東京奇譚集 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.53
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本棚登録 : 7364
レビュー : 679
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001562

作品紹介・あらすじ

肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却…。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹によるちょっと奇妙で不思議な短編集。
    誰にでも起こりうるかもしれない不思議な出来事。
    ある種の意味を持ち、その人のその後の人生に多大な影響をもたらすこともあるかもしれないし、とるに足りない些細な出来事なのかもしれない。
    結局どう捉えるかはその人の考え方次第。

    中でも虫の知らせのような不思議な偶然の一致に驚く『偶然の旅人』、自分の名前を思い出せず途方に暮れる『品川猿』が面白かった。

    一番の期待作は映画『ハナレイ・ベイ』の原作でサーファーの息子を亡くした母・サチの物語。
    息子の命日に息子が亡くなった地ハナレイ・ベイを毎年訪れるサチ。
    淡々と息子の死と向き合うサチは、性格的にサバサバしていて精神的に強そうで、読んでいて正直拍子抜けした。
    けれど、亡き息子に纏わる奇妙な現象を耳にした時のサチの動揺ぶりに心を強く揺さぶられる。
    強がっている人ほど弱さや悲しみを素直を表面に出せないものだ。
    息子を亡くした悲しみも悔しさも全てそのまま受け入れて、ただひたすら毎年ハナレイ・ベイを訪れるしかないサチがとても切ない。
    サチ役の吉田羊さんの演技にも期待したい。

  • 初めて惹かれた一冊。

    カバーに惹かれたのか、奇譚だからか惹かれたのか、いや、確実に村上ワールドに、しかも初めて惹かれた。

    なんだかずっと苦手だと思っていた食べ物の美味しさを初めて知った時のような感覚。

    喪失を軸に描かれる不思議なストーリーはコーヒーがドリップされて一滴ずつ落ちていくように、心に静かに沁み渡り、やがて言葉にするのが難しい感情で心が満たされていく、そんな世界だった。

    「ハナレイ・ベイ」のサチの平静と動揺、このコントラスト、言葉が倍の感情の波になって押し寄せてくる感覚、そして彼女の心の叫びが確実に心のど真ん中へ響く感覚にたまらなく魅了された。

  • ハナレイ・ベイが映画化される(された)とのことで、春樹作品は、ほとんど読んだことがないのですが(天邪鬼なのであえて避けてると言った方が正解かも)、手に取りました。
    どのストーリーも良かったのですが、偶然の旅人と品川猿がすごく良かったな。
    不思議なんだけど、腑に落ちるという感じ。

  • 『偶然の旅人』と『日々移動する腎臓のかたちをした石』が好きだった。
    日常の中には気付かれない程度に、偶然の一致や出会いや巡り合わせといったものが組み込まれている。それがふとした瞬間にはっと気付いて、こんなことがあるものだろうかと不思議に思う。『偶然の旅人』から『品川猿』に向かって、日常はどんどん奇妙さを増してゆく。そしてその奇妙さに、こんなこともあるのだな、と不思議に思いながらも日常の一場面として受け入れてゆくのだ。
    一体、どこまでが日常と呼べる範囲であったか? こことは違う世界へ足を踏み入れてはいなかったか? 分からない。すべては地続きで、気が付いた時には手遅れなのだ。

  • 映画化もされた「ハナレイ・ベイ」も収録された短編集。
    まさに奇譚というべき不思議なお話たち。
    「品川猿」予想外すぎるけど好き。

  • 村上春樹らしい、不思議な味わいのある本。最初と最後の一編がなかなかよかった。

    でも村上春樹がもっと若いときの本の方が好きかも知れない・・・ということで、星4つ。
    (「1973年のピンボール」とかね。・・・古いか)

  • 「ハナレイ・ベイ」映画を見てから、小説を読みましたが、映画の方が内容がもっと広がってた。

  • ★3.0(3.52) 2014年11月10日(初版2005年9月)発行。「偶然の旅人」「ハナレイ・ベイ」「どこであれそれが見つかりそうな場所で」「日々移動する腎臓のかたちをした石」「品川猿」の5つの短編集。奇譚ではあるが、東京は題名についてなくても・・・ですね。著者の本、特に長編小説を読み漁ってきたが、個の短編小説はあまり、著者らしさが見られない本ですね。どちらかというと、百田尚樹が書いたと言えば、そんな感じもするのだが。内容は奇譚というだけあって、最初の小説以外は、非現実的な内容ですね。

  • とても好きな作品ですね。どこがどう好きか?と問われると、全くもって説明できないのですが、なにしろ、フワッとホワッと好きな作品なのです。この本に収録された短編5編、しみじみと、しみじみと、、、こう、いいんですよね。めっちゃ軽いし、まあ、なにも残らない、気もするんですが、いや、んなこたあ、ねえだろう。確かに、心に、なんらかの何かは、あっただろう?とか、なんだか、不思議に安らぐような、うん、とても不思議で、とても好きな作品です。

    「偶然の恋人」
    物凄く「回転木馬のデッド・ヒート」的ですよね。村上さんが、誰かから聴いた話を、小説にしてみました、な体の作品。それは本当なのか嘘なのか。村上春樹にしか分からない。でも、なんだか、とても好きです。この作品群の中では、一番好きです。チャールズ・ディッケンズの小説は、今の所、自分の人生の中では、一度も読んだことはないですね。

    「ハナレイ・ベイ」
    主人公のサチは、物凄く、映画「ピンポン」出演の時あたりの夏木マリのイメージがしました。ショートカットの快活チャキチャキ美人おばさん、って感じでしょうかね。サチの息子の名前が、ハワイの民宿のスタッフが間違えて覚えた(であろう)「テカシ」という名前でしか、登場しないのが、なんだか印象的。たぶん、「タカシ」なんでしょうね。
    「エルヴィス(たぶん、プレスリー)」と「エルヴィス・コステロ」と「ビーズ」に関する、サーファー二人組とサチの会話も、なんだか凄く好き。「女のこと上手くやるためのたった3つの冴えたやり方」的な話も、すっげえ好きですね。

    「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
    タイトルからして好きです。春樹節、全開ですね。ミスタードーナツで好きな銘柄は何?って言い合う会話、好きです。「オールドファッション」って、俺も即答できる人間になりたいなあ。ハードボイルドですよね。

    「日々移動する腎臓のかたちをした石」
    タイトルからして好きです。村上節、全開ですね。こういうタイトルがなにしろ好き。何故かはわからない。好きなモノはしょうがない。
    高い場所でパフォーマンスができる人は、それだけで尊敬します。だって、怖いですやん、高い場所って。高い場所に立つと、おしっこチビりそうになるタイプですね、自分は。

    「品川猿」
    なんで猿やねん、という、すんごい不思議な作品。なんでホンマモンの猿が犯人、犯ザル?やねん。人間語、しゃべるし。ぶっ飛んでますね。でも、なんだか、とても味わい深く面白いです。「嫉妬の感情」は、とてもとても怖い。ということは、ヒシヒシと伝わってきますね。松中優子は、どれほどに凄い美人だったんだろう。映画化されたら、誰が演じるのか?気になりますね。超正統派な美人女優が演じて欲しいですね。

  • 久々の村上春樹.短編集なので読みやすかった.
    「偶然の旅人」が好きかな.村上春樹感がそこまで強くなくて読みやすい.
    短編で村上春樹感強いと,慣れる前に終わってしまって物足りないというか.
    長編だとどっぷり浸れていいんだけど.

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市・芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴があるが、芥川賞は候補に留まっただけで受賞しておらず、賞に対する批判材料となっている。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年の発表時期は日本国内でニュースになっている。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけており、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年5月9日、対談集『本当の翻訳の話をしよう』を刊行。

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