雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101001395

感想・レビュー・書評

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  • ギリシャ編とトルコ編からなる紀行文。
    ギリシャ編はギリシャ国内に存在するアトスという宗教国家のルポ。ギリシャ正教会の聖地にして修行の地であり、正教会の信者以外の入国は難しい。また、女人禁制のため信者であっても女性は入れない。
    トルコ編は黒海沿岸やロシア(当時)、イラン、イラク、シリアとの国境地帯とのルポ。クルド問題や隣国との問題を抱えており、ガイドブックには「行くな」と書かれている紛争地域だ。
    これらの地域に村上春樹がカメラマンと共に乗り込む。かなりの緊迫した場面も淡々と書き綴る。辺境の人々の暮らしを記述していても、そこここに村上春樹節が染み出している。切り取り方が村上春樹なのだなと感じた。

  • 思い出し投稿。過去に別SNSで書いた感想。

    —————————
    2012.7記。

    経済危機の着火点として世界中の顰蹙を買っているギリシャですが、Lonely Planet曰く、この夏訪れるべきか?の問いに対する答えはYES!だそうです。

    https://www.lonelyplanet.com/greece/travel-tips-and-articles/77388?fbclid=IwAR0Us_V9IILfZN3RnAdntZosUGzZ2aXeRX15n7vttqNIETHn_Hj5yZ-VAWc

    新婚旅行(10年以上前…)で上陸したミコノス島には当時激しく感動したが、クレタ島はじめエーゲ海の他の島々や、アジアと地続きになっていそうな東部の田舎にもいずれ行ってみたいものだ。それにしてもエーゲ海(の中でもアトス半島周辺)の美しさの描写に関しては、以下の文章が秀逸すぎる。

    「・・・もちろんただ透き通って青くてきれいというだけの海なら、それはいくらでもある。でもここの海の美しさはそれとは全然違った美しさなのだ。それは何というか、まったく違った次元の透き通り方であり、青さなのだ。水はまるで真空の空間のようにきりっと澄みわたり、そして深い葡萄酒色に染まっている。…(中略)そしてそこに、晩夏の朝の強い陽光がナイフのように激しくつきささり、屈折して見事にはじけ散る。船の影がくっきりとした輪郭を取って海底に映り、揺らぐ。」・・・うーんのんびり2か月くらい旅行したい・・・。

  • ギリシャ・アトスには行きたくなり、トルコには行きたくない(読むだけで十分)という読後。
    残念、アトスは女人禁制の島なんだった…
    状況としては深刻で冗談も通じないようなシリアスな場面でも村上春樹の描く文章は何か状況を滑稽に伝える。

    2023.3.2

  • 村上春樹の紀行記を呼んだのは初めてだったが、とても面白かった。ギリシャ、トルコのどちらの旅も相当ハードな、大変そうな旅であったが、彼の文章でもってその旅を想像してみると、不思議と楽しそうな印象を受けるのである。

    トルコ篇で、道中真っ白なドレスに身を包んだ女の子の一行に遭遇する場面がある。車を止めて話しかけるでもないが、トルコの荒々しい風景の中で突如として現れた予想外の光景に村上春樹氏が思ったこと。素晴らしい叙述だった。こういう世界の捉え方は、ぜひとも参考にしたいと思った。

  • 村上春樹の紀行文、いくつか読みましたが
    こちらがいちばんハード(かつタフ)な印象を受けました。

    日本に住んでいて想像できうる「ハードな旅行」を遥かに超越した別世界を見せてくれます。
    ギリシャ編はまだ楽しむ余裕があるのですが、トルコ編は「おお…」とちょっと引かざるを得ないような描写があります。(1988年の事なのでだいぶ違いはあることを差し引いても…)

    自然の美しい描写と、なんと言っても現地の人々の描写が生き生きしていて読み応えがあります。写真も、現地の空気が伝わってくるようなものばかりで見応えがありました。

  • ギリシャとトルコどちらも過酷な旅で、読んでて気の毒に思った。こういった辛い心情を書くのも上手いなあ。

  • 「村上春樹」の紀行『雨天炎天 ―ギリシャ・トルコ辺境紀行―』を読みました。

    「坂本達」の自転車紀行エッセイ『やった。―4年3ヶ月の有給休暇で「自転車世界一周」をした男』に続き、旅の本で現実逃避です。

    -----story-------------
    「女」と名のつくものはたとえ動物であろうと入れない、ギリシャ正教の聖地アトス。
    険しい山道にも、厳しい天候にも、粗食にも負けず、アトスの山中を修道院から修道院へひたすら歩くギリシャ編。
    一転、若葉マークの四駆を駆って、ボスフォラス海峡を抜け、兵隊と羊と埃がいっぱいのトルコ一周の旅へ―。
    雨に降られ太陽に焙られ埃にまみれつつ、タフでハードな冒険の旅は続く。
    -----------------------

    「村上春樹」の紀行は、5年くらい前に読んだ『辺境・近境』以来なので久しぶりですね。

    本書はギリシャのアトスへの旅と、トルコへの旅が収録されており、以下の構成となっています。

     ■ギリシャ編 アトス―神様のリアル・ワールド
      ・さよならリアル・ワールド
      ・アトスとはどのような世界であるのか
      ・ダフニからカリエへ
      ・カリエからスタヴロニキタ
      ・イヴィロン修道院
      ・フィロセウ修道院
      ・カラカル修道院
      ・ラヴラ修道院
      ・プロドロムのスキテまで
      ・カフソカリヴィア
      ・アギア・アンナ―さらばアトス

     ■トルコ編 チャイと兵隊と羊―21日間トルコ一周
      ・兵隊
      ・パンとチャイ
      ・トルコ
      ・黒海
      ・ホパ
      ・ヴァン猫
      ・ハッカリに向かう
      ・ハッカリ 2
      ・マルボロ
      ・国道24号線の悪夢
      ・国道24号線に沿って

    ギリシャ正教の聖地アトスを巡る旅と、トルコを一周する旅、、、

    旅行先として選ぶには躊躇するけど、一度は足を踏み入れてみたい場所… でも、楽な旅じゃないですよねぇ。

    俗世界と隔絶されたアトスの不思議な世界観、死の危険と隣り合わせのトルコの辺境… 行ってみたけど、行くとしたら、なかなかディープな旅になりそうですね。


    実際には行けそうにない土地だけに、現実逃避にぴったりの作品でした。

  • 飲食するシーンが最高。食べたことがないものも、苦手で食べられないものも。記憶というよりも、一つの鮮烈な感覚として読んでいる実感に繋がってくる。文体をカラダとするならば、見たものを自分の身体で受けとめる旅が、豊饒な身理(しんり)が発する気持ちの表現を支えている。村上作品を読んでいると目と耳で作る空間は言葉だけになり、その語句の連なりに投じられるというかたちで作品世界に誕生するのだが、小説でも紀行文でも、与えられたありあわせのもので最大最良の演奏を著者と読者で共同で達成しようという構えは本質的に同一だと思う。

  • 著者が雨天炎天の下、ギリシャ・トルコ辺境を冒険します。旅行記ではなく冒険記といったほうがいいでしょう。
    崖を歩いたり、カビの生えたパンを食べたり、軍人に包囲されたり、かなりハード。
    それぞれの国の観光ではわからない本質のようなものが見えてくるような気します。宗教や文化の違いの大きさを改めて感じさせられました。
    しかし同時に、違いと言っても、日本の宗教も文化もよく知らず、おおざっぱな生活の違いくらいしかわかっていないことにも気付かされ、追体験のありがたさを感じています。

    細かく描かれているので、よくこんなに色々なことを覚えているな、と思っていたら日記を付けているとのこと。それも結構ハードな環境のなかで。著者のタフさには終始感心させられます。
    一生に一度くらい同じような体験をしてみたら人生がかなり変わりそうですし、同じようにタフになれそうです。

  • アトス編はへえ~と思いながら読んだけれど、トルコ編はヒヤヒヤした。チャイが飲みたい。

  • 若い頃の村上さんがなかなかに体当たり的でハラハラしながら読みました。とんでもない目に何度かあってるのに、あの村上節で書かれるとどこかシュールなコントのようでした。

  • とても自分が耐えられそうにない環境だからこそ魅力的。無限にチャイが飲みたくなる。

  • コロナ禍で旅行に行けない今読むのにぴったり。
    ギリシャのアトス半島と、トルコの黒海地方+東南部を周遊した旅のもようを綴っている。旅行記なのでかなりスラスラと読めた。
    ギリシャ編ではいくつもの修道院を訪れ、出会った人や食べものを宗教的な要素にも簡単に触れつつ紹介しているが、なかなか一般的な観光客は足を踏み入れないような場所であるから興味深い。
    トルコ編では、トルコのキラキラした部分だけではなく、旅で起こったことをもとにその地の雰囲気、トルコ人の気質や現地人はあまり話したくないような暗い部分に触れたりしていることに好感を持てた。クルド人の話であったり、東南部の街の雰囲気など、少し重い話題であっても重すぎず、かといって軽く流しているようでもないため読みやすかった。

    「物事がとんとんとんと上手く運ばないのが旅である。上手く運ばないからこそ、我々はいろんな面白いもの・不思議なもの・唖然のするようなものに巡りあえるのである。そして、だからこそ我々は旅をするのである。」
    序盤で響いた言葉。頭では理解できても、心の内からこう思えるようでありたいと思う。

  • 紀行文もおもしろいなあと思った。異文化の体験がまるで自分が経験しているように感じて新しい価値観が生まれた。旅をしたいなあ。

  • アトス山の修道院ミシュランの表現がとても面白かった。時代背景は違うが自分の知らない場所がたくさん出てきて興味深かった。

  • 2021年初読み。中々よし。

  • 普段馴染みがないような地域の旅行記

    村上春樹独特の、その都度都度の細かい描写が旅行記小説に向いていると思った。知らない土地の話だが、イメージしやすい。

    また旅行記小説を出してくれるといいなぁ

  • 面白かった。やっぱ春樹好きだわ。そこ切り取るんだーと思うところばかり。修道院のオリーブ、黴パンを食べる猫、雨、レモン、トルコの酷いエピソード。海外旅行に行きたくなる。

  • ギリシャとトルコ、(刊行当時は治安も安定し)風光明媚で異境感もある人気観光地であるが、そこは村上春樹、ギリシャはアトス島というギリシャ正教の聖地、トルコは黒海側のクルド人地区寄りというなかなか渋いセレクト。国際化から取り残されたような、文明的にも文化的にも特殊性が残る土地柄で相当ヘビーな場所であることが伺えるが、村上氏の文章を通して見る2つの国にはなんとも愛くるしい魅力に溢れた地域に思えるから不思議だ。死ぬほど甘ったるいルクミを食べてみたくなった。

  • 普通のツアーでは行くことがない、ギリシャの女人禁制のアトス島、トルコを自動車で一周。面白くないわけがない。
    小説とは違った村上春樹の文章で、読む旅行記で、面白い。
    ヨーロッパへの難民問題を匂わせるトルコの風景描写があるのは、印象深い。

  • 本当に村上春樹さんの紀行文は最高。
    好奇心も心も満たされる

    ちょうど読んでいたとろに、ロシアのウクライナ侵攻のことで、息子に「日本はどこの国とも地続きで国境を接していないから感覚としてわからないけれど、地続きで隣り合う国があるってどんな気持ちなんだろう」というようなことを話しかけられました。
    村上春樹さんの旅当時はソ連(現在はジョージアとアゼルバイジャン)、イラン、イラク、シリア、ギリシャ、ブルガリアと接しているトルコの地図を2人で眺めながら「日本で生きていると他国と接している緊張感てないよね」と話し、村上さんの波瀾万丈の旅の訳がよくわかったし、接している国との関係もあるだろうから「その地域ごとの差の大きさに驚かされることになる。」「その地域地域によって、風景も気候も人々の生活も、あるいは人種さえもがらりと違ってくるのだ。」というのも納得。
    日本で生活している時には考えもしないようなことが、普通の生活の中にあるのだろうな。

  • 10年以上積読
    小説より好きかも

  • f.2018/6/15
    p.1991/7/29

  • アテネを走った話がおもしろい。

  • ギリシャの巡礼にはいってみたいですが、トルコは駄目ですね。

  • 雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行
    (和書)2010年05月04日 23:36
    1991 新潮社 村上 春樹


    旅行記というのは面白いものです。

    ギリシャとトルコのその中での両極端の地方についての旅行記なので、イメージが随分違う。

    なかなか面白く一気に読んでしまった。

  • 悪夢的に不条理なことが起こりまくる

  • 「女」と名のつくものはたとえ動物であろうと入れない、ギリシャ正教の聖地アトス。険しい山道にも、厳しい天候にも、粗食にも負けず、アトスの山中を修道院から修道院へひたすら歩くギリシャ編。一転、若葉マークの四駆を駆って、ボスフォラス海峡を抜け、兵隊と羊と埃がいっぱいのトルコ一周の旅へ―。雨に降られ太陽に焙られ埃にまみれつつ、タフでハードな冒険の旅は続く!(裏表紙)

    村上春樹さん二冊目。前回はエッセイで今回は紀行文。次はQ&Aかなぁ。
    前半のギリシャはアトス島。狭い島内だけに、訪れた修道院の成り立ちや食事の差異など、内容が割かし一辺倒。雨天のハプニングは面白いんだけど…。
    後半のトルコ編のほうが、広さ的にも話題的にも多様で良し。なんだけど、なんだか尻切れトンボで終わっているような? 読んだのは文庫版だけど、オリジナルもおんなじなんだろうか。

  • 淡々と、美しい文章で旅の模様が描かれている。ちょっと過酷そうで同じ道を辿ろうとは思わないけれど、遠くへ旅に行きたいと感じた。

  • 2019年8月31日読了。

    【ギリシャ・アトス】

    ●ギリシャ・コーヒー、ウゾーの水割り、ルクミ(甘いゼ
    リー菓子)…“アトス3点セット”

    ●ビザンティン・タイム(P46)
    →1日は日没に始まる。

    ●ギリシャでのジャッキー・チェンの知名度の高さ。

    ●ウゾー
    →ギリシャの焼酎のようなもの。
    アルコール度数が高く、匂いはツンと強烈で
    水を注ぐと白濁する。


    【トルコ】

    ●パンとチャイ。パンは世界的に見ても美味しい。

    ●クルド人の存在(P154)

    ●マルボロ1カートン持っていくと旅が楽!?
    とにかく要求されるし、渡すと話がスムーズに。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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