雪国 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001012

感想・レビュー・書評

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  • 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」は、日本文学史の中でも屈指の書き出し。余談ながら、富山から東京へ新幹線移動の場合は、越後湯沢で乗り換えなので、越後湯沢の雪深さが現実感としてあらわれてきました。(笑)
    実は物語らしい物語はなく、背景や経緯も読んでいてあまりよくわからないのですが(笑)、情感たっぷりに雪国の風景を描写した中で交わされる島村と駒子の会話が、しっとりとした面白い風情を感じさせ、ぐいぐいと引き寄せられました。駒子が島村にまとわりつく様子も嫌味でなく、本来は鬱陶しいはずの言動も(笑)、雪国の景色の中へとけこんでいくような感じ。
    四季のうつろいと蛾の生死の有様の対照化や、女性の美を鏡に反映させて描く筆致は見事です。
    ラストは余韻がかなり残る終わり方ですが、その後を描いていくよりはむしろ、大舞台の中、情感を最高潮に達したところで終わりにする心憎い演出ではないかな。(笑)しっとりとした美を描く日本映画、といった趣の作品でした。

    • だいさん
      >女性の美を鏡に反映させて描く筆致は見事です。
      私も川端の女の描写はすごいと思います。
      >女性の美を鏡に反映させて描く筆致は見事です。
      私も川端の女の描写はすごいと思います。
      2013/05/26
    • mkt99さん
      先日、「川端康成 ・東山魁夷コレクション」という展示会を観てきました。川端コレクションを観ていますと、川端の審美眼を通した「女性像」というも...
      先日、「川端康成 ・東山魁夷コレクション」という展示会を観てきました。川端コレクションを観ていますと、川端の審美眼を通した「女性像」というものがあるのかなと思いました。
      2013/05/26
  • 川端康成を読むのはこれで二作品目。冒頭の夜汽車に揺られる一連の描写が、どことなく芥川の『蜜柑』にも似て、たいしたことを描写しているわけでもないのだけれど、物憂げな心持ちにさせる。

    銀白の雪国、閉ざされた世界、島村のいうように「徒労」でしかないのかもしれない駒子の、その無垢さを象徴するかのように、それはいつも白い。窓越しの駒子の赤い頬との対比が、まるで美人画のようで、たおやかなれど官能的でさえある。

    おわりは突然やってくる。以前に読んだ『みずうみ』もそうだが、彼の物語は唐突にはじまり、唐突におわる。まるで登場人物たちの人生を適当な尺で切り出してきたかのように、まったくもって完成しない。着地点がわからないから戸惑うのだけれど、現実の日常にもそれがないのと同じで、彼の語り口はどことなく真に迫るものがある。わたしには永遠に訪れることのできない雪国が異次元に存在して、彼はそこに出入りができるかのようだ。

    架空の世界が現実を肉迫する。寂しくなったら、慰めがほしくなる。そんなときは彼が切り出した別の人生の一コマをまたのぞいてみたいと思う。

  • 文字が織りなす作品世界、私は他の作品以上にこの点を強く感じた。

    一言一言、
    一文字一文字がすべて意味をなし、
    無駄なものが一切無く読者に情景を想起させる。
    彼のこの作品を体験することで改めて日本語の持つ表現の幅広さを感じることが出来たと思っている。

    表現という観点から作品を見た時に頂点に君臨するのが
    川端康成の「雪国」であることは私の中では疑いようのない事実である。

  • 川端康成の繊細な文章の醸し出す、静謐で幻想的な雰囲気。本当に大好きです。

    特にこの「雪国」は私の大好きな雪の描写がどれも美しい。雪国の静謐なムードを演出してます。島村と駒子の哀しいとも取れる関係は、今の私にはまだ理解できないところもあるけど、自分がもっと大人になったら再読したいと思った。きっとその時の感想もまた変わってるような気がする。

  • 先週雪が降ったからというわけでもないけど、ふと手に取って読んでみた。
    確かに美しい日本語、美しい世界。しかしよくわからない。ただ、わからないなりにも何か惹かれるものがあるという不思議な作品。
    若いころは「美しい日本の私」的なことを嫌悪していた。「あいまいな日本の私」の大江健三郎の方に共感していた。したがって川端作品を全然読んでいない。でもこの年になって、英語を勉強し始めたこともあって、逆にどんな日本語なのかと興味が湧いてきた。日本文学の美しい日本語を味わってみたくなった(←ネイティブの特権)。

    わたしの所有しているのはものすごく古い、昭和52年78刷の新潮文庫(表紙が平山郁夫)で、解説が伊藤整。
    まず『雪国』は『枕草紙』の系譜にあると述べられる。
    「『枕草紙』にある区別と分析と抒情との微妙な混淆を、どこの国にもとめることができよう。『雪国』はその道を歩いている。『枕草紙』の脈は、私は俳諧に来ていると思う。それは和歌の曲線を不正確として避けた芭蕉、いなそれよりももっと蕪村に近いあたりをとおり、現代の新傾向の俳句の多くにつながる美の精神である。そして、突然泉鏡花において散文にほとばしり、それ以後散文精神という仮装をして現れた物語文学に押しのけられ、押しつぶされて消えそうになりながら消えず、文学の疲労と倦怠の隙間ごとに明滅していたが、川端康成において、新しい現代人の中に、虹のように完成して中空にかかった。」
    『雪国』について、具体的には、
    「島村のまわりに作られる世界は、現実の描写が、雪や家屋や風俗や虫などでかこまれていながら、ほとんど抽象に近くなっている。人間の中から、激しい思念や、きびしい呼声や、もっとも細かな真心からの願いなどのみを取り、外の無意味な具体性を棄ててしまう。」「島村はその感覚する『美』の一点においてしか生活していない。」
    そして最後はこんな文章で締められる。
    「生きることに切羽つまっている女と、その切羽詰りかたの美しさに触れて戦いている島村の感覚との対立が、次第に悲劇的な結末をこの作品の進行過程に生んで行く。そしてその過程が美の抽出に耐えられない暗さになる前でこの作品は終らねばならぬ運命を持っているのである。」

    「枕草子」~「俳諧」~「俳句」の系譜にあるというのは面白いなあ。
    確かに感覚的というか詩的というか、ストーリー性のあるお話ではないから納得する部分もあり、でもよくわからないとこもあり…かなあ。

    ちなみに駒子のセリフが、映画『山の音』の原節子の言葉遣いとそっくりだった(時代…しかも同じ作者…)。駒子のセリフを読みながら、原節子の口調が頭の中で蘇るのだった。

  • 冒頭部分があまりにも有名なこの作品。
    難しそうなイメージで何となく避けていましたが、読んでみたら意外と読みやすく驚きました。
    物語の中にどんどん引き込まれて行く感覚が心地良く・・・
    美しい叙情的な描写とスピーディーな展開のためか、途中からまるで舞台を観ているかのような気分になっていたので、最後の終わり方もこういう結末の演劇って良くあるよねと。

  • 言わずと知れたノーベル賞作家の代表作。

    面白いか、面白くないかといえば、はっきり言って面白くは無い。
    終わり方も、それで・・・?といった感じだった。

    しかし、読むたびにじわじわとくる。
    若い頃、一番初めに読んだ時にはさっぱりわからなかった。
    というか全然進まなかった。
    懲りずに3、4回ぐらいに読んでやっと読めた気になれた。

    中高生の読書感想文とかで推奨されていそうだが、これは大人が読むものだと思う。
    これで感想文とかどう書くのだろう?
    間接的な性描写も、美しい情景描写もそこそこ年齢を重ねてからのほうが理解できるし、当時の男女間の事情も読み取れる。

    話の内容よりも文章そのものを楽しみたい。

  • 瀬戸内寂聴とドナルド・キーンの対談で三島と川端を比較してたので手に取る。 若いころはわからなかったけど、場面場面を切り取り、感覚でとらえたことを日本語に変換させたような文章で素晴らしいと思った。 ゴシップ記事になるような登場人物のあれこれは全然描写されておらず、その場、その場のことを美しい日本語で、読者を雪深い温泉場に取り込んでしまう文章は「これが小説なんだ」と思った。 谷崎も書いていた西欧では恋愛が表現されてなければ小説と言わないという、しかも人間の懊悩も描かれている。さすが!

  • ストーリー云々よりも、ただただ雪国の美しい情景が目に浮かぶ…
    小説というより、芸術作品だと思いました。

  • 本には、それを読むのに適した年齢があると思います。高校生のとき、大学に入ったばかりのとき、島村や駒子を取り巻く状況が全く分かりませんでした。動きがない、答えを出さない、臆病。なんでこれが‘名作’なの??と。
    わかった、エロか!!この妙にほのめかすエロな感じがいいのか。いつの時代も妄想を掻き立てられる表現が歓迎されてきたのは一緒か。
    もちろんその年齢は人によって全然違うのが当たり前ですが。私は三回目にしてやっと、この文体になんとかついていけるようになりました。以前と受け取るものが違うなぁと感じるのは新鮮なことです。要は、「読書をするとき背伸びをするな」。わからないものはそのままに、いつか再チャレンジしてみると楽しい。

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著者プロフィール

1899年生まれ。1920年東京帝国大学文学部英文学科に入学(のち、国文学科に転科)。1921年第六次『新思潮』を創刊。『伊豆の踊子』や『雪国』などの作品を残す。1961年文化勲章受章。1962年『眠れる美女』で毎日出版文化賞受賞。1968年10月、日本人初となるノーベル文学賞受賞が決定する。1972年没。

「2017年 『山の音』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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