ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 13850
レビュー : 656
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001425

作品紹介・あらすじ

致命的な記憶の死角とは?失踪したクミコの真の声を聴くため、僕は井戸を降りていく。

感想・レビュー・書評

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  • 生きる、ってそんな単純なことではないかもしれない。

    ”ねじまき鳥” って、もっとかわいいものを想像して読み始めたのだけれど、結構怖い。人の深層心理にまで踏み込んできているのかも。起きているときと、寝ているときの違いがなくなってきて、何が真実なのかわからなくなってくる。実世界も、本当はそうなのかもしれない。

    ねじまき鳥は世界中どこかで少しづつねじを巻いて世界を動かしている。
    ひともそう。どんな小さな虫だって世界を少しづつ回している。
    影響の大きい生き物、人もいるけれど、そうではなくてどんな生き物であっても多かれ少なかれ世界に影響しつつ、されつつ世界を創っている。

    2巻の最後の結論、予想外でした。
    ねじまき鳥さんはわかった(=悟った)というようなことを言っているけれど、本当だろうか。予想外の展開のまま、3巻へ。

  • コロナ騒動の直前に、舞台版「ねじまき鳥クロニクル」を鑑賞。その衝撃冷めやらぬ中、何度目かわからない再読。
    以下、実況風ひと口メモです。

    「ねじまき鳥クロニクル」再読、その2

    第二部より。

    「・・・最初に君に会ったときから、私は君という人間に対して何の希望も持ってはいなかった。君という人間の中には、何かをきちんと成し遂げたり、あるいは君自身をまともな人間に育てあげるような前向きな要素というものがまるで見当たらなかった。・・・君のやることは何から何まで多分中途半端に終わるだろう、何ひとつ達成できないだろうと思った。そして事実そのとおりになった」(ワタヤノボル)

    「ある種の下品さは、ある種の淀みは、ある種の暗部は、それ自体の力で、それ自体のサイクルでどんどん増殖していく。そしてあるポイントを過ぎると、それを止めることは誰にもできなくなってしまう。たとえ当事者が止めたいと思ってもです」(オカダトオル)

    この二人の最終対決は第三部に持ち越される。

    読者はよく知っているとおり、オカダトオルの手にする武器は「野球のバット」なわけだけど、舞台では、それを「本田伍長からの遺品」として預かる設定になっているのが痺れた。
    もちろん、原作では本田伍長から受け取るのは「ただの空き箱」。

    舞台では、「無意識の世界」でバットを受け取り、「現実の世界」ではバットを持ち去られたあとの空き箱が残される、という解釈がおそろしく滑らかな身体操作で表現されていた。あれは原作の熱心な読者のみが味わえる感動であった、とひとりで納得(笑)。

  • レビューは3巻にて。

  • 箱庭療法の語りを聞いている気分

  • わたしは下品な島で、下品な猿の荷担を少なからずしていると思うが、けっして綿谷ノボルのサイドにはいない。あくまでもオカダトオルくんの側の人間だ。それに、深い井戸の中で、壁を抜けることもできないまま、未だに佇んでいるみたいな気がする。

  • ドストエフスキーとかを読んだ後だと文体との馴染みというかこんなにスラスラ読めていいの?と不安になるくらい、読ませる。
    村上春樹の長編にありがちな構成だが前半と比べるとキャラ設定も馴染んできた中盤にこそイデア界というかメタフォリカルな現象が頻発する。だからこそ解釈が非常に難しい。難しいのに描写があまりにもリアルでメタファーの意味とかそういうことの前に情景がすうっと、ぬるっと入ってくる。
    井戸から見上げる空や星、光の描写は何度読み返しても圧倒される。メタファーの意味とか考えずに大雑把に読み進めつつ、完結へ。

    それにしても第一部から感じていたことだけれど主人公とクミコの夫婦関係について、村上春樹自身はどう考えているか気になる。やっぱりどんだけ長い間同じ屋根の下で暮らそうとも絶対に分かり合えない部分があると村上春樹自身も考えているのだろうか、、、?夫婦とか家族はある種、幻想で暫定的なイメージを交換し合うだけという部分もあると考えているのだろうか、、。だいたい奥さんに逃げられるよなあ主人公。

  • 「かまわない」

  • クミコが出て行った理由も浮気した理由も全く理解出来ないしそれを許せるっていうかそれでもクミコを待とうと言う気持ちが全く理解出来ない。
    自分が心の狭い人間なのかそれとも三部では納得出来る答えが出てくるのか?
    ただ一日中通行人の顔を見てたら確かにそのうちに何かわかってくるものがあるんじゃないかなぁってのは同感出来た。

  • やはり、クミコは居なくなった。ある日突然に(僕は突然のことに戸惑う。でも、振り返るといろいろな先触れはあった)。
    そして、第2部は、暗喩の度合いを強くしていく。異界の気配が濃厚に描かれてゆく(岩宮氏が評しているように。) 謎めいたエピソード、場面が、目白押しである。

    ・深い井戸の底に閉じこもった、極限体験。(地下世界や洞窟は、古来多くの文学で、死と再生のオーソドックスな隠喩ではある。)
    ・出奔した妻クミコの長い手紙、“不倫”の告白と想像を絶する強烈な性衝動についての告白。
    ・加納クレタ(妹)の繰り返されるメタモルフォーゼ(痛みに満ちた半生、無感覚の第二の身体感覚、綿谷に〝犯された〟際のこれまた強烈な性体験。その後の第三の身体感覚では、夢(異界)と現実を往き来できる特殊な能力を獲得。そして、岡田(僕)の手でさらに自分自身を取り戻したようで、それまでの名を捨ててギリシャへと旅たつ。)
    ・さらに近隣の娘、笠原メイ。死の実感を模索し続けたようで、結果友人を事故死させた暗い過去を持つ。
    ・そして、僕自身の精神の彷徨。井戸の経験のあと、突然頬に現れた青黒いあざ。現実と夢の狭間にある如き、ホテル内の暗黒の一室(謎の208号室)での体験。 

    これらの暗喩が、答えのみえないまま、積み重なってゆく。
    でも、それらの暗喩を無理に解釈することはすまい。暗喩を暗喩のままに、とりあえずそのまま受け止めておくことにする。
    この内容・展開は、読者を選ぶに違いない。文学を読み慣れてない者は、困惑して放りだしてしまうだろう。

    さて、叔父の助言のくだりが、興味深い。
    幾つもの飲食店の経営を成功させてきた不思議なビジネス感覚を有する人物だ。その成功の秘訣を甥の“僕”に語るのだ。曰く
    「コツというのはね、あまり重要じゃないことから片づけていくことなんだよ。」
    「Aから始めるんじゃなくて、XYZのあたりから始めていくんだよ。」(第17章)。
     参考になりそうなので、鉛筆で下線をひいてしまった。
    だがこのノウハウ、実際に自分の仕事に応用するのは簡単ではないようである。
    “僕”(岡田)の実践応用も、なんだか見当違いに見える(新宿の雑踏を幾日も眺め続けるのだが…)

  • 2016年の現在から20年ほど前の作品だけど僕の中ではますます輝きを増していて、読む度に評価が上がっていく。時間や雑用など忘れて夢中になってしまうので、雑用を先に済ませてからでないと安心して読めないためどうしても寝る前に読み始め、結果寝不足になる。
    この第2部ではカラフルな登場人物たちがみごとな花を咲かせるみたいに個性を開花させる。話しの流れが淀むことなく自然に進んでいく。奇妙な出来事ですら自然なものに映る。気がつけば完全に著者に操られている。操られることが読者としての喜びなのだからこれこそ至福というもの。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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