ヴィヨンの妻 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.66
  • (335)
  • (518)
  • (728)
  • (70)
  • (11)
本棚登録 : 4829
レビュー : 456
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006031

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 2017.8.1
    すべてマイナスを集めることでプラスになるような、そういう道徳はないのだろうか。どうなのだろう。しかし不思議なことは、7日生きるとして、6日いいことをしたとしても自分を善人とは思えないのに、たった1日悪いことをしたら、その先もずっと悪だと思ってしまうこと。真っ白でなければ悪人なのだろうか。限りなく白に近い灰色も、黒と見なされるのはなぜだろうか。
    マイナスを集めることによるプラスとは、つまり、真っ黒である。何をすべきかわかっている。何が正しいかわかっている。情もわかっている。しかし、自分の弱さが、それをさせてくれない。怖くて、辛くて、酒に、女に逃げ、金ばかりがなくなっていく。そういう真っ黒は、なぜそうなれるのか。真っ白を求めるからだろう。諦めてしまえばこんなに苦しむこともないのだ。この世で最も醜い人間、この世で最も尊いものを求めている人間である。そういう自分の中の白への憧れに気づくことができるのは、真っ黒な自分を直視している人間だけである。
    限りなく白に近い灰色が黒とみなされるのは自分が白だと勘違いしているからである。そんな奴はいない。誰もが白を求めながら、黒に染まっていく。白とは理想である。時たまこの現世に顕現することはあっても、まれである。黒を求める人間はあまりいないように思える。なりたくもないのに染まってしまう。自分がどれだけ白を求めて生きるか、と同時に、どれだけ自分が黒であるかを悟るか、これが、堕落としての生き方であり、ニヒリズムとしての生き方であるように思う。必要なのは、憧れ続けながら、挫折し続けながら、自分がクズであることを自覚し続けること。白を諦めた人間はニヒリストになる。人非人になる。それは本当の黒である。
    頭のてっぺんギリギリまで黒に浸かりながらなお、白を求め続ける。そういうことだろうか。

  • 2017.7 本棚整理のため12年ぶりに再読。評価変更☆4→3

    親友交歓、トカトントン、父・母など。太宰的デカダン短編が半分くらい

  • 出てくる男が本当に人でなしで,どうしようもないクズ.
    それを懸命に支える妻が幼気で美しく描かれているけど,まさに男から見た理想の妻という感じがしてとても嫌.都合良すぎない?!
    という訳で,本当に好きになれない話ではあるんだけど,「そうならざるを得ない」心理を察すると,やはり流石太宰と言わざるを得ない.

    ■ ヴィヨンの妻
    最後の「人非人でもいいじゃないの.私たちは,生きていさえすればいいのよ」の台詞の重さ.
    あんなに苦労しているのに,否,苦労しているからこそなのかもしれないけど,達観したこの台詞が大好き.とてつもない強さを感じる.

  • ダメな夫と、それをけなげに支える妻

    うんざりするほどダメな男の話の中で
    古い友人が訪ねてくる話では、人を笑わせるような
    サービス精神を感じた。

  • 男性は愛する人を外敵から守ることはできても内側からの弱さを受け止めることは苦手なんじゃないかと思う。女性はその逆で、愛する人の弱さに直面した時、ただただそれを受け止める。苦しみから解放される方法を考えるよりも相手の痛みをわかろうとする。それが相手を繋ぎ止めるって無意識のロマンチシズムに浸りながら。呼吸するみたいに無意識に簡単に生きることにできる人がいる人がいる傍ら、大海で泳ぎ続けるみたいにしていなければ生きられない人がいるのです。やっぱ好きだなぁ、太宰。この中だったらヴィヨンの妻/桜桃が好き。

  • 太宰治はどれを読んでも一緒かも、次は無い。

  • 「ヴィヨンの妻」太宰は妻へ求める姿を書き、どうすることもできない自分を書いたのだろうか。これはこれで純粋に思えてしまう。

  • 2回目。どうしようもない夫に素晴らしい妻。この設定が大好きだし憧れすら感じる、というと私はおかしいかもしれない。だけどこの奥様の献身的で真面目で芯の強いところには同じ女性として憧れを感じざるを得ない。そう思わない女性の方が幸せになれるのかもしれないけれど、そんな家庭に(父はそこまでひどくない、母が献身的であるという面で)育った私には女性たるものこうあらんと染み付いてしまっているのだろう。

  • これらの作品を書いているとき、太宰治本人は非常に鬱々としていたんだろうなと読み取れる。大戦後の混乱と様々な要因から来る絶望。
    掲載されている作品からは希望が感じ取れなかった。
    読了が非常に不愉快だった、親友交歓だがじっくり考えてみると作者なりに一見被害者かもしれない者が、否者だけが被害者なのだろうか? と投げかけているように見える。罹災したのは彼だけではない。不愉快と称した親友も大戦を経験し、少なからず罹災している。
    「威張るな!」は被害者で居続けるなということなのではなかろうか。

    鬱々としながら小説を通しなにかを伝えようとした晩年の8作品は軽い語り口ながら色々なことを考えてしまう、そういった意味合いでは理解しづらい作品でした。

    ときにこの一冊、節々に太宰治を想像するように誘導されているが本当に小説なのだろうか? 半自伝ではなく? 
    つらつらとくだらない事を書き込んだ他人の日記を読んでいるような気分。

  • 太宰ナイトの教科書として購入。まったんの帯だ。
    「親友交歓」好きだわー。
    課題小説は「父」「ヴィヨンの妻」「おさん」「家庭の幸福」「桜桃」だったけど、実際扱われたのは「家庭の幸福」「ヴィヨンの妻」「桜桃」。
    「ヴィヨンの妻」の考察、興味深かった。今度から客電つけてほしい。本を持参しているお客さんが多くいたが、暗くて見えんかったろう。

全456件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

1909年(明治42年)、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東大仏文科在学中に非合法運動に従事し、やがて本格的な執筆活動へ。35年、「逆行」で第1回芥川賞の次席となり、翌年には処女作品集『晩年』を刊行。以後「走れメロス」「斜陽」など多数。

「2018年 『津軽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ヴィヨンの妻 (新潮文庫)のその他の作品

ヴィヨンの妻 (青空文庫POD) オンデマンド (ペーパーバック) ヴィヨンの妻 (青空文庫POD) 太宰治

太宰治の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
川端 康成
三島 由紀夫
三島 由紀夫
安部 公房
三島 由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする