刺青・秘密 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 331
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005034

感想・レビュー・書評

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  • 「春琴抄」「少将滋幹の母」以来の谷崎。どうしてこれを最初に読まなかったんだろうというくらい、ぎゅうっと詰まった短編集だった。
    谷崎はどうもとっつきづらかったけれど、読んでみると意外なほど読みやすい、先へ先へ導かれてしまう文章だなと感じた。情景描写の美しいこと、解説に聴覚型の作家との意見があるけれどそれを裏付ける美妙な音色が埋め尽くす世界。
    うつくしさでいえば「二人の稚児」「母を恋うる記」は鳥肌が立った。「母を〜」の全体に満ちるほの蒼い死の匂い、雪原の狐の足跡に蟠る影のような。これ語り手が死んでいたという話でも驚かないなと思った。死と美はどうしても深いところを共有している。
    あと「異端者の悲しみ」もすこし毛色が違うけれど好き。最後の3行は芥川「トロッコ」のラストと似ているような似ていないような。
    もう少し考えてみたい、と思う話がいくつも見つかったので、またいずれ読む。

  • 谷崎潤一郎一流の美世界が垣間見えた。

    ・二人の稚児
    身分で自分を守るかに見えた瑠璃光。千手との対比。
    俗世界に歓びを見いだすのも、来世に希望を見いだすのも個人の自由かもしれないが、貫き通せばどちらも美しい人生になるのではないか。

    ・異端者の悲しみ
    芸術とはなんたるか。周りに「迷惑」をまき散らしつつも大成してしまえばおしまいなのか。
    人間性が単純に発露するものではないのかも。それとも、主人公のような特異な性格故に書きうる作品があるのか。

    ・少年
    マゾヒスティックだが美しい。

    ・刺青
    表現が迫ってくるよう。女の豹変ぶりも素晴らしい。
    体と心の関係性とは。


    全体的に、(当たり前だけど)谷崎潤一郎の美世界は三島由紀夫とは違ってまた良いなぁ。

  • 3/19読了

  • 名古屋文学サロン月曜会の課題本。谷崎潤一郎は猫町倶楽部を通して、
    これが3度目だ。初めての本は「痴人の愛」、2回目は「春琴抄」

    谷崎の本と言えばSMという事前知識があったので、
    この短編集にもやはりSM要素がふんだんにちりばめられていた。
    この本の中で特に印象が残ったのが、「二人の稚児」

    幼くして孤児になった二人の男の子は、あるお寺で和尚さんのもと、
    育っていくのだが和尚さんから浮世(地上の生活)は女という魔物がおり、
    行ってはだめだと言われて育っている。年が思春期にもなると、
    二人は浮世に行きたいという煩悩と戦うことになるのだが、
    年上の千手丸はある日地上に出たっきり、戻ってこなくなった。
    彼は地上で快楽の味を覚えてしまい、年下の瑠璃光丸にもおいでと誘うわけなのだが、
    瑠璃光丸は煩悩取っ払って仏修行に励むというお話し。

    谷崎自身、私生活は千手丸のように人生の快楽を味わってきたので、
    本来なら千手丸のような生活を勧める内容を書くのと思いきや、
    彼は瑠璃光丸の生活を美化しそして最後の結末を見事な筆致で収めている。

    僕自身もやっぱり人生の快楽を味わって女の子と遊びたいなと思う自分がいて、
    でも一方では快楽におぼれるなという理性を持つ自分がいる。
    中学のころからこの葛藤に悩まされていて、
    いまだに僕はこの煩悩と戦っている。現段階では理性が抑えている。

    そんな矢先にこの短編を読んで、ものすごく感動したわけだ。

    人生の快楽から生まれるものって何があるんだろう?
    谷崎はこの快楽を追及することで、偉大な本を書くことができた。
    最近テレビで見たモンテクリスト伯を書いたデュマも快楽を追った人物だ。

    煩悩を追い払えばなんとなく、悟りの道がひらけるんじゃないかと仏教的な考え方がある。
    悟りの道が開ければ心が平静になるんじゃないか。

    このように哲学的に考えてみたものの結局僕には答えが出せない。
    いっそ身を滅ぼすほど快楽の海におぼれてみたいな(絶対に口だけでやらないと思うが)。

  • 痛みとセックス。
    このふたつほど濃密に生を実感させられるものもない…
    愛とはなんなのか考えてしまう。

  • 最初期の作品4つと30代に執筆された作品3つが収められた短編集。文字を読むというのは理性的な行為だと思っていたが、谷崎の小説については例外だと思い知らされた。とにかく20代半ばに執筆された、最初期の作品4つが凄まじい。彼の文章は理性よりも五感に働きかけ、視覚情報だけでなく嗅覚や触覚にまで訴えてくる表現力。その語彙の数々は時に難解で頭に入ってこないはずなのに、身体に直接潜り込んで疼き出す。徹底的なまでに理知的に選び取られた言葉によって白痴の様に思考を放棄させられ、言葉の鼓動に身を委ねることの愉しみ。エロい。

  • 初めて谷崎潤一郎作品を読んだ。

    話の内容も面白いが、なにより文章が素晴らしい。

    三島由紀夫が「お酒のように酔わせる文章」と言っていたが、あれは本当だった。

    収録作品の中でも特に「異端者の悲しみ」は傑作だと思う。

    今まで読んだ作品の中で一番面白かったかも知れない。

  • 初谷崎。もっとダークな作品なんだろうと先入観で考えてたけど、とても読みやすかった。
    なかでも"異端者の悲しみ"は秀逸。
    その他にも"2人の稚児"、"刺青"も良かった。
    卍も読んでみます。

  • 初めて読んだ谷崎の短篇集。
    「刺青」や「少年」や「秘密」など相変わらず耽美的な雰囲気が漂う。
    読んでいて、常にドキドキする。
    子供混じりの徒らや、苛めはどんどん官能的な匂いを帯びてくる。

    「刺青」はまるで谷崎文学を抽象的に語る寓話。
    「麒麟」は中国戦國時代の衛の国の夫人「南子」のお話。
    「少年」は美少年のお坊ちゃんは最終的に美少女のお嬢さんに負ける話(笑)。谷崎文学においては、最終的に勝ち抜くのはいつも女性!
    「幇間」は逍遥に生きる男。
    「秘密」は女装!!!美男子が女装してても、本物の女の美に負けてしまう。
    「象」と「信西」は作者の歴史を描く底力を見せてくれた。

  • 女郎蜘蛛

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著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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