掌の小説 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 182
  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001050

感想・レビュー・書評

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  • 図書館本。
    1-2ページの短編集。

    オパールの指輪をする少女、レモンを絞り果汁を乳房に塗る女、夫に不自由となった身体を洗わせる妻←これは第三者目線ではあるが。

    谷崎潤一郎がしっとりしたエロならば、川端康成はサラリとしたエロですな。
    良き一冊。

    何気ないことをサラッと描いた短編も多かったことも追記。

  • 短編以上に短い掌編小説が全部で122作(!)。きりの良いところでいつでも止められるので、寝る前に読む用でした。1作1作の書かれた年代が明記されてないのが残念ですが、40数年分だそうで、おそらく若い順に収録されていたのだと思います。

    初期の頃のは、私小説ぽいというか10代の頃に日記に書いたようなものに始まり、そのときどきで、作者のマイブームらしきもの(やたらと踊り子が出てくるものが続いたり、伊豆ものがたくさんあったり)や、時事ネタというか時代背景を感じさせられるもの(戦中戦後など)もあり、短編として完成されているものもあれば、長編のエピソードの断片のように感じられるものもあり、ジャンルも色々で楽しめました。やはり後半になるにつれ、作家としての円熟味が増していったように思います。

    いちばんのお気に入りは「屋上の金魚」。月夜に狂女が屋上庭園の水槽の前で口から金魚の赤い尻尾を垂らしながらむしゃむしゃ食べている姿がまるで眼前に浮かぶようで恐ろしくも幻想的。若い娘と老人の幽霊がさまよっている「不死」や、最後のほうの「地」「雪」「白馬」といった少し幻想性のあるものが個人的には好きでした。

  • 夏頃から毎日「掌の小説」に収められている作品を一編づつ読んで感想をTwitterに投稿する「川端康成マラソン」という企画を立てて、ずっと読んできましたが、本日ようやく無事に完走できました。なんとか年内に読み終えて良かったです。中にはこの作品はどういう意味だろう?と理解が難しい作品もありましたが、でもそれも面白かったです。川端の老境にある人物たちの寂寞と追憶が美しいなと思いました。「硝子」や「屋上の金魚」「落日」などが印象に残ってます。

  •  アホの僕にはこれで終わり?となってしまうお話がちょいちょいありました。現代の刺激物みたいな物語に慣れてしまっているんですかね...?

     ただそれでも不思議だったり、ドロドロしていたり、柔らかい感じだったり、凄く色々なお話があって楽しかったです。

  • 人生のあっけなさ、運命の非情さを感じる作品群。
    繊細で美しくも、ときに空恐ろしく感じる文章や、読む者に判断を委ねる定点観測のような視点が、なぜだか心地良く思える。


  • 122の小説を、廁で毎日1つずつ。なので読了まで4ヶ月くらいか。名作を語れるような知識も言葉ももたないけれど、感情が乗り移ったしぐさにハッとしたり、おだやかな物語が急に狂気を帯びてきてゾッとしたり、読んだあとに考えこんでしまったり。

    掌にのるような数ページの物語は、もくもくと膨らんで、厠での時間がこんなに充実してる人間は、この瞬間、世界で私ひとりかもしれんな、と思わせてくれる名作品集であった。

  • 通勤電車の中で1日10ほどの作品を読んだだろうか。2週間ばかりかけて読み切った。夢の中の話のような気がして、自分の夢も書き留めておこうと思った。最近見て印象に残っているもの、何度も繰り返し見ているものなど10の夢。夢十夜。さて、いくつか印象に残った作品はある。「あなたが一目見てやると、死顔がこんなに安らかに変わるなんて。」本当は夫が手で顔をごしごしとこすっていた。でも、僕は思う。きっと妻はまだ完全には死んでおらず、やはり夫の声を聞いてほっとしたのではないかと(「死顔の出来事」)。足から血を出しながら馬車を追いかける少女。「少女は靴を履くと、後をも見ず白鷺のように小山の上の感化院へ飛んで帰った。」感化院ということばが突き刺さる(「夏の靴」)。親から強いられた結婚をしたくないと伯母に相談し、恋愛結婚をすすめられる。自分は道を過って三十年不幸だったからと。その伯母が生んだいとこと結婚したいと思っていた。立ち聞きしていた彼は婚約破棄の手紙を書いた。強いられた結婚をしなさいと。ただし、「そして私のように立派な子どもを生みなさい。」とは書けなかった(「子の立場」)。何人もの男に同じ手紙を書いた。そして、生まれてすぐに亡くなった子どもの骨といっしょに送った(「神の骨」)。何作か踊り子の話が続く。その中にあった。楽屋で乳首のまわりの白粉だけをふき取って赤子にお乳をあげるシーン。若いころ舞踏のワークショップに参加していた。その師匠夫妻が横浜のストリップ小屋に出るというので見に行った。そのとき、楽屋に入れてもらって、踊り子たちの疲れた表情を見て切なかったのを思い出した。そして、「ざくろ」。これが一番良かったかなあ。「母がよく父の残したものを食べていたのを、きみ子は思い出した。きみ子はせつない気持ちがこみあげて来た。泣きそうな幸福であった。」「泣きそうな幸福」ということばに心ひかれた。


  • 不安になったり、ドキドキしたり、ちょっと笑ったり。
    そんな、長くても10ページ足らずのお話が122編。
    短編以上に短編ではあるが、川端康成の文章の美しさがしっかりと堪能出来る。

    川端康成と言えば、雪国とか、片腕とか、眠れる美女とか名作が沢山あるが…それにも劣らぬ名作揃いだと思う。
    1日の終わり、眠る前に読むのにいいなと思った。

  • 中学生の頃に読んだけど、ずっと忘れられない。
    誰でも、この短編集の中に絶対心に残り続ける話が見つかると思う。

  • 「夏だった。朝毎に上野の不忍池では、蓮華の蕾が可憐な爆音を立てて花を開いた」

    この一文に天啓を受けたように立ち尽くした高校生のわたし@小汚いフジの書店、を思い出す。
    それから手を出しては忘れたりを繰り返したこの本を、ようやく通読した。
    結果、男(酷薄な)と女、心霊、夢と悪夢、不気味、のラインが好きなことに気づく。
    そして、曖昧さ。余韻。ぎょっとする一文。これは文章の妙味。
    丸をつけたのは、

    日向 指環 金糸雀 白い花 落日 人間の足音 滑り岩 心中 竜宮の乙姫 霊柩車 合唱 屋上の金魚 恐しい愛 百合 処女作の祟り 門松を焚く 母国語の祈祷 家庭 笑わぬ男 黒牡丹 望遠鏡と電話 化粧の天使達 舞踏靴 雨傘 化粧 手紙 不死 地 白馬 雪

    「奥さん。この金糸雀は殺して妻の墓に埋めてもようございましょうね」

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著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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