古都 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 261
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001210

作品紹介・あらすじ

捨子ではあったが京の商家の一人娘として美しく成長した千重子は、祇園祭の夜、自分に瓜二つの村娘苗子に出逢い、胸が騒いだ。二人はふたごだった。互いにひかれあい、懐かしみあいながらも永すぎた環境の違いから一緒には暮すことができない…。古都の深い面影、移ろう四季の景物の中に由緒ある史蹟のかずかずを織り込み、流麗な筆致で描く美しい長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 静かで瑞々しくて、とても素敵な小説でした。
    生き別れて身分違いとなった双子の姉妹の偶然の出会いと束の間の交流、そして別れが、古都・京都の四季の移ろいや風物などと共に巧みに描写されています。
    姉妹の交流と並行して、年頃の2人を取り巻く男性たちとの関係の紆余曲折や、義両親の家業をなんとか盛り立てようと姉妹の片割れ「千恵子」が自立心を芽生えさせていく瞬間瞬間の描写もとても魅力的です。
    京都の風景や行事の描写がとても見事なのでこの本をガイドブック代わりに京都を巡りたいですね。

  • 京都ならではの数々のお祭りと寺社を背景に描かれる主人公の女性の機微。京都の四季を基調とした映像美と情感たっぷりの物語の進行で和の世界を堪能させてくれる。ゆるやかな抑揚の印象のある京都弁の会話や西陣帯を織る音、杉木の匂いもそうした雰囲気を大いに盛り上げてくれている。
    もみじの幹にひっそりと成育している2つのすみれのように本当は出会うことがなかった双子の姉妹だが、祇園祭の夜に引き寄せられるように邂逅した2人。京都弁の会話と情感ただよう場面描写が美しいがゆるい進行だった物語が、この祇園祭を境に一気に盛り上がっていく。まっすぐな杉木を好む主人公・千重子とその中で育った姉妹の苗子の心情の掛け合いがとても印象深い。そして、2人を取り巻く男性たちと千重子の両親の温かい眼差しもとても心地よい。早朝の雪の中に苗子が退場していく場面は、本作を締めくくるにふさわしいとても余韻が残る名場面です。
    あとがきによると、新聞紙上での連載ものだった本作だが、川端が睡眠薬でうつつな心持で描いた作品だったということで(笑)、激しさを内に持つ西陣織職人・秀男と苗子のその後や、千重子の父の復活した茶屋通いのその後など気になるシーンが描かれなかったのもそのためか。(笑)このあたりの余韻の残し方も川端ならではの凄いところ。
    本来、口絵にあったという東山魁夷の絵が本書に掲載されなかったのは残念だ。

  • 桜の季節にはじまり、やがて雪の季節を迎えるまでの、古都の1年を描く。実に繊細なまでに彫琢された自然と四季の移ろい。それを彩るのは、祇園会であり、時代祭であり、古都に繰りひろげられる様々な行事や、花々である。物語の舞台となった室町は、今も呉服問屋が残るところであり、祇園会の中心地でもある。千重子と苗子の運命的な遭遇を、宵山の夜の「御旅所」に置いたアイディアは秀逸だ。そこは、周縁の祭の賑わいのすぐそばにありながら、ほの暗いスポット空間である。主人公の二人の感情表現も、繊細をきわめ、最後は淡雪の中に消えてゆく。
    そして、エンディングがことのほかに素晴らしいのだが、しばらく(あるいは当分は)胸がせつなくなる。

  • すっと鼻に抜けるミントシャーベットのような爽やかさを味わえた作品。古都京都の洗練された奥ゆかしさが文中のそこかしこから感じられること、そして八重子と苗子のつながりが端的に清廉であることが爽やかだと思う理由。

    あと、誰もが誰もの幸せを願いつつも懸命に世を生きていてどこにも嫌な人が見つからないのも一端にある(ただし番頭を除く)

    145項
    太吉郎「なんの。それがお父さんの楽しみや。なぐさめや。今では、生きがいや。」

    178項
    しげ「よう、言うとくれやしたな。千重子とよう似てるか?」

    終盤に際立つ姉妹愛に負けず劣らず、序盤中盤の親子愛もほろりと涙を誘われそうでとてもよかった。


    そしてなにより巻末の解説が素晴らしくて
    「姉妹の交わり難い運命を描くのに京都の風土が必要なのではなく、京都の風土の引き立て役としてこの二人の姉妹はあるのではないか」
    この着眼点はすごい。なるほどなぁと感心した。

    川端康成3作目にして、やっと美味しいと思えました。

  • 京都の一年が美しく感じられて素敵でした。はんなりした京言葉も良いです。
    千重子と苗子の、お互いを大切に思っているのもとても良いです。
    川端康成が眠り薬で夢うつつの状態で書いたとありましたが、ぼんやりと幻想的で、好きな世界です。
    最近、映画になったらしいですが、続編なのですね…。

  • 川端康成、後期の名作。
    芸術性が高く難解な川端文学だが、この小説はかなり読みやすかった。
    千重子と苗子。生き別れの双子姉妹の運命的な出逢いから切ない別れまでを美しい京都の四季が彩る。
    風光明媚な名所の数々、伝統と情緒を感じる年中行事、柔らかな「京言葉」と人々の暮らしぶり。
    どの場面も風情があり引き込まれるような描写。
    失われつつある「古都」そのものが物語の本当の主役なのかもしれない。

  • 四季折々の京都の街並み、人々の暮らしの描写がすばらしい。
    京都好きとしては、はやくまた旅に出かけてあの街を歩きたくなります。

    双子の少女ふたりが、まっすぐ、健やかに生きている様子に心が洗われた。それぞれ環境は全く違うのに、ともに優しさや強さを持っていて、それは双子ゆえなのでしょうか。
    ふたりとも、どうか幸せにと願わずにはいられません。

    この物語の後日談が映画化されるとのこと。登場人場たちの行く末を限定されたくないなと思いつつ、でもやはり観にいきたい。

  • あとがきにもあるように、登場人物の京都方言は実際の京都人によって校正されているらしいので、全て京都方言で進んでいく会話は読んでいて気持ちが良い。
    結末もぼかされているので想像が膨らむ。
    秀夫が苗子を誘ったのは、決して千重子の代わりと思ったのではないと信じたい、が、特に彼が苦悩している描写もないのでなんとも言えない。

  •  赤ちゃんの時に生き別れになった姉妹が、再会後に深く愛し合いながらも決して一緒にはなれないという主題。苗子の千重子の幸福を思う気持ちが、悲しくも美しい。雷雨の杉林で、苗子が千重子をかばうシーンには、思わず感動。それから最後のシーンの、雪が降る中で、苗子が千重子の家を去るシーン。感動です。

  • 京都を舞台に生き別れた双子の姉妹が祇園祭で偶然再会するストーリー。

    あとがきに記してあるが著者は睡眠薬を服用しながら書いたようで、小説を書いたことも内容もよく覚えてないという。’うつつのさまで書いた。眠り薬が書かせたかもしれない・・、’と書いている。


    そのせいか、やたら句読点が多い読み難い文章。
    そもそも辻褄が合わない箇所もある。
    双子が出会うシーンは事前の暗示か伏線もなく唐突で不可解。20年以上も捨て子の事実を否定していた千重子の養父母は娘が双子の苗子に会ったことを伝えるとあっさり認めて家に呼べといったり、どこで知ったのか分からないが苗子が千重子の家に訪ねてきたり、と、読んでいる側が戸惑うシーンが多い。


    おそらく著者も想定外かもしれないが、こうした訳の分からないストーリー展開は、古都の季節の移ろいや行事や景観の描写と相俟って、結果、幻想的な話として仕上がっている。(と、好意的に解釈しておく)

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著者プロフィール

1899年生まれ。1920年東京帝国大学文学部英文学科に入学(のち、国文学科に転科)。1921年第六次『新思潮』を創刊。『伊豆の踊子』や『雪国』などの作品を残す。1961年文化勲章受章。1962年『眠れる美女』で毎日出版文化賞受賞。1968年10月、日本人初となるノーベル文学賞受賞が決定する。1972年没。

「2017年 『山の音』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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