眠れる美女 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 281
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001203

感想・レビュー・書評

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  • デカダンス文学の傑作と言われる作品。
    読もうと思ったきっかけは、原宿ブックカフェという番組で浅田次郎さんが“人生を変えた一冊”に挙げていたのを観たから。

    薬か何かで眠らされた少女と、添い寝して一夜を過ごすことが出来る部屋。知人から聞きつけた江口老人は、ある日そこを訪れる。
    奥の部屋の布団に眠る若い女は一糸纏わぬ姿で、そしてどんなことをしても絶対に目覚めない。
    そこを訪れるのは大抵、もはや男性としての機能を失ってしまった老人ばかりであるが、江口老人はまだ完全に機能を失ってはいない。
    隣に眠る若い女を犯して破壊してやろうかという衝動にも襲われるが…。

    直接的な肉体の交わりのないエロティシズムが却って妖しさを引き立てていて、死が見え始めている老人が若い肉体を目の当たりにした時に感じる寂寥感がそこはかとなく漂っていた。
    その妖しげな家にいる女主人が最後に放つ一言が、凄まじく悲しい真理だった。

    他に二編収録されている中の一編「片腕」は一人の男がある女性から片腕を借りて家に持ち帰る物語なのだけど、表題作同様、現実離れしていて不思議な物語だった。
    三作目の「散りぬるを」はひとつの殺人事件を小説家が語るつくりで、これだけは雰囲気が全然違った。

    解説を三島由紀夫が書いていて豪華。とても絶賛している。
    発想力も文章力も凄い。昔の文豪が残した傑作はやはり面白い、と思わされた一冊。

  • 「雪国」に続いて「眠れる美女」にチャレンジ(笑)

    日本文学作品には苦手意識があって、学校の授業以外ではほとんど読んでいない私が、イイ大人になったのでチャレンジして、今年の始めに読破できたのが「雪国」だ。
    調子に乗って他の作家のものも色々手にとってみたが、どうにも途中で挫折してしまい中途半端になっていたので、川端康成氏に戻って別の本を読んでみようと手に取ったのがコレ。正解だった。

    たぶん私は川端康成氏の文中の表現や世界観が好きなのだと思う。人のこころの危うさのようなものが。

    本書は「眠れる美女」「片腕」「散りぬるを」の3編から成る短編集である。

    「眠れる美女」のあらすじは、
    波の音高い海辺の宿は、すでに男ではなくなった老人たちのための逸楽の館であった。真紅のビロードのカーテンをめぐらせた一室に、前後不覚に眠らされた裸形の若い女-その傍らで一夜を過す老人の眠は、みずみずしい娘の肉体を透して、訪れつつある死の相を凝視している-。(作品紹介より)

    読みながら頭に浮かんだのは「耽美なエロティシズム」という言葉。

    若く美しい女たちの肌を表現するというひとつとってもその言葉選びが美しい。また、枯れ行く老人の心情が切実に伝わってくる。
    まさに、生と死が布団に並んで横になっている姿を見るようだ。

    「片腕」は、ホラーかよって思って読み始めたが、フェチだなこれは。究極の腕フェチ。私にはない感覚なので、いまいち共感はできないが、やはり美しかった。ラストはやっぱりホラーだったけど(笑)

    「散りぬるを」は、うーん。これは作者の目線そのもので書かれているのだろうか?という感じ。やはり危ういのだが現実っぽすぎて、美しさが足りない気がした。

    他の作品もまた、読んでみたい。

  • 娘たちの肌や匂いに関する描写の厚さに圧倒された。凄い執着。美しく生々しい文章に触れた。

  • 死と生が肌ふれ合い、添い寝する。


    深紅のびろうどのカーテン、その向こうで深く眠らされている美女。
    すでに「男ではなくなった」老人たちは、
    その若い女に寄り添い、一夜を過ごす――。

    官能的な肉体の描写の一方で、気になるのは
    物語の中盤から散見する「死」についての記述です。

    若い美女と老人が寄り添い、眠りに落ちるという物語は、
    美女が生の象徴であり
    老人が死の象徴、
    そう考えがちです。
    しかし、物語の最後の最後で
    それらは逆転して描かれます。

    死とは、
    生のすぐ隣に、
    それこそ肌をすり合わせて
    横たわっているものだと
    思わずにはいられません。

    そして、その死のなんと軽いこと。
    「ただ、死んでしまう」という事実が
    痛いほど突きつけられる終わり方。

    寂しさや口惜しさではなく、悔恨でもなく。
    ひっそりとある個人的な孤独が、
    貫かれて描かれる小説だと思いました。

  • 男性としての機能を失った老人達が薬で眠らされている娘と共に一夜を過ごす宿に、まだ男性としての機能は失っていない江口老人が訪れる。

    老人は6人の少女と共に眠るが、それぞれの少女の特徴がうまく書き分けられていると感じた。
    美しい少女、娼婦的な少女、まだあどけない少女など…
    老人は決して少女に手を出してはいけないという制約があるが、その制約があるからこそかえって官能的で、神秘的であった。

    また、老人が共に一夜を過ごした少女で、一人だけわきががあり、肌が油っぽいと多少醜く?描かれていた少女が死に、その少女をどう始末したのかも気になった。

    …ある意味、死体のような少女を愛する、少し歪んだ性愛を書いているように感じた。

  • 「眠れる美女」は助平爺の話だったのか?!(笑)でも川端康成が書くと美しいねえ。「江口」「江口老人」と書き分けているのが面白い。「江口」は「エロ」とも読める、みたいな。

    「片腕」の少女の右腕は、男性の身体に取り付けられる前は処女、取り付けられた後は身を任せた、と私には読めたけど、時間をあけて読んだら、また違う読み方が出来そうだ。

  • 官能小説のような直接的な描写はありませんが、男を失った老人と裸の少女を主題としたエロティシズム溢れる小説。
    日本文学にも、こんなジャンルがあるんだなと感心させられる一冊です。

    自分の老後にこういうシチュエーションがあったらどうするかな~って考えますね。

  • 川端康成初読み。普通の人は『雪国』や『伊豆の踊り子』などが思い浮かぶけれど、なぜかこのファンタジックなタイトルと裏の解説に惹かれて手にとった。話自体も確かにファンタジックで、浮世離れしている。眠れる美女がいる館に通う江口老人が、徐々にその美女たちの魅力に引き込まれていく過程を描いていく。毎回変わっていく美女たちの表現が繊細で、匂いに重点を置いているのが面白かった。確かに、人間は匂いによって呼び起こされる記憶などが多いし、印象に残る。そして目の前にいる少女たちを抱くことができない江口老人の行く末が気になりながらラストまで読んでいくと、館の女の最後のセリフにとどめを刺される。言葉自体は柔らかいのに、その裏に隠された意味を想像すると、奥の深さに鳥肌が立つ。

  • 川端康成が1961年に発表した中編小説。他に"片腕(1965年)"、"散りぬるを(1933年)"を併録。"眠れる美女"は、ネクロフィリア的な雰囲気を色濃く漂わせる退廃的な作品です。全部で6人の少女が出てきますが、意識がないそれぞれの少女の書き分け方が凄いです。肌の質感や匂い、指や口など、やはり日本語の官能的な描写は奥が深い。"片腕"はホラーテイストの不思議な作品ですが、官能的な雰囲気を感じます。"散りぬるを"は1つの殺人事件を中心に犯罪者と被害者の保護者の心境を綴った作品です。

  • 眠れる美女。寒い冬に電気毛布。もわんとした女の子の匂いが立ち込める寝室。
    やっぱり女たるもの柔らかく白い肌であってなんぼ!夏だからいっかーと思って切れたまんまにしてたボディークリームを買いました。

    片腕。きっとこっちは今とおんなじ季節。春のあいだにかくれながらうるおって、夏に荒れる前のつぼみのつや。
    そんなに湿っぽい視線で見ないでほしい、と思いつつ、優しく愛でるような表現にうっとりした。
    「またこういう夜は、婦人は香水をじかに肌につけると匂いがしみこんで取れなくなります」ラジオの言葉も素敵。
    「いいわ。いいわ。」たまらん!うっとり。
    でも片腕をはずして、一晩お貸ししますわ、なんて作品を書いちゃうのはすごく怖い。そして自分につけちゃう。その姿を想像したら、さらに怖い。
    全体的にへんたいじーじ!

著者プロフィール

1899年生まれ。1920年東京帝国大学文学部英文学科に入学(のち、国文学科に転科)。1921年第六次『新思潮』を創刊。『伊豆の踊子』や『雪国』などの作品を残す。1961年文化勲章受章。1962年『眠れる美女』で毎日出版文化賞受賞。1968年10月、日本人初となるノーベル文学賞受賞が決定する。1972年没。

「2017年 『山の音』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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