海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.63
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本棚登録 : 22562
レビュー : 1537
  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001555

感想・レビュー・書評

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  • 入り口は、開けたら閉めないと。
    誰もが見つけられる、気づける場所ではない。

    自分を終わらせるのか、進むのか。
    自分に決められている、自分には分からない先への行動。

    正しい、正しくないは、誰にもわからない。

  • 下巻。
    上巻より面白かったですね。イッキに読み抜いてしまいました。

    「多崎つくる」も、読み始めるとアッと言う間に読んじゃったんですけど。
    あっちの方がなんだか、もやっ、・・・としました。
    「海辺のカフカ」、面白かったですね。ほんと。面白かったです。
    あまり文句ないっす。

    下巻は、トラック運転手の星野さんと、中野区から来たナカタさんが四国に渡るあたりからでしたね。

    なんとなく備忘録としておくと、

    ①中野区から家出してきた15歳の田村カフカ君(もちろん偽名)は、四国に来て高松周辺で、甲村図書館という素敵な私立図書館に出会う。
     そこで働く <女性だけど性同一障害で男性としての同性愛者である若い女性・大島さん> と、
     <かつて「海辺のカフカ」という歌謡曲を大ヒットさせた、恋人と死別した悲しい過去を持っている50代の女性・佐伯さん>
     の二人と仲良くなって、Hをしたりしなかったりする。
     カフカ君のお父さんは中野区で殺人事件にあって殺されてしまう。
     警察がカフカ君を探し始めて、カフカくんは高知の山奥に隠れる。
     そこで山奥の森の中で戦時中にその森で行方不明になった日本兵2名と出会って、導かれて、よく分からない死者の国っぽいところに行く。
     そこに佐伯さんがやってきて、この世の方に戻りなさいと言われて戻ってきた。
     戻ってくるとやっぱり佐伯さんは死んでいて、カフカくんは東京に戻って学校に行きなおす気になったので、新幹線に乗る。おしまい。

    ②なんだか良く分からないけど使命感に燃えて四国にやってきた、字の読めないナカタさんと、付き添いの星野さん。
     高松に入って、石を探す。カーネル・サンダースと名乗る男が現れて、おかげで石を発見。
     石をひっくり返すことで、何かの入口が開く。
     ナカタさん甲村図書館を見て、ここだ、と思う。入って佐伯さんと会う。なんだか意気投合して、佐伯さんが書いた原稿を燃やすように言われる。
     で、燃やす。燃やすと佐伯さんもナカタさんも、ぽっくり死んじゃう。
     星野くんはなぜだか猫と話せるようになり、石によって開いているらしい何かの入口に向かってくるよく分からないモノと戦った挙句に、
     もういちど石をひっくり返す。つまり閉じる。
     で、地元の名古屋に帰ることにする。

    というふたつのお話が交互に進行していきます。
    これだけ読んだら、何が面白いかサッパリ分かりませんよねえ。
    でも面白いんです。
    ある種のミステリーだし、冒険譚なんですよね。
    ただ、通常の、なんていうか新宿鮫みたいなモノのつもりで読んだら、腹が立つでしょうけど。

    で、カフカさんの小説がそうであるように、
    「ソレは何を表しているのか。何を隠喩してるのか」みたいなことを語りたくなるような小説ですね。
    なんだけど、そういうのはどうなんでしょう、と感じます。

    母親に捨てられた、と思っている15歳の少年。父親からまともに愛されなかった田村カフカ君。
    むしろ父親に、お前はいつか俺を殺す、と言われ続けた中学生。
    自信のなさと無謀さと理屈っぽさと愛情への飢えとハードボイルドでありたいプライドと、どうにもならない性欲に、
    なんだかんだ言いつつ七転八倒する主人公なんですね。
    それってやっぱり切ないし、過酷な運命だし、そんな彼が家出してローリング・ストーンなコトになる。

    そして、やっぱり世間の誰からも求められず愛されなかった、
    頭の弱いナカタさん。
    そのナカタさんが何か天啓を受けたかのように動き出す。
    それに付き合ってしまう、愉快な星野さん。

    このナカタ=星野コンビが探す、<石>。
    あるいは<入口>。
    あるいは、ナカタさんと、佐伯さんとの、なんだか意味深そうな会話。

    僕は正直、分かるのかと言われれば、サッパリ何がなんだかわかりません(笑)。というか、分かりたいとも思わない。
    だって、分かるために読んでるわけじゃないから。僕にとって面白いか面白くないかだから。
    (その面白さを言い表せるのかって言われるとそれは疑問ではあるけど。だからもし僕が職業的な評論家であるなら、僕の態度はちょっと問題かもしれないけれど。)

    そういうわけで、どうでもいいんです。僕にとっては。面白いから。
    ただきっと、春樹さんにとっては、ソウでなくてはならない何かがアッタんだろうなってだけですね。

    そんなこんなが描かれます。
    で、この小説の魅力は、そういう物語っていう入れ物が、ちゃんと入れ物として、面白い語り口を受け止めていられる強度がある、ということだと思います。
    あくなきレイモンド・チャンドラー風及びフィッツジェラルド風の、というかもう独特の引用とユーモアに満ちた村上春樹節、ハルキ節。と、でも言うべき文章。とにかく文章。語り口。その切れ味。
    微妙に現在形で押しちゃったりする、アノ感じ(笑)。まあ、読む人によっては、キザって言えばキザなのかもですけどね。
    でもねえ、あのキザさっていうの自体を、日本語という意味では、かなりこねくり作り上げたのが、70年代からの春樹さんの創作の足跡だったりしますからね。

    閑話休題。文章が、素敵!っていうことですね。
    もう、そのキレキレで自由自在なボールさばき、疾風怒濤のドリブル突破を、受け止めて、ちゃんとプレイさせてあげられる、枠組みとしてのチーム。
    そのチームみたいなものなんですよね。物語って。あらすじっていうのは得点場面ダイジェストみたいなもので(笑)
    別に、チーム全体とか、あるいは試合結果、得点場面、で感動するんじゃないんですね。ちゃんと、生で観戦している人は。
    もう春樹さんの、キレキレのドリブル、絶妙なため息の出るトラップ、感性でしか有り得ないダイレクトパス、そういった一つ一つが、醍醐味なんですよね。
    うん、なんか自分で納得が行きました。
    ただ、この「海辺のカフカ」は、その春樹さんのプレイをがっちり受け止めることが出来るだけの、強度のある枠組みなんですね。
    あるいは、その枠組み、土台のお陰で、春樹さんの文章という一個一個のプレイが、切れ味が良くなってる。

    という訳で。
    この本は大好きでした。ひょっとして春樹さんの中で、「風の歌を聴け」を除けば、僕にとっていちばんかもです。
    (多分、あれだけは特別だと思います。自分の中で。どうしてかっていうと、新刊で読んだわけじゃないんですけど、僕にとっていちばんはじめの春樹さんの作品だったからでしょうね)
    なんだけど、別にこの小説のなんていうか・・・お話の扱っている事件や、「なんだか意味ありそうで感動そうな場面」が好きな訳じゃないんですよね。
    なんていうか、とにかく語り口が僕は好きです。たまに、「ちょっと嫌味じゃないかなあ」とか思ったりもしますけど。

    それから、ぽろっとまとまらない感想を言うと、
    ●猫としゃべれるナカタさんと猫たち、のあたり(上巻)
    ●ナカタさんと、付き合ってしまう星野さん、のあたり(下巻)
    が、いちばん好きでした。
    特に、トラック運転手の青年男性・星野さん、大好きでしたね。ナカタさんとふたり、春樹さんが創造したキャラクターで、いちばん好きです。
    とにかく、下巻のふたりのやりとりは、ホントに面白いんです。
    漫才より爆笑で、にやにやしっぱなしでした。
    コレだけでも読む価値ありますよ!

    それだけでも、「多崎つくる」より、正直ぜんぜん面白かったです(笑)。

    あと。
    上巻の自分メモにも書いたけど、日本の歴史、過去、といったところがちゃんと視野に入っている、そこと今がつながっているんだ、という世界観。
    繋がっていることを、どう感じていくのか、どう見ていくのか、という手探り感。
    それはちょっと新鮮です。
    正直、スリリングにわくわくします。
    そのあたりをめぐる冒険なら、共に読書という旅をしてみたいですね。
    それを春樹さんのワールドで見るとどうなるんだろうっていうのは、もっと見たい。もっと読みたい。

    と、思うと、「ノモンハン事件が出てくる」という噂を聞く、
    「ねじまき鳥クロニクル」も、読んでみたくなるんですけどね。

  • 15歳の少年田村カフカは世界一タフな15歳になるべく東京の中野区から家出し、香川県高松市に到着する。
    そして、ふらふらと「甲村私立図書館」という場所にたどり着く。
    そこで大島さんという司書に出会い、図書館を運営する佐伯さんという人に恋する。
    そして東京の中野区ではネコと話が出来る不思議な力を持った老人ナカタさんが一匹のネコ、ゴマを探している。そしてジョニー・ウォーカーという紳士に出会いその運命は変わっていく……。

    まぁ、多すぎてこんだけしか書けませんが、この小説はかなり読み応えがあります。
    1章ごとに田村カフカのお話、ナカタさんの話が交互に続いていきます。
    最初の400ページぐらいはただ淡々と話が進んでいきつまらない感じですが、ナカタさんと主人公との話が交わるくらいから話は面白くなっていきます。

    俺はナカタさんがホシノさんという青年と出会ってからの話が好きです。

  • カフカ少年は結局、父の予言(呪い)を果たすことになる。仮説の上では。しかし、そのことで変わりつつあった世界は、ナカタさんとホシノさんの努力により、<入り口>が塞がれたことにより、また元の調和へと戻る。佐伯さんは死に、ナカタさんも死んだ。深いテーマ、過去への執着は、記憶という「本」に昇華されることにより断ち切られ、カフカ少年は帰るべき場所に戻る。母なる佐伯さんというかけがえのない記憶を携えて。15歳というのはそういう歳なのかもしれない。

  • 上巻にまとめて。

  • ・複雑で入り組んだストーリーだけれど、骨格は誰からも愛されず育った15歳の青年が父を乗り越え、母を愛し許す旅をし、自分に向き合えるようになる話、だと思う

  • 久しぶりに読んだ村上春樹の小説。僕は2つの物語が交互に進んでいく構成が好きだった(世界の終わりとハード・ボイルドワンダーランドを最初に読んだ)。物語の始めは3つの物語が進んでいくようにみえたが、やがてカフカとナカタさん(星野さん)の2つの物語へ移り変わる。2つの世界にいかなるつながりがあるのかと考えをめぐらせながら読んでいったが、最終的には何も明かされない。メタファー、残像だけが残る。15歳の少年が家出し、現実世界から非現実世界への移動をナカタさんが助ける。ナカタさんの秘密、カフカの母と姉のこと、何もわからない。
    教訓としては、この小説では運命について暗喩が多い気がする。運命は砂嵐だ、そして君自身にいる何かだ、その砂嵐を潜り抜けた君はもう以前の君ではない。
    また、カフカはカラスを意味するチェコ語である。カフカに語りかけてくるカラスよ呼ばれる少年は、頭の中にいる自分自身である、運命は自分自身の頭の中にあるのか?
    運命は受け入れる、それは決して自分とは無関係ではない
    いろんな解釈ができる小説だ

  • 心から人を愛するのって
    本当に胸が苦しくて、本当に幸せなんだろうな、と感じました。

    その人の仕草や部分、全てが愛おしくて
    その人が居た場所は特別になる。

    人間の美しさを感じられる作品でした。

  • 読み終わった後にはいろんな疑問が生じたけど、その答えは知らなくていいのかなと思わせる終わり方で、個人的にはすっきりした。
    答えは口にしてしまえば意味をもたなくなる、そんな気がした。
    多くのメタファーが使われてて、どれが真実なのか、現実なのか、わからなくなってくるけど、風の音を聞ける、それだけでいいのかなと思いました。

  • よし!
    後半に突入
    だんだんつながってきた。

    高松に興味わいた。
    来週からはじめて高松に上陸。
    どこに図書館はある?

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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