ニセモノの妻 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.51
  • (6)
  • (12)
  • (17)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 176
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101003719

作品紹介・あらすじ

「もしかして、私、ニセモノなんじゃない?」妻と思ってきた女の衝撃的な一言で始まったホンモノの妻捜し。けれど僕はいったい誰を愛してきたのだろう(「ニセモノの妻」)。ある日、仲睦まじい夫婦の妻だけが時間のひずみに囚われてしまった。共に明日を迎えられない彼女のために夫がとった行動は──(「断層」)。その他、非日常に巻き込まれた 4 組の夫婦の、不思議で時に切なく温かな短編集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ファンタジーほどまで飛ばない
    日常をズラす三崎ワードの短編集

    「終の筈の住処」
    「ニセモノの妻」
    「坂」「断層」の四篇

    「終の〜」実は、これに似たような現象
    (同建物内で周辺に一切居住者が居なくなる)に遭遇し、なんだか怖さが強まる。
    なにより主人公の職場の先輩の立ち位置が怖かった。
    「静かな戦争」であるマンション建設反対運動が出てくる。

    「ニセモノの妻」自分がニセモノなんじゃないかと言い出した妻と本当の妻を探す話。
    何がニセモノでホンモノなのか曖昧なところをどう捉えるか?
    読み終えて、いつ入れ替わっているのかも分からない自分の妻を観察する。

    「坂」坂ブームという三崎作品ぽい
    「ないないあるある話」そして夫婦間の戦争…詰め込んできた感がある。

    「断層」ある日を境に次元の狭間に囚われ、1日の数分間を何日かに分けて生活する妻と、それを維持するために妻との生活を続ける夫
    二人の時間と、夫の時間にだけ流れる深刻さの対比が際立ち、切なくて泣きそうになりました。
    「失われた町」で起こる「消失」よりも急ではない分、酷ですね。
    夫のつぶやいた言葉が心に残る。

    「お好み焼きを作って、余った青のりを磯辺揚げに使って食べる」場面から
    ぐっと感情移入しました。(よくやる人)

  • ファンタジーとはならないけど、ビミョーな何かが起こる世界。これは読む人を選ぶ本かなぁ?と思います。人によって面白いと思ったり違ったり…自分にはちょっと合わないかも?と思いました。

  • 表題作をはじめ、夫婦をテーマにした4つの短編を納める
    相変わらず、ぞわっとするように現実が揺らぐ三崎ワールドが全開。4編いずれもはずれはないですが、「あなたとは傾きが違う」という名言?が良かった「坂」と、バカップルさが切なさと喪失感を一層際立たせる「断層」が好みでした
    日常は奇跡的に維持されているもので、一瞬一瞬が貴重な瞬間であるということ。そしてそれはもしかしたら突然終了し、暗転してしまうことを否応なく認識させられ、それゆえ日々の大切さを忘れてはならない、ということを、あらためて実感させられます。

  • うーん、うーん。
    今回もまた「構想はすっっごく面白いんだけど、小説としてはイマイチ...」でした。デビュー作からずっとずっと同じ感想で、何度か「お、描写が良くなった、これは期待できるかも」と思ったもののあまり良くならず期待を裏切られ続けて12年。流石にもう決心がつきました。
    三崎さんは、おそらく監督であって、俳優ではないんだろうと思います。小説家はどうしても監督兼俳優になってしまうけど、漫画のように原作と作画担当で分業したり、映画のように監督と脚本と俳優とその他たくさんの専門家の協業になったっていい。
    名監督は名監督として素晴らしい作品を作って欲しい。
    だって、今でも三崎亜記ほど素晴らしい着眼点の小説ってなかなかないから。『となり町戦争』を読んだ時の衝撃は今でも私の「本を読む喜び」のトップ10に入るんだもの。

    表題作の「ニセモノの妻」だって、「本物と区別のつかない偽物は果たしてニセモノなのか」というすごく面白いところを攻めていて、読みながら何度も「お、そこにツッコむのか、いいね、先が読みたい!」と思ったのに、棒読みのセリフにしらけてしまうような経験が繰り返された。少しミステリーっぽい展開にも胸躍らせたけど、ガッツポーズの途中で握った拳の持って行き先に困ってかゆくもない耳の後ろをかいてみたり、ということが複数回あった。

    原作(作詞作曲)三崎亜記で他の作家による演奏(歌唱)を見てみたい、と言ったら伝わるでしょうか。
    三崎亜記の魅力を三崎亜記がスポイルしているような読書感でした。

  • 最後の章に断層は切ない
    けどやっぱり三崎さんの
    物語りにある透明感が
    たまりません

  • 少しだけ違う日常の人々。

    「断層」が切なくて好き

  • 表題作のニセモノの妻、がやっぱり一番おもしろかった。姿形も記憶でさえも何もかも同じもう一人の自分、、それってもはやニセモノって言えるんかな?ある日突然自分の妻がニセモノに変わってても私も気づかんやろうなと思う。自己申告がなければ。だって記憶もDNAも同じやから確かめる術がない。そんなぞっとする状況が描かれてて面白かった。

    • 本ぶらさん
      最近、奇想天外な話の短編を読みたいと思っていたんですけど、特に思いつかなくて。でも、りこぴん٩( ᐛ )وさんの「いいね」で、そうだ。三崎亜...
      最近、奇想天外な話の短編を読みたいと思っていたんですけど、特に思いつかなくて。でも、りこぴん٩( ᐛ )وさんの「いいね」で、そうだ。三崎亜紀がいた!と思い出しました。ついでに、本棚を拝見していたら、「玩具修理者」!なるほど、とw
      なんだかとっても参考になりました。ありがとうございます。
      2020/08/02
    • YURIKOさん
      本ぶらさんこんにちは。何となく読んだ本を記録してただけでしたがこんなふうにお役に立てる日が来るとは!なんかうれしいです。ありがとうございます...
      本ぶらさんこんにちは。何となく読んだ本を記録してただけでしたがこんなふうにお役に立てる日が来るとは!なんかうれしいです。ありがとうございます(*^^*)
      2020/08/02
  • 三崎亜記のニセモノの妻を読みました。
    不条理な事件に巻き込まれてしまう人々を描いた短編集でした。

    印象に残ったのは「断層」という短編でした。
    突然、住んでいる場所に断層と呼ばれる異変が起きて妻がその断層に飲み込まれてしまいます。
    夫はその妻との接触を続けていくのですが、タイムリミットが来て妻は失われてしまいます。

    三崎亜記の小説では、突然家族や仲間が異変に飲み込まれてしまうという設定の物語が多いですが、この短編もせつない余韻を残す物語でした。

  • 星3つは、最初の話の「終の筈の棲家」が星3つ。「ニセモノの妻」が2つ。「坂」が1つ。「断層」が4つということで、その平均(笑)
    三崎亜紀は以前『鼓笛隊の襲来』というのを読んで、話のなんとも珍妙な設定がよくって。この『ニセモノの妻』もそれを期待したのだが、どの話も『鼓笛隊』ほどには珍妙さが足りなかった…、かな?(笑)

    「終の筈の棲家」の星3つは、「最初だからこんなものか?」と評価はかなり甘くなっていると思う。
    雰囲気は悪くないのだが、途中で出てくるエントランスの監視映像の少女のエピソードが投げっ放しで終わっちゃうところとか、かなり不満。

    そこいくと、「ニセモノの妻」は最初の話より話が完成されているのだが、何か話が好きになれなかった。
    たぶん、最初の話の不満が尾を引いたんじゃないかと思う(笑)
    ていうか、この話。女性からするとどう思うのだろう。
    消えなきゃならない運命にある、(女性である)“ニセモノの妻”が主人公の旦那(当然男)に対し、あまりにも従順、かつしっかりしているように思うのだ。
    それは、まるで世の男どもが理想とする(かつての)日本女性のようで、妙に違和感があった(ありがちなフェミニスト的なつっかかりじゃなくってねw)。
    もしかしたら作者はこの話を、(なんとなくのイメージとして)消えゆく、かつての日本女性像へのレクイエムとして書いたんじゃないか?なんて思ったり。
    いや、最後に現れたホンモノがいいとかよくないとか、そういう意味では全然ないですのであしからず(笑)
    ていうか、ここに出てくる“従順でしっかりしたニセモノ”が妻ではなく旦那の方だったら、女性はどう読むのだろう?また、男は「ニセモノの妻」と同じ気持ちで読めるんだろうか?とも思った。

    「坂道」はつまんない(笑)
    最後、やたらと話をいい方向にまとめちゃうところなんか、「くっだらねー!」のひと言(笑)
    今の日本(人)って、いい話に飢えているようで、その反面いい話に辟易しているようなとこがあると思うんです。
    それは、いい話やきれいごとじゃなきゃダメみたいな空気があるから生き辛くなっちゃうということを、みんな薄々気づいているからじゃないですかね(笑)
    というわけで、著者にはぜひそんな話を書いてもらいたいな。

    「断層」は上手い!のひとこと。
    人間の幸せなんてものは、大好きな人(たち)とのバカ丸出しのコミュニケーションをいっぱいすることにある!ということなんでしょう。
    特に男と女のコミュニケーションは、(親と小さい子供の関係を除けば)唯一バカを全身全霊でさらけ出せる関係なわけで、ま、なんだ。深読みするなら、作者は現代の恋愛事情について何か言いたかったのかな?なんて思ったり(笑)

    全部、「断層」くらいの話だったらなーと、つくづく残念。

  • ジャケットとタイトルを見た時に、もしかして趣旨変えしたのかな?と思ったのですが、安定の三崎亜記でした。良かった。

    「終の筈の住処」
    購入したマンションに引っ越した違和感。
    部屋は埋まっているということだったのに、誰にも会わないし、電気もついていない、というところから始まる。
    何かに反対をする、ということに何が作用すると「辻褄が合わない」状態になるんだろう。
    クレームという行動そのものに意義が見出されると、解決の内容ではなく、そのために誰が出て来てどんな動きをしたか、の方にシフトしていることってあるよなあと思う。
    偉い人が頭を下げたら、スッキリ、みたいな。
    誰かが動いたということが大切、なのだろうか。

    「ニセモノの妻」
    ある日、妻が「私はニセモノかもしれない」と思い出し、ホンモノの妻を探しに旅に出る。
    時間と共に、ニセモノの妻に対する新たな愛情を見出す夫なのだが。
    同じ人間であっても、捉え方によっては、新鮮に感じられる、ということなのかもしれない。

    「坂」
    坂とは何ぞや。
    道路とはどう違うのか。
    それは上り坂なのか、下り坂なのか。
    三崎亜記のマニアックな話は、これくらいの分量だと読みやすい(笑)

    「断層」
    このテーマもお決まり。
    日常が、ある特殊な事情によって断絶される。
    東日本大震災によって、この断絶感って身近に感じられるようになった気がする。
    家の中に出来ていた断層によって、新婚の妻が消えてしまった。
    一日のうち、ほんの少しの時間、彼女はそのことに気付かないまま「戻って」くるという話。

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞しビュー。同作は18万部のヒットとなり直木賞にもノミネートされた。著書に『廃墟建築士』『刻まれない明日』『コロヨシ!!』『決起! コロヨシ!!2』など。

「2021年 『博多さっぱそうらん記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三崎亜記の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×