村上朝日堂はいほー! (新潮文庫)

  • 新潮社 (1992年5月29日発売)
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本 ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784101001401

作品紹介・あらすじ

 

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹が雑誌に連載していたもの、その他を集めて編んだエッセイ集。オリジナルは平成元年というから1989年の発行。35年前のものである。
    30強のエッセイが収められているが、興味を持てないもの、全く面白いと感じなかったもの、逆に、なかなか興味深いと思ったもの等、自分的には玉石混淆のエッセー集だった。

    村上春樹が、朝日新聞の記事の引用から始めた「日本長期信用銀行のカルチャー・ショック」という題名のエッセイがある。引用された朝日新聞の記事の部分を下記する。
    【引用】
    ごくごく一部とはいえ、女子行員が制服から私服に変わったことは、やや大げさにいえば、日本長期信用銀行の男子行員にとって、カルチャー・ショックだった。全員まとめて「女の子」だったのが、競争相手の「同僚」へ。それが文字通り目に見えた。
    (昭和60年12月9日・朝日新聞)
    【引用終わり】
    昭和60年、1985年というのは男女雇用機会均等法が施行された年である。おそらく、日本長期信用銀行でも、いわゆる女性の総合職を採用し、その人たちには、女子行員が来ていた銀行の制服を渡さなかったのだろう。だって、総合職なのだから、男と同じく制服は着せない。
    この文章に対しての村上春樹のコメントは下記の通り。これも引用する。
    【引用】
    僕はこの手の文章は個人的にあまり好きではない。たしかに状況を要領よくまとめてはあるが、ひっくくり方が単純明快すぎて、今ひとつ文章全体に信頼感が持てない。読んでいて、本当にそうなのかなと疑問が湧いてくる。
    【引用終わり】
    日本長期信用銀行の男子行員が、本当に「カルチャー・ショック」を感じたのだろうか(そんなわけないよね)?とか、特に何も感慨を覚えなかった人も、関心を持たなかった人も、私服も良いな、と思った人もいるはず(というか、カルチャー・ショックを感じた人の方が少なかったのでは?)である。
    こういう紋切り型の、いかにもありそうで、話としても面白いという文章とは全く別の文章を書こうとして作家は苦労しているはずである。
    村上春樹は、エッセイで、自分が感じた違和感を冗談まじりに書いているが、本当は「冗談じゃないよ」と思っていたのではないか、とも感じる。
    時々、このように、作家としての片りん(?)をのぞかせるエッセイがあり、それらは村上春樹の本音がにじんでいて面白かった。

  • 村上朝日堂シリーズ。
    1983年から5年間のエッセイで、大部分は『ハイファッション』という雑誌での連載という。
    年齢的には、34歳〜39歳とのこと。
    青春は終わった、と感じたりする村上さんである。
    エッセイには、それを執筆中の割と短い間に考えていることがつづられる。その新鮮さが売りでもあるのだが、
    34歳から39歳の間の心理的変化は結構大きなものなんじゃないかと思う。

    所々に村上さんというパーソナリティーを感じ取れる。
    一冊だけ本を持って無人島に行くとしたら何を持って行く?
    本なんか持って行かなくても、自分が小説を書いちゃえばいいんじゃないか(そりゃそうだ)
    原稿でもなんでも、前倒しに進めてしまわないと気が済まない。せっかちゆえに生まれる、ちょっと余った時間が好き。

    映画にも、ロックにも、クラシックにもとても詳しい。でも、うんちくという角度では語らない。
    そして、当たり前すぎてあまり気づく人は居ないのではないかということに気づいている。
    アンケートというのは不気味かつ無意味な物が多い。う〜ん、そうかも。
    日本は標語が多い。これは私は怖くなった。自分が気づかなかったことに。
    朝ドラの背景なんかでよく目にするアレを思い出す。知らないうちに思想統制されているのかもしれない。

    「1973年のピンボール」という小説を書いた縁で、ピンボールマシーンをもらったことがある。
    ちょっと古い物だったが、その単純な機械の仕組みが好きだった。
    引越しの時に、欲しいと言ってくれた人に譲った。
    その大きな機械が引き取られて行く様子に、老いた馬が去って行くような寂しさを感じる村上さん。
    そして、若い頃の貧乏を懐古して終わる。

  • さすが村上春樹だなぁと思わせる、ぎゅっと詰まったエッセイだった。これが雑誌の連載だったなんて、すごい。連載が読みたくて雑誌を買うかもしれない。

    34-39の若い時期のエッセイのようで、最近のものよりも尖っているというか批判精神が旺盛な感じがするけど、独特のユーモアとか村上春樹らしさはしっかりあって読み応えがあった。

    2024.6.22

  • 1989年6月12日 第6刷 再読

  • 春樹が好きな作家を3人挙げるならスコット・フィッツジェラルド、レイモンド・チャンドラー、トルーマン・カポーティ、5人挙げるならさらにウィリアム・フォークナーとチャールズ・ディケンズと書かれている。前3人についてはいかにも春樹らしい名前だが、後2人についてはなるほどと思った。ディケンズとフォークナーねぇ。

  • 村上春樹さんが、1980年代に書いた初期のエッセイです。かなり尖ってますよ。変人です。標語が嫌いらしいです。で、ラブホテルに、標語の落書きをとか書いてます。その文言が怖い。「終わると空しいでしょう」。ちょっと病んでますね。やばいです。でも、若いころの村上さんのちょっと偏屈で、外国文学とオペラが好きで投資が苦手で、なんか人間ぽいところは、すごく読んでいて楽しく、これが僕の産まれる前に書かれた作品だとは思えないのです。
    http://kafuka.doorblog.jp/archives/17828175.html

  • 本書の「わり食う山羊座」を読んで、結婚を決めました。つれあいはてんびん座、そして私が山羊座。結婚すると長続きするとか。今年(2018年)23年目になりました。なぜかこのあたりのエッセイが全然あがっていなかったので、本棚に入れました。

  • この人のエッセイは読み易い。
    それぞれちゃんと練られてて安易ではない。
    こういうの読むと起承転結って大事だと思う。
    そこらに溢れている雑文とは違う。

    それにしても時代ってかわるんだなぁ、激しく。
    「うさぎ亭」とても気になる。

  • これは村上春樹の割と内面的な部分が垣間見えるようなエッセイだった。特になんというか昔に書いたからだろうか、あまり世間を気にせずに(と言ってもある程度は気にしているのだろうが)、個人的に気に入らないことをズバッと切って批評しているような内容が多かった気がする。これは他のエッセイにはあまりなかったように思う。

    • 福神漬けさん
      いろんな場所に連れてきてた本だ。
      いろんな場所に連れてきてた本だ。
      2024/10/27
  • 軽い文体で読みやすい。
    ポップな内容だが、その背景には膨大な知識量が顔を覗かせる。
    示唆に富んだ表現も多く、読み返したくなる一冊。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

村上春樹の作品

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