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本 ・本 (340ページ) / ISBN・EAN: 9784101005010
感想・レビュー・書評
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一人の男の告白話。真面目な高級取りの譲治がカフェで見つけたナオミを自分好みの妻にする。読んでるうちにこの夫婦の今後が想像つきイライラするがそれを越えたら苦笑い。ナオミは好きになれなかったが譲治のたとえ話と矛盾した行動に一気読み。
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「又吉直樹愛読書20冊」の帯に惹かれて手に取った。谷崎潤一郎作品を読むのは「春琴抄」以来。
どちらも倒錯的な愛が主題で、見た目の美しさに強烈に惹かれてしまい、本能に屈するお話。
13才も年下の女の子を15才の時に女中として囲い込み、やがて妻とする、という光源氏計画を実行する時点でかなり気持ち悪いが、自分好みの女にするつもりが、いつの間にやら主従が逆転し(この逆転ポイントがどこだったか思い出せないくらいそれこそ自然に)、ラストでは完全に主人公河合譲治は妻ナオミの奴隷と化す。
鎌倉の海で、ナオミが学生四人(熊谷、浜田、関、中村)と遊び歩いているところを予定より早く帰宅した譲治が付け回し、尾行に浜田が気付いたところで、ナオミが譲治に詰め寄り、コートを開くと裸だった、というシーンは衝撃的だった。
みんなが慰みものにしている、口には出来ないヒドイ仇名が付いている(巻末の註解によるとおそらく「共同便所」)、と知って、譲治も流石にナオミを家から追い出すが、これまたいつのまにやら許してしまい、身悶えしながら逆に許しを乞う側に転落していく。
タイトル通りの本でした。
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1924年 大正13年
まだ、炭治郎が何処かで戦ってたかもしれないというのに。主人公・河合譲治が、自身の愛の歴史を振り返る。
真面目で凡庸な独身会社員、28歳の譲治。浅草のカフェで出会った美少女、15歳のナオミを引き取り、自分の好みに育てていずれ妻にしてもと目論む。ピアノや英語を習わせ、教養を与えて、洋館を賃貸し、思うままの生活をする。(エセ光源氏よ)
ナオミは自由奔放な浪費家の素養のまま育ち、譲治は矯正できない。一度はナオミに見切りをつけるも、恋しさの余り、再びナオミの従者となる。
ナオミの肉体の美しさを細部まで濃密に描く。そのビジュアルと肉体に溺れる。
そして、ナオミの支配的言動を含めて愛する。
ナオミも多数の男性遍歴を重ねながら、譲治に戻る。飼育していたつもりがされていた男女関係。
これも愛あれも愛たぶん愛痴人の愛。
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2022/04/23
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2022/04/23
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おびさん、まつ、ありがとう!
こうやってお話するの、ほんとに楽しい♪
そんな討論会、最高です( * ¯꒳¯ )bおびさん、まつ、ありがとう!
こうやってお話するの、ほんとに楽しい♪
そんな討論会、最高です( * ¯꒳¯ )b2022/04/23
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高校生の時に読んだ時は、ナオミって焦らしまくるすごい悪女だなと他人事のように思いましたが、改めて読むときっと誰にでも人を弄びたい気持ちってあるのではと思いました。
世の天然でない美男美女は、今この人自分に惚れたなとかこういう仕草いいでしょ?とか絶対思って生きてると思います。うちの息子ですら、こういえば可愛いから許してもらえるというのをわかって楽しんでます。また分かっていても好きな人に弄ばれたい気持ちもありますね。
喧嘩して家から追い出しても幻滅できずにいつもナオミのことを考えてしまう譲治さんが圧倒的に負け。恋の奴隷。完全試合。もう清々しいです。
奴隷だとしても譲治さんが幸せだからいい。これは読み継がれるのが分かります。名作中の名作。 -
ざっくり内容は知っていたのですが、谷崎潤一郎は好きなので読んでみました。
思っていたよりドロドロした内容ではなく、「悪女に骨抜きにされてしまった自分」をあっけらかんと告白しているといった雰囲気で。悪女が無双するというからには...と思っていたのですが、直接的な表現はなく、ふつうに電車内でも読めました。
「登場人物全員愚か者」なわけで、だらしないナオミに翻弄されて身を滅ぼす譲治は哀れなんだけど、そもそも「自分好みの女性に育ててあわよくば妻にしよう」という発想が頭オカシイしな。彼女が根っからの悪女だったのか?と考えると、やはり譲治が育て上げてしまった怪物がナオミと言えるのではないか。
あとがき解説に、谷崎の西洋崇拝への嫌悪めいたものがこの作品にも垣間見れるということが書いてあり、『陰陽礼讃』を読んでいたので西洋かぶれのナオミの白い肌の表現が妙に浮き出た印象になっていたのが納得いったかも。それをふまえていつかもう一度読んでみたいです。 -
この本を読んだきっかけは、又吉が選ぶ名作20選という帯が目に入ったから。
タイトルからは、どんな本か想像できなかったけど読み進める中で納得。
人間は心の中で抑えられないような欲動、情欲が潜んでいるだなと思った。
ナオミに関する描写が生々しいが、日本語が美しいためスラスラと読み進めてしまった。
主人公は途中からナオミを心の中で淫婦と呼ぶが、そう呼ばれても仕方ないことを平気でしてしまう。
読む中でしんどい場面が幾度となくあったが、怖いもの見たさのような感情から、ページを捲る手が止まらなかった。
愛し方、愛され方には色々あるが、幸せにパートナーと生きるとはどういうことかを考えさせられた。
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なんでナオミは最後、譲治のところへ戻ってきたんだろう。もっとお金持ちだったりハンサムだったり、何でも自由にやらせてくれる男は探せばいくらでもいただろうし、いや探さなくても花の蜜に誘われて飛んでくる蝶のように、ヒラヒラと男の方からやってきたはず。西洋館に住み西洋人のように暮らしたいのであれば西洋人と一緒になればいいのだし。夫婦とならなくても愛人でもいいのではないか。現にナオミの周りには、譲治と別れる前から途切れることなく男たちがいたじゃない。
それなのに、ナオミは譲治の元へ戻ってきた。まぁスンナリとただでは戻らないのが彼女だけど。ジリジリと譲治の本能をなまめかしくいたぶり、からかい惑乱する。遂に譲治は自分からナオミの足下に身を投げ跪いてしまうことになる。ナオミは譲治と再び夫婦という形をとりながら、好き勝手に生きることの出来る人生を手に入れた。
ナオミを崇拝する譲治の姿を愛と呼ぶならば、譲治を奴隷のように扱うナオミの姿も愛なんだろう。
ナオミにとって自分の前に跪き身悶え陶酔し堕落していく男がいる。この譲治こそ、彼女の魅力を引き立たせ、身も心もゾクゾクさせる満足感を与えてくれるモノなんじゃないのかな。夫婦という柵があってこその燃え上がる多情愛。だから譲治の元へ戻ってきたんだと思う。
きっとこれも愛なんだろう。たぶん。うん。そぅ。たぶん。 -
悪女に翻弄される駄目な男のはなし。
とても100年前に書かれたとは思えないほど読みやすく、内容も非常に入ってきやすかったです。
よくある日本古典文学独得の読みにくさが全くなく、年代間のギャップを感じませんでした。すごい。
西洋への憧憬が詰まっているところには時代を感じて興味深く感じました。
谷崎文学を初めて読みましたが、さすがの美しい文章表現に圧巻。
艶めかしいナオミの雰囲気が手に取るように感じられ、うっとりしてしまいました。ステキな表現がいっぱい。
性表現だけでなく、私的には心情描写もかなり刺さりました。
主人公が悪女に翻弄されながらも、自分では冷静であるつもりなのが大変面白い。今でもあるあるな描写すぎて、良かったです。
最初は自分が養ってあげようという心意気だったのに、どんどんナオミに主導権が回って下手に下手に出ていく感じがリアルすぎる。怖い。。。
終わり方まで最高すぎでした。良かった! -
端的に言ってしまえば、愛し方を間違えた不幸な男と満たされることのない不幸な女のお話。
自分好みの女に育て上げようと年端のいかないナオミを<教育>という言い訳をつけて囲うが、成長とともに自分が美しく男の気を引く能力に長けていることに気づいたナオミは、自分の欲を満たすために益々我儘に傲慢に育っていきます。
欲という悪魔に蝕まれていく人間の愚かさや脆さを退廃的でドロドロした日常の描写で更に際立たせています。
愛し方も愛され方も間違えた先の虚無感が何とも言えない重さとなって心に残ってしまいました。 -
読了後の率直な感想。まず約100年前に書かれたこの作品が何故これほどまでに読み易いのかを考えた。それは第一に共感である。また、魔性の女に振り回され深い穴の奥底へと転落していく、非常に情けなくも滑稽な、この愛すべき馬鹿者が魅力的に思わせられる理由は筆者の緻密な心理描写からと思われる。いつの世も男女間の痴情のもつれはドタバタ劇として面白い。そして、側から見ると落ちていく哀れな男に呆れ、軽蔑するが果たしてヒロインナオミの誘惑から
自分は逃れることができるのか?と考えると、困難な気もする。それほどナオミは恐ろしい。恋愛至上主義に生きている限り逃れられない性なのだ。
美は何にも変え難く強く、抗えず、恐ろしいほど残酷である。
筆者が耽美派たる所以も、この作品の完成度の高さからうかがえる。
ナオミは現代のサークルクラッシャーだ。
ナオミに翻弄される、主人公とナオミの間男の浜田との哀しき邂逅シーンは狂おしく好きだ。愛する女に騙された二人の間に生じる奇妙な友情に近いシンパシーは笑える。しかし精神の繋がりとして神秘的でさえある。全体、これほど読ませる、筆者の圧巻の筆力に完全に脱帽した。
著者プロフィール
谷崎潤一郎の作品






「心理的なグロテスク」確信犯なんだと気がつくまでちょっとイライラしてしまいました(笑)
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「心理的なグロテスク」確信犯なんだと気がつくまでちょっとイライラしてしまいました(笑)
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