東京奇譚集 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.54
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本棚登録 : 8954
感想 : 785
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001562

作品紹介・あらすじ

肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却…。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。

感想・レビュー・書評

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  •  初めて村上春樹さんの本を読んでみました。これまで村上春樹さんと言えばかなりハードルが高い印象がありました。

     ただ実際に読んでみると非常に読みやすかったです。本当に評価される作品とは読みやすくかつ文芸的な楽しみや学びも充実するものだと思いました。

     本書は5つのストーリーから成ります。前半2作はリアルさが強い作品のでした。現実味が強いため、親近感が湧きやすく感動できる作品でした。
     3.5作目はリアルさの中にもファンタジーの要素も含めており、不思議な気持ちになりました。特に3作目は最も気に入っています。夫が謎の失踪してしまい、それを探偵のような人物が原因を探るというストーリーです。いかにも推理小説と思いきや、最終的に論理的な解決もしないですし、結局探偵が何者なのか、何を探していたのか、夫はどうして失踪してしまったのか、全てが謎のまま幕を閉じます。全く腑に落ちない作品ですが、不思議と読了後はスッキリとした気持ちになりました。
     4作目はリアル要素強めでしたし、話の展開もシンプルでした。しかし、私はなぜか4作目だけが理解できませんでした。これは私の読解力不足もあるかと思いますが、もしかしたら村上春樹さんのマジックが隠されているのかもしれません。

     総評として本作は非常に読みやすく考えさせられる作品でした。私はこの東京奇譚集を読んで良かったと言うよりも村上春樹さんの作品を読めて良かったと思いました。
     今後も村上春樹シリーズを更新していきたいです。

  • 短篇集です。『神の子どもたちはみな踊る』よりこっちの方が好みです。まあ、とにかく村上さんらしい作品集です。
    村上さんはファンが多いと思いますが私はいつも理解できた気がしないです、小説が終わっても放置され取り残されたような気分になる。だからと言って好みじゃないということもないのでこれからも読んでいくでしょう。
    『品川猿』はけっこうお気に入りで、『一人称単数』の中の『品川猿の告白』はぜひとも読もうと思っています。

  • 初めて惹かれた一冊。

    カバーに惹かれたのか、奇譚だからか惹かれたのか、いや、確実に村上ワールドに、しかも初めて惹かれた。

    なんだかずっと苦手だと思っていた食べ物の美味しさを初めて知った時のような感覚。

    喪失を軸に描かれる不思議なストーリーはコーヒーがドリップされて一滴ずつ落ちていくように、心に静かに沁み渡り、やがて言葉にするのが難しい感情で心が満たされていく、そんな世界だった。

    「ハナレイ・ベイ」のサチの平静と動揺、このコントラスト、言葉が倍の感情の波になって押し寄せてくる感覚、そして彼女の心の叫びが確実に心のど真ん中へ響く感覚にたまらなく魅了された。

  • 「偶然の旅人」「ハナレイ・ベイ」「どこであれそれが見つかりそうな場所で」「日々移動する腎臓のかたちをした石」「品川猿」の5篇収録。

    仲違いしたままだった姉弟の身に起こったシンクロにシティを描いた「偶然の旅人」、ハワイのカウアイ島でサーフィン中にサメに襲われて無くなった息子を偲んで毎年カウアイ島を訪れるピアニストの心の情景を描いた「ハナレイ・ベイ」の2篇が結構良かった。

    後との3篇は、風変わりで比喩的でちょっと訳がが分からないところのある、著者らしい作品だった。

  • 映画「ハナレイ・ベイ」を観た後で原作を読んでみたくなって。
    まず、サチが団塊の世代だったので驚いた。
    そして映画では大切なことはあまり語られていなかったのに余計な事だけが印象に残っていた気がする。
    原作は映画の印象よりもずっとよく、様々な詳細が語られ、深く響いたし鳥肌が立った。

    さてこの短編集だけど、読み始めから独特で前書きを読んでいるような感覚で、気づくと物語に夢中になっていた。

    そして「どこであれそれが見つかりそうな場所で」に「十月一日の夜」というフレーズがあったのだけど、まさに私がこの本を読み始めたのが10/1の夜で、序文に記されている「その手の体験談」とは行かないまでもちょっとだけそんな偶然を面白がることも出来たいい読書体験になりました。
    「一人称単数」にも品川猿があるみたいなので、これは読んでみたい。

    非常に読みやすく面白かった。

  • 2020年9月3日読了。

    村上春樹による5話の不思議な短編集。

    『偶然の旅人』
    『ハナレイ・ベイ』
    『どこであれそれが見つかりそうな場所で』
    『日々移動する腎臓のかたちをした石』
    『品川猿』

    村上春樹作品は長編しか読んだ事がなかったので短編を読んでみた。
    長編に比べれば断然読みやすい。難解な表現・独特な比喩も少なく、他の作品を難しそうと敬遠してる人でも割とすんなり読めると思う。
    おそらく実話を元にした『偶然の旅人』
    フィクションであれ実際にありそうな物語の『ハナレイ・ベイ』あたりは話にも入り込み
    やすかった。

    だが、そこは村上春樹。
    後半の3作品はそれなりに難解。
    『どこであれそれが見つかりそうな場所で』は、意味深な言葉や答えのはっきりしない読後感など、受け止め方・感想は読み手次第といった村上節炸裂な作品。

    『品川猿』は、言葉を話す猿が登場したりとファンタジー色強めの作品だが、他の作品とは少し毛色が違い楽しめた。
    最新短編集の『一人称単数』にも品川猿が登場するようなので気になる所。

    ハワイでサーフィン中に鮫に襲われた息子とその母親を描く『ハナレイ・ベイ』は、原作で40ページほどの作品なのだが映画化もされているので観てみようと思う。



  • 日常は淡々と過ぎているようでも、目を凝らせばいつも波がたっている。押し寄せたり引いたり凪いでいたりする。感情も運命も、流されたり泡だったり渦巻いたり。

    アルバムの写真のようには切り取れなかった、誰かのかけがえのない風景を味わえた。


    冒頭で、村上春樹本人の経験として小さな奇跡が語られる。その余韻のためか、その後の4編もとても実話感があり、物語に書き手がいることを忘れてしまう。

    登場人物だけが私に対峙して、ゆっくりと口を開いて語りだすような、親密な空気をもつ短編集になっている。

  • 村上春樹によるちょっと奇妙で不思議な短編集。
    誰にでも起こりうるかもしれない不思議な出来事。
    ある種の意味を持ち、その人のその後の人生に多大な影響をもたらすこともあるかもしれないし、とるに足りない些細な出来事なのかもしれない。
    結局どう捉えるかはその人の考え方次第。

    中でも虫の知らせのような不思議な偶然の一致に驚く『偶然の旅人』、自分の名前を思い出せず途方に暮れる『品川猿』が面白かった。

    一番の期待作は映画『ハナレイ・ベイ』の原作でサーファーの息子を亡くした母・サチの物語。
    息子の命日に息子が亡くなった地ハナレイ・ベイを毎年訪れるサチ。
    淡々と息子の死と向き合うサチは、性格的にサバサバしていて精神的に強そうで、読んでいて正直拍子抜けした。
    けれど、亡き息子に纏わる奇妙な現象を耳にした時のサチの動揺ぶりに心を強く揺さぶられる。
    強がっている人ほど弱さや悲しみを素直を表面に出せないものだ。
    息子を亡くした悲しみも悔しさも全てそのまま受け入れて、ただひたすら毎年ハナレイ・ベイを訪れるしかないサチがとても切ない。
    サチ役の吉田羊さんの演技にも期待したい。

  • ハナレイ・ベイが映画化される(された)とのことで、春樹作品は、ほとんど読んだことがないのですが(天邪鬼なのであえて避けてると言った方が正解かも)、手に取りました。
    どのストーリーも良かったのですが、偶然の旅人と品川猿がすごく良かったな。
    不思議なんだけど、腑に落ちるという感じ。

  • 処分する前に読む母の村上本 その②
    5つの短編集 1日でさらっと読める

    前回久しぶりの村上本「1Q84」で気になった言葉がここにも

    1話の「偶然の旅人」で姉にゲイだと告げたあと別れてしまった弟が

    「説明なんかしたくなかったんだ」
    「いちいち説明なんかしなくてもわかってもらいたかったんだと思う」
    「とくに姉さんにはさ」

    1Q84では
    「説明しなければわからないということは
    説明してもわからないということだ」

    私はこれが村上春樹の小説に対する態度なんだと勝手に理解している

    いずれも東京でおこる少々不思議な物語
    2話の「ハナレイベイ」原作者だとは知らず驚く
    羊さんの顔がちらついて 先入観なしに読みたかったかも

    最終話の「品川猿」では猿が喋って名前を盗むというところは突飛だけど
    村上春樹らしくてなんの違和感もなく読み進んでしまう
    わりとありがちなカウンセリングの経過ではあるけれど
    主人公はもちろん高校の寮で一緒だった自殺した松中優子や
    40代の区のカウンセラー坂木哲子とその夫
    魅力的な登場人物についてもっとつっこんだ長編を読みたくなる

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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