津軽 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2018
レビュー : 188
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006048

感想・レビュー・書評

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  • 太宰治が自身の生まれの地に帰省した時の出来事を綴った自伝的小説。

    青森旅行を前に、青森繋がりで読んでおこうと思い手に取りました。
    冒頭でのしっとりとした津軽への到着を経ると旧友との再会へ。友人たちとお酒を嗜むシーンは無礼講なやりとりや文学界への風刺の効いたセリフに笑いを堪えるのに必死。ラストでのたけとの再会に向けて少しづつ距離を詰める展開は胸が高まると同時にぐっとくるものがあります。
    以前『津軽 抄』は読んだものの、全編を通して読むと更に様々な表情を見せられ、爽やかな読後でますます好きな作品となりました。

    「元気で行こう。絶望するな。では、失敬。」
    印象的なセリフで締められた本作の4年後に太宰が入水自殺を完遂させていると思うと、切なさも過ります。

  • こんなのずるい。惚れちゃう。影を背負った作家太宰ではなくて、津島修司としての、人を楽しませるのが大好きで、人好きのする男の姿がここにはある。鯛の姿焼きを眺めて贅沢な気持ちになりたかったのに切られてこれじゃただの焼き魚だ、って拗ねる30代とか可愛すぎか。
    今まで読んだどの太宰作品とも違って、すごく新鮮で、彼の文豪としての力を思い知った。
    「どうして旅に出るの?」で始まる冒頭。卵味噌で終わる津軽人の怒涛の接待。そして、なんとも美しい岩木山の描写。
    素晴らしいの一言に尽きる。

  • 「なぜ、旅に出るの?」「苦しいからさ」で始まり、自分の気持ちの説明は気障で文学的虚飾であるから何も言いたくないと前置きしながら、紀行文では気持ちの説明だらけ。調べるとたけとの再会の場面等々脚色も結構あるらしい。で、ラストが「私は虚飾を行わなかった。読者をだましはしなかった。さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。では、失敬。」で終わる。全体を通して昭和19年とは思えないほのぼのさがある。太宰を読むのは学生以来だが、やはり上手い。で、こんなに明るくて、正直で、ユーモアたっぷりの作家だったという事に驚き。

  • 太宰治が自分の故郷である津軽を旅した紀行文。
    最後の文章が気になって読んでみた。

    誇らしいような、卑下したいような、
    故郷に対する微妙な気持ちが共感できる。
    そして自分を形作った、どうしても切り離す事が
    出来ないものとしての故郷が重くなりすぎずに
    非常にのびのびと描かれている。

    ところどころでトホホな事になってしまう太宰がかわいい。
    暗くてネガティブなイメージが強い太宰の小説ですが、
    この本は非常に素直で素朴な太宰治の一面を知ることが出来ます。

  • 太宰の小説は、大人になってから何冊か読んでいるけれど、エッセイは初めてです。
    で、読んでみて…

    太宰のファンになりました(笑)。

    あたしは津軽が好きなんです。
    両親が津軽出身で、親戚もみんな津軽に住んでいるので、そのせいもあるけど(あたし自身の育ちは津軽じゃない)。
    ほかの地域の人には全然通じない、その方言も、標準語をしゃべっても微妙に出てしまうその奇妙なアクセントも、賑やかで気さくで、お人好しで、でも短気な、その人柄も(←これはステレオタイプだけど、あたしの知ってる津軽人の多くはやっぱりこういう人)、キレイだったり、もの悲しかったり、懐かしかったりする、その風景も、全部好きです。

    で、『津軽』は、津軽のイイところはイイままに、奇妙なところは、そこが愛すべき対象であるかのように、とても魅力的に描かれています。

    とくに、pp.69〜74にかけての、「Sさんの接待」と、それに関する太宰のコメントは、もう、ホントに、腹を抱えての大爆笑。

    あの気持ち…っていうのは、接客される側の焦った気持ちと、接客される側のうれしいんだけど戸惑う気持ち、どちらの気持ちも、あたしにもすごい覚えがあります。
    懐かしくて、愛おしい風景。

    で、そういう小さなこと(だって、津軽にいれば、それは普通の日常風景)のひとつひとつが、丁寧に描かれている『津軽』は、太宰の津軽に対する愛着が感じられる、イイ本です。

    あたしはこの本を読んで初めて、「郷愁」って言葉の意味が本当にわかった気がします。


    <追記>
    でも、津軽を知らない人にとって、この本がどれだけおもしろいのかは…正直、よくわかんないです。
    津軽はあたしにとっては「故郷」だから。
    いまいち客観的な判断が。。。

  • クライマックスよかった。そしてあそこまでしか書かなかった作者のおもいがじんと伝わった。それ以上書くことができないほどのことがあったのだろう。それを想像する余韻が広がる。

  • 再読。太宰の、太宰による、太宰のための、故郷津軽の紀行文。

    内容は大の大人が、友人知人宅に次々に上がり込んでは大酒を飲むというお話です(笑)

    閉鎖的な田舎人ではなく、東京人としての冷静さを兼ね備えつつ、どれだけ津軽や津軽の人々を愛しているか、不器用で率直に書かれています。さすが、自称専門科目「愛」!!w

    やはり、津軽が一番好き。不器用で頑固で、でもとても純粋な太宰の価値観が好き!ラストは嬉しいやら切ないやらやっぱり嬉しいやらで何度読んでも涙目です。

  • 長いこと読みたい、読まなければ、と思い続けていた『津軽』を遂に読了。

    「汝を愛し、汝を憎む。」
    故郷に贈る言葉としてのこのフレーズが印象的であり、長年私が故郷に感じていた気持ちにぴったりと当て嵌るラベルを見付けたような心持ちだった。
    同じ東北人として、とでも言ったら良いのだろうか。故郷への言いようのない愛憎が形にされている文章に共感してばかりだった。

    旅に出たくなる小説であり、故郷を訪ねたくもなる小説だった。また近いうちに、自分の故郷と、そして太宰の故郷を訪ねたい。

  • これまで読んでこなかった太宰。
    これこそ、太宰の真髄とも呼べるべき一冊です。
    号泣。

    文庫版の解説、亀井勝一郎氏。お得です!

  • 津軽にはほとんど足を踏み入れていないものの、青森には何回も行ったので、かなり面白く読むことができた。特に、Sさんの接待の場面では思わず吹き出してしまった。何より、この旅が、戦争が敗色濃厚になってきた1944年になされ、出版されたということが驚きである。

  • 青森の地歴を解説するところは読み飛ばしてしまったが、太宰の飾らない旅風景は何やらジーンときた。ふ、と抱いたことのおる名前のつかない感情を、太宰も感じていたことを知り、安心した。

  • 津軽への愛憎入り混じった感情は、自分自身に対するものでもあるように感じた。
    少年時代の回想はなんだかとても可愛いし、友人とは楽しく酒を呑んでいるし(そもそも最初から最後まで酒を呑んでいるのだけど)、たけとの再会はちょっと泣ける。
    生きていけるための何かを探す旅だと思って読んでいて、自分を見つけることができたようでよかったなあと思ったけれど、仄暗いところや死を想起させる文もちらほら挟まってくる。これが書かれたのが死の4年前、というのを考えると切なくなる。
    青森を旅しながら読みたいと思った。

  • この本とともに津軽鉄道に乗って斜陽館へ。
    自分にとって、太宰のわからなさ、遠さ、の理由は津軽という土地にあるのではないかという仮説。

  • 前半の津軽でのゆかりのある地と人を尋ねる道中から最後のたけとの出会いの一節で一気に光が見える。この明るさは太宰作品とは思えないくらいの実に幸福な描写だった。

  • これ凄く面白かった。

  • 太宰自身が故郷・津軽地方を巡ってものした随筆。「~しちゃった。」という言文一致の極みのような表現があったり、読者に対する説明が気恥ずかしいほどに痛々しかったり。著者の小説ではあまり出てこない朗らかな一面が感じられる。と共に、自分に対して、また故郷についての自虐的な描写があり、このあたりは太宰だな~と思う。この紀行は、育ての親とも言える乳母・たけとの再会が最大の目的であり、そのクライマックスを最後に取っておく著者の気持ちがよく分かる。昭和19年という戦時中に、青森の地では酒食に事欠かない豊かさが興味深い。

  • 太宰治が戦時中の津軽を歩く本です。
    内容は津軽についてが半分、太宰治自身についてが半分といったところでしょうか。
    津軽についての解説は、りんごの歴史が明治からとか、雪に吹かれず往来するためのコモヒの構造とか面白い部分もあるのですが、大半は説明調で引用も多くあまり面白いものではありませんでした。
    一方で、太宰治の帰郷記としては、昔の知人に会う楽しさや気恥ずかしさが太宰治らしいひねくれた筆致で描かれており、これはなかなか面白いところがありました。
    太宰治のファンや青森にいく予定のあるかたは、手にとってもいいのかもと思います。

  • 青森の縄文遺跡を見に行ったので、いにしえの文学少女としては金木の斜陽館も訪ねるわけです。
    その前に当然、「津軽」を引っ張り出して、もう一度読みました。
    「津軽」はいい。ほんとにしみじみいい。読むたび、その年齢なりの感慨にひたれます。

    斜陽館もよかったけど、行きの津軽鉄道のアテンダントさんが勧めてくださった「太宰治疎開の家」がすばらしかったです。離れを移築したもので、ガイドさんの説明がまた良くて、話を聞いてるうちに太宰治の体温が感じられて、涙がでてきました。行って良かったです。

    『「私は虚飾を行わなかった。読者をだましはしなかった。さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。では、失敬。」』

    一番感動的な、女中たけとの再会シーンの、たけの饒舌な語りはフィクションらしい。実際は、二人とも寡黙だったようです。でも、虚飾は行われなかった。なぜなら、事実と真実は違うから。だから読者をだましてないんです。

    でも、「絶望するな」って言っといて、この3年後に死んじゃうんだもんなあ。

  • ただただ、最後の会いに行くエピソードが読みたいがために最初から読んだ。だからそれ以外に何を書いていたかさっぱり頭に残ってない。読みづらかった…けどやっぱ最後のエピソードは良かったなあ。

  • 読んでいて楽しい。戦争末期であり日本未曾有の非常事態に、この人はなぜこんな明るい紀行文というか自分探しの感傷旅行が書けるのかしら?不思議な作家です。序文において“愛”の専門家として津軽を旅すると述べていた。太宰がこのように自分を語るのも珍しいし、冗談なのかと思っていたが、確かにこの作品は故郷への“愛”で溢れていました。太宰の人格の負の側面が、戦前の田舎の名家に内包される闇に侵されたという見解もあるかもしれないがこの作品からはほとんど窺い知ることができない。紀行文としてみた場合、食べる事にほとんど執着しない割には食事の場面が魅力的で、酒ばかり飲んでいるのも面白い。最後の一番懐かしい人に会いにいくエピソードもとても良かった。

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著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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