったの・・・」
    「・・・浅見の体に異変が起きている・・・・・・人前では、絶対に苦痛の顔を見せない男が、青木の前で倒れた・・・普通の状態ではない」
    「そ、そんな・・・だったら、何故、本人に聞かないの!?事実を確かめるのが先でしょう!」
    「・・・もし、オレが浅見の立場だったら、オレは絶対に言わない・・・また、浅見もオレに絶対に問わないだろう・・・」
    「・・・な、何故・・・」
    「今日まで生きてきた・・・・・・オレ達二人のルールだ・・・」(by石垣、北条彰)

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