- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101003511
作品紹介・あらすじ
それは人生でたった一人、ボクが自分より好きになったひとの名前だ。気が付けば親指は友達リクエストを送信していて、90年代の渋谷でふたりぼっち、世界の終わりへのカウントダウンを聴いた日々が甦る。彼女だけがボクのことを認めてくれた。本当に大好きだった。過去と現在を SNS がつなぐ、切なさ新時代の大人泣きラブ・ストーリー。あいみょん、相澤いくえによるエッセイ&漫画を収録。
感想・レビュー・書評
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大人の夢と希望と熱意が伝わってくる新しい現代小説 #燃え殻 #ボクたちはみんな大人になれなかった
■きっと読みたくなるレビュー
本作はエンタメ恋愛小説ですが、男心の純粋さ、幼稚さが盛り込まれた純文学に近いですね。2023年1冊目はミステリーではありませんが、WEB小説の名作なので読まねばと思っていました。
全体的にまるで歌詞を読んでいるような文章で綴られた小説で、ありていに言うとクサイ言い回しが多いです。しかし一文一文から作者の魂が見え隠れしていて、特に同世代・同性の私としては大好き! めっちゃ胸に刺さりました。
本作、場面の切り取りと心情描写がとても上手で、各章ごとに必ずひとつは読者の心を動かしてきます。ノスタルジーに浸らせる仕掛けとして固有名詞や小道具の使い方も気が効いてる。
さすがWEB小説で人気になっただけはある素晴らしい書きっぷりで、これぞ新しい現代小説といえる作品でした。
本作のイチ推しポイントは、やはり随所にでてくるフレーズ。
もう若くない40代になったからこそ、にじみ出てくる心の叫び。夢と現実、善と悪、大切な人たちとの出会い、青春から抜け出さない苦悩…
おそらく実は誰に伝えたいわけでもなく、作者の「かつて大人になれなかった後悔」のぼやきの数々なんではないでしょうか。
しかしその裏には、今こそ一歩踏み出そうという熱意が感じられます。
確かに若いころは辛いこともあるけど、夢も希望もあって楽しかった。しかしいつまでも懐古にふけっているわけにはいかない。
40歳だろうが、50歳だろうが、60歳だろうが、未来にむけて戦っていくぞという意識が、私には伝わってきました。
■きっと共感できる書評
本作ターゲットは「大人」でしょうが、むしろ「若者」にこそ読んでほしい作品です。自分だけが辛い、苦労している、頑張っているのに結果が出ない、幸せじゃないと悩んではいませんか?
誰しも人生なんて、嫌なことが9割で、楽しいことは1割しかありません。本作の主人公のように、その時その時を必死であがくことしかできないんです。
肝心なのは、どういう状態で嫌なこと9割、楽しいこと1割を迎えているかということ。
誰といるか、何処にいるか、そこでどう思ったか、どうしたのか。
その結果、不幸になったとしても、しょせん人生9割が嫌なことなんですよ、気楽にいきましょう!
どういう状態であるかこそが重要で、今まさにできる行動だけをすればいいのです。幸せなんて追い求めるものではなく、目の前にあるものなんですよね。
といった中年の説教臭い内容がいっぱい伝わってくる本作。とてもいい話です。もし人生に行き詰っていたら、ぜひ読んでみてください。 -
初、燃え殻さん
燃え殻さんのデビュー作
メインは、43歳の主人公が振り返る青春の話
思い出しただけでも恥ずかしい恋、仕事に明け暮れた日々、飲んだくれて語り明かした仲間、若かった頃を思い出してセンチメンタルな気分になる話
舞台は1990年代の東京
90年代に青春を謳歌していた人は、当時話題になっていた曲名、雑誌名、映画名、建物の名前が具体的に沢山出てくるのでノスタルジックな気分になるでしょう
映画は観ていないが、流れ的には過去の懐かしい映像を観るとさらに引き込まれるのではないかと思った
タイトル『ぼくたちはみんな大人になれなかった』
それは、「あの時こうすれば良かった」という様な幼くてわからなかった、出来なかった。。。
そんな主人公や周りの人、そしてこの作品を読んでいる私達の事なのだと思った
誰にでもあるありふれた若かった頃の話だから、肩肘張らずに読める -
2023.10.3 読了 ☆8.0/10.0
はじめてこういう類の小説を読んだ。私小説。
描かれているこの時代に生きていたけど小さくて覚えてないのに何故かどこか懐かしさを感じる
小沢健二なんて知らないし息してる世界が違い過ぎて心から分かる!とはならなかったけれど、不思議な読後感
眩しいような、その先に見えるシルエットが人なのか猿なのか、なんだかよく分からないような
言葉選びが巧みだなと思う。わからないままでも読み進められる、散りばめられた心に刺さる言葉の数々。
そして読後、なぜかクリープハイプが聴きたくなった。
〜〜〜〜〜〜〜〜心に響いた言葉〜〜〜〜〜〜〜〜
・「ねえ、努力すれば夢って叶うのかな?」
「その質問は、ナポリタンは作れるか?と一緒だと思う。たぶん、手順を踏めば必ず近いものにたどり着くんじゃないかな」
もし手順通りにできたとしても、たとえそれが失敗だとしても、問題はそれを誰と一緒に味わうかなんじゃないかな
たとえハリボテの夢だとしても、人間は背中のリュックに何か入ってないと前に足が進まないように出来ているのだ。荷物は軽い方がいい。だけど手ぶらでは不安すぎるんだ。
・自分がすみかにしている場所以外に、別の顔をして別の自分を演じられる居場所を持つことが人生には必要なんだ
・恋愛とは、から騒ぎだ。つまり中心には何もない。どんなにお手軽な恋愛だろうがどんなに運命的な恋愛だろうが、それは全てから騒ぎだ。つまり答えはひとつ"勝手にしやがれ"
・人生の本当に大切な選択の時、俺たちに自由はないんだよ
・この時代に生まれたいなんて、だれも頼んでないだろう?自分で決められることなんて、今夜の酒の種類くらいなもんだ。
・「むかし、私たちの先人は、限られた文字数で遠くの愛する人にメッセージを送ったのです。たった3文字の言葉で」
「1957年、日本初の南極観測隊が南極に近づいていました。当時、電報は高級なものでした。そこで南極に向かう夫に向かって、妻は短い電報を送りました」
「そしてその妻は、たった3文字の電報に愛のすべてを託したのです。そう、たった3文字で愛を伝えたのです。『ア ナ タ』と」
・国会図書館には日本の出版物が全部あるんだ。文芸誌から漫画にポルノ雑誌まで全部。俺たちがあと50年生きるとして、1日に1冊ずつ読んだところで読みきれない量の出版物がすでにもう保管されているんだ。
そして一方では世界の人口は70億を超えて今日も増え続けている。俺たちがあと50年生きるとして、人類一人ひとりに挨拶する時間も残っていない。今日会えたことは奇跡だと思わない?
・スマホを開いただけで会ったこともない人たちの生存確認ができる時代。知らない方がいいことも親指一つで知れてしまう時代に僕らは生きている。
みんな広い世界を覗いて、片手で収まる窓を開けて満足しようとしている。
それでもみんな「ここにワタシはいる」と瞬いているのが見える。どんなにコミュニケーションが変わってもボクたちは「孤独」が怖いままなんだ。一等星から六等星まで、その光の強さ、大きさはそれぞれ違うけど、もっと速く、もっと深く、本当はみんなひとりぼっちが怖くて、どこかに繋がりたいと叫んでいるように感じた
・日常の嬉しいこと、悲しいことを報告したくなったら、それは恋だ
・美味しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることが、幸せだ -
映画も観よーう。
私が女性だからか、あんなに自分よりも好きだと思ってた人のことも、こんなに引きずらないなー。女性は新しい恋で完全に忘れますよね。何かのきっかけで思い出すことはあれど、こんなエモい感情にはならない(゚∀゚)主人公は主体的に行動せず、不完全燃焼だからか?恋は燃焼しきるに限りますね★
「うれしい時にかなしい気持ちになるの」
「男は過去の自分に用がある、女は未来の自分に忙しい」
「人生の本当に大切な選択の時、俺たちに自由はないんだよ」
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燃え殻さんと同世代だからか、いろんなことを思い出した。なんというか、ひたすら周り(時代)に流されたり、流されたくなくて、でも、全く逆に振り切ることも出来ずに中途半端な人生を送っていた、何者にもなれない自分をどうしていいかわからなかった時期(結構長かったと思う)を思い出した。
いろんな人生があっていいんだよ、と言ってもらえた気がした。
あと時々すごく表現が的確で、ビックリする。 -
どんなに小さな出来事だって、ねえねえ聞いて、と言える人がいるからこそ、小さかった出来事に、ちっぽけな自分に、輝きが増す。生きてていいんだな、と思える。
大手書店の片隅で、ヴィレッジヴァンガードの一番目立つところで、他の作品とは異なる光を放っている、そんな作品でした。まるで秋に蛍を見つけるような。
たくさんのアーティストが、自分の生を表現した作品で溢れている現代社会。もしもわたしが20代前半だったら、もっともっと刺さってきたかもしれない。同類の作品に触れてきたアラサーには、少しだけ、むず痒さと「どこかで聴いた何か」を感じてしまう作品でした。エンターテイメント作品とは異なり、頭の中で景色・情景をイメージさせる描写が多いので、岩井俊二あたりが監督をして、映画化でもしてみたら、とても美しい映像作品になるのかもしれない。
自分にも、燃え殻さんやあいみょんのような表現力があれば、わたしのなんてことない、鬱屈とした日常も、こんなに光り輝いたイメージを持たせることができるだろうか。誰かを認め、誰かを生かしてあげられるだろうか。いや、違う。きっと誰よりも自分を認め、生かしてあげたい。-
本の感想は
とても稀有な
素晴らしい表現になっていると
私は思いますよ。
とても正直な、真実の言葉たち。
私には、...本の感想は
とても稀有な
素晴らしい表現になっていると
私は思いますよ。
とても正直な、真実の言葉たち。
私には、とても美しく輝いて、見えています。
2020/06/21
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20代なので人生を思い耽る事が少なすぎる。
もちろん、作中メインとなる"恋愛"の面では
共感を得る所がありましたが、
全体的に作品を総評すると、ピンとこなかったです。
僕が読むのは少し早かったか?と思った(笑)
"初恋"って案外と忘れにくいものだし、
最初にお付き合いをした女性や、その人とデートなどは
頭の片隅に何故かいつまでも残るんでしょうね。
年を重ねて名前を見るとトリガーが走り思いに耽る。
人間の心理を突いてる小説だと思いました。
時代背景も分かりやすいし、文章がその雰囲気を
醸し出しているといいますか。
具体的に曲名や作品名も出て、ノスタルジックな感じも
読んでて受け取れた。
しかし!まだ読むのは早かったと思う。
20代という年齢もあるが、最後まで読んでみて
なにより僕が未だに子供だからだ(笑)-
そーまさん。
はい、もう子供が大人なんですから、すっごい大人です。^_^
この作品評価が高いのと ブックオフで高く売れたのが 不思議でした。そーまさん。
はい、もう子供が大人なんですから、すっごい大人です。^_^
この作品評価が高いのと ブックオフで高く売れたのが 不思議でした。2023/07/20 -
2023/07/20
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2023/07/20
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世代が同じと言うのもあるかな… たまに読み返しては一人、ナイーブ哀愁おじさんになってます。
(相澤いくえさんやあいみょんパートも含めて痺れる)
主人公みたいに十番に住んだこともないですけれども。
深く印象に残る言葉がいくつも… -
同窓会のような、そこまで畏まったものじゃなくて、「あー、昔こうだったよねー」くらいの感覚を呼び起こさせられる、不思議な本でした。たぶん、聴いてた音楽が一緒だった程度の繋がりですが(笑
個人的な感覚で恐縮なのですが、本著を読んでいて感じたのが、だいたい全てのシーンで、フリッパーズ・ギターの「全ての言葉はさよなら」が流れ続けると言うか…。
・わかりあえやしないってことだけをわかりあう
・僕たちはさよならする/さよならをする
あの明るいホンワカとした曲調で、こんな悲しい歌詞を並べられる気持ち。それでも、淡々と人生は続いていくということ。
あー、昔もうちょっとひねくれたなー、とか思いながら(笑 でも、今はその頃よりもちょっと大人になったのかもしれないと、本著を読んで思いました。。
勝手な推測ですが、著者も別に本著を「大人泣きラブ・ストーリー」としたいと思ってた訳じゃないんじゃないかと。(しかし凄いキャッチフレーズですね…)
黙って見ていたらただただ零れ落ちていくだけの水滴を、どうにかしようとしたのが本著で、それはある意味凄く健全な営みには思えるのです。真実だろうが、事実だろうが、どっちでもなかろうが、です。
空気感を味わう1冊だと思います。なんか変な切り口のツボを刺激されると言うか…合う人にはめっちゃ合うはず。 -
90年代を駆け抜けた、切ないラブストーリー。
思えば、別れた恋人にSNS上で巡り合うなんて、当時でも普通に起こりえるんですよね。怖い……いや、別れ方次第ではいい事なのでしょうか? よくわからないですが。
私は当時もっと幼かったですが、この空気感、時代感には少しだけ覚えがあって、ほんのりとですが懐かしかったです。
実話といわれても信じられそうなリアリティと、詩的でノスタルジックな文章が素敵でした。
著者プロフィール
燃え殻の作品






今年もよろしくお願いします。
ええ、もちろんです~。
自分も頑張って面白そうな本を読んで、楽しくレビ...
ええ、もちろんです~。
自分も頑張って面白そうな本を読んで、楽しくレビューしたいと思います。
今年もどうぞよろしくおねがいします!