春琴抄 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.90
  • (758)
  • (669)
  • (909)
  • (43)
  • (4)
本棚登録 : 6207
レビュー : 743
  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005041

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 独特の擬古文の文体で語られ、それが全編にわたって古雅な趣きを与えている。これを読むと、小説の本質は、プロットにはなく「語り」にこそあることがよくわかる。また、春琴と琴台の弦の響きに加えて、鶯や雲雀がモチーフとして用いられ、音の世界を背景としていることも、雅で繊細な感覚を付与しているだろう。人物像の造形も巧みだ。その究極は佐助にあるだろうが、春琴の表現にも一部の隙もない。谷崎の数ある小説群の中でも、究極のマゾヒズムの悦びと美への讃美を描いた点ではやはり屈指の1篇だろう。小説世界に浸りきれる作品だ。

  • 現代っ子の私。最初こそ読みづらく感じましたが、意外にもスラスラ読了。
    思ったより薄かった!(本の厚みが)

    春琴のキャラが想像してたのと違って、ちょっと驚きました。
    もっと佐助には甘えてる感じをイメージしてたので。
    ワガママお嬢さんは嫌いじゃないけど、それにしてもひどい。
    2人の間だけに存在する世界観は眺めていたくはあっても、体験したいとは思わなかった。

    まあ、本人たちが幸せなら、それが一番なのでしょう。

  • 2010私的夏の文庫フェア第2弾。
    今更ながら初谷崎。

    『鵙屋春琴伝』という小冊子を手に入れた「私」が、往時の春琴・佐助を知る人からの聞き取りを交えて語る、という形の物語。
    句読点のほとんどを排した文章に初めは面食らうものの、慣れてくるとそのリズムが心地よくなってくる。そのあたり、さすが谷崎潤一郎と言うべきか。
    物語への好悪はあると思うけど、この日本語表現は一読の価値あり。

    薬種商の娘として生まれ、美貌と音曲の才能を併せ持つ、高慢なる盲人のお琴(春琴)。
    丁稚としてお琴に仕え、痛罵されながら彼女を敬慕し献身的に身の回りの世話をする佐助。

    春琴・佐助の間にあったものは果たして「愛」なのか。
    あるいはこの彼らにとっての「愛」とは何であったのか。
    爽やかとは言い難い読後感の中、何とも言いようのないモヤモヤした感じがつきまとう。

    佐助の心情の変化というのは読み取りづらい。
    と言うより、変化していないのかもしれない。

    佐助は春琴にあこがれ、なけなしの金で中古の三味線を買い、夜な夜な押入れで聞きかじった曲を独習する。
    春琴が何者かにより熱湯をかけられその美貌を損なうや、縫い針をもって自ら目を潰す。

    佐助が常に望んだのは、「春琴と同じ世界に身を置くこと」ではなく、「春琴とその世界を見上げること」ではなかったか。
    三味線の独習と、図らずも得た春琴からの指導の中で、己では到底辿りつけない高みにいる春琴を崇高なものとして見、その崇高な存在から苛烈な扱いを受けることに悦びを得ていたように思える。
    その崇高さを形づくる要素たる美貌が失われれば、視界を閉ざし、記憶の中の美しい春琴のみを見て生きる。重度の火傷を負ったことで佐助側に“落ちてきた”春琴に耐えきれなかったように見えてしまう。

    結局のところ佐助が見、敬慕し、愛した春琴というのは、彼がつくりあげた美的象徴としての「春琴」だったのではないか。春琴その人を自分本位に歪めて信仰の対象にしていたとしか思えない。
    「マゾヒズムを超越した本質的な耽美主義を描く」などと表現される本作だが、どうも佐助のマゾヒズムと共にエゴイズムが感じられて仕方ない。

    じりじり暑い部屋の中、そんなことをぼんやりと考えた。
    夏の読書にはこういう作品がいい。

  • 1933年(昭和8年)ベストセラー
    請求記号:Fタニザ 資料番号:010655975

  • 先々週、西宮に舞台を観に行ったので、その勢いで谷崎を読む。果てしなく一見だらだらと続く文章が独特のリズムを作っている。今はなき美しい日本、美しい日本語。何か不思議な世界である。ただ今まで谷崎を読まなかった理由と同様、あのほの暗い世界を理解するには私はまだ眩しい位置に立ち過ぎている。まだ早い気がする。

  • 多少読みにくい部分はあるにせよ、読み物としては面白い題材で、短編を読んだような感覚だった。

  • 盲目の美人で三味線の達人である春琴と、それに仕える佐助の話。

    小さい時から佐助は春琴の身の回りのことを世話している(春琴より少しだけ年上。)
    春琴は佐助に辛くあたり続けるが、佐助はそれを受け止め、春琴を深く愛している。

    ある日、春琴はその美貌を何者かに傷つけられ、それを見た佐助は自らも盲目になる。


    春琴が辛くあたるのにずっと愛し続ける佐助に感動した。
    多分、春琴は悔しさや、やるせなさを佐助にぶつけてて、なんだかんだ佐助もそれを分かってたのかな、って。(養子に出したけど、二人の間には子供もいたし。)

    読んでて辛いな、春琴わがままだな、と思う時もあったけど、佐助の態度に救われた。

  • あまり感銘を受けなかった。時代の違いというのもあるだろうし,僕自身が大人になりすぎたというのもあるかもしれない。

  • ドMの真髄を見た。これはひどい。断っておきますが、褒め言葉です。名作です。

  • 愛に狂うということは、こういうことか。
    静かに、じわじわと。

    描写が生々しく、痛々しいところもあったが、それも魅力の一つだろうと思う。

    • ocicatさん
      sakiさん、こんにちは!

      春琴抄は、高校時代に読んだことがあるような無いような。。(すみません完全忘却)

      良さげですね。来月読んでみま...
      sakiさん、こんにちは!

      春琴抄は、高校時代に読んだことがあるような無いような。。(すみません完全忘却)

      良さげですね。来月読んでみます!
      2013/06/30
  • 盲目の天才美人我儘女流三味線奏者と彼女に全てを尽くした付き人のだいぶクレイジーな愛の物語
    扱ってる題材がディープかつエモい。
    しかし文体は終始客観的な描写に徹しているので、あまり読みながら感情が高ぶるということはなかった。これは各々が自由に想像を膨らませられるという点で効果的だったように思う。

  • これも一つの愛の形?なのかな。佐助の春琴への想いは、少し偶像崇拝に近いような気がする。

  • 今まで読んだ本の中で一番好き!文体もすごく独特で漢字も多いけど、読み進めていくと苦痛じゃなくなる。むしろこの表記以外考えられない。春琴が可愛いです。なんかツンデレって感じがしました。是非、多くの人に読んで欲しいです!!

  • 感覚の集中して織り成されるものは、音曲にしろ慕う気持ちにしろ、珠玉なのかも。さらりとしたようで深い信頼、師弟に通い合うものがいじらしくて、描写が流麗で、句読点のなさに躓きながらも引き込まれてしまった。

  • 美しくも希少の激しい盲目の三味線弾きである春琴と、幼い頃より彼女の弟子として従者として生涯彼女に付き添った佐助の話。
    37歳で春琴は大火傷を負い生来の美しさを失ったが、佐助はその姿を目に映すことを拒み、彼女と同じ盲目になることで美しさを自分の中に留めようとする。そうして初めて春琴は心から佐助を大切に思い、佐助は愛されたことに無上の喜びを感じる。
    かくて2人の盲人は精神世界で一つとなっていくという、非常に耽美な話。春琴のツンデレっぷりが半端無かった。映像化されたらしいけど、作品の特性からして春琴を実写化するなんてあまりにも下世話な話だwそして佐助の自分の愛する美しさを永遠に留めようとする姿勢は大槍絵に通ずる点があると思う
    少女性というか、大槍葦人が書く「老いていく自分と時間軸を異にして何にも汚されていない、物憂げな感情を携えた瞳の少女」に物凄く神秘的な何かを感じる。その辺の変わらないものを求める愚かさと美しさみたいなのを勝手にこの本からも感じ取って「やっぱりロリは正義だよな」と独り呟く、そんな夜。

  • 大絶賛。

  • 盲目の春琴と、献身的に春琴のお世話をする佐助。2人の関係は完全に女王様とM男。ある日、春琴は何者かによって顔に火傷を負わされ、美しさを失ってしまう。ただれた顔をみせるのを嫌がる春琴のために、佐助は自分の両目を潰してしまう。クレイジー!愛は盲目なのですね。

  • 良家の娘、そして盲目。気性の荒い春琴。
    その彼女に仕える、奉公人の佐助。

    三味線の師匠と弟子でもあり、佐助は一生春琴の為に生きていく。
    自分の目を潰してまで・・・

    佐助の一途に思う気持ちに昔は心を打たれたが、
    今改めて読み返して見ると、かなり狂気の沙汰だ。
    この時代だから有りえる、愛の形なのか。。。

  • 美の局地。性の極限。シンプルな最後の答え。
    たどり着く場所は1+1=2のようにシンプル。

  • お師匠さんの顔を見れないように自分の目を、刺す??
    普通できる?
    そんなの、そんな愛どこに転がってるんですか。くださいそういうの。

  • 大好きな盲人のお師匠さんのために、自らも目を針で突いて盲人の道に入る弟子。
    それを「やっと私を理解してくれる」と泣いて喜ぶお師匠さん。
    二人はめでたく愛し合いました。

    読んでいて思ったのは、あまりSMチックとか耽美的ではなかった気が。ゾクゾクするほど官能的なところもなかった。
    期待が過剰だったかなあ。
    明治時代のお話なので、その辺りも理解できなかった原因かも。

  • 一文字たりとも無駄がない、濃密な文体が、大阪という業の深い街並みを描写する。

    盲目で我儘な芸妓、春琴と、彼女に仕える佐助という男の物語。
    ノーベル文学賞候補にも挙がった「大谷崎」の言わずと知れた名著。

    個人的な感想としては、やっぱり逸脱した「変態的」な内容を「文学」にするには、それ相応の「説得力」がなくてはダメだな、ということ。
    名作を名作たらしめる文体の濃密さはやっぱり本当に美しいよ。

    逆に、同作者の『痴人の愛』がどうしてもライトノベル的、エロ本的な読まれ方をしてしまうのは、そういうところに起因するのでしょうね。(あくまで相対的に)

    気になったのは、世界的評価の高い谷崎だけど、関西弁の、しかも大阪弁の艶かしさが海外にちゃんと伝わっているのか?ということ。

    初めて読んだ高校生の時から、同じ装丁の新潮社版を、何冊買ったかわからない。
    そういえば、私にこの本を勧めた国語の先生も関西弁を喋る人だったな。
    今思えば、すごく悪い人だったな。

  • 改行、段落分けがないので一見ぎょっとするけれども、すらすらとした美しい語り口で読みやすかった。
    とりあえず、やはり年の差は言いようもなくときめく。
    春琴のような、物語の中で、もしくは物語の中で特定の人物から女神的に扱われる存在はやっぱりずるいなあ。とんでもなく美しく造形されておる。三味線のお師匠様というのも。

    近代文学を読む理由の一つに、こういう伝統的なものがまだ色濃い時代の世界観に沈み込むのが好きだからというのがある。

    とりあえずほかの谷崎作品も読みたいものよ…装丁がとても綺麗だし、是非とも集めたい。

    ところで「陰翳礼讃」なのに背表紙は白か。

  • 3冊あり

  • 佐助の春琴に対する愛と献身に関する物語。
    春琴の顔に危害が加えられた後佐助が自ら目を潰して盲目になったのは、そうすることで傷が原因で気弱になり自分に対する春琴の接し方が変わるのを避けたかったからなのだろう。幼少の頃から接してきた春琴をいかに愛していたかが痛いほど伝わった。

  • まさに、盲目の愛 アブノーマルな愛。痴人の愛でおぞましく思ったが
    これも又オゾマシい。エロのはしりか?受け狙いか。 読後納得いかぬものは却下

  • 流れるような、流れ込むような文体

  • 主従ものとかSMとか言われてますけど、そんな俗っぽいもんを超えた関係が描かれている。後半以降の展開では痛々しい描写が美しさを引き立て、盲目の二人の世界には神々しさすら感じます。

  • 神様は盲目でした(言葉通りの意味で)
    恋は盲目ですね(不謹慎)なんて言葉を使おうと思いましたけど、佐助の思いはもはや恋というよりは信仰に近い。

    傲岸な春琴に思いを馳せ続け、物語終盤にやっと春琴が弱みを見せてくれそうで、やったね!佐助が報われる!って期待していたのだが、当の佐助さん、そんなもの見たくなかったらしく、完璧な春琴しか欲していなかった。
    佐助は春琴を女性としてではなく、神仏として見てたと思う。
    そう在らねばならなかった春琴とそれを望んだ佐助との主従の関係は実は逆転している節があったんじゃないかと感じた。

  • 主従を超えた愛
    ととるか
    ドSに魅せられたドM
    ととるか

    文体が好きじゃなかった・・

全743件中 211 - 240件を表示

著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

春琴抄 (新潮文庫)のその他の作品

谷崎潤一郎の作品

ツイートする