新潮現代童話館 (2) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1992年1月1日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784101002316

感想・レビュー・書評

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  • [江戸川区図書館]

    絶版らしいが、この本に、「子どもを本好きにする10の秘訣」で読書感想文によいと紹介された、江國香織の「亮太」が収録されている模様。

    やはり図書館にはあって読んだが、うっかり息子に読ませ忘れた!あまりにも大人の文庫感が出ていて、うっかりしてしまった、問題の亮太だけなら読めるだろうし、読ませるはずだったのに。しょうがない、また再借してこよう。

    話としては8年前からプールにいるという、河童のような存在感のある少年の霊が、4年生になっても泳げない亮太にとりついていくというもの。ただ、守護霊のように取り付くのではなく、だんだん入れ替わっていくが、最後あともう少し、というところで、結局霊があきらめてくれる。

    ファンタジーのような、昔話のような設定だけれど、その中核は恐らく中学年の頃に感じる自我や他との比較による葛藤、そして二人の間の奇妙な友情のような感情。自分の短所に目が向き、自信喪失の際に生じた、自分の偽の成長。それに驚きつつも、少し喜び、けれどもそこに自分自身でない、いわば虚像を喜ぶ周囲の反応に罪悪感と失望感、更には努力のない自分の進化に怯えと恐れを抱く。真面目に自分の悩みに向き合う、中学年の気持ちをこの特異なエピソードの中でより鮮明に描き出しているんだと思う。

    他の作品も、似たような現代ファンタジーのような設定ものが多く、こういう切り口だとよりはっきりとわかりやすく感情が隆起しやすいのかな、と少し思った。

    面白かったのは灰谷健次郎による巻末の解説。書かれたのは、1992年1月現在。
    日本の創作児童文学が始まったころから約30年の間の作家の変遷ともいうべき紹介がされていて、初期の作家として寺村輝夫、今江祥智の名が挙がり、同時代の作家として、長新太、上野瞭、それから、あまんきみこ、山下明生が続くとあった。灰谷健次郎と同時期の作家は工藤直子、森忠明、舟崎克彦、長谷川集
    平など。そしてそのあとに岡田淳、高田桂子、岩瀬成子らなどのニューウェーブの第一波があり、第二波として川島誠、江國香織、石井睦美、佐藤多佳子などがいると。適当に読み漁っている私でも約半数はわかったが、旧く感じる作家とそうでない作家が混在しているのは、各位の作風の違いによるものなのか、単に私自身の好みの問題なのか、そしてこの時点から既にまた25年ほど経っている、この間には誰が記載されるべきなんだろう??

    普段は文学史など考えたこともなかったが、近代児童文学という限られた範囲内ではまだ多少知識があるし、触手も動く。2018年2月現在の評を聞いてみたいなぁ。

    ◆収録作品◆
    セカンド・ショット(川島誠)
    亮太(江国香織)
    きみ知るやクサヤノヒモノ(上野瞭)
    台風がきている(岩瀬成子)
    なんの話(岡田淳)
    ジョーカー(あまんきみこ)
    雨の日、みっつ。(村中李衣)
    オーケストラの少年(阪田寛夫)
    キクちゃん(角野栄子)
    二宮金太郎(今江祥智)
    コンクリ虫(皆川博子)
    小さな蘭に(森忠明)
    ある日、ちび竜が(工藤直子)
    ばく(夢枕獏)
    原っぱのリーダー(眉村卓)
    鮎(池沢夏樹)

  • たまには童心に返ろう。「ばく」(夢枕獏)は少し大人向け。

  • 2000年10月読了。

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著者プロフィール

1932年、大阪生まれ。『海の日曜日』(実業之日本社)でサンケイ児童出版文化賞と児童福祉文化賞、『ぼんぼん』で日本児童文学者協会賞、『兄貴』で野間児童文芸賞、『ぼんぼん』三部作で路傍の石文学賞を受賞(いずれも理論社)、他に『子どもの本・持札公開』(みすず書房)、『まんじゅうざむらい』(解放出版社)、など多数。絵本では、『でんでんだいこいのち』(片山健・絵/童心社)で小学館児童出版文化賞、『いろはにほへと』(長谷川義史・絵/BL出版)で日本絵本賞を受賞。他に『なんででんねん天満はん—天神祭』(童心社)、『龍』『いつだって長さんがいて…』 (いずれもBL出版)、など多数。

「2007年 『ひげがあろうが なかろうが』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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