螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001333

感想・レビュー・書評

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  • 納屋を焼く、映画化に際して久々に読んだが、また読み味が変わっていてぞわっとした。主人公が既婚者であることを、私はほとんど意識したことがなかったが、今回に至っては彼が既婚者であることがとても重要なファクターな気がした。既婚者でありながら、ガールフレンドと出会った主人公。彼女といるとなんだか落ち着くんだ的なことを言っているのだけれど、その実それはきちんとしたコミットメントではない。そのことは、彼女が失踪後に、彼から痛烈に責められる。「彼女と連絡が取れない」と言う彼に対して「どこかにふらっと出かけてるんじゃない?なんかあの子そういうとこあるじゃん」というようなまるで他人事の答え方をする主人公。それに対して「12月に?一文なしで?友達もいないのに?彼女はあなたのことは信頼してたのに」と。
    私は彼のことが気味が悪いとずっと思っていたので、あまりこのシーンに着目していなかったのだけれど、これは彼女に対するコミットのなさが痛烈に批判されているシーンなのだと気づいた。そして、いてもいなくても変わらないし気づかない=納屋であるという等式はぞっとするものがある。村上春樹はこの短編のことを冷たい話だと自分で言っていたが、確かにある種、冷たい話だなあと思う。

  • イ・チャンドンの『バーニング劇場版』観に行く前に予習として久しぶりに再読。

  • 映画『バーニング』の予習のために読んだ。
    「納屋を焼く」は、ある男に納屋を焼くと予告される話で
    イメージ喚起タイプのキレのある短編。これがどう翻案されていくのか楽しみ。

  • 2018年11月26日読了。
    2018年90冊目。

  • 「納屋を焼く」
    は、どうしても好きですねえ。とても怖い。とても怖いです。そして意味わからん。でも、好き。意味わからんのに好き、というのは、とても不思議ですね。そんな不思議なものを提示してくれる村上さんが、やっぱ好きですね。

    主人公が、ビール飲んでマリファナ吸って、ふわあ~っとええ気分になってて、昔自分が学芸会で演技した「手袋を買いに」?の時の色んな演技やらなんやらをフワーっと思い出してた時に、すっごい唐突に相手から挟まれる
    「時々納屋を焼くんです」
    の一言の挿入のタイミング。あの改行の感じ。めっちゃんこ映像的、ですねえ。とんでもねえな、って思いますね。小説で、そう来るか、って感じ。あのタイミングでああくるか、あの一言が、みたいなかんじ。パネえな、って思いますね。あの時のページ構成とか、雰囲気とか、すっげえ好きですね。

    「蛍」
    は、村上さんの超絶代表作の「ノルウェイの森」の、原型となった短編?なのかしら?なんだか好きですね。短編のテーマを基に、長編作品を作る、というのが、村上さんの手法なのかしら?面白いですねえ。

    「踊る小人」
    むう。よお分からん。という感じですね。象工場、という発想はどこから来るのか?何故に象を量産するのか?なんじゃそら。象の耳を作るのは、他の部位を作るのに比べると、圧倒的にチョロい。とか、そんな発想どっから生まれるの?とか思うと、驚異ですね。凄いですね。でもこの話は、よお意味わからんな。という感じですね。

    「めくらやなぎと眠る女」
    この話も、何が言いたいの?ってのは、全然わかりません。で、短編集「レキシントンの幽霊」に収録されている、短くなってるバージョンの「めくらやなぎと、眠る女」より、個人的にはですが、こっちの長いバージョンの方が好きかなあ?とか思いましたね。いや、どっちも、あんまよお分からんし、どっちでもいいや、って気もするのですが、なんだか文章長い方が、ある意味無駄が多い、ってことなんでしょうが、その無駄な部分も好きよ、みたいな感じでした。

  • 納屋を焼くと、めくらやなぎと眠る女が特に気に入った。
    個人的には、村上春樹の切なく心が少し温かくなるような叙情的な作品が好きだなあ。
    これからもっと短編にも手を出していきたい。

  • 再読日 19960105

  • 初期の短編集である。「蛍」は「ノルウェイの森」につながる。何年前に読んだのだろう。とてもなつかしい。いろいろと記憶が交錯している。寮で同室の地理専攻の彼は、最終的に自死を選ぶのではなかったか。著者自身が1年ほど住んでいたという寮は、僕が住んでいた学生寮とはずいぶん違って、ちょっと高級感が漂っている。その住民の資質もずいぶん違っていたのかもしれない。「めくらやなぎと眠る女」に登場する友人はどうして亡くなったのか。バイクの事故による突然の死ではなかったか。そういう件があったような気がしたのだけれど、そんな記述はここにはなかった。「納屋を焼く」という話は、本当に納屋を焼く話だった。タイトルだけが頭にこびりついていて、中身の記憶がなかった。本書ではこの作品の中に1回だけ「やれやれ」が登場する。やれやれ、村上春樹の著書を読み返していると、「やれやれ」ばかり気になってしようがない。30年以上前に購入した文庫本である。ページをめくると、上のほうが日焼けをして茶色く染まっている。それもまた、趣きがあってよいものだ。ところで、古い本を読み返していると、未成年の酒・たばこ、それから飲酒運転が気になって仕方ない。この30年でいったい何が起こったというのだ。陸続きであったはずなのに、どこかで寸断されている。後戻りはできない。

    「レキシントンの幽霊」に「めくらやなぎと、眠る女」があるのを後で気付いた。けれど、友人の死については軽くしか触れられていない。勝手な妄想だったのか。

  • 目の前に浮かんで来るような秀逸な情景描写の短編だらけでした。めくらやなぎと眠る女、が特に素敵でした。

  • 2018/09/05

  • ノルウェイの森の原型となった「螢」が収録されている。ノルウェイの森と比較しながら読むと面白いと思う。

    「めくらやなぎと眠る女」には、入院している直子の元を僕とキズキが看病に訪れた時の回想がある。話自体はとても深く、不気味なものだった。

  • ひさしぶりに、村上春樹さんの小説を読みました。文章も発想も、攻めてるな、という印象が強かった。まだデビューから数年しかたっていないころの短編集です。「螢」は『ノルウェイの森』の原型にもなっている短編で、読んでみると、なんとなく懐かしさを感じました。そしておもしろかったし、その攻めた具合についてばかりが気になって読んでしまいましたが、それも小説を書くための勉強というか、「こういう方法論もあるんだね」ということを知るというか、もうこういった作品はあるから同じものはつくらないようにするだとか、つまりは、自分の創作を、より自由にするための読書体験になったかなあ、と思います。どれもよくできているし、その、意識と無意識の狭間でしかとらえられないような、意識の上ですれすれだといった体でとらえられるような、そんな感覚的なものを描写する著者の力はさすがだなと再度、感じ入りました。

  • 村上春樹は性的な描写が多いが、海外の詩のような文体、世界観の中ではそれがいやらしくなくなるように感じる。固有名詞が頻出する流れるような文体と詩のような世界観は読む人によっては難解かもしれない。私は偶に読みたいと思った。

  • 躍る小人、象工場や革命の事が気になり過ぎて小人の事が頭からそっちのけになる

  • ノルウェイの森の元となっている「螢」や、長編版の「めくらやなぎと眠る女」が収録された一冊。
    ときどき納屋を焼くっていったいどういうことなんだろう。何の比喩なんだろう。
    あってもなくてもどちらでも構わない納屋を焼く男とどこかへ消えてしまう女の話、「納屋を焼く」もおもしろかった。

  • 「螢」はどこかで読んだ気がすると思ったら、ノルウェイの森の一部だった。
    一部と思ってたら、こっちの方が先だったのね。
    改めて読むと、螢と彼女がリンクしていて切なく感じた。
    文京区の学生寮って、モデルがあるのか、どこにあるのか気になる…!

    「納屋を焼く」は、私の好きな村上春樹ワールドって感じで楽しめた。
    「踊る小人」は、象を作る工場という設定が面白い。

    「めくらやなぎと眠る女」、どっかで読んだ気がするけど気のせいか…?
    17の主人公たちがノルウェイの森の三人組っぽく感じたけど、どうなんだろう。

  • He burned buns

  • 39/334

  • いつも村上春樹さんはミステリアスだなあ、と思うんだけど、久しぶりに再読して、やっぱりなあ、という感がありました。長編の前触れみたいな作品も載っていて、長編を思い出して比べてみると、長編の方が希望がある気がしました。

  • 短編集です。村上春樹さんらしいと言えば、村上春樹さんらしいです。長編と違い、いろいろ考え、想像を巡らしているうちに読み終わってしまいました。

  • 新潮文庫の100冊2021プレミアムカバーで6年ぶりの再読、この日をずっと待っていたような気がする。一度読んだきりなんだけど、なぜかずっと好きな短編集として心に鎮座し続ける不思議な一冊。星5つだとばかり思っていたけど星3つにしてるのなんで?
    確か6年前は納屋を焼くを読むのがすごく楽しみだったんだよな。でも期待していたほどの示唆がなかったことを覚えてる。蜜柑を剥くパントマイムが素敵な女の子と、納屋を焼き続ける彼女のボーイフレンド。特定した五つの納屋は今も残り続けているのに、焼かれてしまったのはどの納屋なんだろう?
    踊る小人もすっかり忘れていた。こんなにグロテスクな話だったか。
    めくらやなぎと眠る女。村上春樹のいちばん好きな短編は、と思うとまず真っ先に心に浮かんでくる。鼻先で薫っているかのような5月の風の描写が大好き。めくらやなぎの花粉をつけた蠅が耳にもぐりこんで女は眠らされる。僕と14歳のいとこ。5月の風。二百八十円の運賃。28番のバス。
    三つのドイツ幻想は、改めて読み返した今でも「セックスは冬の博物館」というワードが好き。我々はみんなそこに孤児のようにうずくまって、温もりを求めているのだ。ソースパンはキッチンに、クッキーの缶は引出しに。
    (2021.10.9)


    蛍はノルウェイの森の中でも特に大好きなシーン。
    納屋を焼くはなんだか不思議な話で、つまりどういうことなんだろう?と考えてしまう余韻が残りました。ラストにかけての空虚な雰囲気がすごく良かった。
    踊る小人は童話チックなお話。
    めくらやなぎと眠る女はもうタイトルから好きですね。僕といとことの会話のやり取りが心地好い。やっぱり五月の話多い気がします。果実のふくらみをもっていたり、やすりのようなものをかけていったり、風に対する描写がいくつもあってどれも素敵でした。
    僕が昔のことを回想するシーンもよかった。
    三つのドイツ幻想、セックスは冬の博物館というのは言い得て妙。わからないけど、でもわかる気もする。

  • 螢が好きやな。2015/10/16

    めくらやなぎと眠る女
    ヘルWの空中庭園
    が良かった。2021/06/19

  • 一回目が大学2年か3年の時。
    そして今回2回目。
    村上春樹好きの方に「村上春樹の中で一番好きな作品はなんですか」と聞いたら少したって「納屋を焼く」と。
    これは再読するしかないと思いました。
    今度聞く機会があったらなんで一番好きなのか聞きたい。

    読んだ感想。
    さらっとすごいことが普通のことのように書いてある。麻薬、飲酒運転、不倫、放火…
    なんだろう。この世界は。納屋を焼く彼を真っ向から否定しないで受け入れる?受け流す?っていう主人公の姿とこの世界の描き方が重なった。

    不思議な後味。納屋を焼いたと彼は言うが、主人公は焼かれた納屋を発見できない。そして彼女はどうなったのか。「消えた」という言葉の真意は?
    そもそもなんで納屋なのか?
    疑問は尽きない。

    「同時存在」という言葉が興味深い。ちゃんと意味を知りたい。

    焼くという行為について。三島の「金閣寺」と少し重なる面があるかも・・・?

  • 私にとっては真ん中くらいの本です。大好きではありませんが、大嫌いでもありません。
    「螢」は「ノルウェイの森」のイントロダクションというか、著者の表現ではスケッチのような作品です。
    「踊る小人」はなんだか可愛らしいので比較的おもしろがって読めます。

    <収録>
    ・螢
    ・納屋を焼く
    ・踊る小人
    ・めくらやなぎと眠る女
    ・三つのドイツ幻想
     1 冬の博物館としてのポルノグラフィー
     2 ヘルマン・ゲーリング要塞 1983
     3 ヘルWの空中庭園

  •  村上春樹さんのだいぶ古い文庫です。本の周りが茶色くなってました。昭和62年発行と書いています。今の村上さんとはちょっと違う脈絡のなさがあって少し読みづらかったです。その他の短編の中の「冬の博物館としてのポルノグラフィー」は何度読んでみてもやっぱりわかりません。
     読み終えた後味が、ん~村上春樹という印象ですね。

  • しかし彼女の話は長くつづかなかった。ふと気がついた時、彼女の話は既に終わっていた。言葉の切れ端が、もぎとられたような格好で空中に浮かんでいた。正確に言えば彼女の話は終わったわけではなかった。どこかで突然消えてしまったのたわ。彼女はなんとか話しつづけようとしたが、そこにはもう何もなかった。何か損なわれてしまったのだ。

  • 納屋焼けよ

  • 螢 ★4.5
    納屋を焼く ★4
    踊る小人 ★4
    めくらやなぎと眠る女 ★4.5
    三つのドイツ幻想 ★3

  • 「ノルウェイの森」のプロトタイプの「蛍」などの短編集。非現実的な「踊る小人」が好き

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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