細雪 (中) (新潮文庫)

著者 : 谷崎潤一郎
  • 新潮社 (1955年11月1日発売)
3.86
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  • 89レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005133

細雪 (中) (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 夢中で読みふけってしまった。まだ中巻、そしてこれで谷崎の本は4冊目だというのに、外国の人に日本の作家を紹介するんなら、谷崎だろうと思うところまできた。この縦横無尽さは何だろう。この人は何だって書けるんじゃないかという気がする。

    さて中巻は日本の(娘さんの)美だけではなく水害やある人の死などもあり、緊迫したシーンもあって飽きさせない。面白いのは妙子。今だったら、自分の考えを持った自立志向の女の子とたたえられてもいいところを、姉に「こんなに迷惑をかけて」と思われてしまって気の毒というかもったいないというか。

    幸子視点で話が進むから、妙子が男二人をどう比べて決断したのか気になる。計算しているようで純粋なようで、謎な女の子。

  • (旺文社文庫特製版)
    上巻のゆったりとした日常感から一転して、ドキハラ展開が続きました。妙子とその周辺が中心で、近代的で時代の先を行こうとする妙子と旧態依然とした姉たちの対比から、当時の価値観が知れて面白かった。妙子みたいな人はこういう旧家に生まれたら窮屈なやろなー。
    上巻で空気やった鶴子も結構出てきたよ。

    妙子が奥畑のことを言った、「浪費家であるとか、浮気者であるとか、甲斐性なしであるとか、いう程度のことだけなら、何も縁であるから辛抱しようという考えがないでもなかったが、未来の妻のためにズボンを汚すことさえも厭う軽薄さを見ては、すっかり望みを失ったのであった。」
    は名言(?)やと思うよ。よく分かるよ。ただ、何であなたたち姉妹はみんな「浮気者」は許容範囲やと言えるのか理解できん。そんくらい懐の深い女性がいいという、谷崎の趣味か?こいつ(奥畑)余所で子ども作っとるんぞ。わたしには無理やわ。それ以外は全面的に同意。笑
    あと貞之助が好きです。洪水のときにあんなに体張って動いてくれて、旧家のお婿さんなのに進歩的な考え方をしていて、有能やけどめんどくさい関わりたくないと思ったらそそくさと逃げる

    中巻の陰の主役はお春どんやと思っている。上巻であんだけ株が下がっていたのに、洪水で汚名返上して、おおこのこすごい!有能!と思わせといてなんというズボラ女子。

  •  中巻では、隣に住んでいたドイツ人が帰国するなど、戦争の跫音が次第に大きくなってくる。もっとも、蒔岡家は世間に比べればその影響は決して大きくないように見え、それでいて後に崩壊することが予期されるような不思議な穏やかさを纏った生活が描かれている。季節ごとの風流な行事も鮮やかで、起きている事件の哀しさや激しさと不思議な共存を成し遂げている。

     そんな中でも一番の事件は四女妙子と写真家板倉の悲恋だろう。板倉は家柄が悪いために、三女幸子は二人の交際を快くは思うことができない。『ロミオとジュリエット』のように(・・・といっても未だに読んだことがないのだけれど)、読者は「身分違いの恋」=応援したくなる存在、と考えがちではないだろうか。

     しかし、この小説では幸子視点(彼女の一人称ではない)で語られることも相まって、二人の恋は妙子たちの浅はかな行動として映りやすい。身分の違いは小説内で「人種」という強い言葉で形容されることもある。人種と聞くと、やはり想起するのはアパルトヘイトのような「非道極まる差別行為」だろうか。現に、軽薄で甲斐性なしの幼馴染奥畑ですら、人種が同じだけマシだとまで描かれているのだ。板倉が死にそうなシーンなど、幸子が「板倉には悪いけど、死んだら面倒ごともなくなって助かっちゃうな・・・」という趣旨の独白をしている。

     では、この小説は人種差別を糾弾するような社会派オーラを纏っているのかといえばそんなことはない。悲劇の恋は終わるとともにあっさりと他の場面に移ってしまうし、この時代はこういう価値観だったんだよ、という程度の雰囲気しかない(ゴーディマ『ジャンプ』で描かれるアパルトヘイトだって、単純には描かれない)。

     みんなで桜を見たことも、蛍狩りを楽しんだことも、お見合いがうまくいかなかったことも、大水害が起きたことも、愛する人が死んでしまったことも、そして忍び寄る戦禍の影でさえも、この物語では平等に過ぎ去ってゆく。

     それは、今季を逃し周りが憂慮しているのをどこ吹く風で「ふん」としている雪子のような視点かもしれないし、人の栄枯盛衰をただじっと見守る老樹の視点かもしれない。時代に取り残される人、時代の先を突っ走る人、その狭間に立つ人、何も気にしない人。人によってその人が感じる時の流れは様々であり、その流れに身を任せるのも逆らうのもその人次第。そうした、様々な時の流れが共存することが、この小説が美しい所以なのかもしれないな。

  • ★評価は再読了後に。
    滑稽な感じを受けるのは当方だけなんでしょうか、関西とか血筋とか。作家の狙いとか意図とは別にあまりに時代が遠くになってしまった感じがして、これではあまり今では読まれないのかな?とふと思った次第。
    そんなことはないかな?それが作家の意図なんでしょうか?世に出回る谷崎評を念頭に置くと、そうではないなと思う。関西出身の人の独り相撲的意識を何気に理解できるだけに猶更その感ありです。

  • なかなか話が膨らんできて面白い。中だるみしない。

  • 中途半端な終わり方やと思ったが、三部に分けたのは筆者の知るところではないハズなので仕方ないか。
    「上→中→下と、どんどん引き込まれる。」とは言えないダラダラ感。
    さて、「下巻」に感動をもらえるのでしょうか・・・?

  • 中巻、ページ数が増える。
    大半は大水でのお話が大半。丁稚奉公を前にしていた板倉が妙子を助けることから急展開になる。しかし、終盤に病に陥ることになる。下巻へ続く。

  • 四姉妹の物語であると、それぞれの女性の性格の違いによって読者が肩入れしたり気に入らないと思ったりしながら読むことは必定だろう。

    長女鶴子は関西の本宅から東京へ転居することもあり、物語で取り上げられることは少な目となる。堅実で控えめといった印象の鶴子が、わたしは個人的には嫌いでないので残念ではある。

    次女幸子は物語の中心であり、性格としても姉の鶴子への気遣いと共に妹たちへの目配りといったことが細やかに行える幸子が一般には好まれるだろう。

    三女雪子の縁談がまとまるかどうかが、雪子自身にとっても姉たちにとっても気がかりであるのに、煮え切らないというかグズグズはっきりしない雪子は読んでいてももどかしい。

    四女妙子は末っ子とはこういうものといった奔放さ。やりたいことを好きにやって自分が一番という身勝手ともいえる様は、同じ末っ子であってもこんな自由気儘に生きたことがないわたしには羨ましいやら呆れるやら。

    この作品が映画化されるのもよくわかる。
    美しい四姉妹というだけで十分華やかなところへ、昔ほどの繁栄はなくとも経済的に豊かな日常は、まさに絵巻物といった風で、映像として見せたら映えること間違いなしだ。
    原作を読むまでは映画は観ないと決めていたが、この美しい物語を映像で観てみたくなってきた。

    雪子と妙子がどうなるのか気になる下巻へ。

  • 洪水に巻き込まれるやら次々に見合い話に翻弄されたりドラマティックすぎる展開。再再読。

  • (2016.06.13読了)(2013.01.25購入)(2009.09.10・93刷)
    中巻は、四姉妹の末っ子の妙子さんがメインでした。
    奥畑の啓坊(啓三郎)と結婚するにしても、経済的に自立できるようにしておきたいので、人形制作ではなく、洋裁をメインにしていきたいと、洋裁学校に通い始めています。
    さらには、洋裁学校の先生の勧めもあって、フランスのパリへの留学を考え始めています。そのためには、まとまったお金が必要です。両親が妙子さんの結婚に際して必要なお金を本家に残しているという話があったので、そのお金を留学費用に充てようと、本家にお願いするのですが、了承してもらえませんでした。
    他には、神戸を襲った洪水の話、東京を襲った台風の話、舞の発表会の話、など、ドキドキハラハラさせられる話が満載です。
    隣人のドイツ人一家(シュトルツ)の帰国の話もありました。時代を反映した話でもあります。
    女中のお春さんの活躍も大変なものでした。ご褒美に日光まで観光に行ってきました。
    奥畑さんのライバルとして、板倉さんが登場するのですが、哀しい結末が待っていました。さて下巻はどうなるのでしょうか?

    シュトルツ、シュトルツ夫人(ヒルダ)、ペータア、ローゼマリー、フリッツ
    本家の子供、輝雄、哲雄、秀雄九つ、正雄、芳雄、梅子四つ、
    十五を頭に、十二、九つ、七つ、六つ、四つという六人の子女
    奥畑啓三郎(啓坊)
    板倉勇作(米吉、米やん) 写真屋
    山村さく 舞の師匠
    ボッシュ 瑞西人

    ●恋愛(16頁)
    恋愛と云うものは、相手の男が見込みがあるからとか、下らないからとか云うことのみで、成立ったり破れたりするものではあるまい、少なくとも自分は、なつかしい初恋の人をそう云う功利的な理由で嫌いになれない、自分は啓ちゃんのような下らない人を恋するようになったのも何かの因縁と思うばかりで、後悔はしていない、
    ●山津波(55頁)
    此処ばかりはそんな山津波の痕跡などは何処にもない。電気と、瓦斯と、水道が停まったことだけは、被害地並みであるけれども、ここの家には水道の外に井戸もあって、飲料その他の使い水には不自由をしない
    ●山津波の記録(84頁)
    阪神間には大体六七十年目毎に山津波の起こる記録があり、今年がその年に当たっていると云うことを、既に春頃に予言した老人があって、板倉はそれを聞き込んでいた。
    ●阪神間と東京(164頁)
    此処に彳んで松の樹の多い空気の匂を嗅ぎ、六甲方面の山々を望み、澄んだ空を仰ぐだけでも、阪神間ほど住み心地のよい和やかな土地はないように感じる。それにしてもあのざわざわした、埃っぽい、白っちゃけた東京という所は何と云う厭な都会であろう。東京と此方とでは風の肌触りからして違う、
    ●夫の条件(216頁)
    彼女はもう、家柄とか、親譲りの財産とか、肩書だけの教養とか云うものには少しも誘惑されなくなった、
    自分の夫となるべき人は、強健なる肉体の持主であることと、腕に職を持っていることと、自分を心から愛してくれ、自分のためには生命をも捧げる熱情を有していること、この三つの条件にさえ叶う人なら、他のことは問わないと云うのであった。
    ●自由結婚(337頁)
    父母の同意を得ないでする結婚。戦前の民法では、男子は三十歳、女子は二十五歳に達すると、父母の同意なしに結婚することも出来た。が、親の意志に背くことは、すべて親不孝であり、道徳的な非難の対象になった。

    ☆関連図書(既読)
    「細雪(上)」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1997.04.10(1955.10.30)
    「痴人の愛」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1947.11.10
    「鍵・瘋癲老人日記」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1968.10.25
    「源氏物語 巻一」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.06.10
    「源氏物語 巻二」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.07.10
    「源氏物語 巻三」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.08.10
    「源氏物語 巻四」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.09.10
    「源氏物語 巻五」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.10.10
    (2016年6月18日・記)
    内容紹介(amazon)
    雪子と対照的に末娘の妙子は自由奔放な性格で、男との恋愛事件が絶えず、それを処理するためにも幸子夫婦は飛びまわらざるをえない。そんな中で一家は大水害にみまわれ、姉の鶴子一家は東京に転任になる。時代はシナでの戦争が日ましに拡大していき、生活はしだいに窮屈になっていくが、そうした世間の喧噪をよそに、姉妹たちは花見、螢狩り、月見などの伝統的行事を楽しんでいる。

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