細雪 (下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005140

感想・レビュー・書評

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  • 「細雪」回顧によりますと、谷崎潤一郎はこの作品を書き始めたのは太平洋戦争の勃発した翌年、昭和十七年であり、書き終わるまで六年かかったそうです。
    また「細雪」には源氏物語の影響があるのではと人に聞かれたそうです。
    最初の三年は熱海で書き、次に岡山県、平和になってから京都と熱海で書かれたそうです。
    長かったから肉体的に疲れたそうです。

    三十三歳になる三女の雪子の姿かたちの描写が美しいと思いました。映画では吉永小百合さんが演じられたそうです。
    でも、今の時代なら、お姉さんやお嬢さんでも、まだ通る年齢ですがこの作品の時代では年増とよばれるのですね。
    雪子の左の眼の縁にあるシミが何度も問題にされますが、そんなことで縁談がまとまったりこわれたりの時に問題にされるのですね。

    この物語で一番現代的なのは人形作家をやめて、洋裁で自立して奥畑という男性を養ってやろうと言っている四女の妙子であると思いました。
    でも、段々に妙子の言っていることが全て嘘であり、貯金はほとんどなくなり、奥畑の坊の実家から宝石やお金を引き出させて贅沢にふけり奥畑を利用して、あとはバーテンの三好を誘惑して、子供を身ごもり、奥畑とけりをつけようとしていたのには、驚きました。がっかりしましたが、リアルな生きた人間の人物像をも感じました。妙子の自立した女性像は嘘でした。

    そして、雪子は御牧という貴族出の男性と縁談がとうとうまとまりそうになったとき、妙子は妊娠中の姿を数か月の間、見せないように身を隠すようにうながされますが、死産してしまいます。
    雪子の花嫁支度は大変豪華で立派な式が挙げられることになりましたが、なんともやりきれない終わりでした。

    二女の幸子は二人の妹の縁談に始終、翻弄されていますが、幸子は他に何かないのだろうかと思いました。気苦労が絶えないでしょうね。昔の上流中流家庭というものは贅沢はしますが、大変なものだと思いました。
    最後の最後に四人の姉妹の本当の人物像がはっきりとみえたように思います。

    文章は本当に美しく、文豪のみやびやかな世界を堪能しました。

  •  やっと読了した。これで蒔岡四姉妹との付き合いは終わった。
     読み終えて、「で、一体作者は何が言いたいのだろう?」と思ったが、解説を読み、そもそも谷崎文学は作者が言いたいことを表す文学ではなく、作者が主観を消すことによって、「ものがものを語る」物語文学として成功しているのだ、これこそ「源氏物語」から続く日本の物語文学の伝統なのだということ。ふーん、なるほど。
     34歳にもなって、お見合い相手を怒らせるほど内気でなかなか結婚出来ず、かと言って自活する気もなく、何時までも姉たちに頼りきって気位ばかり高い、腹が立つような、でも美しい三女雪子。(結局、最終的には貴族出の男性との縁談が纏まりました。ま、親の財産を当てにしている、似たようなタイプです)
     板倉が突然亡くなったあと、また、ボンボン啓三郎とのよりを戻したかに見えて、バーテンダーとの子供を宿した、名家を破壊するような生き方ばかり繰り返す四女妙子。
     蒔岡家の人等が皆、おっとりして気位が高く「そんなに簡単に縁談に載ったら、軽く見られてしまう」などと気にしている間に、サバサバと事を進め、渡米までの10日間ほどて見事に雪子の縁談を纏めてくれた、やり手美容師の井谷婦人。
     人が良く、雪子の縁談のために、妙子の火消しの為に、あっちこっちの人とこっそり会ったり、手紙を書いたりといつも奔走してくれる、幸子の旦那の貞之助さん。
     人物の容貌、性格、言動の描写が細く面白かった。でもストーリーとしては昼ドラのようであった。
     谷崎潤一郎は「エロチックの天才」と言われているらしいが、妙子がお産で死ぬほど苦しんでいるときには、口から「蟹糞」のようなものを吐き出すし、最後、雪子が婚家へ出発する日には「下痢が止まらない」。花や蝶みたいな綺麗な物を描くだけでなく、そういう肉体的にも内面的にもドロドロしたものを含めた生命を描いてこそ、エロティックというのかな。私は子供だから?(えっ?)理解するのはちょっと難しい。

    • えみりんさん
      わたしもちょうど読み終えたばかりで、にたような感想をもちました(特に三女にイライラ、次女夫に感心)。

      >谷崎文学は作者が言いたいことを...
      わたしもちょうど読み終えたばかりで、にたような感想をもちました(特に三女にイライラ、次女夫に感心)。

      >谷崎文学は作者が言いたいことを表す文学ではなく、作者が主観を消すことによって、「ものがものを語る」物語文学として成功している

      とは知らなかったです。目から鱗でした。
      2021/05/27
    • Macomi55さん
      えみりんさん、はじめまして。コメント有難うございます。
      同じタイミングで読み終えられたのですね。新鮮な感想を分かち合えて嬉しいです。
      「上流...
      えみりんさん、はじめまして。コメント有難うございます。
      同じタイミングで読み終えられたのですね。新鮮な感想を分かち合えて嬉しいです。
      「上流社会のお嬢様方も大変やな。私に関係のない世界の話やな。」と思いながら読んでいたのてわすが、妙子が赤痢になったあたりから、上流社会もお嬢様も関係ないような赤裸々な部分まで描写され、綺麗な人だからこそ、こっちが恥ずかしくなってしまうような、醜いといえば醜い、エロチック?といえばエロチック?なやはり昼ドラとは違う芸術作品なのかな?とあとから考えると分かる作品でした。
      正直、あまり好きにはなれませんでしたが、文学史を勉強したと思ってます。
      2021/05/27
  • 昭和16年という時代が、ただそれだけで胸をつまらせる。
    幸子の抱えている悩みが、なんて平和でのんきで取るに足らないことか。
    あの頃に戻りたいと間もなく思うようになると思うと、小説内の日々のすべてが愛おしい。
    崩壊寸前の滅びの美の内包、挽歌的な切なさ、まさにそれ。

    幸子も結婚前はブルーだったと知ってホッとした。
    また読む。

  • はぁー面白かった! あらすじから受ける印象とは比べ物にならない面白さだった。下巻後半になると上巻にあったおっとりした雰囲気が消えることもあり、ほぼ幸子視点で妹二人に気を揉み続け。途中で「ちょっと待てよ」と我に返る隙も与えられず、妙子の行状が明らかになるシーンでは幸子同様にショックを受けてしまった。『細雪』は閉じた人間関係の不健全さを流麗に描いて傑作なので、日本の美とか興味なくてもどろどろホームドラマが好きならおすすめ。

    それにしても妙子。有能なのに人の気持ちに興味がなくて、それでおかしなことになり、姉さんたちも妹がかわいくて波風立てたくなくて、きちんとフィードバックを返さないために事態を拗らせて。家族って互いの短所を強化してしまうところがあるから怖い。

    最後のあれは、聖女を人間の女に引きずり下ろしてるんだな、と思いました。

  • 初めてまともに純文学というものを読み、その魅力に気づけた一冊。
    上中下と読むのは大変だったし、話自体も起承転結とかがあるわけじゃなく、蒔岡四姉妹の日常をつらつら描く、という感じなのだけど、読んでいて全然退屈しなかった。
    日本人、特に関西に住んでいる方はぜひ読んでみるべき。そして谷崎潤一郎の文体、何だかとても好き。男の人なのに何処か文に女性のようなたおやかさがあるからなのかな。他の作品もぜひ読んでみたいと思った。

  • 長女が東京で子育てに追われ、
    次女が家の体面を保ちつつ生活をし、
    三女が幾多の縁談を避けながらも変化を過ごし、
    四女が我を通して望まれない恋愛をする

    そんな蒔岡家の日々は、最後のページをめくった後にも続いているような、巡る人の世に終わりなど無いと思わせるような、不思議な読後感。

  • 中巻でだいぶ妙子を応援したい気持ちになっていたので、下巻はなんだかショックが大きかった。そういえばこれまでずっと幸子の目線で書かれていることもあって、妙子の言い分がすべて本当かはわからないぞ、と思いつつもいつの間にか幸子の「身びいき」に無意識にこちらまで引っ張られていたのだと読んでいて気が付いた。啓坊嫌いだけどちっとは同情する。雪子がズバッと妙子に物申すところはただの内気なお嬢様ではない一面が垣間見れて印象深い。
    いつかは雪子も妙子も嫁に行くだろうというのはわかっていたことだけれど、そこがちょうどこの物語の幕切れというのがまた…。バラバラになった姉妹はそれぞれどんなその後を送るのだろう。戦争がこれから本格化するというのも気になるところ。幸子は二人の妹が家を出て喪失感は味わうだろうけど、頼りになる夫がいるので細々と幸せに生きそう。でも雪子と妙子は…あまりいい未来が想像できない。

  • だいたい1930年代後半~40年代初頭を舞台にした、芦屋の金持ち四姉妹の話。船場老舗商家の蒔岡家。主人公姉妹の父の代までは豪奢に暮らしていたが、晩年には既に経営は傾いていたようで、父の死後は後を継いだ長女の婿が店をたたんでいる。妹たちはそれが面白くなくて、他にもいろいろ(非理性的なものも含めて)理由があって妹たちはこの義兄とはあまり仲良くない。
    長女(40くらい?)の婿は銀行員。この夫婦は「本家」。子だくさん。転勤で東京渋谷に引っ越す。
    二女(30後半?)の婿は会計士。この夫婦は「分家」。芦屋に住む。娘がひとり。
    三女(30ギリ前半くらい)と四女(ギリ20代くらい)は未婚。本家と東京が嫌いなので分家に住んでいる。
    多くが二女視点で書かれていて、三女のなかなかうまくいかない見合い、四女の奔放な恋愛沙汰、それらの監督責任を本家から問われるかも、といったことに悩みながら、ピアノを弾いたり芝居を見たり鯛を食べたりお買い物をしたり習い事をしたりして暮らしている。専業主婦ね、と思うなかれ、主婦業は当然、女中のお春どんやらお久どんやらがやるのです。
    「これは当時の最高級品だった」とか「これを当時持っていた家庭は数パーセント程度だろう」とか、そういう巻末注釈ばかりふられる生活の描写。
    四女が丁稚あがりの男と恋に落ちようものなら「あれはまったく種類の違う人間だと思っていたからそんなこと想像もしなかった、まさか蒔岡家の娘がそんな、」と慌てふためく。

    …と、こう冷静に書くとなかなかいけすかない女たちのようにも思えるのだが、読んでいる間は不思議とそんなふうには感じなくて、結局「お嬢さん育ちで人が好い」ということなのか、作者の筆力ですっかり芦屋ライフに引き込まれているからなのか、いろんなエゴも「人間臭くて共感できる」というくらいに感じられる。
    戦争はどんどん激しくなるのだが、洋裁の修行のためにパリに洋行したかったけど危ないなとか、お隣さんだったドイツ人家族が帰国していったけど達者だろうかとか、あまり華美にするとやかましいご時世だから父の法事を盛大にできなくて寂しいとか、婚礼衣装を新調できないとか、恒例の花見でいつも行っていた料亭は今年はやめねばとか、、、切迫感に欠ける。

    何が面白かったか、と聞かれるととても難しい。でも面白かった。映画を先に観ていたおかげもあるだろう。そしてこの、起伏のない長編を、市川崑はきれいに映画にしたもんですね。すごいなー。
    原作のほうもまた最後の終わりかたがねー。そうやってこの長編を終わるんか!っていう。やってくれる。(別にどんでん返しとかじゃないですよ。)

  • 細雪。読んでよかった。

    最後まで読んで、ただ仲の良い姉妹というだけでなく、小さなことから事件に至るまで様々な場面での会話や行動を通じて、良いところもそうでないところも知って、イヤだなと思うこともあったけれど、それも全部ひっくるめて彼女たちが好きで、鶴子、幸子、雪子、妙子、みんな幸せになってほしいなぁと心から思う。まるで、古くからの友人みたいな感覚。まだまだ読んでいたいし、時代としてはこれから戦争で大変なことになっていくはずだから彼女たちがとても心配。小説だからこれで終わりなんだけれど、ずっと彼女たちがコロンバンでお茶をしたり、手紙のやりとりをしたり、お花見をしたり、変わらずいきいきと生き続けているような気がしてならない。ラストは悲しい出来事もあったし、良かったと思えることもあったけど、結末ありきの小説ではないから、それは大きなことではない気もする。

    幸子は谷崎純一郎の奥さまがモデルになっているのだとか。
    それにしても、ここまで女性を描けるのはスゴイと思う。

    この四姉妹が好きなのはすでにレビューした通りだけど、細雪の文章もとても好き。
    読み終わってしまうのがとても惜しい。
    退屈だなぁと思って読んだ上巻。今改めて読むととても楽しく読めそう。

    下巻単体でいうと☆4かなぁと思うけど、トータルでは文句なしの☆5です。

  • もう、もう、もう全てが素晴らしくて美しくて、
    谷崎作品へのイメージがガラリと変わりました。
    出会えてよかった小説!

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著者プロフィール

1886年(明治19年)〜1965年(昭和40年)。東京・日本橋生まれ。明治末期から昭和中期まで、戦中・戦後の一時期を除き執筆活動を続け、国内外でその作品の芸術性が高い評価を得た。主な作品に「刺青」「痴人の愛」「春琴抄」「細雪」など、傑作を多く残している。

「2024年 『谷崎潤一郎② 春琴抄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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