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本 ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784101003917
作品紹介・あらすじ
ばふりばふりとまわる回転扉の向こう、帝大受験を控えた二朗の前に現れた和装の女。「金玉潰し」の凄技で男を懲らしめるという妖艶な〈伯爵夫人〉が、二朗に授けた性と闘争の手ほどきとは。ボブヘアーの従妹・蓬子や魅惑的な女たちも従え、戦時下の帝都に虚実周到に張り巡らされた物語が蠢く。東大総長も務めた文芸批評の大家が80歳で突如発表し、読書界を騒然とさせた三島由紀夫賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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かの蓮實重彦先生が初めて発表した小説。
太平洋戦争開戦直前の東京。子爵を祖父に持ち裕福な家庭で育った旧制高校生・二朗と、彼の家に寄宿し伯爵夫人と呼ばれる謎の中年女性の摩訶不思議な交流を描く。
二朗が体験する伯爵夫人や周囲の女性たちとの奇妙な関係と、亡くなった祖父の愛人であり高級娼婦でもあったという伯爵夫人が語る性遍歴。
流麗な文章と先へと読ませる展開はさすがだが、全編異様にエロティックで奇想天外。一種の艶笑譚として書いたようなポーズも感じさせるが、真剣に書かれたのだと思う。
出版当時既に80歳だった著者が、しかも批評家として研究者としての名声をリスクに晒して?こんなエネルギッシュで珍妙な小説を書き、発表したことに驚き。
後日訂正。初めてではなく、3冊目の小説だそうです。失礼しました… -
衝撃的な小説でした!
今まで読んだことがない世界観と、文章のリズムが独特で、小説の世界にのめり込んでしまいます。
が、作者の異色過ぎる世界観には到底理解が追いつかず、ぜひ再読したいと思います。 -
あけすけな官能と戦争とが入れ替り立ち替りで全てが虚のような、でも戦争は現実なのだということを歴史で学んで知っているからこそのやるせなさというか…言葉にするのが難しい。
すごい疾走感とドタバタともいえるエロと不意に容赦なくとどめをさしてくるこの感じ、解説も書いている筒井康隆を読む感覚と通じるところがあって、とても好きだった。 -
先週なぜか気持ちの悪いものを読みたくなり、途中にしていたのを読み切った。なんで読みたかったのか今ではわからん。冷静になるとおえーって感じ。
読みながら書いたこと。
前から思ってたけどエディプスコンプレックスって大袈裟すぎる。
死すべき人間の無力さの象徴であって、願望てなあちと言い過ぎでないかいフロイトさん、とつくづく思ってましたよ、私は。
汝自身を知れ、とアポロン神殿に書いてある通り、それ以上でも以下でもなくて、何もかも説明しようとしないで欲しい。
だからマザコン文学もファザコン文学も苦手。
昔話のさんきょうだいよろしく、わらしべ長者みたいにひとりでもいいけど、
運試しの旅に出て、1人になって、取り返しのつかない失敗をしたりしなかったりして、自立していく物語が好き。
家族って自分のルーツかもしれないけれど、
鶴見さんに言われるまでもなく剥製を撃ち殺して
赤の他人を大切に思えるようになる。
そうやって世界を構築したい。
だって自分のルーツにだけ固執してたら、すぐに行き止まりでどこにも行けない、
そんな狭い世界じゃ息苦しくてやってられない。
ああそうか、血の繋がりも何もない他人を大切にする、
という意味で恋愛や友情は美しいのであって、
他人を大切思う、ことを忘れた時に戦争が起こるのかもしれない。
グロいけど、自分で読みたいと選んだのだからグロいのは仕方ないとして。
でももうグロいの読みたくない今は。
大陸で嘘みたいに命懸けの冒険譚を繰り広げる伯爵夫人と対照的に、牧歌的なエピソードの多い二郎。しかし本当は二郎の方にこそ不穏な未来が待っていた。
その繋ぎ方を陳腐と見るか伝統的と見るか。
全体的にからっとして湿っぽく無かったのは良かったです。
一言で感想言うと、映画大好きな久生十蘭て感じでした。 -
開戦前夜の帝都、東京。高校生の二朗は〈伯爵夫人〉にホテルに誘われ性の手ほどきを受ける。突然べらんめえ調に豹変し卑猥な言葉を連呼する夫人。官能場面に唐突にはさまれる過去の回想や戦場場面。虚実入り混じる人を喰ったような物語は現代文学へのアンチテーゼか?
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下ネタギャグ小説。
肯定はできないが、微笑を誘う。 -
うむ、感想以前になんでこの話をこの歳で実名で書いたのかがまずは気になるところ。
普通に小説として楽しめるものの、いやいや、あんな小難しい文章書いとったくらいやから、もっとすっげえアクロバチックな本質的こと言いたいんかもしれん、「ぷへー」で笑ってる場合やないでと思わせるところさすが蓮實重彦!
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f.2022/12/25
p.2018/12/26
著者プロフィール
蓮實重彦の作品





