春琴抄 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005041

感想・レビュー・書評

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  • 私は主従愛が大好物だ。
    気位高く、決して心を許さぬようにみえて、それでいて側に居ることを許す心の隙。
    当時の使用人は主人と同類の人間とはみなされない。主人と忠犬のような、言葉で幅を狭めてしまうようなやり取りなんざせずに、ただただ一日一日を過ごす。
    二人は主従である、ただそれだけで説明される関係が良い。

  •  文豪・谷崎潤一郎の代表作の一つにして、耽美主義の傑作。
     19世紀の大阪を舞台に、男女の主従の奇縁が描かれる。
     三味線の師匠である盲目の美女・春琴と、献身的に身の回りの世話をする弟子・佐助。
     幼き頃より、二人は、余人には窺い知れぬ繋がりを持つ。
     長じて後、春琴は、弟子の一人から深刻な恨みを買い、凄惨な復讐を受ける。
     就寝中に熱湯を浴びせられ、その美貌は無残に焼け爛れた。
     欠損した姿を、佐助にだけは見られたくない春琴の意を汲み、また、彼女の面影を永遠に脳裡に保有するため、佐助は自ら目を潰し、盲となる。
     分かち難く結びついた二人の歪な関係は、歪であることによって完成し、完遂された。
     その巧緻で流麗な筆致が形作る美と愛の世界は、谷崎文学の芸術性と官能を十二分に堪能させ、読後の深い余韻を誘う。
     二人の物語を入れ子構造の伝聞体とすることで、虚構があたかも歴史の如き昇華する構成も、見事の一言に尽きる。

  • 難しい。佐助はなぜ自分を失明させたのか。この佐助と春琴との関係が常人には理解できない愛の形なのだろうか。

  • サディスティックな気性を持つ春琴と、それに師事する佐助。最初は佐助が気の毒で、それでも耐える彼に、今度はだんだん不快感すら覚えていきました。それが形勢逆転‥。といっても、二人の上下関係は変わらないのだけど、実はその関係は、春琴より佐助にこそ必要だったのだというのが解ってきます。もうその辺からはドキドキ‥最後は狂気にすら思えます。はたして春琴は幸せだったの?美しいからこそ、剥ぎ取るのが恐ろしい‥。

  • 美しい文体と空気に惑わされる。
    マゾヒスティックとか狂気とは違い、
    美しい語り部による美しい民話に聞こえる。

  • この作品の語り手はおそらく谷崎自身だと思われ、春琴と佐助の物語を人伝えに聞いてそれを記すという形式をとっている。この語りの形式により二人の心情は一人称語りでは表現されないのであるが、佐助の自己語りを基に書かれている部分があったりとその心情が陳腐なものになっているなどということは決してない。むしろ佐助の春琴に対する思い等は前半から少しずつ散りばめられ後半にかけて読者に畳み掛けるように襲いかかってくる。その思いというのがさすが谷崎とも言うべきものであり、個人的には『痴人の愛』に勝るとも劣らない情感であると感じた。特に春琴の身に災禍が降りかかった後の二人の描写というのは読んで損はしないであろう。

  • 谷崎潤一郎の作品の中で一番好き。谷崎というとグロいのも結構あるが、例えば「痴人の愛」のようにあからさまなエロさはなく、抑制された表現の中のエロチシズムを感じられる。文章力、ストーリー、野心的作風、バランスも取れてて文句なし。

  • これが、耽美主義なのか。。すごい世界だ。

  • 谷崎潤一郎「春琴抄」

    手の第二関節を誰かずっと軽く触れられているような感覚で
    ゾクゾクして、ソワソワしながら読んでいて。

    2人の関係に師弟愛以外の愛は存在しない、と私は思いました。
    その愛は、計り知れない、尋常じゃないもので
    傍目には怪物的にしか見えないけれども、
    きっと境遇の違う2人にとっては、共に生きるための
    一番大事な、変えてはいけないものだったのではないかと。

    あまり好きな小説ジャンルではない、と読んだ今も思っているけれども、読んだことで読書経験値が増えた気がする。
    まだ積み本の中に「痴人の愛」があるのですが、
    それはもう少し先でいいかなと思いました。笑

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著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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