東京奇譚集 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2007年11月28日発売)
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本 ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784101001562

感想・レビュー・書評

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  • 「品川猿」は春樹ワールド。掛け値なしに面白い。非現実的な設定でありながら、最後はこんな猿がいてほしいと思えてくる。私も持ち去ってほしいものがある。

    「偶然の旅人」のような偶然はいくつも体験した。虫の知らせのようでもあり、必然でもあるような気もする。強い思いが偶然を引き寄せる。
    我々は日常的に起こる偶然の一致を見逃しているだけという発想にびっくりした。本当にそうかもしれない。

    「ハナレイ・ベイ」
    アメリカンエクスプレスのカードでサメに襲われた息子の火葬費用を払う。起こった事実を受け止める間もなく、心を現実が追い越し、置き去りにしていく。
    なぜなのか片脚のサーファーは母には見えない。それでも見ようとする母は強靭なメンタルと愛を持っている。

    「どこであるらそれが見つかりそうな場所で」
    突然の喪失ショックで、中間世界を彷徨ってしまったのか。呼ばれたけれど戻ってきたのか。
    そう言えば、母が亡くなる前に、夢の中で死んだじいさんに手を引っ張られたと話していた。

    「日々移動する腎臓のかたちをした石」
    「ねえ、淳平くん、あらゆるものは意思を持っているのよ。」風にも、石にも。きっと小説の中の石も。
    学生時代、哲学の授業で「出会いの哲学」を学んだ。それにも少し通じる。しかし、村上春樹さんは不思議なストーリーでずんずん読ませ、その中に箴言や哲学を落とし込む。やれやれ、まいった。

    • ゆっきーさん
      私もこんな猿がいたらな〜と考えたことを思い出しました。
      ハナレイ・ベイの苦しさ切なさも感想を見て思い出し、今また胸がぎゅっとなりました。
      こ...
      私もこんな猿がいたらな〜と考えたことを思い出しました。
      ハナレイ・ベイの苦しさ切なさも感想を見て思い出し、今また胸がぎゅっとなりました。
      こちらも深い短編たちで、また読んでみたくなりました!
      村上春樹さんの独特な着眼点、ツボです(^○^)
      2024/07/15
    • まいけるさん
      コメントありがとうございます。おかげさまでこの短編集も堪能できました!村上春樹さんは一年に何回か読みたくなります。文体も後を引くんですよね。...
      コメントありがとうございます。おかげさまでこの短編集も堪能できました!村上春樹さんは一年に何回か読みたくなります。文体も後を引くんですよね。
      2024/07/15
  • ハルキング、恐るに足らず。(ポケモンみたいにゆーな!)

    苦手意識のあった世界のムラカミ。
    二十年ぶりくらいに読んでみたら、普通に面白く、ホッとした。

    はじめての出会いは高校生の時、ひとつ年上の女の子の文通相手が『ノルウェイの森』をおすすめしてくれて読んだ。エロかった。
    刺激の強いシーンのおかげで、エロかった、しか記憶にない。

    二番目の出会いは『ねじまき鳥クロニクル』。
    妻がいなくなった、くらいしか覚えてないが夢中で読んだ。

    その『ねじまき鳥クロニクル』が、Eテレの100分de名著で特集されていたので、いっちょ村上春樹でも読んでみるか、と、今回、積読の本作を紐解いた。

    ちなみに新潮文庫の夏のプレミアムカバー、鮮やかなレッド。

    とても翻訳の上手な海外小説みたいな読み心地。
    謎と不思議の多い展開と相まって次へ次へと先が気になり読みすすめた。

    比喩も素晴らしく、変な引っ掛かりもないのに印象に残る。

    言わんとしていることは、わたしにははっきりとは分からない。

    でも、言語化できない、さみしさのようなもの、を感じる。

    ハマっている方が世界中にたくさんいるのも分かる、と思った。



    • 傍らに珈琲を。さん
      5552さん、こんばんは。
      村上春樹、今は大好きなのですが、初めて『ノルウェイの森』を読んだのは母の本棚からでした。
      で、当時の私は、エロい...
      5552さん、こんばんは。
      村上春樹、今は大好きなのですが、初めて『ノルウェイの森』を読んだのは母の本棚からでした。
      で、当時の私は、エロいと思って途中で読むのをやめたことを思い出しました。
      初めましての感想が5552さんと同じだなーと思ってコメントです 笑
      勿論、大人になってから読み直して良さを感じましたが。
      2025/04/26
    • 5552さん
      傍らに珈琲を。さん、おはようございます。
      『ノルウェイの森』、やっぱり、刺激強いシーンが印象に残りますよね!
      わたしはひとつ年上の文通相手か...
      傍らに珈琲を。さん、おはようございます。
      『ノルウェイの森』、やっぱり、刺激強いシーンが印象に残りますよね!
      わたしはひとつ年上の文通相手からすすめられたので、急にそのひとがぐんと大人っぽく見えました。
      傍らに珈琲を。さんはお母様の本棚でみつけられたんですね。
      それも、少し衝撃ですよね。
      またうん十年越しに再チャレンジしてみたいなー、と思います。
      2025/04/27
  •  初めて村上春樹さんの本を読んでみました。これまで村上春樹さんと言えばかなりハードルが高い印象がありました。

     ただ実際に読んでみると非常に読みやすかったです。本当に評価される作品とは読みやすくかつ文芸的な楽しみや学びも充実するものだと思いました。

     本書は5つのストーリーから成ります。前半2作はリアルさが強い作品のでした。現実味が強いため、親近感が湧きやすく感動できる作品でした。
     3.5作目はリアルさの中にもファンタジーの要素も含めており、不思議な気持ちになりました。特に3作目は最も気に入っています。夫が謎の失踪してしまい、それを探偵のような人物が原因を探るというストーリーです。いかにも推理小説と思いきや、最終的に論理的な解決もしないですし、結局探偵が何者なのか、何を探していたのか、夫はどうして失踪してしまったのか、全てが謎のまま幕を閉じます。全く腑に落ちない作品ですが、不思議と読了後はスッキリとした気持ちになりました。
     4作目はリアル要素強めでしたし、話の展開もシンプルでした。しかし、私はなぜか4作目だけが理解できませんでした。これは私の読解力不足もあるかと思いますが、もしかしたら村上春樹さんのマジックが隠されているのかもしれません。

     総評として本作は非常に読みやすく考えさせられる作品でした。私はこの東京奇譚集を読んで良かったと言うよりも村上春樹さんの作品を読めて良かったと思いました。
     今後も村上春樹シリーズを更新していきたいです。

  • 村上春樹氏の身近に起きたらしい都会の綺譚5編。
    「偶然の旅人」
    見知らぬ女性との偶然の出会いから、絶っていた家族との交流を果たしたピアノ調律師。
    「ハナレイ・ペイ」
    サーファーの息子を海で突然失った母親。彼を見つめるその後の人生。
    「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
    都心のマンションの階段から突然失踪した男性を捜索する男。
    「日々移動する腎臓のかたちをした石」
    運命に関わる女性は3人と教えられた男。その二人目の女性との出会いと別れ。
    「品川猿」
    名前を忘れてしまう女性の本当の心の闇。

    省略しすぎたかしら、読んでも思い出せないかも。
    東京が舞台というところが魅力的。

    短編とはいえ、村上春樹氏っぽい文章の流れと折々の会話。ですから、綺譚なのですが、あらそんなこともありそうですねと受け入れてしまう。
    「どこであれ〜」が、日々東京の何処かでこんな事が起きていそうで好きですね。「品川猿」は、綺譚というより、通常の村上春樹という感じでした。

    • ひろさん
      おびさん、こんばんは(*^^*)
      おびさんの“好き”なポイントがとても素敵ですね。
      「品川猿」は他の短編集で読みましたが、苦手意識のある村上...
      おびさん、こんばんは(*^^*)
      おびさんの“好き”なポイントがとても素敵ですね。
      「品川猿」は他の短編集で読みましたが、苦手意識のある村上作品の中でも、いいなぁと思える話でした。
      2022/05/07
    • おびのりさん
      ひろさん おはようございます。
      コメントありがとうございます。
      村上春樹さんの作品の中では、文章が具体的でなじみやすいですよね。
      なので、こ...
      ひろさん おはようございます。
      コメントありがとうございます。
      村上春樹さんの作品の中では、文章が具体的でなじみやすいですよね。
      なので、これは、本当にフィクションなのかもと思って読みました。
      最後に「品川猿」で我慢できないで 村上調作品投入したとか。
      ゴールデンウィーク忙しかったでしょう。
      明日から 仕事かな?
      ラスト1日 頑張ってね。
      2022/05/08
    • ひろさん
      おびさん、おはようございます(*^^*)
      ほんと、ノンフィクション?!って感じさせられますよね♪苦手と言いつつ、いつかまた村上作品に挑戦して...
      おびさん、おはようございます(*^^*)
      ほんと、ノンフィクション?!って感じさせられますよね♪苦手と言いつつ、いつかまた村上作品に挑戦してみようかな。

      ありがとうございます( ´ ` *)
      連休は保育園でのコロナ発生の関係で自宅待機で終わってしまいました。生きづらい世の中ですね。今日は久しぶりに子どもと買い物など行ってきます♪
      おびさんは忙しかったですか?最終日、ゆっくり休めますように(๑˘ ˘๑)*.。
      2022/05/08
  • 5つの話が収録されているが、“どこであれそれが見つかりそうな場所で“と、“品川猿“が特に面白かった。前者は推理もののようでありながらファンタジーで、後者は何より猿が面白くて笑ってしまった。よくこんな猿というキャラクターを思いつくものだと思った。

    「猿の分際でとんでもないことを言うやつだ。」p241

  • 村上ワールドが炸裂した短編も収録された本作。個人的には『偶然の旅人』と『品川猿』が特に面白いと感じた。タイトルにもある通り奇譚な物語が集められた短篇集。不思議なさストーリーばかりだが、どこか現実味もある作品で、5篇とも自分好みな作品。自分の身近にもこんな話がありそうだなと思わされる。
    村上作品にはよくある明確な答えの提示されていない作品も多く、あくまで書き手は中立を保っているところに好感が持てる。どれも丁度良い長さの作品で、読みやすくよい読書時間だったと思わされた。

  • 玉城ティナ、大切にしているのは「インプットの時間」好きな映画や小説はずっとリピート | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]
    https://smart-flash.jp/entame/169964/1

    どこであれそれが見つかりそうな場所でと休む|海外漫画と休む|note
    https://note.com/kaigaimanga/n/n16acaec2c833

    村上春樹原作「ハナレイ・ベイ」出演の村上虹郎さん 「1800円でトラウマを買ってください」|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11887273

    村上春樹 『東京奇譚集』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/100156/

  • 短篇集です。『神の子どもたちはみな踊る』よりこっちの方が好みです。まあ、とにかく村上さんらしい作品集です。
    村上さんはファンが多いと思いますが私はいつも理解できた気がしないです、小説が終わっても放置され取り残されたような気分になる。だからと言って好みじゃないということもないのでこれからも読んでいくでしょう。
    『品川猿』はけっこうお気に入りで、『一人称単数』の中の『品川猿の告白』はぜひとも読もうと思っています。

  • 日常に存在するけれど盲点になって見逃しているであろう、不思議レベルが大から小まで幅広いお話たち。
    どのお話もおもしろくて、自分の身にも奇譚みたいなことが起こってたりしてと考え、楽しくなるのです。

    • まいけるさん
      ゆっきーさん、子育て楽しんでますか?
      私もこの本、今読んでます!
      ゆっきーさん、子育て楽しんでますか?
      私もこの本、今読んでます!
      2024/07/04
    • ゆっきーさん
      ☆まいけるさん☆
      こんばんは!
      子育て、アタフタしながらも楽しんでいます♪
      たいへんなことが多いですが、子の姿を見ると乗り切れますし、勉強に...
      ☆まいけるさん☆
      こんばんは!
      子育て、アタフタしながらも楽しんでいます♪
      たいへんなことが多いですが、子の姿を見ると乗り切れますし、勉強にもなり、親に対する尊敬の気持ちが強くなったりもします。
      そうなんですね!まいけるさんがどう感じるのか気になります。感想が待ち遠しいです(^○^)
      2024/07/05
  • 初めて惹かれた一冊。

    カバーに惹かれたのか、奇譚だからか惹かれたのか、いや、確実に村上ワールドに、しかも初めて惹かれた。

    なんだかずっと苦手だと思っていた食べ物の美味しさを初めて知った時のような感覚。

    喪失を軸に描かれる不思議なストーリーはコーヒーがドリップされて一滴ずつ落ちていくように、心に静かに沁み渡り、やがて言葉にするのが難しい感情で心が満たされていく、そんな世界だった。

    「ハナレイ・ベイ」のサチの平静と動揺、このコントラスト、言葉が倍の感情の波になって押し寄せてくる感覚、そして彼女の心の叫びが確実に心のど真ん中へ響く感覚にたまらなく魅了された。

    • まいけるさん
      何て詩的なレビュー。
      いつもくるたんさんのレビューを拝見すると読みたくなります。
      今、この本、読んでます。
      何て詩的なレビュー。
      いつもくるたんさんのレビューを拝見すると読みたくなります。
      今、この本、読んでます。
      2024/07/04
    • くるたんさん
      まいけるさん♪おはようございます♪
      いつもありがとうございます✩⡱

      この世界観、なんだかハマりました♪
      苦手意識があったけど、村上ワールド...
      まいけるさん♪おはようございます♪
      いつもありがとうございます✩⡱

      この世界観、なんだかハマりました♪
      苦手意識があったけど、村上ワールド、良いですね〜(^^♪︎
      2024/07/04
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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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