村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001463

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹の本をこれまで何冊か読んできたけど、やっぱりどこがいいか分からない。
    時代もあるかもしれないけど、この本読んでやっぱり好きになれないなあって思った。
    猫のピーターの話は良かったけど、最後の対談で台無しになりました。

  • 「村上朝日堂」シリーズ(シリーズと言っていいのかな?)
    マサチューセッツ州ケンブリッジ(ボストンの隣)に住んだ、1993年から1995年にかけての滞在記で、村上さん44歳から46歳のころ。
    日記であり、紀行。
    紀行文好きの私としては、村上さんの紀行文が読めて、とても楽しかったです。

    安西水丸さんがイラストを担当、奥様の村上陽子さんが写真を載せている。
    イラストはいつもの画伯風であるが、小学生の絵と違うところは、時々危険なところ。特にP207がやばい。
    まあ、村上さんの発言がそもそもヤバいのですが。

    奥様の写真はボストンマラソンから始まり、アメリカの自然や、街の様子が視覚からもアメリカ感を盛り上げてくれる。猫要素多し。最後の方まで読んでからP85のアヒルの写真を見ると2度美味しい。

    今まで読んだ「村上朝日堂」は、村上さんの頭の中で熟成された感じで、いわば内なる宇宙だったのが、今回はアクティブに大自然の中で動き回っている感じがする。リアルタイム感、臨場感がある。
    今までがアクティブではなかったということではありませんが。
    ボストンマラソンへの参加、モンゴルへ行って苦手な羊肉を無理に流し込んだこと、車の盗難に遭って、保険代理店の担当の女性がどうしようもなかったことなど、非日常なネタにも事欠かない。
    アメリカの大学で先生をするということ自体がそもそも、非日常ですが。

    「猫のピーターのこと」はシングルカットして1冊の絵本になったらいいな、と思えるお話でした。
    じわっと感動しました。
    そしてまた、若い頃の貧乏を回想して終わる。

  • 外国語よりフランクなエッセイでゆるく読めて楽しめた

  • "「うずまき猫」はうまくみつかりましたでしょうか?”
    あとがきの最後の一文を読んだとき、それまでおもしろいおもしろいと読んでいたのが一気にはっとさせられた。夢中になって読みふけっていたその時は、うずまき猫はうまく見えなかった。
    少したって考えると、日頃の出来事や思い考えていることの「うずまき」のなかで「小確幸」を探しみつけることなのかなと思った。それがこの話を一層おもしろくしているのだなぁ。

  • のんびり読めてよかったです。
    おじさんのアメリカでの日常という感じでした。

  • 「うずまき猫」はうまくみつかりましたでしょうか?と締めくくられてるけど、「うずまき猫」ってなんだろう?

    村上春樹氏のエッセイです。

    1994年~95年の米国滞在中の話題が中心。
    この時期、村上さんは長編小説「ねじまき鳥クロニクル」を執筆している。
    比較して読むと、エッセイ中に、ねじまき鳥クロニクルと似通った表現や記述がみられて面白い。


    さて、本作のタイトルである「うずまき猫」であるが、これ、本文には一度として登場しない。
    村上さんのエッセイらしく、本作には猫はたくさん出てくるが、うずまきにはなかなか結び付かない。


    先の「ねじまき鳥クロニクル」の小説中では、「ねじまき鳥」というのは、けっきょく主人公自身のことであった(と思う)。
    それと比較すると本作の「うずまき猫」は、村上さん自身のことなのだろうか。

    うずまき、つまりは、外国で、世間のゴタゴタにぐるぐると巻き込まれ、翻弄される村上さんのことを言いたかったのかもしれない。

    〜しかし車を一台盗まれるというのが、これほど面倒きわまりない結果をもたらすものだとは僕も知らなかった。(中略)あちこちたらいまわしにされて、居留守を使われたり不親切な扱いを受けたり、時間は無為に流され、ストレスはたまっていく。(中略)。「そうか、世間とはこんなに面倒なものなのか、まあ何事も経験だな」と鷹揚に構えていたいところだけれど、実際にはとてもそんなこと思えないですよ。ただの消耗である。〜
    (p140、わざわざこんな忙しい年末に、車を盗まなくたっていいだろうに)


    とにかく、村上さんはのエッセイは、村上さんが苦労している時がいちばん面白いので、本作はとても面白いです。
    うずまき猫に限らず、村上さんの猫にむける優しい眼差しが感じられる一冊です。

  • これ、いいんですよねえ。めちゃんこサクッと読めると思います。もう、サックサク。一瞬で読み終えられちゃう、と言ったら言い過ぎかもしれませんが、ある意味村上さんに失礼な言い方かもしれませんが、この本、なにしろめっちゃんこサクサク読めちゃいます。

    で、それが、決して悪いことではない。本当に一瞬で読み流せちゃう気がするのですが、読んでいる最中は、もうね、すっごくこう、なんというか、素敵な気持ちになることができる、感じなんですよね。村上春樹さんのエッセイは、何故に、これほどまでに言葉が心地よいのだろうなあ。

    ある意味、「この小説を読んで欲しい!」と、とある村上さんの小説を誰かに薦めるよりも、このエッセイを「こんな軽い感じ、どう?サクッと読めますよ。なんかこう、あんまグッと来なかったら、途中で読むの止めたらいいんだし」と、ごく軽く、ごくさりげなく(でも自信をもって)お勧めできる感じ。「僕はこれ、好きなんですよね。決して重すぎない感じだけど、本当に好き。あなたはどうなんだろうなあ。好きになってもらえたら、嬉しいんだけどなあ」って、ユル軽く薦める感じ。そんな素敵な、エッセイなのです。

    このエッセイを書いている時期は、1994年春~1995年秋の頃。この時、村上さんは、マサチューセッツ州ケンブリッジに滞在されていたそうです。海外に住んでいる状況が経験がいかんなくエッセイに反映されている、訳では無いようでして、この時期に村上さんは、相当にコッテリと深く、長編小説の執筆に力を入れておられたようでして、その長編小説にめちゃんこ重点を置いて文章を書いておられたので、その時期のエッセイはバランスをとるように、かるーく気楽なものになった?という流れで、この著書が出来たようなのですが、、、

    凄いよなあ。ある意味、大変に語弊のある言いかたですが、気晴らしに書いていた文章、ってことでしょう?これらは。その気晴らしの文章が、これほどまでに、素敵に誰かの心を(この場合は、僕の心を)とらえるなんて。おっとろしいよなあ。

    収められた各エッセイの文章も文体も内容も凄く良いのですが、文庫内に、村上春樹さんの奥様が撮影された写真が、ちょこちょこと登場するんですが、その写真の解説に添えられた村上春樹さんの写真解説文章が、また、すっごく良いんですよ。めちゃんこ味のある文章だなあ、とかね、思います。絶対に、そんなに気負って書いていない筈の文章なのだろうに、それでも素敵。それって、村上春樹、という個人の、なんらかの魅力を、本当に引き出しているんではなかろうかな?とかね、僭越ながら、思っちゃうんですよね。

    フル・マラソンに対する洞察が好きですね。何故にヒトはマラソンをするのか?という根源的な問いが素晴らしいです。
    どれほどまでに自分は、中華料理が苦手なのか、ということを何とか説明したい、という文章も好きです。中国でピッツァを食べる、と言う行為の悲哀を訴える言葉が本当に好きですね。
    車を盗まれたことに関しての、保険を巡る?あまりに七面倒くさい手続きの話も凄く好き(好きって言ったら失礼で申し訳ないのですが)ですね。とてつもなく無能?な、というか、とてつもなく無自覚に「悪い」人間の存在を、サラッと書いている気がするのも、ある意味怖い。あのような人間は、きっと、本当に存在するのだ。そのような存在と関わったならば、きっと「本当に消耗しきって」しまうのだろうなあ。となると、こっちから「関わらない」ことを選ぶしか、ないだろう?きっと、そうするしか、ないですよねえ、、、

    「小確幸」という、とてもとても素敵な言葉がでてきます。この言葉が意味することは、人が日々生活を営む上で、本当に素晴らしく重要な概念ではなかろうか。と思う次第です。村上さんは、こういうことを教えてくれるから、しみじみと好きなんですよねえ、、、「小さいけれども、確かな幸せ」か。なんて素敵な言葉なんだろうなあ。

  • 読むのは2回目かな。
    相変わらず、うずまき猫は見つかりません。
    海外の暮らしの何てことない話がおもしろいです。
    村上春樹嫌いのひとには、ぜひエッセイを読んで欲しいです。

  • 駒沢公園や落ち着いた純喫茶、緑の多いカフェで少しずつ、大切に読んだ。

    読み終わるより先に、気づけば自然のある場所やのどかなところに出向くようになった。


    猫のピーターに会うためにこれから先何度も開きたい。

  • ・93年〜95年のマサチューセッツ州ケンブリッジ滞在記。その前にプリンストンに住んでいたときの本が「やがて哀しき外国語」という関係にある。
    ・千倉は、一度旅行してみたい場所のひとつ。ハチマキが似合いそうな犬、という描写が可笑しい。村上朝日堂の本編と後書きにも、千倉のことが書いてあった気がする。
    ・車が盗まれる話はいつも笑ってしまう。リカバリーレポートが忽然と消えてしまうくだりなど。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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