海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.63
  • (1987)
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本棚登録 : 22487
レビュー : 1534
  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001555

感想・レビュー・書評

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  • 様々な古典文学を抽象化しエッセンスを複雑に混交させ具体化的物語へ昇華する、村上春樹氏の凄さが作品からは伝わってくる。が、読み終えてもこの物語が一体何であったかの総括は難しい。村上春樹氏の他作品と比べてより現代小説的であり、所々差し込まれる残酷的であり肉感的であり直接的な描写が不思議な感覚を与える。カフカ少年の新たな旅立ちを感じさせる終わり方も特徴的であろう。本作品はカフカ少年を軸とした並行世界のようでありながら、ひょっとすると全てカフカ少年の幻想もしくは可能性であった世界なのかもしれない。最終的には各自の喪失を持って大人へ脱皮したカフカ少年に収斂し現実社会へ復帰する形で幕を閉じる。

    但し本作品は現実と非現実との区切りが比較的はっきりかつ唐突なところがあり、村上作品の持つ浮遊感みたいなものは少なめであったように感じる。

  • 47章のところで涙腺が崩壊しました。

    号泣しました。本読んで涙がでることは今回が初めてです。
    カフカ少年の佐伯さんとの恋とナカタさんと星野青年による旅の話が交互に進んでいく話です。ちょっと物語として読むと「???」ってなったけど登場人物から哲学を教えてもらってるという感覚で読んでました。
    47章と48章の共通していたことは亡くなった人の記憶や一部は生きている人の中で生き続けることみたいなのが素敵だと思えた。
    死んだら終わりじゃなくて、誰かの中で生きているみたいな。

  • 四国といえば遍路である
    むかし、弘法大師さまが様々な奇跡をおこし
    人々を助けたという伝説が、四国の各地に残っていて
    そこへ向かう道すがら、ナカタさんも様々な奇跡を引き起こす
    だいたい弘法大師のそれとは似つかぬ不吉な奇跡ばかりだったが
    しかしトラック運転手のホシノ青年や
    女衒のカーネル・サンダーズ
    そういった、次々登場する狂言廻しに導かれ
    物語のなかを突き進んでゆく
    そんなナカタさんは、影を半分失った男だった
    あるいは、ナカタさん自身が実体を失った影なのだろうか

    ある意味では自己犠牲的な父との向きあいを避け
    家出したカフカ少年は
    四国に来て象徴的、またひょっとすると現実的に母と姉を犯した
    それはしかし、カフカ少年にとって明らかなる堕落だった
    父の予言をいいとこだけつまみ食いしたという意味でもそうだが
    それ以上に、自分を甘やかしてくれる人を求め
    時にそれを、夢の中とはいえ、力でねじ伏せた
    その事実に打ちのめされた彼は
    みずからの抱える恐れの源泉
    すなわち、なぜ母親は自分を捨てたのかという疑問に向きあうべく
    森の奥深くに入り
    「世界の終わり」を思わせる場所へとたどりつく
    観念として息子にとりつこうとする父のエゴを払いのける強さは
    そのように獲得されねばならなかった
    頼れる大人たちに導かれ
    カフカ少年が、自分の影を捨てずに済んだことには
    やや不満を持つ読者もいるだろうが
    15歳の少年なんだから、保護される権利だって当然あるはずだ

  • 上巻に引き続き。
    全体で見ればファンタジーなのだろう。そしてそれっぽい言葉を色々な登場人物が幾つも使う。15歳の少年にしては話す言葉が大人びすぎている(大人でも使わない・・・)し、なんだかはっきりとしたオチもないし、そこに必要があるのかわからない性描写は入るし、不自然といえば不自然。しかしそういった一つ一つの要素は全然邪魔な感じがしないし、いちいち出てくる不可解な謎やら現象に対してツッコミやオチがないものの、淀みなく物語が進んでいき進んでいくことに対してこちらも何の疑問も思わずに読むことができる。これが村上氏の文章の味なのかと認識した。ほかの作者が書いたら恐らく長ったらしいし難しい言葉を並び立てて気取ってるだけでこの世界に入り込めない、なんてことも起きる可能性があっただろう。書いてみないとわからないことだが。書いて読んでみるとそれとわかるのだろう。

    とりあえず、大公トリオをYouTubeで聴いてみた。関連動画にジャンルも編成も違うコルトレーンのMFTもあったが、これは当然のことだろう。大勢のハルキストが同じ行動をとったに違いない。やれやれ。

  • ズバリ「父親殺し」の物語です。子にとって親は大切だと言われるけれど、親がクソ過ぎたらどうすればいいのだ。ネグレクト、虐待、はたまた子殺し。そうだ親を殺すしかない。実に合理的でありながら、狂気の沙汰ではありません。しかも親を殺しても問題は解決ではない。トラウマや愛着障害やPTSDなどの目に見えない心の闇が境涯つきまといます。刑法でも裁かれます。親を殺して何とも思わないのなら異常者、思い悩んでも結果は異常者です。親本人よりもタチの悪い一種の呪い。そういう抽象的な観念を明確な比喩に置き換えて、ストーリーを仕上げていると思います。同時に「母親赦し」という光のある展開でもあると思います。誰がなんと言おうが村上春樹は凄い。考え方云々以上につまらないのはちゃんと読んでないだけだと思う。

  • 僕が求めている強さは、買ったり負けたりする強さじゃないんです。外からやってくる力を受けて、それに耐えるための強さです。不公平さや不運や悲しみや誤解や無理解に静かに耐えて行くための強さです。田村カフカ

    人ってのは生きるために生まれてくる。それなのに、生きれば生きるほど俺は中身を失っていって、ただの空っぽな人間になっていったみたいだ。そしてこの先さらに生きれば生きるほど俺はますます空っぽで無価値な人間になっていくのかもしれない。それは間違ったことだ。その流れをどこかで変えることはできるのだろうか。星野

    下巻もあっという間に読み終えた。
    下巻の方が上巻に比べ、頭を使いながら
    描写を浮かべながら、前後の話を
    思い出して繋げながら読んだ。
    最後、終わり方が期待していた
    ものではなかったが読み終えた達成感が
    満足させた。
    村上さんは、性や肉体そのもの、もちろん精神についても、に徹底的に自分の根本を見出して発信しているのだろうと思った。
    なぜ?
    そこをもっと知りたい。なぜそう考えるのか。
    蛇足であと一つ。
    ナカノさんが死んでしまってホシノくんが
    深く深く悲しむ場面が淋しかった。

    登場人物みんながなんか文化人みたいな哲学的?メタファーとかよくわからないが、大野さんの兄にしろ、そんな人ばかりじゃ疲れるよ。
    まあそうしなきゃ成り立たないのかもだが。

  • 入り口は、開けたら閉めないと。
    誰もが見つけられる、気づける場所ではない。

    自分を終わらせるのか、進むのか。
    自分に決められている、自分には分からない先への行動。

    正しい、正しくないは、誰にもわからない。

  • ・複雑で入り組んだストーリーだけれど、骨格は誰からも愛されず育った15歳の青年が父を乗り越え、母を愛し許す旅をし、自分に向き合えるようになる話、だと思う

  • 心から人を愛するのって
    本当に胸が苦しくて、本当に幸せなんだろうな、と感じました。

    その人の仕草や部分、全てが愛おしくて
    その人が居た場所は特別になる。

    人間の美しさを感じられる作品でした。

  • 何て感想を言えばいいのか正直わかんない。

    結局なんだったんだろうって気持ちと何だか切ない気持ち。

    ただ、佐伯さんが自分自身について書き続けたものを最後に焼き捨ててもらいたいって気持ちが非常に共感できる。
    「書くということが大事だったのです。書いてしまったものには、その出来上がったかたちには、何の意味もありません」

    私がいつも書いてるものもきっとそういうこと。
    書くということが大事なんだ。
    卒論のテーマっぽくなっちゃった…

    とりあえず、ナカタさんと星野青年の友情が素晴らしい!
    2009年11月06日

著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。2019年8月7日発売の『文学界』でロングインタビュー「暗闇の中のランタンのように」掲載。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月末に刊行予定。

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