世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)新装版 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101001586

感想・レビュー・書評

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  • 頭蓋骨、夢、ユング、記憶の在処、といった似通ったお題に対して、全く違った作品。
    はなはだしいほどリアルな京極「狂骨の夢」
    バーチャルファンタジーな村上「世界の終わり」
    一人の記憶が二人に共存する狂骨。
    一人の意識が二つの世界を想像する世界の終わり。
    最終的に幻覚的現象にも理論的な考察を示す小説と、あくまで、非現実的な要素を読み手に考察させる小説。
    私は、世界の終わりの世界は、ハードボイルドワンダーランドの計算士の男の脳内の核に出来上がった一つの意識世界として読んだ。
    引き剥がされた影は、その世界からの逃避を計画する。男は影との別離を決意してその世界にとどまる。影の逃避は、ハードボイルドの世界の男との意識の統一化と思ったのだけれど、それは、わからない。

    「やれやれ」って、下巻で7回出てきたと思う。目についちゃうんですよ。

    • 傍らに珈琲を。さん
      羊をめぐる冒険、こちらも懐かし~

      あ、本当だ、大学生だ。
      こうやって"大学生"とか、例えば"高校生"とか、
      一定の懐かしさを皆が持ってる○...
      羊をめぐる冒険、こちらも懐かし~

      あ、本当だ、大学生だ。
      こうやって"大学生"とか、例えば"高校生"とか、
      一定の懐かしさを皆が持ってる○○生を使っちゃうのはズルいよね。
      それだけでもう充分青いしセピアだしほろ苦いですもんね。
      2023/08/24
    • おびのりさん
      寝落ちしてました。
      デビュー作から、斬新で、文章が特殊で、一度はその世界感に惹かれるものがあります。
      驚くのは、若い方でも読まれる方が多い事...
      寝落ちしてました。
      デビュー作から、斬新で、文章が特殊で、一度はその世界感に惹かれるものがあります。
      驚くのは、若い方でも読まれる方が多い事。
      何か一作ぐらい読んでおいても、良いんじゃないかしら。ほら、悪態レビューお待ちしてますよ。
      2023/08/25
    • みんみんさん
      悪態レビュー前提なのね(꒪⌓︎꒪)
      今日イッパツ借りてくるわ!!
      悪態レビュー前提なのね(꒪⌓︎꒪)
      今日イッパツ借りてくるわ!!
      2023/08/25
  • 上に続いて下の感想



    〔ハードボイルド・ワンダーランド〕で、〈私〉とぽっちゃり孫娘は、地の底の暗闇の中で何とか奥の祭壇に辿り着き、意識の核に思考回路を組み込んだ老博士と再会し、〈私〉の意識は人工的に増設され、現在三つの回路が存在している事を知らされる。

    老博士は修正するはずだったが、記号士たちの妨害によって計画は失敗し、このまま放っておけば第三回路〔世界の終り〕の意識の中で永遠に生き続けることになるらしい。

    地上に戻り、ぽっちゃり孫娘と〈私〉のアパートで身なりを整えながら、意識が第三回路に切り替わるまでの残りの24時間をいかに過ごすか考えた。
    そして、先日世話になった図書館のリファレンス係の女の子に電話をかけ、食事の約束をした。
    ぽっちゃり美人孫娘から身体の関係を求められたが、謎の本能がそれを押しとどめ、断った。

    最後の夜を図書館女子と過ごし、帰れたらまた会いに行くと言って別れた。最後の時に、ぽっちゃり孫娘と電話で会話し、もしも〈僕〉を冷凍保存して治療できたら性行為する約束をした。



    交互に進んでいた〔世界の終り〕は、〈僕〉の第三回路の世界で、そこに住む人々には心が無く、時間という概念も無く一瞬にして永遠。

    壁の中に入るには影と切り離され、影は徐々に弱っていく。それに併せて徐々に街と同化し、影が死ぬと心が無くなり「完全」になる。しかし、影を逃して心を残してしまった者は、森に追放されるというのが、この街の仕組みらしい。

    〈僕〉は夢読みを手伝ってくれている図書館の彼女の心を取り戻す可能性を唄によって見出す。そして自我を少しずつ取り戻し始めた様子の彼女。

    〈僕〉は自分の影と約束していた脱出計画を実行するが、完遂目前で、影にやっぱりここに残ると伝える。説得する影に、彼女の心を見つけた事やこの街を作ったのは自分自身だと認識した事について話す。

    そして影だけが去っていき、そこは世界の終りになった。





    下で二つの物語の繋がりが分かったが、内容的には微妙だったかな。

    〔ハードボイルド・ワンダーランド〕の結末は、おそらく〔世界の終り〕での脱出にかかっていたが、〈僕〉が街に残る方を選んだ事でバッドエンド。

    〔世界の終り〕の最後は、図書館の彼女の心を取り戻して森で一緒に暮らそうと思い、街に残ってみたものの世界は終わってしまい、バッドエンド。

    つまり、人の心と恒久的世界は共存し得ないという意味なのかなぁと感じた。

    作中に出てくる重要な唄はダニー・ボーイ、歌手ではボブ・ディランやその他たくさん、小説では異邦人やカラマーゾフの兄弟等、ウイスキーは色々。
    一部の小説とウイスキーの銘柄は知っていたが、その他は知らない事ばかり。不自然に固有名詞を出しすぎているようにも思えてしまったが、きっと知識ある人が読めば、微細な感情の違いだったり、雰囲気だったりを味わえるようになっていると思いたい。

    村上春樹のメッセージとやらはおそらく届かなかったが、考察しているうちに作品の深みが増してくるように感じるのは何故だろう。

  • う~ん。この結末はどう理解すればいいんだろう。

    現代の私が博士から何を施されたのか、世界が終わるというのはどういうことなのか、そして「世界の終わり」の地の成り立ちなどは、下巻で次々と明かされていったので、本書の世界観自体は何とか理解できた。

    要するに、現代では、「組織」(計算士)と「工場」(記号士)が情報戦争を行っていて、情報保護のため解読不能な暗号が求められていた。博士は「組織」の研究者として、究極の暗号とも言える、人間の深層心理を用いたスクランブル技術を開発した。博士は私を実験台として深層心理=意識の核を凍結するシャフリング措置を施し、特定のコールサインで脳内スイッチが切り替わり、凍結された情報=意識の核を呼び出すことが出来るようにした。でも博士がちょっと余計な細工をもしてしまい、それを発動させてしまって…。

    一方、「世界の終わり」の地で私が行っている「夢読み」は、彼の地の住人が完全な存在で居られるように、一角獣の頭骨に吸収され蓄積された住人の自我を大気中に放出させて逃がす行為だった。そして、そもそも「世界の終わり」ワールドは、実は現実逃避するために私が脳の中に作り出した別世界で、現実世界の私は、博士の施した細工によって僅かな時間のうちに脳内スイッチが焼き付いてしまうと、永遠に「世界の終わり」ワールドから意識が抜け出せなくなってしまう状況。果たして、彼の地の私は影と共に外の世界に脱出することが出来るのか(上手く脱出できれば、恐らく現実世界の私の脳内スイッチが切り替わって、意識が現実世界に戻ってくるのだと思う)。

    疑問に思ったのは2点。

    私が何故自分の脳の中に別世界を持つに至ったのか、本書には描かれていないがきっと特殊なストーリーがあるはず。著者はなんでこの点を描かなかったのだろうかか??

    そして、ラストで私は何故脱出を断念し「世界の終わり」の住人であり続けることを選択したのだろうか(著者が何故主人公にそのような選択をさせたのか)??。この点も正直いってよく分からなかった。

    というわけで、初めての村上春樹は星3つです。

  • ファンタジーと現実パートが収束した
    やっぱり現実パートが好きで
    ファンタジー世界の話は自分に合わないと思った、てか入り込めない。てめえの乏しい想像力のせいなのか、はたまた好みの問題で開き直って良いのか。

  • 村上春樹初の書き下ろし長編作品。二つの物語が交互に進んでいくスタイルは、読んでいて飽きず面白い。内容は著者らしい風貌(むしろこちらの方が若いのだが)で、相変わらず盛り上がりも盛り下がりもない、ある一定のトーンで語られている。これが村上春樹氏における書く力なのかというとそうとは限らず、『海辺のカフカ』では後半氏には珍しい比較的盛り上がる勢いが見られる。『騎士団長殺し』は常に不気味さがあり、盛り上がりがあった訳でないが、今作は『世界の終わり』『ハードボイルド・ワンダーランド』の二つの物語同様に憂愁であるにせよ、その内に秘められたものにはチリチリとした温もりのような光が散りばめられている。長編ではあるが、40章と細かく分けられているので、短編集を読んでいるような感覚に近い。
    ドキドキワクワク一体何が起きるんだ!?というものではなく、何かが我々の知らないところで起きては荒らしていき、知らないうちに終わりのカウントが始まってしまったようだ──というニュアンスである。
    再読したいとまではいかなくとも、一度読めば心に残り続けるだろう。生活した跡や雪や静寂が。それこそがこの内容そのもののようにも思える。
    我々は存在していたのだと。

  • 後半で2つの世界について理解できたので、もう一回前半を読みに戻ったらまた違った良さがわかるんだろうな。
    文章とか、現実世界の主人公の行動とか描写とか、すごく面白いんだけど、私とは違う人種すぎて、うまく感情移入できなかった。

  • Audibleで読みました。
    初・村上春樹でしたが、残念ながら理解が及ばずでした。難しすぎる。どこが伏線でどこで回収されているのか1%わかったかどうか。ワンピースかって。世界で称賛される頭脳の中身は想像ができない。こういう話のプロットとかどうやって作るんだろうか。
    悔しいのでまた挑戦します。

  •  本著は筒井康隆御大の世界観に通ずるような…、氏のはちゃめちゃさと理屈っぽさがないスマートなつくり、ひとりの男の現実世界と自我の深層心理との二つの世界...。
     ファンタジー、メルヘンの世界に紛れ込んでいる昭和の風景や音楽はすっーうとイメージが湧いて頭にはってくる。それがところどころで昭和人間のこころをくすぐるだなぁ。

  • 初めての村上春樹!
    こういう系はたぶんしっかり読み込んでも完全に理解は出来ないから、どうしても表面をすくう感じの読み方になってしまうけど、それはそれでいいのかなと。

    世界は様々なモノで溢れていて、生きるためには特別必要ではないけれど、それらが心を豊かにしてくれているんだなあと思った。

    ラストは、心と記憶をもった"影"は世界の終わりから逃げ出せたから、"ハードボイルド・ワンダーランド"の主人公は心と記憶を取り戻して、日常生活を生きていける。一方"世界の終り"の主人公は、壁の外の森の中を彷徨いつづけることになる。と私は解釈しました!

  • 2022.01.06 読了

    39章で太った女が、電話で語ったセリフが天才で天然な感じが面白い。

    限定的なヴィジョンだからこそ描ける世界があって完全なヴィジョンと優劣をつけることは難しい。

    もっと読解力があれば理解できた気がする。
    もう少し村上作品を読まなければ…。

著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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