刺青・秘密 (新潮文庫)

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レビュー : 331
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005034

感想・レビュー・書評

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  • なんとなく読まず嫌いしていたのですが、文章の美しさに定評があるということで初めて谷崎潤一郎の作品に触れてみました。
    読んでみて成る程確かに美しいと感じたのですが、情景や台詞の美というよりは、圧倒的な女性への執着と崇敬の念が感じられまるで聖母かのように描かれているのが印象的でした。
    「刺青」は実質処女作だそうですが、美しい身体に完璧な芸術を施したいという執念と共に、背中を這う「女郎蜘蛛」という不気味な生物を描くことで恐ろしい程の美に縛り付けられたいというマゾヒズムを感じました。
    私自身、谷崎潤一郎のことはあまり知らないのですが
    解説や調べ物によって得た印象では複雑な家庭環境で幼少期を過ごし、特に乳母と一緒でないと登校できないという程内気な少年だったようで、その経験もあり絶対的な母という安らぎを渇望し女性に心酔するようになったのかなと思いました。

  • 短編集です。どの話も良かったのですが、選ぶとすれば「秘密」と「異端者の悲しみ」です。

  • 全篇に渡って、なんとなく後ろめたさを感じる。文章表現が美しければ美しいほど、なんだかわからない罪悪感に苛まれてしまう話ばかりだ。
    その中で、最後の作品『母を恋ふる記』。本当にこれには参ってしまった。
    冒頭から情景がありありと浮かんで、寒く、心細く、宛てなく暗闇を歩いている主人公の心情が完全に伝わってきて、読んでいる自分は実際には歩いてないのに足取りが重くなる…。そこを照らす月の明かりの表現。描写が心に響きすぎて、声にならない声が出そうになった。
    その後の母の涙の姿、これも美しさと母親の気丈な心が現れていて感嘆してしまう。月の包容力にも泣けてしまう。そして最後にわかる真実で、もう全ての力が抜けてしまう…
    本当にこの作品を読めてよかった。こんな凄まじい文章は到底書けないけれど、だからこそ読む愉しみがあるというものだ。

    (『刺青』が思っていたよりかなり短編で驚いた。これをあそこまでの映像に膨らませた増村保造監督はすごいなあ)


  • あったあった、ちょっとカビ臭いけどね。高校生以来、印象に残っているのは刺青だけ。
    刺青 足だけを見て恋した女、刺青した女の変貌、妖しすぎ
    少年 こんな気味の悪い話は嫌い。なのに病的に倒錯した世界に取り込まれて行く妖しさ。
    秘密 秘密を持つことの魅力、秘密がわかった途端に褪せる気持ち、秘密等と言うて温い快楽が血まみれの快楽に変わるってどうなるの?
    二人の稚児 これは綺麗、少しほっとする。

    これらがホントに作家になったばかりの頃の作品だとは。細雪は映画見ただけ、痴人の愛はドラマかなにか、ほとんど谷崎知らないのだな

  • Kindle版表題の「刺青」「秘密」と「少年」を読んだ。今風に言うとプレイ小説。主にマゾの心情。艶めかしくマゾの心情をこみ上げさせるのは流石谷崎。「少年」は、やはり汚い折檻などは少年時代であっても自分的にはありえないなとか。しかし、それらを感受する心の鋭敏さがなにやら読んでいるこちらをくすぐるような心持ちにさせる。「刺青」はタイトルの持つ色彩が作品の美しさをより引き立たせているように思えた。「秘密」も趣きのある作品のように思えた。

  • 怪しくも美しい世界。
    これが明治とか大正の、約100年くらい前に書かれた小説かと思うと、驚いてしまう。鮮やかな色づかい、音、質感の描写は映像として感じられるほど。
    「母を恋うる記」は、あの、夢独特の、空間の不安定さ、時間軸の永遠と一瞬が交錯する感じ、そして自分の深いところに潜って何かを切望する心持ちが迫ってくる。

  • 官能的!

  • 日本語の巧みさ、美しさを散りばめられた
    変態大谷崎の処女作であり、初めて読んだ本。
    背に大蜘蛛が彩られる情景の文には
    日本語の美で描く官能の色を感じさせられた。

  • エロスというよりマゾヒスト、フェティスト、覗き見、と妖しげな女性への美意識に足を突っ込んだ作品です。
     三つ子の魂百まで、といいますがデビュー作からこんな感じで突っ走ってる人ので、文科省推薦作家(教科書に載る作品を書く人)になるはずがなく、あえて自分から手を出さないと一生食わず嫌いで終わる可能性のある作家です(同じ類の大家に、永井荷風がいます)。
     とにかくノーベル文学賞候補に何度ものぼっ文章力は伊達でなく、’’天賦の才溢れる変態’’といったところでしょうか。この本の中では’’少年’’が好きです。これも妖しいですよお

  • 耽美というと昔はとにかく美しい世界、花や宝石や月や星、美男美女のめくるめく愛のようなものを想像していた。
    それも間違いではないのだが、実際は美の概念というものを考えさせられる世界だ。
    醜悪な姿や心やグロテスクなおどろおどろしい話、そんなものの内に美を見出すのはどういうことだろう。
    考えてみると、それが人間の理性を超えた世界だからかもしれない。
    倫理や秩序を超えた根源的な欲求、それを満たす陶酔や解放感を、美とあらわすほか言葉を知らないだけかもしれない。
    人間の本質は秩序からかけ離れたところにあるのかもしれない。

    この作品を読んでいて思い出したのが、映画「ブラックスワン」と「ドリアン・グレイの肖像」だった。
    そのどちらかが好きな人ならば耽溺できる世界観だと思っている。

    谷崎氏の文章の魅力はその放埓さと、絢爛な言葉遣いにある。
    「刺青」は最後の一文がいつまでもからだの裏側で冴え渡っていて、視覚の一部を盗まれたような心地がした。
    「秘密」もまたあやうくたまらなくエロティックで、極限までその期待とおそれとをふくらませてからの呆気なく残酷な幕引きが余韻を残す。
    やはり表題作のこの2点が印象として強い、と感じた。
    「少年」もまた無垢な残忍性から記憶に残る話ではあるが、好みから少しずれていたので、おそらく再読はしないと思う。

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著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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