世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001340

感想・レビュー・書評

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  • はじめは二つの世界でそれぞれの話が繰り広げられていたのでよくわからなかったけど、読んでいるうちに馴染みました。影を取られた世界の寂しい感じ…読んでいてこっちも寂しくなりました。

  • わたしの中で、今回この本を読むにあたってのテーマは原点回帰。村上春樹の世界にどっぷり浸かって、自分を取り戻し、自分が本当にしたい読書をする。それだけ。
    村上春樹の2層構造の物語の始まりはこの本からですが、なんていうか、本当に、劇的な書き方だとやはり感じる。書きたいものを表現するにはこの形が一番良かったのだとは思うけれど、並々ならぬ小説だなあ、と。二層構造の小説なんて、書こうと思えば誰でも書けるし、現にそんな小説ごろごろ転がっているじゃないか、と言われるかもしれないが、この脈絡のなさと物語が秘めるパワーというか躍動感のようなもの(この辺は小説を読む勘、みたいなものの働きかもしれないけれど)は中々どこにでもあるような陳腐なものではないように感じます。この時期になると文章としてもだいぶ安定して、のびのびとした印象を受ける。現在近くのような洗練、とまではいかないけれど、書きたいことを十二分に書いているのびやかさ、ユーモアのセンス、”村上春樹の物語”をシンプルに分かりやすく表現するとこの本だな、と思う。どこから、どんなところから、この発想が生まれるのか、と聞きたくなるくらいの脈絡のなさだけれど、すべては井戸の奥深くに潜った結果なのだとおもうと、なにかしらの意味を追い求めたくなるけれど、この人の本を読むということはそういうことではないのかもしれない。
    形式的なことはこのくらいにします。内容については下巻まで読んでから一気に振り返る。

  • 私個人の大変勝手な感想ではあるが、やはりこの作品が氏の最高傑作であると、初読から20年以上経過した今現在も信じて疑わない。

  • 春樹作品で2番目に好きな本。
    不思議な、どこか遠く遥かな、でもすぐそばのリアル。
    こうしてる今も別の世界が同時進行している?

  • 自我の核というものはなんだろう。
    それは形に出来るものなのだろうか。
    それとも混沌として混濁した捉えようもない
    意識の塊のようなものなんだろうか。


    村上春樹「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」
    もう数え切れないほど読んだこの一冊を今日読み終えました。
    今年に入ってから村上作品を読むのは
    「海辺のカフカ」「ノルウェイの森」「ダンスダンスダンス」に続き
    4作品目です。村上春樹の長編小説の中でもこの
    「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」はあたしの中で
    ずっと1位をキープしている小説。
    小説の中では「2つの物語」が交互に展開していきます。
    小説のタイトルどおりなのですが・・

    「世界の終わり」と「ハードボイルドワンダーランド」

    村上小説の特徴は物語が一人称で語られて行くところにあります。
    「世界の終わり」では「僕」
    「ハードボイルドワンダーランド」では「私」
    「世界の終わり」が「静」ならば「ハードボイルドワンダーランド」は「動」とも
    言える、この全く違う世界で主人公たちは物語を展開して行きます。
    下巻のはじめくらいまで読むと、この二つの物語の関連性が分かって
    来るんだけど、最初は一体なんだろうと謎を残したまま読むことになる。
    最初は話が交互に語られるため戸惑うのですが、
    流れに乗れると読み進むのは早いです。

    個人的に言えば、あたしは「世界の終わり」という物語が好きです。
    極寒の地で、慎ましく静かに暮らす人々。愛や憎しみや哀しみを
    自ら放棄して平穏な暮らしを選んだ人々と、その代償として死んで
    行く一角獣。そして永遠に続く時間、不死。
    不死とはどのようにしてもたらされるものなのか。
    本編ではそれについてこんな風に記述している。

    人間は時間を拡大して不死に至るのではなく、時間を分解して
    不死に至るのである、と。

    いつか、何かの本で読んだことがありますが、人の脳というものは
    実際に行動して体験した経験も、夢の中で見た場面や経験も、
    同じように処理をしていくと言う。だから、夢の中の出来事だって
    実際に自分の身に起こったことと考えても不思議ではない。
    私たちは現在生きているこの限られた時間が支配する場所に
    いる限り、永遠の生を得ることは出来ない。だけど
    意識の中では不死というものが存在する。
    肉体を持たないのだから、永遠に夢の中にいられるのならば
    人はそこで永遠という時間を生きることもできる。

    朝、あたしたちは目が覚めます。そこではじめて
    「ああ、夢だったんだ」と思う。現実と夢の世界。
    そこに違いを見出そうとしても、概ねあたしたちはうまく区別できません。
    目が覚めるから「夢」が存在する。でももし覚めなかったら・・・?
    「夢」はずっと「現実」のままなんです。

    この本はハードボイルド系要素も結構楽しめます。あたしは
    冒険物などは読まない方だけど、こういう設定は悪くない。
    機密情報を守ろうとする者とそれを奪おうとする組織。
    主人公の「私」ががその陰謀に巻き込まれていくわけだけど、
    そこには私たちが普段日常で感じている概念では
    ちょっと考えられないようなエピソードが出てきたりする。
    人が闇の中に見る得体の知れない恐ろしいものの形を
    一つの象徴的なものとしてうまく表現していると思う。
    Tカポーティ「夜の樹」のように”とらえどころのない闇”
    というものはあたしたちの周りにあるのではなく、恐らく
    自分自身の中にあるものが具象化したものなのだろうと思う。
    それがどんなに混沌として醜いものでも、ほんとうは
    目をそむけてはならないのだ。それは確かに自分自身の一部で
    あることは間違いないのだから。

  • 幸せの集結地点は「限定」の中にあるのか、あるいは「自由」の中にあるのか。「限定」と「自由」中間地点・・・「リアリティー」と「ファンタジー」の間とも言い換えられるだろうか。で選択を迫られる主人公。

    村上春樹氏に「君の幸せはどっちにある??」と問われているような小説!!

  • 夢中で読んでしまった。初めて本で徹夜してしまった思い入れ深い作品。

    内容も非常に面白く、メッセージもストレートに伝わってきた。
    村上春樹曰く、いい小説とは、読んだ人の心を深く広くさせてくれるとのことだが、この小説は正に「いい小説」であった。しばらくこの小説の雰囲気に圧倒され、五感が支配されるほど。
    そう。この小説で一番好きだったのが、言葉で伝わる世界観だった。
    なんていうか、早朝みたいなイメージ。ちょっと小雨が降っていても良い。凄い静かで、透明感がある。だけど何か起こりそうな不安と期待を与える静けさ。現実なんだけど、どこからか別の世界に繋がってそうな雰囲気。
    あんな風に文書から、その世界感を感じ、溢れ出るほど妄想したのは初めてだった。

  • 静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行。

  • ハードボイルドワンダーランド
     ――計算士と記号士、組織、工場――不可解な出来事に巻き込まれていく私。――音抜き、やみくろ、シャフリング――天才が導く先にはいったい何が待ち受けているのだろうか。

    世界の終り
     影と別れた僕。完全な壁。金色の一角獣。幻想的で、穏やかで、けれどもどこか寂しくて、どこへも行けない世界の終わり。夢読みはいったい何を意味しているのだろうか。

    どちらの世界も、謎めいていて頭に心地の良い刺激が続いた。交わりそうにない二つの世界の行方は……。一角獣の頭骨とパスワード〈世界の終り〉ちりばめられた数々のピースはどう結びつくのか。続きに期待したい。

  • 春樹節全開の不思議冒険物語。

    博士は僕たちをいったいどこへ導こうとしているのか?
    「彼女に言わせれば博士はマニアックなんかじゃない。マニアックとはひとつの方向なり傾向に固執する人。博士はあらゆる方向に人よりも優れているだけ。」

    上巻は最高のクリフハンガーで終わる。下巻の続きが気になる。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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