海辺のカフカ 下 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2005年3月2日発売)
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本 ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784101001555

感想・レビュー・書評

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  • ずっとずっとカフカ少年の孤独な魂を追いかけながら読んでいた。15歳の少年が本当の意味で強くなり、これから自分の旅を続けるために、必要だったこと。それがダイナミックな小説を通して語られていた。
    自分を捨てたと思い込んでいた母を求めるカフカ少年。母には母の、姉には姉の、そして父には父の選ばなくては行けない道があった。
    大島さんが男性に見えたり、ナカタさんが空っぽに見えたりしても、本質とは異なる。お椀山事件で、記憶と読み書き能力を失ってしまったのだ。人にはそれぞれの意思があり、背景があり、血が流れている。独断的偏見の目をクリアにするために、森に行き、内省的な時を過ごすべきなのかもしれない。

    一番好きな場面は最後に佐伯さんと出会う場面。
    自分が愛されていたことを感じ、自分の中に流れる血を実感すればきっとこれからも生きていける。

    この小説の面白さを際立たせたの、ナカタさんと中日ドラゴンズファンのホシノさんだろう。ホシノさんが仕事をほっぽり投げて、ナカタさんに尽くし、ナカタ化していくところがいい!
    アロハシャツのホシノさんが、大公トリオを聴き、ベートーヴェンに傾倒して、自分の半生を振り返り、石や猫に話しかけるさま。想像するだけで可笑しい。

    真っ直ぐなカフカ少年の人生に幸あれ。
    そう思いつつ、最後の頁を閉じた。

  • 後半は、作品の伏線回収の中で、主人公が自分探しを閉じていきます。重いテーマの物語ながら、エディプスコンプレックスをを乗り越えて、次の世界に旅立つカフカくんの姿が、悲劇で終わらず、読後の充実感に繋がります。

    カフカくんの重いテーマとは対照的に、ナカタさんとトラックドライバーの冒険がコミカルで面白いですね。最後は、重さが逆転し、思わず「ナカタさ〜ん」と叫びたくなってしまいました。

    あっちの世界の真骨頂が現れ、入り口が閉じられるとともに、物語世界も静かに閉じていきます。長編ながら、一気に読んでしまう作品でした。

  • いちいちオシャレでした。少しメタファーが強い
    印象を持ちました。佐伯さんと田村カフカの絡みの
    部分が少し私的には、あまりしっくりこない場面がありました。でも理解できないこそが文学なんだなと改めて認識できた作品でした。感じることが大事なんだと、特に村上春樹の作品は、そういったカテゴライズされない作品が多いので、「海辺のカフカ」は特にカテゴライズするのが難しい作品だと感じました。登場人物がユニークでしたね、ジョニーウォーカー、カーネル・サンダースなど、特に下巻での、ホシノ青年と、カーネル・サンダースの絡みが、印象的でしたね。

  • 苦手な描写がチラホラ。
    “タフになること”の意味あいも、なんとなくわたしと合わなくて。
    そして、やっぱりわたしはナカタさんの章の方がすき。
    ってことは、やっぱりハルキストではないわけで。
    あっ、でも兵隊はすごくすき。

    こちらの付箋は16ヶ所。
    やっぱり全然、前とは違うところに。

    二つの物語が一つに重なっていく感じは少し、1Q84に似ている。
    物語の収束は、とても美しい。

    • naonaonao16gさん
      sinsekaiさん

      コメントありがとうございます!
      いや~、だいぶ前のレビューですね(笑)

      初めて読んだのは「アフターダーク...
      sinsekaiさん

      コメントありがとうございます!
      いや~、だいぶ前のレビューですね(笑)

      初めて読んだのは「アフターダーク」か「ノルウェイの森」です。
      デビュー作から「ねじまき鳥」も「世界の終わりの~」も有名どころは読んでいるのですが、うーん、好きかと言われるとそうでもなく。
      ではなぜ読んでいたのか。
      まさに、「村上春樹を読んでいる自分が好きだった」という状況でした(笑)
      今は本棚にはいくつか春樹氏の作品があるものの、いつも棚卸の時に悩んでしまいます…春樹さんごめんなさい。
      2021/08/01
    • sinsekaiさん
      「村上春樹を読んでる自分が好きだった」
      わかります!
      俺も最初の動機はそんなもんだと思います。
      サブカルクソ野郎全開ですね!お互い…笑
      「村上春樹を読んでる自分が好きだった」
      わかります!
      俺も最初の動機はそんなもんだと思います。
      サブカルクソ野郎全開ですね!お互い…笑
      2021/08/01
    • naonaonao16gさん
      sinsekaiさん

      爆笑…!
      というか、かなりの割合でみんなそうではないかと思ってます。
      でもある時ふと気付いたんですよ、「ちょ...
      sinsekaiさん

      爆笑…!
      というか、かなりの割合でみんなそうではないかと思ってます。
      でもある時ふと気付いたんですよ、「ちょっと何言ってるかわからない」ということに…(笑)
      それに気づいてからの脱却は早かった…
      2021/08/01
  • 狭量さ、非寛容さ、全ては想像力の問題… 僕らの責任は想像力の中から始まる…
    との視点、その想像力を育むために少しでも多くの小説に触れたいなと。先日読んだ奈倉有里さんの夕暮れに夜明けの歌をにもあったけど納得。

    父の呪に対峙すべく15歳の僕は家を出る…

  • 文庫で上下巻合わせて1000ページ以上ある割に読み易い….そういうことも作家の人気を左右する重要な要素なのかもしれない。

  •  村上春樹は読んだことがなかった。別に食わず嫌いだったわけでもなく、ただ何となく。そこへ、先日友人からのこの本を薦められ、読んでみた。初春樹だ。
     先が気になってやめられず、一気読みしてしまった。時間は計ってなかったけれど、ものすごく速かった。ストーリーが面白かったのもあるけれど、話の密度が低いのも速く読めた一因ではないか。一見深いことを言っているようなシーンも多いのだが、その背景にあるのは著者の感覚に過ぎないように思える。論理的な説得力が感じられず、全体的に話が軽い。なので、どんどん読み飛ばしてゆける。
     軽いと言えば、登場人物も軽い。性格が軽いのではなくて、存在感が軽い。まず人が存在して 彼らが動いてストーリーが生まれるのではなく、まずストーリーがあって それに基づいて人物が動かされている感じがする。それぞれ葛藤があり悩みがあって、その中でもがきながら動くのが人間だろう。しかし、この本では「あ、台本にこう書いてあるから次はこう動かなきゃ」みたいな感じで登場人物は行動する。だから、存在感が軽い。俳優が舞台の上で役を演じてはいるが、それはあくまで舞台上だけの役割で、舞台を降りたら別の生活がある。その、舞台の上の部分だけを描写しているような感じ、とでも言おうか。人物に厚みがなくて、こっち側から見えている面は人間だけれど、それは皮一枚で、裏に回れば空っぽではないかとさえ思う。これはぶっ飛んだストーリーのせいではなくて、著者の問題だと思う。もっとぶっ飛んだストーリーでも、実在感にあふれた作品を書く人もいるのだから。
     軽さに拍車をかけているのが、ブランド志向な描写だ。レヴォのサングラスとか、VWのゴルフとか、トミーヒルフィガーとか、クルマやガジェット・ファッション関係で妙にブランドにこだわった描写が目につく。それが、ブランド物ばかり置かれた住宅展示場の生活感のない空間のようなイメージで、作品全体の実在感をさらに希薄にしている。
     何だかボロクソに書いてしまった。まぁ、ストーリーはよく出来ていた。

  • 小説の理論的な書き方を解説しながら、あるいは種明かししながら物語が進んでいくので少し笑える!!
    「ロシアの作家アントン・チェーホフがうまいことを言っている。『もし物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない』ってな。」

    でも、まぁ話は面白かった。

  • あー読み終わってしまった。

    村上春樹の作品を読んだのは『風の歌を聴け』に続いて2作目だった。

    一度読んだら忘れられない特徴の強いキャラクター
    たち。

    ナカタさんという話し方が独特な白髪の登場人物の健気さに心を打たれた。
    中日ドラゴンズの帽子を被る、トラックドライバーの星野くんがその老人と過ごして行く中で、人生の充実を感じる場面が印象的だった。

    15歳の田村カフカ少年が、自らに定められた運命や宿命とどう向き合って行くのか。
    ここが本題だったと思う。


    ネタバレなりすぎるからここまで。

    印象に残った一文。
    君の外にあるものは、君の内にあるものの投影であり、君の内にあるものは、君の外にあるものの投影だ。




  • 村上作品の中でもこの世界観には本当に心地良く没入することができた。
    登場人物も皆個性豊かで、生きていく上で考えさせられる言葉も多く散りばめられていた。
    中でも大島さんの人間性に憧れるなぁ。
    いつかまた再読しようと思えた作品でした。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

村上春樹の作品

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