- 本 ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101003047
感想・レビュー・書評
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進歩的な若い女性と保守的な中高年男性の対立という図式はまだまだ現在まで有効。そうして型を創始したのはこの小説なのだろうか。
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昨年五月に亡くなつた杉葉子さん。杉葉子といへば、各人の印象は様様でせうが、「青い山脈」の寺沢新子を連想する人が多いのではないでせうか。一周忌を前に映画も観ましたが、今年は原作者石坂洋次郎の生誕120周年らしいので、ここで原作を取りあげるものです。
それで分かつたのは、現在『青い山脈』が案外入手困難といふ事であります。新潮文庫版がスタンダアドかと思つてゐたらば、既に絶版で、中ブルしか手に入らないみたい。わたくしが所持するのは、『新潮現代文学9 石坂洋次郎』といふもので、『あいつと私』と共に収録されてゐます。
ふうむ、あれだけ隆盛を誇つた石坂洋次郎も、現代では読まれてゐないのでせうか。
まあいい。本作の執筆は戦後間もない1947(昭和22)年。小説の設定もほぼ同時代ですかね。新しい時代の若者たちの群像劇の体裁を取つてゐます。「の」が三つ続いてみつともないですね。戦前の教育から180度転換した新制教育に、生徒は勿論、教師たちも戸惑ひながら挑戦する様子が描かれてゐます。
女学校を舞台に、教師の島崎雪子、生徒の寺沢新子、新子の友人・金谷六助、校医の沼田玉雄らを中心に、民主主義とは何か、新時代の教育をどう考えるか、男女交際はいかにあるべきか、等等今から見るとかなり青臭く牧歌的な内容となつてゐます。
デハ古臭くて読むに堪へないかといふと、さにあらず。新子が六助の店に米を売りにくる冒頭から、たちまち物語に引き込まれます。若者たちの言動は気恥しく感じますが、ナニ、現代の若者も大して変りません。わたくしは観察魔の要素があり、巷で繰り広げられる若い男女の会話によく聞き耳をたててゐます。
話してゐる本人たちは至つて真剣に話してゐるのですが、をぢさんからすると、プププと笑つてしまふくらゐ恥しい内容が多い。微笑ましい。
いやあ、こんなに面白い話だつたかと再認識いたしました。デハデハ。 -
『青い山脈』は、わーかく明るい歌声にー♪と口ずさんでしまうくらい年配の方にとって青春ソングなのだろうと想像して、何度も映画化されている原作を読みたくなりました。読んでみるとの戦後間もない時代の封建的社会に挑戦するような若い男女の潔さが感じられて、今を生きる自分にも届いた!気がする
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子供の頃にテレビで映画をみました
とても好きでした -
昭和22年発表のロングセラー。鬱とした戦前、戦中の封建制から、清く健康的な戦後の民主主義を、学校生活を主な舞台に描く。登場人物が純で好感が持て、清々しい読後感が得られた。13.2.25
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びっくりするほど面白かった。村上春樹や宮部みゆきをしのぐ、軽快でコミカルな会話のテンポ。滑稽ながら必死に生きる人々。瑞々しい青春。
戦後すぐに書かれたとは到底思われない、戦後民主主義導入への鋭い洞察。日本の旧習を批判しつつ、自由と平等の価値観に悩む。特に男女平等の概念についての登場人物たちの慧眼は現代にも通ずるものがあり、今日においても白眉の作品といえる。
それにしても驚くのが、戦後すぐに書かれたこの作品の問題構成は、今日においても殆ど解決されないまま来ているし、むしろ、作品は大げさに描いているにしろ、この登場人物が持っているような人生や社会への実直なまなざしというものがわれわれから失われ、われわれがとても情けない時代を生きているということである。
とにもかくにも、今の時代にはユーモアが足りない。われわれはもっと気楽に生きるのが良さそうだ。
食うものもなく、自由平等もなく、主権すらなかった時代に書かれた明るいこの本に、我々は学ぶところ多い。 -
戦後から続く平和と豊かな学校生活は青い山脈のように壮大で不変であることを祈る。
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中津川などを舞台とした作品です。
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何度も映画になっている有名なお話ですよね。
一度読んでみようかな、と図書館で借りてきました。
いやあ、面白かったです。
戦争が終わった後、と言うからそれほど昔でもないのになんと今と考え方が違うことか!!でも考えてみると明治維新でずいぶんとそれまでの考え方を日本人は捨て、新しいモラルに移行したのだからこの昨今の変わり用もそれほど不思議ではないかもしれません。
イヤあ、日本人の風俗と言う意味でとても面白かったです。 -
今読むとシンプルで他愛ない青春小説(といいつつ最後に読んだのは数十年前)。
たまにゃこういう牧歌的なのもいいかもね。
著者プロフィール
石坂洋次郎の作品





