三日月まおは♂♀をえらべない (1) (フラワーCベツコミ)

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  • 小学館 (2021年3月26日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ / ISBN・EAN: 9784098712472

作品紹介・あらすじ

性別行ったり来たりのアブない恋

付き合って2週間の初カレにフラれた。
ヤツがヤリモク嘘つきクズ野郎だと知った。
もうやだ。嫌い。男なんて大嫌い――
って呪いながら寝たら、翌朝オトコになっていた。
パパ曰く(元はパパもママだったみたい。←え、どゆこと。)、
うちの家系は男か女か性別を選べる体質らしい。
もう男に騙されるのはコリゴリだから、
オトコとして生きることに決めた。
全寮制の男子校に入学した。
感じ悪い男とルームメイトになった。
ひょんなことからキスされた。
その瞬間、オンナに戻った。
色々頭が追い付かないパニック。←いまここ。

三日月まお、♂♀が定まらない16歳。
恋とかときめきとかもういらないんですけど!!!!

TSFラブ、第1巻!

【編集担当からのおすすめ情報】
話題沸騰!!西野きいなの新境地☆トランスセクシャルフィクションラブ

感想・レビュー・書評

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  • 少女よ、少年よ、どうか真摯であれ、紳士になれ?

    「TSF(後天的性転換を取り扱ったフィクション)」作品であることを、作者の西野先生が明確にこうだ! と宣言して世に送り出されています。
    ゆえに私も乗っかって、同ジャンルの愛好者として紹介させていただきます。

    ちなみに今回の主人公ですが、基本の性自認、もしくは生まれついた方の性別が「女性」でその上に男性としての身体と切り替えることができるケースです。昨今の「男性」→「女性」というパターンに慣れ過ぎた私としてはいささか荷の勝つテーマかもしれませんが、がんばって分析してみようと思います。

    ちなみに最近の「TSF」という題材、男性から女性に転じるビジュアル的な鮮烈さから語られがちだと思っています。セクシャルだったり、少年向けの文脈で語られがちです。
    とは言え繊細な心理描写を備えてこそのジャンルなので、歴史的に言えば少女漫画の領分だったりもします。もっとも本作はビジュアル面でも外していないので、いいとこ取りといった感じでしょうか。

    さて、そんなわけで主人公「三日月まお」は男にダマされてしまった高校生。
    恋愛的な意味で致命傷を負う前というのが不幸中の幸いですが、男相手に芽生えた不信感はどうしようもない。けれどもショックから一夜明けたら、さらなるショック。自分の体が男になっていました。

    男にダマされたら自分の体も男になってしまう――、どう割り切っていいのか混乱しますが、だったら前向きに、理想の男として生きてやろうと彼(彼女)は決心しました。ちなみにそういう家系だから、といった風に理由自体は軽く流されていますが、直後に似た境遇の親がフォローを入れています。

    今後の展開次第ですが、当初としては超常現象自体にはスポットは当てないようです。
    自分の心としてはどうありたいか? というメッセージ/問いかけが本領なのか、親も結論を急ぎ過ぎないよう諭しているので最終的に男女のどちらに(どっちも?)転ぶかはわかりません。
    コミカルに振れ過ぎず、シリアスに傾き過ぎないニュートラルな作風が本作の特徴なのかもしれません。 
    はじまりが男性不信からの開き直りなだけあって、「男」にどう向き合っていくかというテーマはわりと真摯だと思います。
    男の暴言は暴言として見逃さず、なにより男として人として見過ごしていないのは頼もしいところ。

    その一方で、正論もやってきます。
    ただ、デリカシーとのトレードオフなのか、棘はあるかもしれないけれど一理ある場合はきちんと受け止めています。視野狭窄だったり一方的な正義に陥るということもありません。
    間違いがあったらちゃんと謝るという姿勢、それに両論併記が貫かれているのは気持ちいいですね。

    というわけで主人公のまおがやってきたのは、男子寮付きの共学高校でした。
    裏表紙のあらすじ/紹介文(少なくとも初版時点では)だと男子校に入学とありますが、これは間違い。たぶん万人が「ん?」となるポイントでしょうので、一応指摘しておきます。

    男子校だったら確実にジャンルが変わりますからね。これ幸い、そこに注目して申し上げておきますか。
    この場合、プライベート空間では男同士羽目が外せる男子校のノリが働く一方、パブリックでは異性の目がある分、男子校特有の性欲が先立つアレな雰囲気に自制心という名の蓋をしているのかもしれません。 
    言うならば男子校と共学校のいいとこ取り。
    正直、アンダーな方向に話が触れすぎるとラブロマンスを阻害するのでこの舞台設定はありがたい。

    ちなみに性別が切り替わるトリガーも用意されているのですが、それは王道の「キス」というパターンです。しかも相手が男性女性、異性同性の場合を問わずキスで入れ替わるというなんとも融通が利くもの。

    まおはそういう星のもとに生まれたのか、なぜか不意打ち気味に事故のキスがやってきますがそこは愛嬌でしょうか。キスの度に話が動き、秘密を明かせないドギマギがその都度やってきます。
    なお、協力者さえ確保できれば、能動的に切り替えることもできたりもしてさっそく確保します。

    正論がキツくて言葉足らずな不器用さも備えているけれど、繊細さと煩悶を抱える「真中流星」。
    印象を裏切ってデリカシーは足りていないけれど、常識と推しの弱さ(ヘタレっぽさ)も兼ね揃えていて、いきなり秘密を共有することになった「井上聖」。
    見た目は派手なギャルだけど、実際は自己実現にまっすぐないい人であり打ち解けも早い「美澄夕映」。

    ……、知ってか知らずかいきなりキスの相手が三人。展開が早いですね。
    まおが男の巣に飛び込んだにもかかわらず、間接キスや男同士の裸の付き合いに赤面したりと女子感覚を捨てきれず、いい意味でも悪い意味でも脇が甘いこと、それが功を奏したのかもしれません。

    結局のところ、主人公がどう自分を定義していくのかは手探り段階なのですけれどね?
    主人公が男性、女性のどちらに自分の軸足を置くべきなのか、さっそく課題が突き付けられます。

    そのため、読者としても主人公の心の動きがどう動いていくのかは、さらに混迷を極めると思うのですがだからこそ先が読めずに楽しめそうです。
    人間関係を築いていく上で異性同性の垣根が相当低くなっている主人公の特性はメリットでもあります。

    たとえば女性視点で理想の男子を演じられるし、男性の立場から強くモノを言うこともできる。
    もちろん、メリットの裏返しとしてのデメリットも指摘されるので一筋縄ではいかないんですけどね。

    さて。基本はラブコメディだとしても男として男を愛するのか、女として男を愛するのか。
    それともそういった垣根を越えていけるのか、さまざまな今後に向けた示唆はさっそく働いています。

    よって強烈な訴求力というわけではないけれど、幅広い展開が見込めそうな間口の広さを確保していることが本作の強さといえます。
    酷い輩は男女問わずいるけれど、胸糞悪さには陥りません。好感度の高い善人がたくさんいるのも強い。

    悪意は悪意として見逃さないけれど正論がもたらす良さ悪さからも逃げない。
    そういった、真面目さ、真摯さは生きづらさにも通じるのでしょう。けれども、私は彼(彼女)の生き方を好ましく、頼もしく思うのでした。

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