刺青・秘密 (新潮文庫)

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レビュー : 331
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005034

感想・レビュー・書評

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  • 「異端児の悲しみ」俺は実は天才なんだぜ系こじらせ自我と、独り言の諸元と、肺病にかかった妹の小言がうるさいのと、親の文句もうるさいのと、借りた金をなかなか返せないともだもだするのと、しょーーーーもねえ…しょーーーもねえぞ谷崎さん…と思いながら読んでたら結末が唐突に「その後彼は小説を発表し、芸術的に非常に高く評価された」で締めくくられててそんなことありかよ谷崎さーーーん!と転びそうになった あなたのことでしたか…
    がしかしこの「異端児の悲しみ」が短編集の中でいちばん面白かった。好きなこと書いてもいいのね、元気出た。

  • 谷崎潤一郎の初期短編である"刺青(1910)"、"少年(1911)"、"幇間(1911)"、"秘密(1911)"、"異端者の悲しみ(1917)"、"二人の稚児(1918)"、"母を恋うる記(1919)"の7編を収録。フェティシズム、マゾヒズムの妖しい世界に溺れることの出来る作品集です。やっぱり、この谷崎ワールドは素敵すぎます。くわえて、文章に使用されている日本語が耽美です。ここまで突き詰めれば、変態趣味も芸術に昇華されるんです。短編でとても読みやすいので、谷崎文学に初めて触れようとするときにオススメです。

  • 処女作『刺青』からしてもう、谷崎潤一郎は谷崎潤一郎なのだなと思う。
    世界観が確立されている。
    『少年』『秘密』しかり。
    人の痛みを悦び、秘密に焦がれる性癖。

    だけどそれは異端なのだろうか?
    自身を異端者と書いているけれど、読む限りそれは異端者であるというより、異端の者になりたい、であるはずの自分だ。
    しかし、誰の心にもこのような世界があることを、彼は疑ったことはなかっただろうか?
    自分は皆と同じような真っ当な人間ではない、自分はほかの人間とは違う、だけど何者にもなりきれていない今は家族に無頼を気取り、友達には道化てみせる。
    普通じゃないですか?

    やはり、『刺青』『少年』『秘密』『幇間』あたりが、谷崎潤一郎でなければ書けない文章だろう。

    読みながら、なんとなく永井荷風を思い出したりもしたのだけど、谷崎潤一郎は永井荷風の大絶賛を浴びて文壇に送り出されたのですって。さもありなん。
    だけど永井荷風は一歩離れて対象物を見ているようなところがあるけれど、谷崎潤一郎は同化していきそうな気配がある。
    そこに違いがあると思った。

    で、実は『母を恋うる記』が結構気に入っていたりする。
    やっぱり異端者ではないよ思うよ。偽悪者ぶりっ子。

  • 谷崎潤一郎は「痴人の愛」と「春琴抄」しか読んだことがなかったのだが、これを読んで一つの発見をしたかも。
    それは谷崎小説に登場する男性が揃いも揃って変態的ということ。
    この作品で谷崎自身がマゾということも知ったのであながち間違いではないはず。
    「痴人の愛」も「春琴抄」もM男が大活躍するし。
    谷崎の凄さはその変態性を文章の美しさで低俗に感じさせないところにも一つあるのではないか。
    品のある艶めかしさが印象的というか。
    これが西洋だとエロばかりで下品になりがちだったりするけど。
    個人的には「異端者の悲しみ」が印象に残った。
    谷崎も中二病的な自伝書いたんだな、と微笑ましくなった。
    今ではあんなの通用しないだろうけど、やっぱり作家の自意識が生んだ作品は気になってしまう。
    結構やらかしてると思った。

  • これほど美しい日本語に出会ったことはない。。
    谷崎潤一郎は私の一生の推し^^

  • Kindle版表題の「刺青」「秘密」と「少年」を読んだ。今風に言うとプレイ小説。主にマゾの心情。艶めかしくマゾの心情をこみ上げさせるのは流石谷崎。「少年」は、やはり汚い折檻などは少年時代であっても自分的にはありえないなとか。しかし、それらを感受する心の鋭敏さがなにやら読んでいるこちらをくすぐるような心持ちにさせる。「刺青」はタイトルの持つ色彩が作品の美しさをより引き立たせているように思えた。「秘密」も趣きのある作品のように思えた。

  • 日本語の巧みさ、美しさを散りばめられた
    変態大谷崎の処女作であり、初めて読んだ本。
    背に大蜘蛛が彩られる情景の文には
    日本語の美で描く官能の色を感じさせられた。

  • 耽美というと昔はとにかく美しい世界、花や宝石や月や星、美男美女のめくるめく愛のようなものを想像していた。
    それも間違いではないのだが、実際は美の概念というものを考えさせられる世界だ。
    醜悪な姿や心やグロテスクなおどろおどろしい話、そんなものの内に美を見出すのはどういうことだろう。
    考えてみると、それが人間の理性を超えた世界だからかもしれない。
    倫理や秩序を超えた根源的な欲求、それを満たす陶酔や解放感を、美とあらわすほか言葉を知らないだけかもしれない。
    人間の本質は秩序からかけ離れたところにあるのかもしれない。

    この作品を読んでいて思い出したのが、映画「ブラックスワン」と「ドリアン・グレイの肖像」だった。
    そのどちらかが好きな人ならば耽溺できる世界観だと思っている。

    谷崎氏の文章の魅力はその放埓さと、絢爛な言葉遣いにある。
    「刺青」は最後の一文がいつまでもからだの裏側で冴え渡っていて、視覚の一部を盗まれたような心地がした。
    「秘密」もまたあやうくたまらなくエロティックで、極限までその期待とおそれとをふくらませてからの呆気なく残酷な幕引きが余韻を残す。
    やはり表題作のこの2点が印象として強い、と感じた。
    「少年」もまた無垢な残忍性から記憶に残る話ではあるが、好みから少しずれていたので、おそらく再読はしないと思う。

  • 太宰に興味を持った高校時代、その派生で読んだ谷崎の本作。軽い気持ちで手を出すような代物ではなかった。

    人間の弱さとか見栄とか、色々な感情が描かれていて、高校生なりに「とんでもないものを読んでしまった」と思ったことを覚えている。

  • 今年のプレミアムカバー、すてき!
    なんかエロチックな感じ笑
    別に直接何かが書いてあるわけでもないんですけど…
    文体かな?読みやすいけど独特でした。

著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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