斜陽 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 9241
レビュー : 1077
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006024

感想・レビュー・書評

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  • 一度、さらっと読んだだけでは、何となくしか意味がわからなかった。
    だが、ところどころに共感できるフレーズがあり、揺さぶられた。
    もう少し大人になったら、もう一度読みたい本のひとつだ。

  • 太宰作品の中でも有名な「斜陽」。
    破滅していく貴族一家の物語が描かれているのですが、
    それぞれに、母は結核との闘い、姉は恋と革命の為に生き、弟は阿片中毒という異なった生き方が描かれていました。
    物語の本筋はほぼ姉の語りで構成されているのですが、改めて感じたことは太宰は女性の語りが非常に上手いということです。
    後半、弟の書簡形式も織り交ぜられていますが
    読み進めながら自然に脳内で私の想像する姉や弟の声で語り掛けてきました。
    最初の蛇の話からして、なんて美しい文章を書くのだろうと、まるで絵画を鑑賞しているような描写で芸術的文学としての素晴らしさを感じました。
    没落貴族の話ではありますが、都落ちしても生活人としての生き方を知らない母娘はそれでも労働に向かず暮らすのですが、それでも嫌味ったらしくなく決して絢爛豪華な訳ではないにせよどこか優雅で気品のある暮らしを感じました。
    一家と上原というそれぞれの人の生き様を描いていますが、芸術家としての上原の苦悩や、弟の直治については太宰自身を強く投影させていたのではないかと思います。
    貴族であることのコンプレックスを感じながらわざと自己破壊の穴に落ち、遊んでいても楽しくなかったなどの表現は、太宰自身の生き辛さを感じ取り切なくなりながらも
    なんて美しい生き様なのだろうと心が締め付けられました。

  • 今年は太宰イヤー(没後70年)なのださうです。太宰好きのわたくしも、ここで一発『斜陽』を取り上げます。
    『斜陽』は、『人間失格』と並ぶ、太宰の戦後の代表作と言はれてゐます。太宰は戦後、指導者づらをしてゐた所謂「偉い人」たちが、いかにいい加減な存在であつたかを悟り、その絶望感が作品にも影を差してゐるやうな気がします。少なくとも戦中の安定した、明るい作品群とは違ひますね。

    主人公は没落した貴族のかず子。彼女の独白体で話が進みます。その母親とともに、東京から伊豆に「都落ち」します。しかしこの母娘は生活力がなく、収入もないのに生活レヴェルは落とせないのです。貴族たる所以か。
    そんなところへ、行方知れずだつた弟の直治が帰つてきます。父なき家庭で、本来なら一家の大黒柱となるべき立場ですが、クスリ中毒となつてゐて、家から金を持ち出すは、上原なる無頼作家の元に入り浸るはで、ロクな奴ではない。もうこの時点でこの一家は破滅に向かふことが容易に推察されるのであります。
    かず子は、直治を介して知り合つた上原に熱烈な手紙を繰り返し送ります。彼女の言葉で言へば、「戦闘、開始」
    上原の子供を産みたいとの願ひを持ち、結果的にそれを実現するのですが......ギロチン、ギロチン、シュルシュシュシュ。

    太宰は自身の生家をモデルにしたと公言してゐます。かず子のモデルは太田静子。彼女の日記が下敷きになつてゐます。太宰自身は直治と上原に分割して投影されてをります。名門資産家の息子に生れながら、生家を裏切る行為ばかりして自堕落な生活を続ける直治と、才能を認められながら無頼な生活しか出来ぬ小説家の上原。
    直治の最期は、自殺未遂を繰り返しながら結局死ねなかつた自分の理想を描いてゐるのでせうか。人間には死ぬる自由もある筈だ......若い頃、心中を試みながら現実には女だけ死んでしまつた経験がありますからな。

    日本版『桜の園』を目指したさうですが、こちらはより生々しい。登場人物は皆、世間的には認められぬ行動をとり、破滅への道をまつしぐらに突き進むのでした。しかし悲劇を描いても暗くならず、読者サアヴィスもふんだんにあります。本作を(といふか、太宰を)嫌ふ人は、弱さを誇示する自己憐憫が我慢ならぬと切り捨てますが、わたくしには全く気にならぬのであります。それは読者に何の見返りも期待せぬ潔さがあるから。
    発売当時、大ベストセラアになつたのも頷ける完成度と申せませう。志賀直哉や三島由紀夫が認めなくても、わたくしにはいとほしい一作であります。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-738.html

  • 衰退、妄想、破滅…。生きる事にどうでもよくなって酒に溺れ自殺、妄想癖からの不倫へ走って恋愛を生き甲斐にしたり…。闇があるから生き様が輝く!内容は泥々なのに読みやすく面白い。

  • 直治の遺書のような考え方を持つことは生きていると誰しもあるのではないだろうか。世の中で、一ばん美しいのを犠牲とし、利他行動をする。善く生きようとし過ぎて、理想の自分になりきれないことに絶望し壊れてしまう。だからといって、遊び呆けることもやがて虚しくなり、苦痛に感じる。だから、死を美しいものと信じて疑わず、選択してしまう人の弱さを痛感した。

  • 太宰は好きではなかった。
    『富嶽百景』『走れメロス』は好きだったが、全体的に鬱々として、自分はダメだ、私なんて生きていても仕方がない、そんなことばかり書いているのだろうと思っていた。
    特に、『斜陽』なんてタイトルからして暗い、しかも破滅への道、なんて書いてるじゃないか。
    くどくどと「悩んでる俺」に酔っているんだろう、そう思っていた。
    それをなぜ読み始めたのか。
    NHKの「100分de名著」がまたしてもきっかけとなった。
    見ていてびっくり、読んでびっくり、百聞は一見に如かず。
    これは「斜陽」ではない、「夜明け前」だ!

    私が誤解していた四人四様の滅びと裏表紙に書いてあった。
    しかし、かず子は滅びてなどいないし、滅びに向かってもいない。
    かず子はこれから逞しく生きようとしている。
    私生児と共に生きようと、古い道徳と争うと、そう言っているではないか!
    困難の道にあえて臨もうとしている、ここで書かれているかず子の姿は、今まさに立ち上がらんとしている。

    確かにかず子の母、弟の直治、恋人の上原は、滅び、あるいは滅びようとしていた。
    お母様の死は一つの時代の終わりだった。
    直治は最後に自分の本来の姿を認めて誇り高く、だからこそその自分に潰された。
    上原も同様だ。
    しかしかず子は違う。
    誇りに潰されることなく、時代を乗り越え、新たな「生」を掴み取った。
    彼女自身が自ら勝ち取った、新しい誇りだった。

    太陽は沈む。そして一日が、その一日が積み重なった時代は終わる。
    けれども翌日、また太陽は昇ってくる。
    昨日の続きではなく、新しい今日として。
    彼女は今まさに登ろうとしている。
    暗がりを一度見たとて、それは滅びに向かったのではなかった。
    新しい一日を迎える準備だったのだ。
    悲壮?
    違う、これは希望に満ちた本だ。
    底抜けのわかりやすい明るさではないだけで。
    これこそが、私が好きな太宰だった。

  • 二十代で読んだ時は嫌いだった。
    今日読んだ時には涙が落ちた。
    誰もだけれど、とりわけ直治が哀れで泣けた。
    その反面で、なんて哀しいくらい強い革命の物語だったのだろう。

  • スープが飲みたくなる

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著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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