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本 ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784101002484
作品紹介・あらすじ
空前のバレエブームに沸く戦後。バレエ教室を主宰する波子の夢は、娘の品子をプリマドンナにすることだった。だが、夫は家に生活費を入れてくれず、暮らしは苦しくなっていく。追い詰められる波子の心の支えは、かつて彼女に思いを寄せた男、竹原だった――。終戦後の急速な体制の変化で社会や価値観が激変する時代に、寄る辺ない日本人の精神の揺らぎを、ある家族に仮託して凝縮させた傑作。
感想・レビュー・書評
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川端康成、「雪国」と「伊豆の踊り子」はよく分からなかったが、この作品は作風が違った。面白かった。
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著者の作品を徐々に読み進めているところで
「山の音」、「古都」、「雪国」に続いてこれで四冊目です。
「舞姫」と言えば森鴎外しか浮かばなかったですが、
川端康成も書かれていたというのにまずは驚きました。
そしてやはり今まで読んできた作品と同様に女性の
美しかったり儚げだったりと揺れ動く心理描写や仕草などが繊細に描かれていていました。
元プリマドンナを目指していた母の波子の夢が
娘の品子をプリマドンナにすること。
けれど裕福だった家庭が徐々に崩壊していくと同時に、
結婚前に付き合っていた友人の竹原との不貞が発覚したことによって歪んだ家族関係が露呈していくという物語。
この時代にバレエ教室を主宰して、更に親子でプリマドンナを目指しているというだけでも一般家庭とは違ってかなり裕福な家庭ということが分かります。
そんな家庭環境なのに夫自身の言動がどれも今で言えば
モラハラのような言葉ばかりで読んでいるだけでぐったりとしそうな印象でした。
妻への愛情が深いのか、それとも嫉妬心なのか、
それともただの束縛なのかと色々と思うことばかりですが、
子供たちの前での平気で妻の悪口を言うのに辟易してしまいました。
著者だけでなく、他の文豪作品でもこの頃の時代の夫というのは
特に女性に対して束縛が厳しく平気できつい言葉で話すのが通常だったのかと思わされてしまいます。
文中にあった「長年の夫婦というものは、一方が一方を、
犠牲にするなんて、まあないことだね。大抵、共倒れさ。」
(中略)
「倒れたら、起こし合わないんですか。」
「そこがね。女は自分が倒れておいて、夫が倒したのだと思う。」
「そうして、夫に倒されたと思うから、別の手に起こしてもらいたいと思う。
自分で倒れておきながら。」
という一節が凄い皮肉だなと思いながら例え方が独特で印象深かったです。
波子は竹原だけでなく、他の男性からのアプローチも突然登場していたので、
外見的に魅力的な女性なのか、それともそうゆう素振りをしてしまう女性なのかとふと考えてしまいました。
ただこれだけ家庭内が歪んできたにもかかわらず、
竹原とも長年の仲になっていたのにすぐにいかなったのは何故だろうかと思っていましたが、
はっきりとした結末が描かれていなかったですが
余韻も残る終わり方が印象的でした。
波子の物語を読み進めていくと同時に、
合間に出てくる戦後の日本の社会背景なども描かれているので、
日本の移り変わりもうかがえることが出来ました。
女性の心理描写をこのような手法で描かれたものが
先日読んだ大岡昇平の「武蔵野夫人」に似ていたので
解説にもあったように意識して書いたのかもしれないということでした。
バレエをという西洋的なものを題材にしながらも、
魔界という日本古来からの仏界のことを導入させてしまうという
描き方は、とても不思議な感覚でした。
全部理解するのは難しかったですが、
根底には日本の美しさを伝えたかったのかと思いました。
この作品もレビューをするのは難しいですが、
やはり川端康成の日本語の美しさと繊細な描写は素晴らしかったです。
三島由紀夫の解説も貴重で逸品もので良かったです。
まだ著者の作品を読み始めたばかりなので、
他の作品も読み進めていきたいと思いました。 -
とりあえずめちゃくちゃな家庭。
妻は昔のからの恋を引きずっていて、それに気付いている旦那はしっかりと金を握り最終的に妻の財産の家も自分名義にしているという。娘も倅も母の恋に気付いていて黙認すらしているし、今でいうw不倫。
最後娘も恋に生きそうな怪しげな感じを残しつつ小説は終わる。
見た目は良いが中ドロドロ。 -
信仰と献身の女性、その優しさを周りが汚していく...
ずっと波子を20代くらいで想像してしまう
[人間と人間の厭悪で夫婦のあいだの厭悪ほど膚感触の不気味なものはない...]
魔界、深い過去、センチメンタル論、
難しく抽象的な概念が多く出てきて難しかったとも言える
雪国と比べ人間関係が絡まりまくっていて
全ての人が憂鬱な、戦後なのに、希望を失ったかのような描写だ
矢木は最悪なくそ男だし、かといって竹原もあほだ
どこまでも暗く塞ぎ込んでいたな...
孤独と評されていて今の自分とも同じ境遇を描いているのかもしれない、だから余計読むのがきつかったのかもしれない
いつか理解する日が来るのかな -
記録
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川端康成も舞姫というタイトルの小説を書いていたことを知り驚いた。森鴎外のそれと、川端の伊豆の踊子とごっちゃになって読み始めた。そんな出会いだったが、内容に引き込まれた。
登場人物達の無常観というか、幸福な場面が一度も無いことに気づく。女達は皆幻想を愛しており、男達は自分を偉大だと思っている。きっと。
著者プロフィール
川端康成の作品





