細雪(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005126

感想・レビュー・書評

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  • 三宅香帆さんの、「ジェイン・オースティン著、イギリス文学の『傲慢と偏見』を読んだ方におすすめする次の本」
    (『人生を狂わす名著50』三宅香帆著 ライツ社 の紹介より)

    新潮文庫は上・中・下のセット。
    「大阪船場に古いのれんを誇る蒔岡家の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間模様のなかに、昭和十年代の関西の上流社会の生活のありさまを四季折々に描き込んだ絢爛たる小説絵巻。三女の雪子は姉妹のうちで一番の美人なのだが、縁談がまとまらず、三十をすぎていまだに独身でいる。幸子夫婦は心配して奔走するが、無口な雪子はどの男にも賛成せず、月日がたってゆく。

    谷崎潤一郎(1886-1965)
    東京・日本橋生れ。東大国文科中退。在学中より創作を始め、同人雑誌「新思潮」(第二次)を創刊。同誌に発表した「刺青」などの作品が高く評価され作家に。当初は西欧的なスタイルを好んだが、関東大震災を機に関西へ移り住んだこともあって、次第に純日本的なものへの指向を強め、伝統的な日本語による美しい文体を確立するに至る。1949(昭和24)年、文化勲章受章。主な作品に『痴人の愛』『春琴抄』『卍』『細雪』『陰翳礼讃』など。」

  • 「若草物語」を読み終わったところで、そういやこれも四姉妹の話だったなと、本棚の奥にいたのを引っ張り出してきた。
    意外にもさらさら読める。
    何より東京生まれの谷崎が、ここまで関西人の、特に若い女性の趣味や性格を詳細に把握できていたことに驚いた。
    松子夫人というモデルがあるにしても、まるで神の視点を持っているかのようにありありと描き出すのだから不思議だ。
    新潮版は注釈も素晴らしく、昭和初期の感じをこまかく想像できて楽しい。

  • 図書館。自分たちの家系にふと重ね合わせたくなるノスタルジー。

  • 校通信での連載「文学談議」用に再読し、あらすじをかきました。紙幅が限られているため、ほとんど感想は書けていませんが、常に雪子を応援しながら読みました。

    短編、中編の中にもいろいろおもしろいものはあるのですが、もう谷崎は長編「細雪」を読めば十分でしょう。これがもう最高傑作だと思います。テレビの連続ホームドラマなんかが好きな人だったらきっと楽しめるでしょう。僕は電車の中で読みながら、何度も笑いをこらえるのが大変でした。もともと谷崎は東京で生まれ育ったのですが、関東大震災の後、関西に移り住み数々の作品を残しています。「細雪」を僕は新潮文庫の3巻本で読みました。全編心地良い関西弁で綴られています。昭和十年代、日中戦争が始まったころからのお話です。主要登場人物は鶴子、幸子、雪子、妙子の4姉妹。江戸時代から続く大阪は船場の大店(おおだな)の娘たち。つまり、いいとこのお嬢さんたちなのです。しかし、いまはもう、古き良き時代は終わってしまったという設定です。両親はすでに亡くなっていて、長女鶴子が婿養子を取って本家ということになっています。子どもが6人くらいいるようです。次女幸子は結婚して夫、娘の悦子と一緒に暮らしています。三女の雪子と末っ子の妙子はまだ結婚しておらず、本来は本家で一緒に暮らすところですが、居心地の良い幸子の家で過ごすことが多くなっています。悦子が雪子にとてもなついているということもあります。この悦ちゃんがとってもかわいいのです。雪子姉ちゃん(きあんちゃん)のお見合いの話をこっそり聞きつけて、いろいろおませなことを言うわけです。さて、上巻は雪子の見合いを中心に話が進んでいきます。
     その一つ目。人物的には良いお相手で、雪子も「まあこの人やったらええかなあ」というくらいに感じていたのですが、本家がいろいろと実家の様子を調べたりしているうちに、お母さんが精神を患っているということを突きとめます。遺伝するかもしれないとかいろいろ言って、断ろうということになるのです。一昔前の結婚事情がよく分かります。本人同士が良ければいいというわけにはいかなかったのですね。
     二つ目。これは相手の男性の写真を見た最初からうまくいかない話でした。先妻や子どもを亡くされて、独り者の男性なのですがかなり歳を取っていて、見た目も老(ふ)けています。雪子はもう30歳になるのでぜいたくは言えないのですが、なんぼなんでもかわいそうという感じです。でもわけあって見合いに行くことになります。鶴子の夫は銀行員をしているのですが、東京に転勤になったのです。それで、雪子もそちらに連れられて行きました。でも、幸子の住む芦屋の家に帰りたかったのです。それで、お見合いを口実にもどってきます。向こうはすごく乗り気で、初めて会ったお見合いの日の帰りに自分の家を見て来てくれと言います。仕方なしに、家の中に入るのですが、仏壇には亡き妻や子どもの写真が飾られています。後に雪子は言います。「やさしそうな人やし、姉ちゃんたちがすすめるなら、この人でもええかなあと思うてたけど、先妻の写真を見せられてあまりええ気はせえへんわなあ。あわてて隠そうとするわけでもなかったし。その様子を見ただけでも、とても女の繊細な心理など理解できる人ではないと思うた。」なるほどそうですね。このあたりで上巻が終わります。
     中巻に入ってすぐに大事件が起きます。大雨が降って洪水になるのです。ちょうど妙子が出かけた先が大水で、もう家の中まで水が入って1階の屋根あたりまで上がってきます。テーブルやピアノの上に乗ってやっとのことで顔だけ外に出すという状態で、「もうこれで死ぬんだなあ」と思ったりしています。そこに写真家の板倉という男性が現れ、助け出してくれるのです。大雨が降り出してからの様子が50ページほど続くのですが、心配して家で泣いている幸子と助けに向かうその夫、となりに住むドイツ人、そして妙子といっしょにいた親子、いろいろな人の感情描写がもう胸に迫ってくるのです。これは実際にあった被害をもとに書かれているようですが、源氏物語にも明石の巻で同じような場面があり、それを谷崎は一場面として選んだのでしょう。谷崎は「源氏物語」の現代語訳もしていますから。さて、ここに登場した板倉が中巻では重要人物になります。四女の妙子(こいさん)は自分が危機一髪のところをこの男に助けてもらったことがきっかけで気持ちがぐっと傾いていきます。しかし家柄が違いすぎます。周りはみな反対するのです。さらには、また雪子に縁談の話が持ち上がるのですが、先方が家の事情を調べているうちに妙子がそういう男と付き合っていることが知られ断りの理由に挙げてきます。雪子には知らされないのですが、鶴子や幸子は妙子の身勝手さに困り果てていくのです。そんな折、板倉が耳の手術をするというのです。大した病気ではありません。ところが手術をしたのがやぶ医者。術後、毒が身体にまわり、足を切断することになります。それでも、結局は間に合わず、板倉は死んでしまいます。ここで、中巻は終了。ここで一言書き添えておくと、お隣のドイツ人家族との関係、それから妙子が知り合ったロシア人家族との関係など、戦争への緊張感が高まっている中、いろいろとおもしろい話が登場します。ロシア人に食事に招待されるのですが、午後7時を過ぎても何も出てこない。8時過ぎにやっと準備が始まると思ったら、一気にテーブルには食べきれないほどの料理が並ぶ。自分たちとの習慣の違いに驚く様子がとっても興味深いのです。お酒もむちゃくちゃ強いですしね。親子で激しい議論が繰り広げられたりもします。
     下巻に入るとまた雪子の見合い話が始まります。今度は鶴子の夫の実家からの紹介です。医者の肩書を持っていますが、いまは薬の会社で専務をしています。先妻の娘が一人いるのですが、好人物のようです。周りはみな乗り気です。さて、その男性から雪子に電話があります。いっしょに食事でもどうかという誘いです。しかし、雪子はいたって電話が苦手。僕は本を読みながら、「もう、きあんちゃん、早く電話に出て、ちゃんと返事をして」とついつい声に出しそうになりました。まあ雪子にしてみると、男性と二人で出歩くというような状況がいままでになくどうしていいか分からなかったのでしょう。相手の男性は、「バカにしている」とか何とか言って結婚を断ってきます。まあ、この人には雪子の良さが分からなかったと思うほかないですね。
     そして最後にもう一度見合いがあります。年齢は40歳を過ぎていますが、初婚で、人柄もとてもいい。ただ、過去には建築の仕事などもしていましたが、いまは無職。とは言え、実家は立派なお家柄。お金に不自由することもない。条件は悪くありません。ところがここでまた懸念材料が。妙子が妊娠しているのです。この妙子のドラマもいろいろとあるのですが、もうここで紹介するスペースがありません。まあ要するに、結婚もしていないのに妊娠している。そんなふしだらな妹がいるということが先方にばれたら、せっかくの縁談話がまたしてもこわれてしまう。そこで、いろいろな事情はかくして、末の妹は有馬温泉でこっそりと出産することになります。最終的には死産になるのですが。さて、雪子の気持ちがはっきりしないまま、結婚に向けて話は進んでいきます。時節柄派手なことはできないのですが、東京での式に向けて出発するあたりでドラマは幕引きとなります。雪子はここ数日下痢が止まらないままで汽車に乗りこみます。きあんちゃん、がんばれ!

  • 大阪の商家・蒔岡家の四姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子の人間模様を描いた小説。日中戦争勃発前後の時代ながら、時局の影もほとんど感じさせず、幸子は二人の妹の結婚に頭を悩ませつつも、のんびりとした日々を送っている。

    長い小説ではあるが、なにかと事件が起きるので飽きずに読める。ときに可笑しく、ときに感傷的なホームドラマ。

    また、(上流社会のものではあるが)当時の風習や価値観などがうかがえるのが興味深い。昔の人はのんびりしていたらしい。見合いの前に興信所に頼んでかなり詳しく相手方の身元を調べていたり、引っ越しの見送りに百人近く人が来ているのに驚いた。新潮文庫の注釈が詳しいのも良い。

    「何しろ本家の連中は昔風で悠長だものですから。」(p.79)

    上巻は雪子の見合いを中心に、妙子の弟子のロシア人家での食事会、京都への花見旅行、鶴子一家の東京転勤、幸子の流産など。

  • 若い頃、1ページで挫折しましたが、年をとってから読み通しました。先日読み直して、この作品が戦時下に書き進められたことが、このご時世だけに、胸に迫りました。

  • 何気ない姉妹同士の雑談がリアルで生き生きとしてる。昭和初期のお見合いって相手の素性細かく調べたりするんだと驚いた。

  • 大阪船場に古いのれんを誇る蒔岡家の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間模様のなかに、昭和十年代の関西の上流社会の生活のありさまを四季折々に描き込んだ絢爛たる小説絵巻。三女の雪子は姉妹のうちで一番の美人なのだが、縁談がまとまらず、三十をすぎていまだに独身でいる。幸子夫婦は心配して奔走するが、無口な雪子はどの男にも賛成せず、月日がたってゆく。
    (1946年)

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/683373

  • 四姉妹の日常を覗き見ているようで面白かった。
    姉妹とは今も昔もその在り方は変わらないのだろうか。自分たちと重なる場面も見受けられ、懐かしさを覚えた。

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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