螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.47
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本棚登録 : 5148
レビュー : 416
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001333

作品紹介・あらすじ

秋が終り冷たい風が吹くようになると、彼女は時々僕の腕に体を寄せた。ダッフル・コートの厚い布地をとおして、僕は彼女の息づかいを感じとることができた。でも、それだけだった。彼女の求めているのは僕の腕ではなく、誰かの腕だった。僕の温もりではなく、誰かの温もりだった…。もう戻っては来ないあの時の、まなざし、語らい、想い、そして痛み。リリックな七つの短編。

感想・レビュー・書評

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  • 1980年代の初め、村上春樹はロングインタビューで「ピュアな恋愛小説を書きたい」と語っていた。その元となったのが表題作にある「蛍」で、これを敷衍して「ノルウェイの森」が生まれた。ページ数にして40頁程の短篇が空前の大ベストセラーとなるとは本人も予想をしていなかっただろうし、それを機に時の人となり、ストレスフル状態になり日本を脱出する羽目になるとは、まったくもって計算外だっただろう。

    本書に収録されている短篇は5篇。
    ⑴蛍
    学生寮に住む大学生の主人公が、偶然車中で高校時代の友人の元彼女に出会い、時々会うようになる。当初のギクシャクした関係も、次第に互いの体温を感じる距離に狭まり恋愛へと発展。でも、ある過去の出来事がふたりの間に影を落とす…。

    ⑵納屋を焼く
    歳の離れた奔放な彼女が長い海外旅行から日本人の彼を連れて帰国。ある日、主人公宅へふたりが訪ねてくる。彼はマリファナを吸いながら「定期的に納屋に放火し、その燃える様を眺めるのが好き」と告白。「近々この近所の納屋を焼きます」と言われ、気がそぞろな主人公は…。

    ⑶踊る小人
    一頭の象から五頭の象を作り出す工場で働く主人公の夢の中に、実に優美に踊る小人が登場し謎めいた一言を残す。その夢を端緒に、主人公の周辺でぐらりと様々なものが動き、揺らめきはじめる…。

    ⑷めくらやなぎと眠る女
    仕事を辞め地元に戻った主人公は、耳の病を持つ、いとこの通院に付き添う。その病院で診察を待つ間、コーヒーを飲みながら物思いに耽り、あることを想起する…

    ⑸三つのドイツ幻想
    東西冷戦時代のベルリンという物理的閉鎖された都市空間を舞台にしたエッセイ風3つの掌編。第1章はエロチックな言葉が溢れ、以後彼の長編に多く見られるセックスシーンの原点なったのかなと思える…

    村上春樹の処女短篇集「中国行きスロウボート」以来、おそらく全ての短篇を読んでると思うが共通しているのは、ストンと落ちるオチというかサゲはない。起承転結、序破急というメリハリはなく、ストーリーのつなぎ目は淡く緩やかである。読んでいる途中から、短篇なのに長篇を読み通したような錯覚に陥るぐらい、実に豊かなイメージを持った作家であることを再認識した次第。

    「蛍」を初めて読んだ時は19歳。主人公とほぼ同じ年齢であったから、簡単に自身を投影でき、また文章から立ち昇るリリシズムにいたく感動した記憶がある。今回久々に読み、一瞬だけど19歳のあの頃に戻れ、鼻の奥がつんとしてしまいましたがな…。

  • 昔読んだはずの本だけど、すっかり内容を忘れているので読み返してみたくなった。村上春樹読むのって何年ぶりだろう。

  • 村上春樹の原酒みたい。

  • 2016.11 本棚整理のため再読。評価は3.5くらい。

    ノルウェイの森とのベースとなった「蛍」を含む短編集。表題2作が〇▲。めくらやなぎ~はレキシントンの幽霊に収録の後年修正版のものの方がシンプルで良い。

  • 村上春樹の短編を読むのは初。前知識なく読んだので、ノルウェイの森の元になったと螢にはあれ?と思ったけど、この短さで世界観は十分完成されてるなと思った。納屋を焼くは、どことなくフィッツジェラルドとカポーティを彷彿させる。踊る小人・めくらやなぎと眠る女・三つのドイツ幻想どれも村上春樹の世界がぎゅぎゅぎゅと濃縮されて詰まっていて素敵だったー。ちょっぴり怖いグリム童話的な雰囲気とか、ミヒャエルエンデ的なファンタジー感とか、羊をめぐる冒険や世界の終わりと~を彷彿とさせたり…とにかく気持ちいいファンタジーだった。

  • 村上春樹はむかしから村上春樹だったんだなあと思った

  • 「踊る小人」「納屋を焼く」が特に楽しめた。
    小人がからだに取り付いている間、喋ってはいけないのだが、小人の力で口説いている女は、早送りしたように腐り落ちていく。声を出しそうになり、乗っ取られるのではとハラハラした。そして、ウジだらけの顔に唇を突っ込み、キスをした時のすべてが戻るその瞬間。平穏な凪の風が吹く星空の下の2人を想像して、とてもホッとした。やはり、村上春樹は、鬼気迫る展開を書かせると素晴らしい。

    また納屋を焼いてまわる、『ダンスダンスダンス』の五反田くんみたいな人もいて良かった。

    『ノルウェイの森』は、好きどころか嫌いな部類の作品なのだが、「螢」は良かった。いまノルウェイの森を読んだら印象が違うかもな。
    まだ突撃隊の名で呼ばれていない同室人がでてくる。

  • 蛍もいいけど、納屋を焼くがとても惹かれます。
    納屋って物が、忘れてしまった自分の記憶のような気がして、いつも怖くなります。
    無くなっても困らない。でも確かに存在していた物。
    記憶力がいい方だと思っていたけど、知らず知らず忘れてる事も出てきて、私は忘れてるのに友達は憶えてる昔の出来事が話題になったりすると、「納屋を焼く」の事を思い出します。

    私の中では村上さんの短編の中で一番印象的な作品です。

  • 2013.01.26
    再読

  • 遠い日の記憶や、夢をたどっていくような柔らかな空気が、文章の中に漂っている。
    「蛍」を読んでいくうちに、これが「ノルウェイの森」の原型になっていることに気がついた。
    「なるべく深刻にものごとを考えまいとしている」
    その言葉にひどく励まされる。

    短編集を読むたびに、村上春樹の世界にどんどん引き込まれていく。

  • 中学生の頃「踊る小人」が好きで、宿題の読書感想文に書いた思い入れの深い作品だ。「踊る小人とは何を表現したものなのだろうか?」とか、今思えばなんだか小生意気な子どもだったなと思う。今でも時々読み返しては、違った印象を持つ話。

  • 「納屋を焼く」が一番斬新で衝撃的だったけど、この短篇集はすごい
    ヘタな長編の一億倍おもしろいしセンスがある

  • 久し振りに村上春樹を読む。
    時系列で作者の小説を読んでいるわけではないが、やはり彼の独特の文体に惹かれてしまう。最初こそ、妙に気取ったというか―そういう書き方が好きになれなかったのだけれど、でも、やはりこれがあるから村上春樹は村上春樹足りえるのだと思う。


    「螢」はラスト5ページだけを残して、一年前に読んでいたから、ようやく、ああこんな結末だったのかと納得。
    寮に住んでいた、ラジオ体操でいつも飛び跳ねる話だけしか記憶に無かったのだけれど。


    『死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。』


    この作品は、すべてはこの1行に収斂されている、と言っても過言ではないだろう。
    最後の螢が飛び去っていくシーンもある意味では、<生>のはじまりでもありガラス瓶の中のような安寧は無く、そばには<死>があることを象徴しているように感じた。


    あと面白かったのは、「踊る小人」。
    時代や状況の設定もよくわからないけれど、現代を舞台にしていない村上小説は珍しい。踊りを踊ってみたら、そこには蛆が涌いていて、それは全て、踊る小人のせいで―。
    毒のある童話のようで、とても読んでいて面白かった。

  • 村上春樹は初期の短編が好きかも知れない。全部面白かった。くどくなったりわけわからなくなったりし始めないうちにいい雰囲気のまま終わるのがいい。

  • 他の人のレビューによると、この短編集に収録されている「螢」は『ノルウェーの森』の原型になるらしい。
    短編の中では「螢」が一番良かったかな。「納屋を焼く」は謎が残り、「三つのドイツ幻想」はよく意味がわからなかったけど。

  • 2011 6/6読了。羽田空港の有隣堂で購入。
    情報知識学会で村上春樹の小説の計量分析についての発表を聞いていて唐突に村上春樹が読みたくなったのだけど、なんかいきなり長編に手を出すのはためらわれてこの短編集を購入。
    それでも、中高の教科書以外で読むのは初めてである。
    そして読後感はやっぱり教科書で読んだのと同じでよくわからなかった。
    よくわからないところ込みで嫌いじゃないので次は長編を読む。

  • 村上春樹の短編集では有名作品ではないでしょうか。

    本作の中では、個人的にはノルウェイの森に引き継がれており、
    好きなシーンがギュッと詰め込まれている『螢』が大好きです。
    ラストの幻想的なシーンは数ある作品の中でもお気に入りの1つです。

    時間がある時に読み返したくなる1冊です。

  • 村上春樹の短編集

    蛍:
     ノルウェイの森の元となった短編。僕はこちらの方がまとまっていて好き。ノルウェイの森は少し技巧的な感じがしたため。

    納屋を焼く:
     僕自身は「納屋を焼く」人のほうと思った。ちょうど自分の考えていた葛藤に近いテーマを意識していることをその表現の裏側に感じた。村上春樹という作家の奥深さに少し触れられ、そして謙虚であろうとする彼の姿勢を感じた。

    以上まだ読んでいる途中です。

  • 螢が良かった。
    村上春樹に出てくる女性には、不思議だけど芯がしっかりしてるイメージがあって、それがとても魅力に感じる。

    螢を読んでて、解るんだけど解らない、単純だけど複雑な彼女の思いが伝わってきた。

    こーゆう曖昧で自分でも何かよく解らない気持ちの中にいることってあるし、そうゆうのを描くのやっぱり巧いなって思った。

  • 確かに赤と緑のハードカバーは買って読んだはずなのに、ストーリーは覚えていないあの作品の雰囲気は思い出せた『蛍』、よかった。夏のはずなのに冬を引き摺ったまま終わるラストの方すごい。
    『納屋を焼く』もよかった。不穏さもドライさもちょうどいい塩梅。
    村上流ギャツビィなのかな、あの人。
    主人公が1㌔4分ちょっとで走るって早いやないかい!と物語と関係ないとこでイラついたけど。
    『めくらやなぎと眠る女』、一番好き。平日昼間、まだ学生のいとこの通院の付き添う主人公。特に事件は起こらないし、出来事ともいえないし、スケジュール的にこなす、で終わりそうな数時間を集めてそれを舞台にするなんて。でもぎゅうぎゅうに内容は詰まってる。
    いとこの耳を見る箇所、向田邦子『耳』思い出してひやひやした。
    村上春樹の魅力がちょっと分かったかも~(やせ我慢)な一冊でした。

  • 「踊る小人」と「めくらやなぎと眠る女」が面白かった。

  • 村上春樹は結構読んだと思うが、”納屋を焼く”は特に印象的。

  • 「納屋を焼く」が韓国の監督で映画になった。読みなおしてみると、あんまり関係あると思えなかった。しかし、ぼくは、「蛍」が好きなんだなあ。やっぱり。

  • むちゃおもしろい

  • お久しぶりの村上春樹。

    映画が気になり手に取りました。

    ほぅ…これを…長編映画に…?

    めっちゃ気になります。
    劇場で見逃してしまったのでレンタル始まったらすぐ観たい。

    長編の村上作品は個人的にはなかなか疲れてしまうのであまり…なのだけど、短編だと良い感じに読めます。

  • 再読。映画「バーニング」納屋を焼く

  • 納屋を焼く、映画化に際して久々に読んだが、また読み味が変わっていてぞわっとした。主人公が既婚者であることを、私はほとんど意識したことがなかったが、今回に至っては彼が既婚者であることがとても重要なファクターな気がした。既婚者でありながら、ガールフレンドと出会った主人公。彼女といるとなんだか落ち着くんだ的なことを言っているのだけれど、その実それはきちんとしたコミットメントではない。そのことは、彼女が失踪後に、彼から痛烈に責められる。「彼女と連絡が取れない」と言う彼に対して「どこかにふらっと出かけてるんじゃない?なんかあの子そういうとこあるじゃん」というようなまるで他人事の答え方をする主人公。それに対して「12月に?一文なしで?友達もいないのに?彼女はあなたのことは信頼してたのに」と。
    私は彼のことが気味が悪いとずっと思っていたので、あまりこのシーンに着目していなかったのだけれど、これは彼女に対するコミットのなさが痛烈に批判されているシーンなのだと気づいた。そして、いてもいなくても変わらないし気づかない=納屋であるという等式はぞっとするものがある。村上春樹はこの短編のことを冷たい話だと自分で言っていたが、確かにある種、冷たい話だなあと思う。

  • イ・チャンドンの『バーニング劇場版』観に行く前に予習として久しぶりに再読。

  • 村上春樹の短編を初めて読んだ。なんとなく奇妙な空気感が漂い、中に引き込まれる。納屋を焼くはドラマの方がドラマチックになってた。小説の主人公の淡々とした中にどんな感情があるのかわかりづらいだけにもう一度読もうかなと思う。踊る小人は私の中では結構衝撃的。一番衝撃的なシーンで丁度電車を降りることになり い〜っとなった。ちょっと映像を想像してしまい後悔。

  • 映画『バーニング』の予習のために読んだ。
    「納屋を焼く」は、ある男に納屋を焼くと予告される話で
    イメージ喚起タイプのキレのある短編。これがどう翻案されていくのか楽しみ。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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