晩年 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.50
  • (194)
  • (233)
  • (601)
  • (53)
  • (11)
本棚登録 : 3361
レビュー : 243
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006017

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 約5ヶ月ぶりに読書再開、太宰の1st.アルバムから。
    中期太宰はほぼ全て読破して読みやすいエンターテイメントだったけど、
    前期太宰は前衛的なものもあって読むのがしんどい(笑)。
    なので読み終えるまで非常に時間がかかった。
    なぜか手に汗握り、カバーもヨレヨレ。

    その後の作品の原点となるものがバラエティ豊かにぎっしりと詰まっている。
    「彼は昔の彼ならず」がよかった。

  • 数十年ぶりの再読

    「葉」のお婆さんが若夫婦の部屋を覗いているのと
    白系ロシアの女の子の「咲クヨウニ。」だけを強烈に覚えていた。

    後は太宰の自意識小説な「道化の華」
    でも太宰ってある時期に強烈にハマらないと駄目だよな…
    自意識小説でいえば私は山月記の方がビンビンくる派。

    猿ヶ島、ロマネスクの方が今回は良かったなぁ

  • ずっと「晩年」という作品があるのだと思っていたが、そうではなくこの作品集のタイトルだということを読み終わってから知ったという。
    そして晩年に書かれたわけでもなく❨本人は遺書のつもりで書いたので意図としては晩年だが❩、作品集としては最初のものだというから、そのネーミングセンスからも著者のシニカルというかそういう視点の鋭さが伺える。

    作品は様々な視点や手法を用いてかかれており、小説に語り手として著者を登場させたり自分の体験をもとにした話だったりかといえば物語だったりと同一作者か?と思うほど斬新。遺書のつもりの作品集、ということで恐らく著者もこれが最後と全ての手法やらを詰め込んだのだろう。
    そのような手法を取り入れることで、ともすると一般人には不可解な生活をして不可解な思いを抱えている主人公、というだけに終わりがちな話を痛烈に浮かび上がらせているように感じる(一言で言えば、ツッコミ役を設けているということか)。

    個人的には道化の華がよい。お互いの距離を計りながら自尊心を傷つけあうことを避けるよう接し方に気を使い合う友人3人の様子は、私にも心当たりがありすぎてギクリとさせられる。作中ではそんな関係に対して事実として淡々と語られているだけだが、著者に批判されているというか憐みの目で見られているような気がするのは気のせいではないかもしれない。

  • 2017.7.31
    猿面冠者、彼は昔の彼ならず、ロマネスク、玩具、陰火、めくら草紙が、印象的だった。
    太宰といえば暗く自意識的な小説を書くイメージだけど、こういう、小説らしい小説というか、物語も書くんだなぁと。ロマネスクなんてまさにそう思った。
    でもやっぱどこか、私の印象に残る作品の端々には、人間失格の香りが、ダメ人間の美しさの香りが残っているような、そんな感じを受ける。
    何をしてもダメな人間、なにをどうあがいても自らの首をしめるだけの人間、この美しさはどこから来るのだろうか。どこかこの、退廃的な、デカダン的な美しさに、憧れてしまう自分がいる。しかしそこに幸福はない。憧れているうちは本物を知らない。外から見れるうちは甘美なものだろう。幸せで力強く、そういういわゆる理想の人間に対しては感じない美しさ。例えどれだけ能力を持って、影響力を持っている人間でも、そういう自分に対する姿勢が、肯定一色ならば私は評価しない。お花畑の善人も、開き直った悪人にも、私は肯定しない。その人と、その人自身との関係こそが、美の源泉であるように思える。
    美とは生と死の混濁であるという趣旨の言葉がある。有と無、肯定と否定、プラスとマイナス、そういうものの間に美があるように思える。だから、善一色も、悪一色も、美しくないのだろう。二元の間にいるとはどういうことか。求めながら、至ることはないということだろうか。完成した人間は美しくない。諦めた人間も美しくない。理想に憧れ続けながら、現実に虐げられ続ける人間が美しいのか。
    なんて、理屈をこねてもしょうがないか。二元の間ならば、理屈と、感覚の間にもあるだろう。言葉にしようと努めるけど、全く形を与えきれない、そこにもなにがしかの美しさがあるのだろうか。言葉にできたと思っても、無理だ諦めようと思っても、美しくないのだろうか。うーん。

  • 太宰治の遺稿のつもりとして出版された処女作「晩年」。短編集なので様々な作風の作品が収められてるが、どれも陰鬱さと理想が錯綜する太宰治らしさが色濃く出ているように思う。個人的には未遂に終わった入水自殺の経験をモチーフにしつつ、作家である自分に対する自己批判的なメタ要素を挟み込んだ「道化の華」が好き。

  • 凄く良い作品が多かった。
    技巧的で前衛的な表現も多く、そう言うものの全てを受容できたとはとても思えないけれども、でも時々はっとさせられるような瞬間があった。
    全篇を通して何とも言えない哀愁の表現が非常に好きだった。哀愁と、絶望と、ニヒリズム的な虚無感が入り乱れる中に、確かに血の通った人間味や実感と言う物もまた描き出されている。そして何よりそれを美しく太宰の手腕には舌を巻く。月並みな表現だが、言葉の魔力。不思議と文章に引き込まれてしまうような魅力が確かにある。

    特に好きだったのは道化の華、彼は昔の彼ならず、そして葉だった。道化の華のメタな技法を多用する事によって現実世界まで遡及的に侵食するような生々しい若者の実感。彼は昔の彼ならずの最後、描かれた情景へと昇華されて行く物語の感覚。葉の冒頭、『死のうと思っていた』から始まり、紡がれて行く言葉が最後に辿り着く『どうにか、なる。』

    太宰の文章は、読んでいて本当に色んなことを考えさせられる、と言うより、感じさせられる。ハッとさせられたり、ジワジワと染み入ってくるような感覚を何度も感じる。例え全く自分と違う人間が描かれていても、全くしたことのない経験が描かれていても、不思議と『ああ、この人は私なんだ。』と思えるような、奇妙な程の人間的な生々しさがある。本当に不思議な世界観があって、引き込まれる。

  • 太宰治のデビュー作となった短編集です。わたしの頭の中では本書と漱石の『明暗』がごっちゃになっていて、あたかも遺作のようなイメージをもっておりましたが、26歳のときの作品です。

    わたしは「葉」と「彼は昔の彼ならず」の2つが好きです。「葉」にはストーリー的なものがなく、ただ言葉の切れ味が気持ちいい、という作品。ただ試しに音読したところ、声に出して楽しい日本語ではありませんでした。黙って読むべき作品です。「彼は昔の彼ならず」では、著者の作品ではよくあることなのですが、わたし自身の欠点がありありと描かれているおもしろさがあります。足りないのは理屈でも度胸でもない、他人に翻弄される自分の感情を持て余した挙句、情けない人間になってしまった。

    新春早々、七里ガ浜に遁走したわたしは、やはり「道化の華」について何か書くべきかもしれません。この作品はちょいちょい書き手が出てくるメタフィクション的な構造になっていて、他の作品と比べても少々くどい作品です。葉蔵を含めた「青年たち」を評する箇所も、現代のわたしたちにとって特に目新しいということはないでしょう。

    "彼等のこころのなかには、渾沌と、それから、わけのわからぬ反撥とだけがある。或いは、自尊心だけ、と言ってよいかも知れぬ。しかも細くとぎすまされた自尊心である。どのような微風にでもふるえおののく。侮辱を受けたと思いこむやいなや、死なん哉ともだえる。葉蔵がおのれの自殺の原因をたずねられて当惑するのも無理がないのである。-----なにもかもである。"(P.157)

    そうですね、としか言えません。現代に生きるある種のひとたちにとって、このようなことは当たり前すぎることでしかない。ただこのような小説が世に出ていることに大きな意義があると思います。こういう人たちもこの世で暮らしているということを知らしめている。

    余談ですが学生時代のわたしの蔵書目録には、本書になんと10点満点中4点(換算すると星二つ・・)という辛口評価がついていました。人間そうそう変わるものではないと信じ込んでいましたが、10年という歳月は価値観程度のものは変えてしまうのですね。

  • 自殺を前提として遺書のつもりで作ったという処女短編集だが
    鬼気迫るものよりも、自尊心の塊ゆえのおかしみ・かわいらしさを感じた。
    決して明るく楽しい作品では全くないのだが、
    若くて青臭い登場人物たちが愛おしく思えた。

    10代の頃、太宰の小説を読むときには
    「これは自分のことだ!」と切羽つまった気持ちで読んだものだけど、
    私も歳をとったんだな。

    物語の中に書き手が登場する手法が斬新。
    「思い出」と「道化の華」が好きだけど、「猿ヶ島」が
    思いの外面白かった。

  • きた証を残すために書き綴った短編集。死を決意した人間の書いた小説なんで、そりゃーもー暗い。暗過ぎてちょっと読むのしんどかったなぁ。個人的には「ロマネスク」が良かった。

  • 長い間、本棚の飾りとなっていた本をようやく読了。晩年が処女短編集の題名だったとは。

全243件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1909年(明治42年)、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東大仏文科在学中に非合法運動に従事し、やがて本格的な執筆活動へ。35年、「逆行」で第1回芥川賞の次席となり、翌年には処女作品集『晩年』を刊行。以後「走れメロス」「斜陽」など多数。

「2018年 『津軽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

晩年 (新潮文庫)のその他の作品

太宰治の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
谷崎 潤一郎
梶井 基次郎
有効な右矢印 無効な右矢印

晩年 (新潮文庫)に関連する談話室の質問

晩年 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする