ヴィヨンの妻 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 456
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006031

感想・レビュー・書評

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  • 現状をただただ憂いた最期を感じさせる短編集

  • 暗いというか卑屈というか、どうしようもないと見放したくなる。故意だからだ。抜け出さないことで心底切り込むような文章を書く。軽快さが軽快に現れないよう重力を感じる。自身の不幸は自身の中にしかないので、他人と共有するのも他人を納得させるのも困難である。それが例え家族であっても。幸福と不幸について、絶対的な自信があるときに読んだ方がいい。彼はあなたじゃない。引きずられないように…。

  • なんかすごく死にたくなった

  • 太宰治が描く無頼の天才は本当に魅力的で、どうしても見てみたくなってしまうような人物ばかり。
    この主人公も、いい加減な人間なのに周りから好かれて気にされて、そばにいたら破滅的なので、遠くから見ていたいような男性だった。
    ともすれば可哀想な女性のじめじめした話なのに、こうもさっぱりと淡々とした文章なので読み終わったあとも爽やかささえ漂う。

  • クソ親父の一言につきる気もするが、これがすべてリアルストーリーというわけでもない。
    この家族への距離感、よそよそしさ
    家族であっても自分の核の部分は絶対に出すことはできない、という感じだったのかな。

  • ヴィヨンの意味がわかりました。

  • 2015年3月12日〜2015年4月10日
    てっきりヴィヨンの妻という話がつらつらと書いてあるのかと思ったら短編小説だったのです。
    そして、ひとつひとつがとても良い話でした。
    ・親友交歓
    →友人がきて妻と連れてこい。そして、妻をからかう。酒をかっさらっていってしまった。
    ・トカトントン
    →戦争のときに金属音が聞こえてきた。それがトカトントン。
    ・父
    ・母
    ・ヴィヨンの妻
    ・おさん
    ・家庭の幸福
    ・桜桃

  • 「親友交歓」
    小学校時代の「親友」を自称する男の訪問を受けた太宰だが
    これがじつにいやらしい、ずうずうしい男なのである
    クラス会の相談をしたいと言ってあがりこみ
    秘蔵の酒を遠慮なくかっくらう
    「角瓶」なんて今じゃいちばんお安い銘柄だけど
    終戦直後は超一流だ、それをしかも太宰の妻に酌までさせて飲むのだ
    なんの文句も言わず、されるがままの作家先生はこの上
    彼のことを「見事」「あっぱれ」「痛快」とまで称するのである
    はたして太宰が卑屈の弱虫なのか?
    僕は必ずしもそう思わぬ
    なんとなればこの「親友」こそ、戦時中に書かれた津軽紀行における
    作者の真実の姿ではないかと思われる節があるからだ、つまり
    太宰治もドッペルゲンガーを見ていたのではないかというのである
    それにしても
    ナルシストがドッペルゲンガーに出会うとはこういうことなのか
    そう思うと、苦笑してしまう作品だ

    「トカトントン」
    戦後復興の時代
    家屋の新築、あるいは補修のためにトンカチを叩く音が
    あちこちから聞こえてくる
    それがトカトントン、間の抜けた音だ
    戦時の熱狂も、まるで忘れたかのようにのんびりした空気
    トカトントンを聞くと
    脱力してしまって、なんにもやる気が起こらなくなる
    戦後うつとでも言うのだろうか
    それに悩まされる青年の手記、という体裁で書かれた短編だが
    それは、空気にあらがって独自の戦いを続けていた太宰にとっても
    けして他人事ではなかったはずだ

    「父」
    身重の妻とふたりの子供を抱えているにもかかわらず
    自分の稼ぎはほとんど家に入れもしない
    もちろん、家事・子育てなど見向きもせず
    よその女と酒ばかり飲んでいて
    しかもそれが「義」のための苦行であるとうそぶく
    もともと太宰には
    シンデレラ・ストーリーならぬ「幸福の王子」とか
    「星の金貨」みたいな話へのコンプレックスがあったんじゃないか
    終戦と共に敵を見失ったことで
    そのコンプレックスによる悪癖が
    激しく再燃しているようにも見えるのだが

    「母」
    人生の真実には敢えて目をつぶるのが愛、ということも
    場合によっては正しいと思う
    しかし結局は、それもこうして小説に書いてしまう太宰であった
    なんというか甘えているのである
    一方、この小説に出てくる小川という青年もまた
    どうも太宰に対して、ある種の甘えを発揮するのだが
    それはやはり、彼もまたドッペルゲンガーだからかもしれない
    戦争が終わって、鬼がいなくなったとたん
    まるでみんなが太宰治になってしまったようである

    「ヴィヨンの妻」
    浮気する、女を泣かせる、酒場のツケを払わない
    そのうえ盗みまでやらかしちゃあ、もはや申し開きの余地はない
    …はずなんだが
    それでもなお彼は、自らを「善人である」と信じたいのだった
    まったく救いようのない天然だ
    もはや貞淑ではいられなくなった奥さんも
    この亭主には冷ややかな視線を向けるしかないのだけど
    しかしどうだろう
    ただ生きてればいいのだと言って捨て鉢に開き直る人と
    偽善とはいえ人間の善性にこだわる人とじゃ
    はたしてどちらが上等なものかな?
    答えなんかない

    「おさん」
    事実は小説より奇なり、なんてなことを言うが
    それが本当なら小説を読む人なんて誰もいやしないだろう
    ところが、敗戦を経て世の中は革命的に変わった
    限定的なこととはいえ
    ほんとうに事実が小説を超えてしまったのである
    太宰がみたび死を踏破しようと目論んだことは結局
    そこに起因する部分が大きいのではないか

    「家庭の幸福」
    ちっぽけな家庭の幸福を守るために
    他人の不幸から目をそむけることの何が悪いというのか
    なんにも悪くない
    だから狂人ひとり死をこころみたとて
    誰にも文句を言われる筋合いはない
    梶原一騎あたりに多大な影響を与えたものと思われる作品

    「桜桃」
    日本はいったいなぜアメリカに降伏したのか?を考えるとき
    可能性として、二つの答えが浮かび上がる
    ひとつには、子供たちに未来を残すため
    もうひとつは、戦争おっぱじめた大人たちの保身である
    どっちがほんとうの理由であろうか
    戦後における太宰の苦しみってやつを煎じ詰めたあとには
    そういう疑問が残るんじゃなかろうか
    かの近衛文麿も、道化じみたパフォーマンスで
    人気をとっていたらしいな
    …ちなみに「桜桃」
    読めば字のとおり、「桜」の果実ということになる

  • "生きるという事は、たいへんな事だ。
    あちこちから錯がからまっていて、少しでも動くと
    血が噴き出す。”

    世の中の生きづらさをこうも表現力豊かにあらわせるなんて・・・!

  • 私は、何とも暗い気分になりました。男の弱さが辛くなります。女の強かさ、強さを実感しました。

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著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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