東京奇譚集 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 7437
レビュー : 687
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001562

作品紹介・あらすじ

肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却…。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 初めて惹かれた一冊。

    カバーに惹かれたのか、奇譚だからか惹かれたのか、いや、確実に村上ワールドに、しかも初めて惹かれた。

    なんだかずっと苦手だと思っていた食べ物の美味しさを初めて知った時のような感覚。

    喪失を軸に描かれる不思議なストーリーはコーヒーがドリップされて一滴ずつ落ちていくように、心に静かに沁み渡り、やがて言葉にするのが難しい感情で心が満たされていく、そんな世界だった。

    「ハナレイ・ベイ」のサチの平静と動揺、このコントラスト、言葉が倍の感情の波になって押し寄せてくる感覚、そして彼女の心の叫びが確実に心のど真ん中へ響く感覚にたまらなく魅了された。

  • 村上春樹によるちょっと奇妙で不思議な短編集。
    誰にでも起こりうるかもしれない不思議な出来事。
    ある種の意味を持ち、その人のその後の人生に多大な影響をもたらすこともあるかもしれないし、とるに足りない些細な出来事なのかもしれない。
    結局どう捉えるかはその人の考え方次第。

    中でも虫の知らせのような不思議な偶然の一致に驚く『偶然の旅人』、自分の名前を思い出せず途方に暮れる『品川猿』が面白かった。

    一番の期待作は映画『ハナレイ・ベイ』の原作でサーファーの息子を亡くした母・サチの物語。
    息子の命日に息子が亡くなった地ハナレイ・ベイを毎年訪れるサチ。
    淡々と息子の死と向き合うサチは、性格的にサバサバしていて精神的に強そうで、読んでいて正直拍子抜けした。
    けれど、亡き息子に纏わる奇妙な現象を耳にした時のサチの動揺ぶりに心を強く揺さぶられる。
    強がっている人ほど弱さや悲しみを素直を表面に出せないものだ。
    息子を亡くした悲しみも悔しさも全てそのまま受け入れて、ただひたすら毎年ハナレイ・ベイを訪れるしかないサチがとても切ない。
    サチ役の吉田羊さんの演技にも期待したい。

  • ハナレイ・ベイが映画化される(された)とのことで、春樹作品は、ほとんど読んだことがないのですが(天邪鬼なのであえて避けてると言った方が正解かも)、手に取りました。
    どのストーリーも良かったのですが、偶然の旅人と品川猿がすごく良かったな。
    不思議なんだけど、腑に落ちるという感じ。

  • 『偶然の旅人』と『日々移動する腎臓のかたちをした石』が好きだった。
    日常の中には気付かれない程度に、偶然の一致や出会いや巡り合わせといったものが組み込まれている。それがふとした瞬間にはっと気付いて、こんなことがあるものだろうかと不思議に思う。『偶然の旅人』から『品川猿』に向かって、日常はどんどん奇妙さを増してゆく。そしてその奇妙さに、こんなこともあるのだな、と不思議に思いながらも日常の一場面として受け入れてゆくのだ。
    一体、どこまでが日常と呼べる範囲であったか? こことは違う世界へ足を踏み入れてはいなかったか? 分からない。すべては地続きで、気が付いた時には手遅れなのだ。

  • 大仰な展開も言い回しもさほど見られずリラックスした文章がなんだか心地よい。
    それくらいでもいいかも知れない。
    奇妙な合致が時に起こる。
    必要としてたものが一番必要なタイミングで贈られたり。
    何かのご褒美みたいに、思いがけない不思議な出来事が時に起こる。

  • 不思議な出来事について語った話から成る短編集とのことだが、それほど不思議だと感じられなかった。
    「ハナレイ・ベイ」と「どこであれそれが見つかりそうな場所で」はわかりにくかった。人間の言葉を話す猿が出てくる「品川猿」が不思議な話で、一番面白いと感じた。

  • 映画化もされた「ハナレイ・ベイ」も収録された短編集。
    まさに奇譚というべき不思議なお話たち。
    「品川猿」予想外すぎるけど好き。

  • 村上春樹らしい、不思議な味わいのある本。最初と最後の一編がなかなかよかった。

    でも村上春樹がもっと若いときの本の方が好きかも知れない・・・ということで、星4つ。
    (「1973年のピンボール」とかね。・・・古いか)

  • 「ハナレイ・ベイ」映画を見てから、小説を読みましたが、映画の方が内容がもっと広がってた。

  • ★3.0(3.52) 2014年11月10日(初版2005年9月)発行。「偶然の旅人」「ハナレイ・ベイ」「どこであれそれが見つかりそうな場所で」「日々移動する腎臓のかたちをした石」「品川猿」の5つの短編集。奇譚ではあるが、東京は題名についてなくても・・・ですね。著者の本、特に長編小説を読み漁ってきたが、個の短編小説はあまり、著者らしさが見られない本ですね。どちらかというと、百田尚樹が書いたと言えば、そんな感じもするのだが。内容は奇譚というだけあって、最初の小説以外は、非現実的な内容ですね。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月7日発売の『文学界』で短編小説を2作掲載。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月末に刊行予定。

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