卍(まんじ) (新潮文庫)

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レビュー : 237
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005089

感想・レビュー・書評

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  • 谷崎の変態異常性欲小説として有名(!)な本書ですが、自分としては、葛藤する恋愛心理や策略のド派手さ、どこまでも果てしのない疑心暗鬼、そして、誰もが陥っていく性愛の強欲ぶりが特に目を引き面白かったです。
    とかく女性同士の性愛の方が脚光を浴びがちですが(自分も見学したいですけど(笑))、本書の本質からするとそんな異常性欲も可愛らしいものになって見え、むしろ、強欲ぶりと、それに伴う駆け引きというか策謀というか策略の凄まじさの方に圧倒されてしまいました。
    性愛に取りつかれてしまった面々は誰もが真面目でもあり、誰もがねじれているようにも思え、一体全体、どういう駆け引き具合になっていて、結局、誰がどうしたいのかがまるで掴めないようなドロドロの愛憎劇に、こちらの頭もドロドロになってしまった感もあります。(笑)
    つまるところ、このドロドロ劇の中心にいたのは美少女で処女(?)の光子であり、光子も含めて皆が強欲な性愛に翻弄されていたのですが、こうした泥沼から抜け出しひと皮剥け新たな段階に昇華できたのはやはり光子で、こうしたストーリー展開は美少女崇拝の谷崎の美的感覚の真骨頂であったともいえるでしょうね。
    登場人物の誰もに驚かされる人物設計となっていて、「女の腐ったような」綿貫や語り手の園子夫人のハズ、それにお梅どん等の行く末を考えると、最初にレズに目覚めた語り手の園子夫人が一番真面目で正気であったのではとさえ思えてきます。(笑)
    本書の構成がまたふるっていて、園子夫人が先生(谷崎を擬していと思われる)に振り返り語るというスタイルで全てが大阪弁で語られていて、凄まじい愛憎状態にもかかわらず、こうした趣向により、弾んだ調子とともに柔らかで温かくオブラートに包み込まれたような丸みを帯びた語り口がクッションとなって、なぜか読者に安心感を与えていたともいえます。光子が園子を「姉ちゃん」と呼ぶ様などはどこか可笑しみすら感じさせます。このような異常性愛もなんだ大したことはないのではないかという・・・。これは谷崎の術中に陥っていますかね?(笑)
    谷崎が大阪に行きたての頃の作品ということで、後年のスマートな(?)異常性愛を基調とする作品と比べると少しごちゃごちゃ感があるように思えます。以降、より純化路線(性愛の)を歩んでいくことになるのでしょうね。(笑)

    • nejidonさん
      mkt99さん、こんにちは(^^♪
      そうそう、ものの見事に陥っておりましてよ!
      さてわたくし、長年秘密にしてきたのですが、だいぶ前に映画...
      mkt99さん、こんにちは(^^♪
      そうそう、ものの見事に陥っておりましてよ!
      さてわたくし、長年秘密にしてきたのですが、だいぶ前に映画化されたものを観ました(笑)
      若かりし日の若尾文子さんの、まぁ美しいこと可愛いこと。クラッときますよ。
      そして岸田今日子さんの魅力的なこと。
      このふたりだけももう十分なほどの作品でした。
      カメラワークも相当にねちねちしてて、スタッフさんは楽しかっただろうなぁと推測できましたよ。
      で、肝心の性愛の描写はとても穏当なものでした。
      でも公開当時は「けしからん!!」だったのかもしれませんね。
      谷崎が何を描きたかったのか、ようやく理解できる年齢になりつつあるので、カミングアウトしてみました(笑)。
      本の方はあいにく未読ですが、機会がありましたら映画のほうもどうぞご覧あそばせ。

      2015/10/13
    • mkt99さん
      nejidonさん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      そのような秘密をひた隠しにされていたのですかー...
      nejidonさん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      そのような秘密をひた隠しにされていたのですかー!(笑)
      これを機にゲロって、すっきりされたことと思います。(笑)

      若尾文子の美しさは想像できますが、自分としては岸田今日子も含めて、お歳を召された頃のイメージしかなくて、その二人の親密シーンを考えるとちょっと何かコワい感覚もあります。(笑)
      しかし、若い魅力的な二人が文字通り絡み合うシーンなどはさぞや楽しかったことでしょうね!(^o^)
      DVDを見つけたら、観てみたいですね!

      原作もあまり性愛の描写はありませんで、初期の頃に二人が鏡の前で抱き合うシーンが唯一の艶めかしい箇所といえるかもしれません。大半は自己中心的な強欲がらくる疑心暗鬼と壮烈な駆け引きの心理描写が物語の中心でして、背景はアブノーマルですが、どちらかというと昼ドラの脚本のような気もします。

      自分が一番面白かったのは、誰もが強欲に絡んでいく物語進行でして、終盤には「○○よ、お前もかー!」と思わず心の中で叫んでしまいました。(笑)
      処女(?)の美少女の進化も見逃すことはできません。

      若尾文子、ちゃんと進化していますかね?(笑)
      2015/10/14
  • 一人の女性の口から語られる、ある美しい女をめぐる愛憎劇。関西弁だからこそ出せる味が、ドロドロな内容に色っぽさと上品さを与えている。
    ただ、園子が光子に惹かれ、のめり込んでいく過程の心理描写が意外に少なかったような。「綺麗な人」というだけで禁断の関係になるのは、少し現実味に欠ける。既婚女性が同性に恋をするというのには、もっと複雑で特殊な感情があるのではないだろうか。
    同性愛を描いたというわけではなく、ただ純粋に、女性の美に翻弄される愚かな人間の姿を描いた作品なのだと思った。

  • 同性愛をテーマにした小説を選んでレポートを書くという課題で読んだ本
    レポートを書くのに必死で内容をあまり覚えてないのでもう一度読みたい

    • hagecchi55さん
      もっとホモホモした小説なんで選ばなかったのさ!
      もっとホモホモした小説なんで選ばなかったのさ!
      2012/12/04
    • やよいさん
      ユリユリという新たな世界が開けると思って…
      ユリユリという新たな世界が開けると思って…
      2012/12/06
  • 新潮文庫の2018プレミアムカバーの赤い表紙に惹かれ購入。
    学生時代の『刺青』以来の谷崎作品ですが大阪弁での告白体小説という設定のせいで読みづらくてなかなか頭に入って来ず......束縛された状況の中での恋愛の熱情はより過激に爆発する。現代では実現しないお話しだろうなあと読みながら思いました。

  • 細雪にど嵌まりしたあとで、読んだ卍。後ろのほうの解説にもありましたが、この小説のあと年月を経て、細雪に昇華したんだなーと思うと感慨深いです。

  • 私がこれまでに読んできた本に登場した女性の中で、もしかすると一番こわい女かもしれない、光子。
    恋に純粋で悪気がないところが、余計に狂気を感じてこわい。
    そして綿貫が気持ち悪い。
    途中で綿貫が園子に接近してくるところで、もしや綿貫と園子もくっつくのか?と思ったが、違った。
    まさかの園子の旦那までが光子に落ちた。
    三人で死ぬつもりが園子だけが生き残り、疎外感と恋しさは消えずに苦しむ。
    それぞれの立場でだまし合い、探り合い、何が嘘で何が本当なのか、途中読んでいてこんがらかった。
    当事者である園子が語っているという形式で書かれているので、園子の主観が入っていることを念頭に置くと、そのまま直球で受け取っていいものか、と余計に考えてしまう。
    題材といい、書き方といい、ツボにはまった。
    同性への憧れは大なり小なり誰でも持っていると思うけど、谷崎がそれを題材に書くとこうなるのか。突き抜けてるな~。

  • ある若奥様が(谷崎)先生に自分にふりかかったけったいな愛憎劇を告白する話。
    初めはちょっとした悪戯から始まった光子との関係が、嫉妬、同性愛、不倫と、一言では云いきれなくなり、途中からは裏切りの連続が続いて、誰と誰がグルになってるかわからなくなり、
    はて、僕もだれかに騙されてるのか知らん。
    という気イさえするのんです。

  • 谷崎潤一郎が1928年に雑誌"改造"に発表した長編小説。主人公の柿内園子が自分が係わった事件について先生に話すという体裁の作品で、初めて読む人は、関西弁の口語体で書かれている文章で面食らうと思いますが、慣れればけっこうすらすらと読めます。前半の園子と光子の同性愛的な話から、後半、光子の婚約者である綿貫が登場した辺りから展開が不穏な空気を漂わし始め、ラストの園子の夫まで巻き込んだ事件への発展はハラハラして、物語に引き込まれます。誰に感情移入して読むかによって感じ方が変わる作品です。

  • 最初はいたずら心から始まった同性愛ごっこがやがて三角関係になり、四角関係になり、破綻するまで。

    綿貫さん最初は普通の人かと思っていたのに、豹変しましたね。それはお梅さんも同じ。光子も同じ。

    お互いを狂ったように求める愛と言うのはとても情熱的で頭がぼーっとするようにのめり込むものなのだろうけど、その結末として一人残されるというのはどういう気分だろうか。

    段々と登場人物が正気をなくしていく姿が生々しく描かれています。恋にのめり込む人ほどこういう傾向が強いのかしら。ちょっと怖い。

  • 光子どんだけ魅力あんねん。
    私の中ではかなりの美人。

    大阪弁ばりばりで。同性愛で。

    えええええ!!ってゆう裏切りが沢山。

    光子に会ってみたい。

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著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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