細雪(中) (新潮文庫)

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レビュー : 103
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005133

感想・レビュー・書評

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  • 上巻は雪子の縁談が中心で、差し当たり大きな事件はなかったけれど、本巻では妙子の恋愛を中心に物語が展開される。昭和13年の阪神の豪雨の様子なども、こと細かく記されている。この豪雨が妙子に大きな変化をもたらすのだが、読んでいてとても臨場感があった。

    その他に隣家のドイツ人一家や妙子の弟子のロシア人の家族との交流なども描かれている。妙子は見るからに活動的だが、おとなしい雪子のしたたかさが垣間見られた。

  • http://naokis.doorblog.jp/archives/sasameyuki.html【書評】『細雪』〜きめ細かに女性心理を描写した谷崎潤一郎

    2016.04.05 読了

  • 細雪を読んでいる間中、ずっと不思議だったのですが、どうして、延々とひとつの家庭の毎日を眺めるだけなのがこんなに面白いのでしょうか。さすが文豪。

    上巻のときに、もしや…と思っていたことが本当になりました。4人姉妹(といっても長女はほとんど出てきませんが)の中だったら妙子が結構好きだなーと思ってたのですが、前言撤回です。身内にさえ秘密主義というか、腹黒いというか、どこか信用のおけない感じが苦手です。

    逆に、上巻ではなにを考えているのか全然だった雪子が、中巻だと少しだけその心理を吐露してくれて、意外と男前だなという印象に。

    妙子は、自称サバサバ系というか、内心がすごくドロドロしているのが苦手なのかもしれません。

    そのせいか、上巻よりも雪子のお見合い話に引き込まれ、愛知の田舎でのお見合いは、読んでいて辛かったです。

    しかし、小さなアップダウンはあるものの、取り立てて大きなドラマが起こるわけでもないのにこんなに面白いなんて。さすが文豪、さすが谷崎。と何度も唸りました。

  • 中巻。昭和13年7月3~5日の阪神大水害にはじまる。細かな描写。「海のよう」だったらしい。読むだけで怖い。
    その大水害で妙子を助けた板倉と妙子の恋愛の結末。
    相変わらずの安定した物語力。
    谷崎の描く「蒔岡家」という一家を見つめ続けることで、「家」というものがどのようなものなのか、感じられるような気がする。

  •  中巻では、隣に住んでいたドイツ人が帰国するなど、戦争の跫音が次第に大きくなってくる。もっとも、蒔岡家は世間に比べればその影響は決して大きくないように見え、それでいて後に崩壊することが予期されるような不思議な穏やかさを纏った生活が描かれている。季節ごとの風流な行事も鮮やかで、起きている事件の哀しさや激しさと不思議な共存を成し遂げている。

     そんな中でも一番の事件は四女妙子と写真家板倉の悲恋だろう。板倉は家柄が悪いために、三女幸子は二人の交際を快くは思うことができない。『ロミオとジュリエット』のように(・・・といっても未だに読んだことがないのだけれど)、読者は「身分違いの恋」=応援したくなる存在、と考えがちではないだろうか。

     しかし、この小説では幸子視点(彼女の一人称ではない)で語られることも相まって、二人の恋は妙子たちの浅はかな行動として映りやすい。身分の違いは小説内で「人種」という強い言葉で形容されることもある。人種と聞くと、やはり想起するのはアパルトヘイトのような「非道極まる差別行為」だろうか。現に、軽薄で甲斐性なしの幼馴染奥畑ですら、人種が同じだけマシだとまで描かれているのだ。板倉が死にそうなシーンなど、幸子が「板倉には悪いけど、死んだら面倒ごともなくなって助かっちゃうな・・・」という趣旨の独白をしている。

     では、この小説は人種差別を糾弾するような社会派オーラを纏っているのかといえばそんなことはない。悲劇の恋は終わるとともにあっさりと他の場面に移ってしまうし、この時代はこういう価値観だったんだよ、という程度の雰囲気しかない(ゴーディマ『ジャンプ』で描かれるアパルトヘイトだって、単純には描かれない)。

     みんなで桜を見たことも、蛍狩りを楽しんだことも、お見合いがうまくいかなかったことも、大水害が起きたことも、愛する人が死んでしまったことも、そして忍び寄る戦禍の影でさえも、この物語では平等に過ぎ去ってゆく。

     それは、今季を逃し周りが憂慮しているのをどこ吹く風で「ふん」としている雪子のような視点かもしれないし、人の栄枯盛衰をただじっと見守る老樹の視点かもしれない。時代に取り残される人、時代の先を突っ走る人、その狭間に立つ人、何も気にしない人。人によってその人が感じる時の流れは様々であり、その流れに身を任せるのも逆らうのもその人次第。そうした、様々な時の流れが共存することが、この小説が美しい所以なのかもしれないな。

  • ★評価は再読了後に。
    滑稽な感じを受けるのは当方だけなんでしょうか、関西とか血筋とか。作家の狙いとか意図とは別にあまりに時代が遠くになってしまった感じがして、これではあまり今では読まれないのかな?とふと思った次第。
    そんなことはないかな?それが作家の意図なんでしょうか?世に出回る谷崎評を念頭に置くと、そうではないなと思う。関西出身の人の独り相撲的意識を何気に理解できるだけに猶更その感ありです。

  • なかなか話が膨らんできて面白い。中だるみしない。

  • 中途半端な終わり方やと思ったが、三部に分けたのは筆者の知るところではないハズなので仕方ないか。
    「上→中→下と、どんどん引き込まれる。」とは言えないダラダラ感。
    さて、「下巻」に感動をもらえるのでしょうか・・・?

  • 中巻、ページ数が増える。
    大半は大水でのお話が大半。丁稚奉公を前にしていた板倉が妙子を助けることから急展開になる。しかし、終盤に病に陥ることになる。下巻へ続く。

  • 四姉妹の物語であると、それぞれの女性の性格の違いによって読者が肩入れしたり気に入らないと思ったりしながら読むことは必定だろう。

    長女鶴子は関西の本宅から東京へ転居することもあり、物語で取り上げられることは少な目となる。堅実で控えめといった印象の鶴子が、わたしは個人的には嫌いでないので残念ではある。

    次女幸子は物語の中心であり、性格としても姉の鶴子への気遣いと共に妹たちへの目配りといったことが細やかに行える幸子が一般には好まれるだろう。

    三女雪子の縁談がまとまるかどうかが、雪子自身にとっても姉たちにとっても気がかりであるのに、煮え切らないというかグズグズはっきりしない雪子は読んでいてももどかしい。

    四女妙子は末っ子とはこういうものといった奔放さ。やりたいことを好きにやって自分が一番という身勝手ともいえる様は、同じ末っ子であってもこんな自由気儘に生きたことがないわたしには羨ましいやら呆れるやら。

    この作品が映画化されるのもよくわかる。
    美しい四姉妹というだけで十分華やかなところへ、昔ほどの繁栄はなくとも経済的に豊かな日常は、まさに絵巻物といった風で、映像として見せたら映えること間違いなしだ。
    原作を読むまでは映画は観ないと決めていたが、この美しい物語を映像で観てみたくなってきた。

    雪子と妙子がどうなるのか気になる下巻へ。

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著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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