古都 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 283
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001210

作品紹介・あらすじ

捨子ではあったが京の商家の一人娘として美しく成長した千重子は、祇園祭の夜、自分に瓜二つの村娘苗子に出逢い、胸が騒いだ。二人はふたごだった。互いにひかれあい、懐かしみあいながらも永すぎた環境の違いから一緒には暮すことができない…。古都の深い面影、移ろう四季の景物の中に由緒ある史蹟のかずかずを織り込み、流麗な筆致で描く美しい長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 四季の巡る京都の一年間を背景に、ヒロイン八重子を中心とした人間模様が交錯する。
    美しい言葉遣い、自然の光景や行事が川端康成の流麗な日本語で語られる。

    大店呉服屋の一人娘の八重子は、庭のもみじの幹の上下に根ざした二株のすみれに春の訪れを感じている。同じもみじの幹に咲きながらも互いを知らないのだろうか。それは自分と会えない誰かのように?
    八重子は捨て子だったが、今の両親の太吉郎としげから愛され大切にされている。

    京都の自然と伝統の中真っ直ぐに育つ八重子だったが、自分が恵まれれば恵まれるほど、自分を捨て子しなければいけなかった実の家族を思うとどこかしら寂しさのようなものも感じている。
    「今の親が可愛がってくれはるし、もうさがす気はあらしません。うみの親は、仇野あたりの無縁仏のうちにでもおいやすやろか。あの石はみな古うおすけど…」

    そんなある日自分とそっくりの村娘、苗子と行き会う。
    彼女こそ自分の生き別れた双子の相手だったのだ。それはまさに神様のお引き合わせのようだった。

    八重子は自分の生まれと、本当の父も母ももうこの世にはいないと言うことを知る。
    太吉郎としげの夫妻は「その子には、なにか、苦しいこと、困ったことが、できたんやったら、うちへ連れといで…。引き取るわ」という。

    だが苗子は八重子を「お嬢さん」と呼び、「お嬢さんの難儀のときには、喜んで、身代わりでも、なんでもさしてもらいます」「うちはお嬢さんの差し障りになるようなことはいやや」という。

    お互い一目見たときから懐かしさを感じるが、ともに暮らすことはできない…。
    そんな二人のそばにいる三人の若者たち。
    八重子と幼馴染の水木真一は、捨て子だという告白を「それなら家で育てたかった」というくらいに受け止める。
    兄の竜助は、苗子の側にいたいと、格下の八重子の店に見習いに入る。
    織物屋の長男秀男は、深く八重子を想うけれど、身分違いのために苗子との結婚を望む。

    八重子の家の呉服店は傾きかけている。両親は店を畳んでも良いと思っている。だが八重子は少しずつ店のことを知ろうとするのだった。

     祇園祭、清水寺、嵐山の奥の尼寺
     紅葉の青葉、北山の真っ直ぐな杉、神宮の紅しだれ桜、楠並木、
     更紗に西洋かあてん(平仮名表記が妙に艶っぽい)、伝統柄の織物、西洋絵画をモチーフにした織物、そしてそれらには下絵を描いた人、織った人、使う人の人柄が現れる。

    京都の四季、伝統を通して人々の想いが交錯してゆく…。

  • 静かで瑞々しくて、とても素敵な小説でした。
    生き別れて身分違いとなった双子の姉妹の偶然の出会いと束の間の交流、そして別れが、古都・京都の四季の移ろいや風物などと共に巧みに描写されています。
    姉妹の交流と並行して、年頃の2人を取り巻く男性たちとの関係の紆余曲折や、義両親の家業をなんとか盛り立てようと姉妹の片割れ「千恵子」が自立心を芽生えさせていく瞬間瞬間の描写もとても魅力的です。
    京都の風景や行事の描写がとても見事なのでこの本をガイドブック代わりに京都を巡りたいですね。

  • 京都ならではの数々のお祭りと寺社を背景に描かれる主人公の女性の機微。京都の四季を基調とした映像美と情感たっぷりの物語の進行で和の世界を堪能させてくれる。ゆるやかな抑揚の印象のある京都弁の会話や西陣帯を織る音、杉木の匂いもそうした雰囲気を大いに盛り上げてくれている。
    もみじの幹にひっそりと成育している2つのすみれのように本当は出会うことがなかった双子の姉妹だが、祇園祭の夜に引き寄せられるように邂逅した2人。京都弁の会話と情感ただよう場面描写が美しいがゆるい進行だった物語が、この祇園祭を境に一気に盛り上がっていく。まっすぐな杉木を好む主人公・千重子とその中で育った姉妹の苗子の心情の掛け合いがとても印象深い。そして、2人を取り巻く男性たちと千重子の両親の温かい眼差しもとても心地よい。早朝の雪の中に苗子が退場していく場面は、本作を締めくくるにふさわしいとても余韻が残る名場面です。
    あとがきによると、新聞紙上での連載ものだった本作だが、川端が睡眠薬でうつつな心持で描いた作品だったということで(笑)、激しさを内に持つ西陣織職人・秀男と苗子のその後や、千重子の父の復活した茶屋通いのその後など気になるシーンが描かれなかったのもそのためか。(笑)このあたりの余韻の残し方も川端ならではの凄いところ。
    本来、口絵にあったという東山魁夷の絵が本書に掲載されなかったのは残念だ。

  • 桜の季節にはじまり、やがて雪の季節を迎えるまでの、古都の1年を描く。実に繊細なまでに彫琢された自然と四季の移ろい。それを彩るのは、祇園会であり、時代祭であり、古都に繰りひろげられる様々な行事や、花々である。物語の舞台となった室町は、今も呉服問屋が残るところであり、祇園会の中心地でもある。千重子と苗子の運命的な遭遇を、宵山の夜の「御旅所」に置いたアイディアは秀逸だ。そこは、周縁の祭の賑わいのすぐそばにありながら、ほの暗いスポット空間である。主人公の二人の感情表現も、繊細をきわめ、最後は淡雪の中に消えてゆく。
    そして、エンディングがことのほかに素晴らしいのだが、しばらく(あるいは当分は)胸がせつなくなる。

  •  最後に川端康成を読んだのは10年以上前、『雪国』と『伊豆の踊子』の2冊だった。後者はともかく、前者は(当時の感想が手許にないが)何が言いたいのか良く分からず、まだ自分には早いかなと思ったのを覚えている。今一度読めば、きっと楽しむことができるだろうと、本作を読んで思った。

     本作は、京都に残る古い街で機織りを行う家で拾われた捨て子を中心に進む物語だ。きっと機織り業界(?)の縮小が進んでいる最中なのだろう、時代に置いていかれる感じがする。それは機織り業に限ったことではなく、彼女の父母であったり、純日本的な風景、四季を彩る植物、価値観(特に結婚)など、全体に雰囲気として広がっている。昔は良かった、と次の時代に悪口を吐くためでなく、単純に一つの美しさが失われることを悲しんでいるかのようだ。
     例えばチューリップ柄の織物もまた良い。でも、それとは異なる感じの美しさが京都には確かにあった。そういった確かにあった美しさを著者は書き残したかったのだろうか。
     社寺仏閣に暗いため、いわゆる京都旅行(お寺とか巡る鉄板のコース)は修学旅行でしか行ったことがなく、京都のことは分からないが、お寺は焼けずに(焼けても)残っているし、伝統文化・芸能も残っているだろう。
     でも、それが「残すべき伝統や遺産」になる前の時代とその空気は、存在として残すことはできない。だからこそ、小説という媒体を用いて、その空気感を閉じ込めたのが本作なのかなと思った。

  • ストーリーの流れはシンプルで分かりやすいという印象。ただ、個人的には後半になってからがあまり面白くなくて、読了までに少々時間がかかりました。
    『雪国』を読んだ時も思いましたがやはり川端作品の魅力は、使われる日本語の美しさにあると思います。
    『古都』でもその魅力を存分に味わうことが出来たなと。
    特に苗子が住む北山の描写、苗子と千重子の交流を描いた部分の表現が美しく印象的でした。

  • 四季折々の京都の街並み、人々の暮らしの描写がすばらしい。
    京都好きとしては、はやくまた旅に出かけてあの街を歩きたくなります。

    双子の少女ふたりが、まっすぐ、健やかに生きている様子に心が洗われた。それぞれ環境は全く違うのに、ともに優しさや強さを持っていて、それは双子ゆえなのでしょうか。
    ふたりとも、どうか幸せにと願わずにはいられません。

    この物語の後日談が映画化されるとのこと。登場人場たちの行く末を限定されたくないなと思いつつ、でもやはり観にいきたい。

  • 読書会の課題本。
    以前読んだ川端康成の「雪国」が、いまいちピンとこなかったが、こちらは描かれている京都風景にイメージを喚起され、また人物どうしの関係がシンプルで読みやすい。一方で、人物の心情はわかりやすくはっきりとは描かれていないので、本当はどう思っているのだろう?と想像を巡らせたり考えたりもしながら読んだ。
    特に印象に残った箇所は、千重子と苗子の杉への想いの比較。まっすぐすっきり伸びる杉に惹かれ、そのようにありたいと思う千重子。一方、そんな杉は人工的な在りようで、人の手の入らない原生林が良いという苗子。苗子は千重子より苦労して一人で生きてきた分、ずっと生命力が強いのかもしれない。一方、千重子は大切に京都の老舗の店で愛されて育ち、また生さぬ仲であることのひけめと感謝から、正しく生きなければと思い、守られた小さな世界で生きてきたことを表しているのかもしれない。ただ、壺中で生きる鈴虫に疑問を持っていることは、自分が狭いこの世界に生きていて良いのか、外に出たい気持ちなども表しているのか。
    慎一はもう少し活躍というか、千重子とからむと思ったのだが、あっさり竜介に場所を譲ってしまい拍子抜けだった。
    一番心情が描かれていたのは秀男だと思うが、秀男の本当の気持ちが掴み切れなかった。
    苗子が言うように、完全に秀男は苗子を千重子の身代わり、代用品としてのみ見ているのだろうか?もちろん最初はそうだったと思うが、苗子に惹かれている部分もあるように思うが。とはいえ、千重子への想いの代替、身分違いで千重子には近づけないけれど苗子になら気後れしないという思いも心の底にはあるのだろうから、理想の千重子を抱えた秀男であることを知ってしまっている以上、苗子が秀男に無理だと思うのは仕方ない。
    苗子は実際のところ、千重子への嫉妬や葛藤もあったのでは?出会えたことも過ごせたことも喜んで大切に思っているのは、もちろんだとは思うが。もう少し苗子の描写が欲しかった。

  • なんとも言いようのない「美しさ」を感じる作品。

  • 2019年3月10日、読み始め。
    川端康成はノーベル文学賞を受賞された作家である。
    受賞理由は、「日本人の心の精髄を、すぐれた感受性をもって表現、世界の人々に深い感銘を与えたため」とのこと。

    2019年3月16日、87頁まで読んで、返却。

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著者プロフィール

1899年生まれ。1920年東京帝国大学文学部英文学科に入学(のち、国文学科に転科)。1921年第六次『新思潮』を創刊。『伊豆の踊子』や『雪国』などの作品を残す。1961年文化勲章受章。1962年『眠れる美女』で毎日出版文化賞受賞。1968年10月、日本人初となるノーベル文学賞受賞が決定する。1972年没。

「2017年 『山の音』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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