- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101005010
作品紹介・あらすじ
生真面目なサラリーマンの河合譲治は、カフェで見初めた美少女ナオミを自分好みの女性に育て上げ妻にする。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの回りにはいつしか男友達が群がり、やがて譲治も魅惑的なナオミの肉体に翻弄され、身を滅ぼしていく。大正末期の性的に解放された風潮を背景に描く傑作。
感想・レビュー・書評
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1924年 大正13年
まだ、炭治郎が何処かで戦ってたかもしれないというのに。主人公・河合譲治が、自身の愛の歴史を振り返る。
真面目で凡庸な独身会社員、28歳の譲治。浅草のカフェで出会った美少女、15歳のナオミを引き取り、自分の好みに育てていずれ妻にしてもと目論む。ピアノや英語を習わせ、教養を与えて、洋館を賃貸し、思うままの生活をする。(エセ光源氏よ)
ナオミは自由奔放な浪費家の素養のまま育ち、譲治は矯正できない。一度はナオミに見切りをつけるも、恋しさの余り、再びナオミの従者となる。
ナオミの肉体の美しさを細部まで濃密に描く。そのビジュアルと肉体に溺れる。
そして、ナオミの支配的言動を含めて愛する。
ナオミも多数の男性遍歴を重ねながら、譲治に戻る。飼育していたつもりがされていた男女関係。
これも愛あれも愛たぶん愛痴人の愛。
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なんでナオミは最後、譲治のところへ戻ってきたんだろう。もっとお金持ちだったりハンサムだったり、何でも自由にやらせてくれる男は探せばいくらでもいただろうし、いや探さなくても花の蜜に誘われて飛んでくる蝶のように、ヒラヒラと男の方からやってきたはず。西洋館に住み西洋人のように暮らしたいのであれば西洋人と一緒になればいいのだし。夫婦とならなくても愛人でもいいのではないか。現にナオミの周りには、譲治と別れる前から途切れることなく男たちがいたじゃない。
それなのに、ナオミは譲治の元へ戻ってきた。まぁスンナリとただでは戻らないのが彼女だけど。ジリジリと譲治の本能をなまめかしくいたぶり、からかい惑乱する。遂に譲治は自分からナオミの足下に身を投げ跪いてしまうことになる。ナオミは譲治と再び夫婦という形をとりながら、好き勝手に生きることの出来る人生を手に入れた。
ナオミを崇拝する譲治の姿を愛と呼ぶならば、譲治を奴隷のように扱うナオミの姿も愛なんだろう。
ナオミにとって自分の前に跪き身悶え陶酔し堕落していく男がいる。この譲治こそ、彼女の魅力を引き立たせ、身も心もゾクゾクさせる満足感を与えてくれるモノなんじゃないのかな。夫婦という柵があってこその燃え上がる多情愛。だから譲治の元へ戻ってきたんだと思う。
きっとこれも愛なんだろう。たぶん。うん。そぅ。たぶん。 -
譲治とナオミ
一回り年齢の違う2人。崇拝するようにナオミを愛する譲治。
ナオミの悪女っぷりを楽しむのか、譲治の滑稽さを楽しむのか
色んな楽しみ方があると思うけど、私は後者でした -
谷崎潤一郎の傑作といえば?で挙げる人が多い本作。感想を一言で述べると、めちゃくちゃ面白かった。ナオミに対して異常なまでの愛を感じ、全てを捧げようとする真面目で勤勉な河合譲治であるが、その愛が自分でも止めることができないほど大きなものになっていく。正直、ドン引きする部分もあるが、ナオミが実在するなら一体どこにそれほどの魅力があるのかを感じてみたい。
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悪と美の権化のようなナオミだが、時折見える彼女の孤独な心が物哀しい。
その陰鬱な影がナオミをさらに魅力的な人物にしているように思った。
ナオミに屈服する譲治の様子は変態的に見える。
しかし、個人的には「圧倒的な美」には人をそうさせる力があると思っているので、譲治の気持ちも全くわからなくはない。
私も変態かもしれない。 -
思うところあって谷崎。
谷崎はたしか学生時代に「細雪」を読んだくらい。
恥ずかしながら、ほぼ「通過していない」と云っていいでしょう。
「もう一度、ジェームス・ブラウンから聴け」てな心境で、大正14年に刊行された本作を手に取りました。
「今も色褪せない名作」といったあたりが常套句なのでしょうが、色褪せないどころか今も新鮮で艶めかしく、濃密な色香を放っていて夢中で読み耽りました。
長年の風雪に耐えてきた文豪の作品は、やはり違うなと改めて実感。
主人公の譲治は、一回り以上も年下のナオミと同居生活を始めます。
ナオミはまだ数え年で15歳です。
この幼気な(というかかなりマセてはいますが)少女を自分好みの女に変えようと、譲治は、いわば〝調教〟に励みます。
ところが終盤、立場は変わり、譲治はすっかり大人の女に変貌したナオミの意のままに操られるようになります。
ナオミの馥郁たる色気を描く谷崎の筆の容赦のなさと云ったら。
譲治はナオミに触れたい一心で何とか隙を窺いますが、ナオミはのらりくらりと交わして指一本触れさせません。
まことに悪魔のような女です。
私は譲治にすっかり感情移入してしまい、何度も身もだえしました。
で、ナオミは最後に譲治に馬乗りになって、全ての要求を無条件に飲ませます。
その執拗さ周到さには驚き呆れました。
そこまでやるか、と思わず突き込みを入れたほどです。
まったく女ほど怖いものはない。
強き者、汝の名は女なり。 -
喫茶店で働く15歳の少女ナオミを自分の理想の妻に育て上げようと考えた河合譲治。しかし、河合は徐々にナオミの言動に抗えなくなってしまい…
読む前はナオミがどんなに魅力的で危険な魔性の女っぷりを見せてくれるのか楽しみにしながら読み始めたのですが、ちょっとイメージと違ったかなあ。言動が思ったより露骨で下品だったなあ、というのが正直な印象。
ナオミに対しそう感じてしまったので、譲治がナオミに囚われていく描写もイマイチ入り込めず…。このあたりは完全に自分の好みの問題だとは思いますが…。
読み始め当初はナオミに囚われた譲治に対し、「馬鹿だけどかわいそうだな」などど少し同情的に読むところもあったのですが、
譲治がナオミと喧嘩し「出ていけ」と啖呵を切ったにも関わらず、その後彼がナオミの少女時代から今までの身体の成長の様子を記録したノートを読み返し、後悔する場面を読んでその感情が消し飛びました(笑)。ナオミも大概だけどあんたも相当だよ……。
二人の関係性がこうなった原因は結局どっちのせいということもなく、どっちもどっちだったのだろうな、と思いました。
「女は恐ろしい」という言葉がありますが、この本を読んでいると女が恐ろしいというよりかは、破滅すると分かっているのに、結局本能に負けてナオミとの関係をズルズル続けてしまう譲治を通して見えてくる男の肉欲、性欲の恐ろしさ、というものの方が強く感じました。まあ、本人はそれに満足しているみたいなので、読者がとやかく言うことでもない気はしますが。
譲治のナオミに対する感情って愛なのかなあ… -
ナオミに溺れてゆく譲治の結末は、衝撃的です。
ミステリー小説よりも怖い!
この一冊で、すっかり谷崎文学にはまりました。 -
読んでいる私も主人公と同じ見栄の塊だと気づかされる。
どうして読んだ後もこの本の事を考えてしまうんだろう。
文豪ってすごい。 -
大人の男が、自分の妻にふさわしい女を育てたくて、少女と一緒に暮らす話。
ナオミとジョージの変わっていく様。
描写が素晴らしい。
読み終えた後数日、2人が脳裏に浮かんだ。
読み始めは、昔の口調にモヤモヤしたが、途中から気にならなくなった。
ジョージのように愛してくれる人が欲しいが、
ジョージはナオミだからこそ、あの愛し方ができるのでは。
普通の女性だったら、あんな風に愛せなかったのかもしれない。
著者プロフィール
谷崎潤一郎の作品






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時々、謎の名作あるよね。
面白くなかったのよ討論会を開催したいよ。
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それ大賛成‼︎ぜひ!
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こうやってお話するの、ほんとに楽しい♪
そんな討論会、最高です( * ¯꒳¯ )b
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