世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)

著者 :
  • 新潮社
3.84
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本棚登録 : 12162
感想 : 1100
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001340

作品紹介・あらすじ

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らすの物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれたが、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹4作目の長編。ジェンダーの偏りだけが少し残念(昭和感が‥‥)。

  • 交互に語られる二つの世界。
    冒険。
    村上春樹の作品の中で最も好きです。

  • 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)(下)」を読了。本作の構成は「世界の終わり」の章と「ハードボイルド・ワンダーランド」の章が交互になっていて上巻21章、下巻19章の合わせて40章。全40章の中でも29章(下巻)が一番面白く、ここがピークだったと思っている。

    ちなみにこの文庫本は新装版が出ているので、私が読んだ旧版とはページが一致していないことが考えられる。

    本作が村上春樹の傑作として呼び声が高いのと、村上春樹の他の作品を何点か読んだこととを考慮しても、やはり面白いと思った。読後すぐにはそれほどでもないかな、と思ったが、読後しばらくして、次の引用を読んでから何回も無意識にも考えてしまい、納得して常識にもなった。このことの指摘は、とんでもないことだと思うに至り現実的にこれは真実だと思うに至る。この表現は凄いし、内容も凄い。

    下巻p123
    〝「そうです。あんたは今、別の世界に移行する準備をしておるのです。だからあんたが今みておる世界もそれにあわせて少しずつ変化しておる。認識というものはそういうものです。認識ひとつで世界は変化するものなのです。世界はたしかにここにこうして実在しておる。しかし現象的なレベルで見れば、世界とは無限の可能性のひとつにすぎんです。細かく言えばあんたが足を右に出すか左に出すかで世界は変わってしまう。記憶が変化することによって世界が変わってしまっても不思議ない」‘’

    下記引用
    上巻
    p262「金の計算してちゃ戦争には勝てない」

    p326「人間は誰でも何かひとつくらいは一流になれる素質があるの。それをうまく引き出すことができないだけの話。引き出し方のわからない人間が寄ってたかってそれをつぶしてしまうから、多くの人々は一流になれないのよ。そしてそのまま擦り減ってしまうの。」

    p361「ええ、本当の天才というのは自分の世界で充足するものなのよ。」
     
    p372「信じていれば怖いことなんて何もないのよ。」

    p373「祖父は何も考えないのよ。彼はあたまをからっぽにすることができるの。天才というのはそういうものなの。
    頭をからっぽにしていれば、邪悪な空気はそこに入ってくることはできないのよ」

    p375「人は何かを達成しようとするときにはごく自然に三つのポイントを把握するものである。
    自分がこれまでにどれだけのことをなしとげたか?今自分がどのような位置に立っているか?
    これから先どれだけのことをすればいいか?ということだ。この三つのポイントが奪い去られてしまえば、あとには恐怖と自己不信と疲労感しか残らない。(略)問題はどこまで自己をコントロールできるかということなのだ。」

    下巻
    p92「人間のんびりするとロクのなことはせんもんです。

    p123「そうです。あんたは今、別の世界に移行する準備をしておるのです。だからあんたが今みておる世界もそれにあわせて少しずつ変化しておる。認識というものはそういうものです。認識ひとつで世界は変化するものなのです。世界はたしかにここにこうして実在しておる。しかし現象的なレベルで見れば、世界とは無限の可能性のひとつにすぎんです。細かく言えばあんたが足を右に出すか左に出すかで世界は変わってしまう。記憶が変化することによって世界が変わってしまっても不思議ない」

    裏表紙の言葉・上巻
    高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす<僕>の物語、【世界の終わり】。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた<私>が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する【ハードボイルド・ワンダーランド】。静寂な幻想世界と波乱万丈の冒険活劇び二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。

    裏表紙の言葉・下巻
    <私>の意識の核に思考回路を組み込んだ老博士と再会した<私>は、回路の秘密を聞いて愕然とする。私の知らない内に世界は始まり、知らない内に終わろうとしているのだ。残された時間はわずか。
    <私>のいく先は永遠の生か、それとも死か?そして又、〔世界の終わり〕の街から<僕>は脱出できるのか?同時進行する二つの物語を結ぶ、意外な結末。村上春樹のメッセージが、君に届くか!?

  • [世界の終わり]と[ハードボイルド]に分かれている構成。
    [世界の終わり]は心がない街にやってきた僕の物語で、音のない閉鎖的な話。そこで色々なことに疑問を持ち、調べていくストーリー。
    [ハードボイルド]はSFチックで、脳をいじられた女大好き主人公が自分の意思とは関係なく何かに追われ、犯されていく。そのキーが[世界の終わり]。
    今後この2つは繋がっていくのだと思う。
    下巻も楽しみです。

  • 独特の空気感を持った2つのストーリー。謎は深まるばかりで、結末が全く予想できません。
    さっそく下巻を読み進めたいと思います。

  • 「読み終わるのがもったいない」という感想を聞いて、興味がわいて読んでみた。
    その言葉の意味がわかったような気がする。
    今まで読んだ村上春樹の作品で一番よかった。何がいいって、構成や世界観、セリフと、謎に満ちたストーリー展開、どれもすばらしい。

    この小説では、二つの世界が交互に展開されます。
    「私」が巻き込まれる形で現代の知られざる世界を冒険する「ハードボイルド・ワンダーランド」と、幻想的・牧羊的な世界観が魅力の「世界の終わり」。
    二つの世界観が交互に展開することで、とても心地の良いストーリーの緩急が生み出されています。
    「海辺のカフカ」でも二人のストーリーが交差していましたが、カフカの繋がりは同じ世界線で二つのエピソードが同時進行的に展開していました。
    この小説では、一見つながりそうもない別の世界が、細い糸で繋がりそうな予感を与えてくれます。
    まったくオチはないかもしれない、そんな予感もあるのですが、想像力を書き立てるような言葉の散りばめ方がとてもうまい。

    キーワードがちょっとずつ繋がっていく感覚であったり、春樹ワールド専門用語が、抽象的な説明台詞によってなんとなく理解されてきたり、美味しそうな料理の描写や、先の見えない展開、そういった一つ一つの要素に惹きつけられて、文章一つ一つをかみしめるように読んでしまいました。
    村上春樹の世界観に慣れていると「おなじみ」と感じるものも登場しますが、これまで読んだ作品にない独特の魅力があるし、二つの物語それぞれに文体にも違いが見られるのも大変おもしろい。

    また、セリフもとても印象的でした。
    「心」や「愛」に関する言葉にハッとさせられたこともあります。
    「愛というものがなければ、世界は存在しないのと同じよ。」というとある人物のセリフ。これが「世界の終わり」と何かつながるんだろうか?次巻にも期待大。

  • 職場の同期に感化され、村上春樹ブームが到来中。
    以前読んだ作品も、あまり内容を覚えていなかったので再読です。

    <ハードボイルド・ワンダーランド>と<世界の終わり>、交互に織りなす2つの物語。
    <ハードボイルド・ワンダーランド>が動ならば、<世界の終わり>は静。
    2つの世界はどこかで関連しているのであろうという予感と、物語の行きつく先を見たいという期待感で、先へ先へとページを繰る手が止まらないのです。

    リファレンス係の図書館員の女の子が登場するのですが、この方のコケティッシュな魅力にやられてしまいます。

  • 今までに読んだ本の中で、3番目に好きな本です。

  • 何度目かの再読で、おそらく村上春樹作品で最も好きな小説。作者が得意とする、二つの世界が並行して語られる手法での真骨頂。昔は「世界の終り」パートが退屈に感じられたものだけれど、歳を重ねることであの街の空気感を好きになれたような気がします。「ハードボイルド・ワンダーランド」の主人公は春樹作品の中でも特に人間らしくて良い。クールなんだけれど心中で弱音もたくさん吐くし(実際にかなり可哀想……)、ユーモアセンスもあって所々噴き出しそうになってしまう。何より不完全ながらもこの世界を愛しているのが伝わってくる。

  • おもろかった

    • 麦さん
      あとで感想きかせてね
      あとで感想きかせてね
      2022/02/23
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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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